出刃二種とナイフの御依頼

 

外回りの途中で立ち寄れるからと、御近所?のO様からステンレス出刃の問い合わせが。しかし、対面して御持参下さった物を見れば、炭素鋼の出刃とステンレスのナイフを合わせた三本。

基本的に、釣りで持ち帰った魚を捌く目的での御使用とか。ナイフも、締めと頭の落としに使っているとの事でしたが、何れも満足の行く切れが出ないそうで。

 

炭素鋼の出刃、研ぎ前の状態

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人造の1000番、研磨力の有るタイプで。

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人造の1000番、傷の浅いタイプ。

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丸尾山の白巣板、中硬と軟口で。

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中山の巣板、硬口で最終仕上げです。裏押しの一部が、未だ刃先まで到達して居な部分も二か所ほど有りますが、次回・次々回の研ぎでは揃うと思われます。

刃元側の数cmは、裏からも角度を付けて小刃が付いていましたので、其れを踏襲して有ります。表側、刃元から切っ先までは70度⇒50度⇒30度と角度を変えて有ります。

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研ぎ上がり、全体画像・刃部アップ・刃先拡大画像・裏です。切り刃(軟鉄部分)も、顎から切っ先・鎬筋から刃先へ向かって、軽くテーパー状を狙いつつ均してあります。

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ステンレス出刃、研ぎ前の状態です。

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人造の1000番、二種で。その後は、3000番も。

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奥殿の天井巣板二種の後、奥殿の敷巣板(黒蓮華)二種で最終仕上げです。硬口・超硬口の内、前者との相性が良かったです。

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研ぎ上がり、全体画像・刃部アップ・刃先拡大画像・裏です。此方の切り刃は(洋包丁基準で研ぎましたので)、或る程度だけ均してあります。やはり、カーブから切っ先までが厚さの残存し易い傾向に在りますね。

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ナイフの研ぎ前の状態です。画像では判別が難しいですが、カーブ周辺に結構な数の欠け・捲れが点在。

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人造の1000番、二種で。その後は3000番も。

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中硬の赤ピン⇒奥殿の天井巣板カラス・中山の天井巣板カラスで相性を探り、最終仕上げは中山。

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研ぎ上がり、全体画像・刃部アップ・刃先拡大画像・裏です。

カーブの部分には相当数、欠けや捲れが有りましたが、一か所の痕跡を除いて消退しました。その段階で、他の部分が整った為に研ぎ進めるのを留めました。

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O様には本日、引き取りに来て頂きましたが・・・明日の釣行で良い結果と成り、包丁達が活躍してくれる事を願って居ります。此の度は研ぎの御依頼、有り難う御座いました。

もしも御使用で、刃角度などに問題が有りましたら、調整いたしますので宜しく御願い致します。

 

 

 

 

近場のK様から日本剃刀の御依頼

 

同じ大阪市内同士として?自転車で御持参下さったK様の剃刀ですが・・・御依頼自体も作業完了も先だったものの、ブログ掲載への許可を頂いた順番が、たまたまN様と前後しましたので記載の順もそう成って居ます。

此方のつらゆきは或る程度の梳きが残ってはいましたが、やはり研ぎ易さ・刃先精度の出し易さの観点から、梳き直してから研ぎ進めました。

 

 

研ぎ前の状態

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リューター・ダイヤモンドシート・粗い布ペーパー・細かい布ペーパー等で、梳き直してから研ぎ始めました。

先ずは人造の1000番、三種です。硬さ・滑走感・研磨力・傷の浅さに差異が有りますので、目的に応じて使い分けたり傷を小さくして行く並びで使用して天然に繋げます。

研ぎ感・下りの速さから、鋼材としては少し柔らか目な印象。研ぎ易いとも言えますが、圧力の掛け方次第で裏表の平面・刃線の直線が狂う恐れも。特に、砥石の平面維持に留意しないと容易に影響されます。

