此の三徳は石堂(輝秀)の手になる物だそうで、地金も独特ですね。其処を見込んで、黒打ちを磨きにして欲しいとの事。それ以外にも、様々な箇所に手を入れる必要が有りました。
前例の有る工程ではマチの磨きと峰の磨き、そして今まで経験の無い作業は黒打ちの磨き。しかし、難易度と言うか困難は伴うものの、工程は想像が付きます。
一番、心配だったのは朴柄に付いている水牛の部分。その欠損部分を何とかする事、更には柄に張られていたであろうシールの痕跡を目立たなく、との事でした。
研ぎ前、右側全体
研ぎ前、刃部アップ
研ぎ前、左側全体
同じく、峰
込みの部分、左側には反対側に比して瘤状の膨隆が。
マチの部分は随分、荒々しいですね。
木部と接する水牛部の欠損
先ずは、ダイヤモンド鑢で膨隆を削ります。
その流れで、マチの凹凸を均します。その後ペーパーに移行し、段階的に砥ぎ目を細かく。
次に、予て用意の荒い布ペーパーで黒打ちの下の状態を把握。
同じく左側。
120番と240番辺りで繰り返し。あと、GC240番の大きな小割り?も投入。
同じく左側。
平の磨きを進め、切り刃をキングハイパーの硬軟で整形。
研ぎ上がり。作業開始直後に柄の揺れを感じ、抜けそうでしたので別々に作業しました。中子の錆も軽く落として有ります。
中子の錆が進んで細くなったのでは無く、柄の方が乾燥で縮退したのでしょうか。一部ヒビが入っていますが、打ち込む時にも起こり得るので不明ですね。
欠損部を削りながら周囲との兼ね合いを取りました。磨いた肌を均一にする為、最終的には全周囲に及びましたが。過去に朴+プラ製の柄では試した事が有りましたが、十分な仕上がりは得られませんでした。其の為、最後まで心配でしたが何とか問題無い範囲に纏りました。
水牛部は恐らく、研磨剤を塗布した羽布には適わないであろうとの想いは有りましたが、確かに艶は未だ控えめながら色調は本来の自然な色合いに。やや白みがかった部分や茶色がかった部分が出現。黒一色にも見えていた物に複雑な多様性が。
研ぎ後、右側全体
研ぎ後、刃元部分アップ
切り刃が薄いので、更に刃元を薄くするのは避けました。私の画像は粗が隠れない様に映しているので、特に今回は切り刃の表面に何段階かで砥ぎ目の残り方をしているのが分かると思います。
研ぎ後、左側全体
込みの左側と峰の状態
マチの状態
刃先拡大画像
あ、巣板から千枚・八枚と来て最終は上の中山並砥です。相性がかなり良くて助かりました。
今回は作業内容も箇所も多様で、工程の画像を残す余裕に乏しかったです。しかし人造中砥までの砥ぎ感と試し切りでは、柔らかく粘り重視の焼き入れかと思われた刃金が、研ぎ進めると十分な硬さと切れを感じました。
之まで砥いだ刃物の中で、一番似通った印象を受けたのは玉鋼の包丁で、鼈甲飴を擦る様な感触と欠け難い仕様でした。そっくりそのまま、と迄は言えませんが近い性格なのは確かです。そう言えば、地金も錬鉄よりは和鉄地金に近い外観でしたね・・・。磨いた平にも、光の当て方で油膜状・層状に模様が見えます。
北海道のT様には、今回最初に御送り頂いた4本には画像上でOKを頂きましたので、明日にも御指定の内容で御返送したいと思います。急遽、追加で御送り下さった本焼きも間を置かず御届け出来ると思います ので、宜しく御願い致します。