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3000番まで進めば、次は天然です。スタートは中硬~やや軟質の赤ピンが合いそうだと思ったのですが、予想通りでスムーズに仕上がって行きました。

ただ、傷消しに有効な、当たりのソフトさ・泥の多さは有難いのですが、平面管理に気を使います。通常より面直しの頻度は高く、かつ使用するダイヤ砥石も選別した高精度の物(切り出し・剃刀の研ぎでは常用しています)で。

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次いで奥殿の天井巣板、中硬で。

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奥殿の敷巣板、超硬口の白と茶色。硬く細かい粒度で平面維持に優れ、しかし研磨は相応以上に速く、相性の良さを見せてくれました。

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先述の通り、柔らか目で繊細な刃先の個体ですから再度、やや当たりのソフトな砥石を経てから最終仕上げたる浅葱系統へと。此処で選んだのは中山の巣板硬口。

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中山の水浅葱と奥殿の浅葱で研ぎ比べてみた所、相性的に良かった奥殿の方で仕上げました。

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研ぎ上がりです。

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あと、本当に使える仕上げ砥石なのか(加えて、銘柄的にも合って居るのかと)御依頼時に相談を受けた砥石です。

硬さと細かさは浅葱相当とも思われましたが、どの程度までかは試し研ぎで判断しますと、剃刀と共に御預かりしていました。

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先ずは大平の蓮華巣板で曇り仕上げの状態に。

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次に件の砥石で研いで見ると、結構な光り方に。ただ、地金に研磨痕がチラホラ入るのみならず、刃金にも引け傷が。普通の?刃物には使えても(ステンレス洋包丁などですね)、剃刀の類には刃先へのダメージも予想される為、後者の用途に御薦めするのは厳しいと言うのが正直な感想でした。

ただ、名倉や共名倉の活用次第では、或る程度は改善も見込めると思います。此の砥石のウイークポイントは、砥面に現れている砥粒の集合度合いに密と粗が有る点だと考えられますが、より細かい砥粒且つ滑走に寄与する性質の砥石との擦り合わせは、充分に期待出来ます。

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再度、大平の蓮華巣板⇒中山巣板のやや硬口⇒中山の水浅葱で研ぎ直せば、やはり硬口の浅葱系統として充分な仕上がりに。しかし扱い方や刃物との相性(さらに言えば使い手との相性)で、何処の何と言う砥石が奏功するかは未知数ですので、定評の有る物だけで無く、意外性を求めた物・たまたま巡り合った物、等も組み合わせつつ調べて行くのも楽しいですね。

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此の度はK様には、研ぎの御依頼を頂きまして有り難う御座いました。又、御手持ちの砥石に付いての御相談を頂いた御蔭で、経験の無いタイプに触れる事も出来ました。ブログ掲載への御協力も含めて、感謝して居ります。今後も何か私で御役に立てる様でしたら、宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

京都から日本剃刀の御依頼

 

京都のN様から、日本剃刀の研ぎ依頼を頂きました。ほぼ梳きが無く成って居る状態故にか、今一つ?切れが出ないとの事で。

 

研ぎ前の状態、殆どベタ研ぎの状態ですね。理屈の上では、裏と表から平面で研ぎ、必要な刃先角度に成って居れば実用に足るのでしょうが、現実的には難易度が上がるとは思います。

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此方は対照的に、万全に近い状態でしたが・・・先端に近い部分は角度が不安定に成って居ました。

 

 

 

リューター・ダイヤモンドシート・荒い布ペーパー・細かい布ペーパーで梳き直し、人造の1000番三種で。先寄りの刃先が幾分、角度が不安定・元寄りの刃先が他の部分に比べて、若干ですが直線に揃っていない様子も見受けられました。

気に成る箇所が無くなる迄、砥石を交代しつつ研いで居ると又、梳きが狭く成って来ましたので、再度の梳き直しから3000番。

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天然砥石に移行し、奥殿の天井巣板二種で。

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中山の巣板、中硬・やや硬口・硬口で順に研ぎます。

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最終仕上げは、中山の水浅葱。奥殿の浅葱と研ぎ比べつつ、より相性の良かった方を選択しました。

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研ぎ上がりです。

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刃先拡大画像

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元寄りの部分ですが、僅かに欠けの痕跡が見えます。この後、更に研ぎ込んで見えない程度には仕上がりました。此処に至るまでにも、相当に研ぎ込んで有ったのですが。その所為で、やや砥面に接する面積が増えてしまいました。

中仕上げの段階で、幾ら研いでも無く成らない欠けが数個、出たり消えたりしました。恐らくは、表・裏の角度と面の精度を上げて行く途中、最も誤差のしわ寄せが出た部分だったのかなと。

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今回の岩崎の玉鋼ですが、過去にも触れた事の有る同等品を含めて、全ての刃物の中で一・二を争う程の切れが出ました。硬さ・粘りのバランスも良く、何より組織の細かさを感じました。

N様におかれては(恐らくは研ぎ易さも改善されている筈の)此の切れの良い剃刀を、大事にしつつも存分に活躍させて頂けましたら幸いです。此の度は研ぎの御依頼、有り難う御座いました。

 

 

 

 

 

砥石の選別(下見?)

 

御二方から一本ずつ、日本剃刀の研ぎ依頼を頂いて居たのですが、一本目が研ぎ上がった翌日である昨日、久し振りに田中砥石店に出掛けて来ました。以前、研ぎ講習を受けて頂いた事も有るK様から、中山の巣板と浅葱の選別依頼を受けての訪問です。

事前に伝えて居た事も有ってか今回も、巣板をメインに相当な量と種類の原石が置かれていました。其の中から、御依頼に適う石を探しては見ましたが・・・流石に、加工前の段階と在っては確証が持てませんので、幾つかの気に成る物を取り置いて来ました。更に浅葱に付いては、別に置かれていた大きな厚物の原石を出して貰えましたので、次回の訪問までに大き目に切り分けて頂く事にしました。

 

 

 

其れ等とは別に、折角ですので予備の薄物浅葱(しかし超硬口)を始め、幾つか選別してみました。ですが今回、持ち帰ったのは資料的な目的で選んだ三点です。

 

之まで掘り進めていた巣板層の、端まで行った部分の石らしいのですが、戸前に近い質に成っている様子。嘗て、採掘をしていた方が確認された際も、同様の見立てだったそうで。

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巣板層では有りますが、色・柄・砥粒の状態から天井巣板相当かと思われます。研いだ感触も、硬口乍ら弾力を強く感じます。其の両方の特色に因り、極端に研ぎ減りが少ない性質と成って居ます。

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最後は、変わり種?と見受けましたが、馬路の巣板です。巣と巣の感覚は狭いですが、特に軟質でも無いし、巣も当たり難い質なので使い勝手に悪影響は小さいとの判断で。

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試し研ぎですが、上掲の順とは逆と成ります。

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予想以上の細かさで、薄曇り以上、少なくとも刃金部分は半鏡面に近い仕上がりです。サラサラとしつつも、泥が出て来ると適度な食い付きが見られます。

 

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此方は更に硬く細かく、半鏡面と言うよりは鏡面に近いです。相当な弾力と、強い食い付きにより、軽く滑らかに研ぎたい人にとっては扱い難く感じるかも知れませんが、個人的には面白くて好みの性質です。

 

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適度な硬さと幾分、サラリとした研ぎ感でしたが鏡面と言える仕上がりと成りました。

 

 

 

次回の訪問時には、浅葱と共に巣板の目ぼしい物が見つけられればと考えていますので、K様にはもう暫くの御待ちを御願い致します。

御二人目の日本剃刀の御依頼を頂いて居る、N様の作業は梳き直しが終了して居り、後は研ぐだけと成って居ますので同じく、もう暫くの御待ちを御長い致します。(御一人目は現在、仕上がり確認画像付きメールを御送りして返信待ちです)

 

 

 

 

 

静岡のM様からの御依頼、司作副鉈

 

M様から司作の副え鉈の研ぎ依頼を頂きました。鍛え地の磨きでしたが、形状的には新品状態ながら幾分は表面に傷や錆が有り、何方かと言えば外観の仕上がり重視でとの事でした。

とは言え、使用に於いての性能向上を目指して形状改善、を旨とする自分の研ぎ方ですので、先ずは切り刃の厚みを正確なテーパー状に・鎬鋤から刃先へ向けて鋭角化の緩いハマグリ・刃先手前から最先端へ向けて鈍角化のハマグリに整えつつ、錆も落として行きました。

 

 

研ぎ前の状態

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全体的には、不備も無さそうに見えますが。

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刃先手前に擦過傷と言うか、木材でも切った後の灰汁の痕跡にも見えます。あと、平も所々に傷が。

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左側面と峰に錆が少々・・・ですが、積層された地金の小さな陥凹を中心に軽い腐食と言った風情。

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人造の1000番、研磨力の強い物から。いつも通り?左側面はフラット気味・右側面はふっくらですので、右のカーブ近辺の厚みを低減。

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同じく1000番ですが、傷の浅い物。より、面の連なりと傷消しを重視して進めます。

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更に、研ぎ目が細かい物で刃金部分を重点的に。此処で基本的な刃先へ向けた角度調整を終えます。最先端は、天然に入ってからに成ります。

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平に関しては、特に御要望も無かったと思いますが・・・部分的に傷が気に成るのと、最終的な切り刃の研ぎ肌との違いが目立つ事を考慮し、おまけで簡易的ながら磨いて置く事に。

日野浦さんの積層には、ついつい力が入ってしまう傾向は自覚しています(笑)。先ずは人造1000番の小割りから開始です。

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峰の錆を除去。

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丸尾山の中硬の巣板で切り刃の傷を浅く。平も同じく、奥殿産巣板の小割りで。

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丸尾山の八枚の小割りで、平と切り刃を均します。

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切り刃には天然の仕上げとして、中山の巣板各種。平は更に、丸尾山の千枚の小割り二種。中山の巣板でも同系統と言えど、4~5個も順に当てて行けば、僅かな硬さ・細かさの違い以上に弾力の多寡による反応の違いが相性の差となって現れますね。

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刃金部分の全体は、最終仕上げとして中山の水浅葱、二種で。

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研ぎ上がり、全体画像です。今回の個体は最近の(刃金は白紙の統廃合後・極軟鋼は近年仕様)モデルでは無く、以前の物の様でしたので、10年ほど前の自分の手持ちに合わせて揃えた砥石・小割りが存分に効果を発揮してくれました。

まあ、極軟鋼の単体地金よりは、錬鉄との積層である鍛え地・雲竜の方が差異は小さいので、最近のモデルでも困る程では無かったとは思いますが。

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刃部のアップ

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刃先拡大画像

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左側面です。やはり此方側は刃金の出方が多いですね。

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静岡のM様には、此の度は研ぎの御依頼を頂きまして、有難う御座いました。本日、御返送を完了しましたので、到着後に何か問題など有りましたら御知らせ頂きたいと思います。

或る程度以上の外観には仕上がっていると思われますが、形状・面の連なりを崩してまで小傷を消す方向には成って居ませんので御理解を頂けましたら幸いです。観賞用としては完璧では無いかも知れませんが、もしも何かの機会に御使い頂ければ形状の意味を実感して頂ける事と考えて居ります。内心、そんな機会が巡って来てくれる事を期待する気持ちも抱きつつの御返送でした。

 

 

 

 

 

週初めに京都へ行って来ました

 

田中さんから先々週、以前からの採掘で多方面(採掘口)へのアクセスを可能にし、多様な原石を持ち帰ったとの連絡を頂いたので、早速ですが週初めに伺って来ました。

今の所、急ぎでの砥石選別の御依頼は無いのですが(一件は、条件が厳しいので中・長期の構えで当たる事にしています)、私が過去に取り置いていた分を持ち帰る事、そして最近の原石を確認する為でした。相岩谷も数個、取り置いていたのですが其れは、又次回に。

 

 

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先代が掘っていた中の物だったでしょうか、馬路山の戸前系?やや軟口です。傷消しに役立ってくれればと選んでいた石です。

 

 

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中山の巣板、中硬~やや軟口です。砥粒の目は細かいですが、此方も最終仕上げの目的よりも、傷消し等の中間的な役割を期待しての取り置きでした。

 

 

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上画像は中山の水浅葱、硬口です。予定には無かったのですが、私の好みや必要としているラインナップを把握している店主からの御薦めで(笑)、ついつい買ってしまう砥石は有る物です。

 

 

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八木乃嶋だったかと思いますが、蓮華巣板です。此方も良ければとの事で、分けて貰いました。蓮華は、筋が入っている部分に特徴的に出て来る様ですが、小さい砥石とは言え全体に分布しているのは少数派でしょうね。

筋・焼け・巣の痕跡など、難の部分は避けて研いだり、酷く当たらない様に加減しつつ研げば良いだけで。少なくとも、適応する刃物・部位などを適正に当てれば充分に活躍させられます。

 

 

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上画像は、嘗て砥石が大量に生産されていた頃の販売促進用のグッズでしょうか、幾つか見つかったとの事で、選ばせて頂きました。私が喫煙者なら、他の浅目の物を選んだ所ですが、小物入れ用にと大き目を。

 

 

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此方も、過去の息吹を伝える砥石。電動工具に取り付けて使われていたのでしょうか、大きな原石からの削り出しとは贅沢な感じがしますね。初見では、人造にも見えたり粒度も中砥レベルか思われましたが、天然でした。直径と厚さは、14cm×10cm。

 

 

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最後は、田中さんの所で製造している1000番の砥石をサンプルで一つ、購入してみました。予想よりも、やや厚手な製品で硬目な性質と相俟って、長持ちしそうです。

 

 

 

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その人造1000番ですが、均等に配分された密粗のバランスの為か滑走に優れる印象。食い付きは良いのに研ぎ感に必要以上の重さを感じさせない理由にも成って居そうですが、もう一つは砥粒の目が立って居ながら、砥面の構成要件により食い込みが深過ぎない点でしょうか。

 

 

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丸い砥石ですが、面直しをすると但馬砥と三河白の中間と言うよりは、かなり三河に近い研ぎ感で、中硬・中程度砥粒の巣板の一歩手前な感じです。硬さ的には、やや硬口で変形し難い物。

 

 

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やや軟口の馬路は、其処から繋ぐのに適役で、上手に傷を浅くしてくれます。

 

 

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蓮華巣板に繋げば、より細かい砥粒かつ平面維持力が上がるので、一気に仕上がりに違いが。既に、普通に使える状態とも言えます。

 

 

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中山の巣板ですが、硬口では無くとも充分な砥粒の細かさが活きて、かなり細かい仕上がりに。当然、刃先も普通以上に切れる状態に。

 

 

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水浅葱で最終仕上げです。今回、持ち帰った砥石達は偶然にも、炭素鋼の切り出しなら(荒研ぎは別として)段階を追って研ぎ進められるルートを構成するチームとして使えました。

何れも、鋼材や熱処理次第で、相性的に万全で無い刃物との接触では性能を活かし切れない場面も有るかも知れませんが、各砥石ともに守備範囲は相応に広そうです。

 

 

 

いつも御世話に成って居ますが田中さんには今後も、砥石の選別や研究(趣味要素多目)に御協力頂けましたら幸いです。

 

 

 

 

 

T様からの三本目、重延の牛刀

 

T様からの三本目は、刃渡りが尺一を超える牛刀でした。此方は、入手されるまでに何年も掛けて店舗に通ったそうで。希少な大物だけあって?手に入れるまで簡単には行かなかった様ですね。

研ぎに関する御希望としては、左右の切り刃を揃えて微ハマグリに。地金は曇り仕上げとし、刃とのコントラストを。顎(マチと言うべきでしょうか)と峰の磨き、と言ったところ。

 

研ぎ前の状態、全体画像ですが右の切り刃は、かなり厚みが抜かれており、ややベタ過ぎに近い印象。所々に研削痕と云うか大き目の引け傷も見られます。右側に限りませんが余り深い物は、削りシロに乏しい部分では取り切れない箇所も出て来そうだなと。

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刃部のアップ。刃先の状態は、厚み・角度共に充分、良さそうですね。

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顎の辺りは、荒目の研削痕が。

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峰は、見えにくいですが幾本かの筋が。ですが殆どは、三枚打ち故の鍛接線に由来する物でしょう。

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左側面。左の切り刃は、右に比べて肉厚と言っても良く、刃体の断面は(嘗て見られたと言う)両刃の鉈の半諸、つまり6:4とかの感じでした。従って左利きの方なら、より使い易かったかなと(笑)。

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磨きの作業からです。ダイヤモンド鑢と(此処で鑢が其れて、平に一本傷を増やしてしまいました。申し訳無いですが、手を付けない場所指定故、其のままに。)ダイヤモンドシートで粗削り。

後は耐水ペーパーの数種で目を細かくし、布ペーパーの6000番・8000番で仕上げました。

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峰の処理も、同様です。

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研磨力と、クッション性のバランスが良い人造の小割り1000番をメインに、峰から刃先へ向けて・刃元から切っ先へ向けてテーパーに。右は厚みに余裕が無いので、刃元の厚みが減らし辛いですし、初期からの傷の位置によっては余り浅くもし辛いですね。

左側面は逆に、右と釣り合う程度に減らしつつ、同形状に揃えて行きます。

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人造の小割り、手持ちで最も傷が浅く柔らかい1000番、次に3000番で、より傷を浅く。

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最後は天然の小割り、奥殿の天井巣板各種で傷を浅く・研ぎ目の均一化を狙って仕上げます。

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刃先の研ぎですが、傷の浅いキングハイパー硬軟で注意深く。地金もそうですが、刃金も少し傷が入り易く取れ難い質の様で。

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同じ1000番ですが、より傷の浅い砥石で人造での仕上げとします。

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天然に入り、小割りでも相性が良かった奥殿の天井巣板各種。

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最終仕上げは、中山の巣板各種で。画像の物は中硬ですが、もう少し硬い物まで実際は使いました。

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研ぎ上がりです。画像では見えにくいですが、初期の引け傷は或る程度までしか浅く成らなかった物も残存しています。

ただ、外観上の綺麗さを期待して下さる向きも有る物の、私自身は刃体の形状と刃先の処理で性能を引き出すのが本分ですので、美観的には御期待に応えられる範囲に限りが有ると心得ています。一応、納得して頂いては居ても、心苦しい気持ちはどうしても出て来ます。

今回は、やや柔らか目かつ、組織に密粗が有ると思しい軟鉄の幅広切り刃を巣板で仕上げる際も、万全とは行かず難しい相手でした。しかし、刃金も硬さより粘り優先ながら切れに優れる質でしたし、刃体の形状も抵抗が減る状態に整ったと思いますので、実用面では過不足無く御使用頂けるのではと。

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T様には、何時も御用命を頂きまして有り難う御座います。過去の名品や、今と成っては貴重な製品も含めて、様々な素材や仕立ての刃物と触れ合え、勉強させても頂ける事を感謝して居ります。

 

 

 

 

 

T様からの御依頼、二本目

 

一本目の切り出し、も作に続いて二本目は興光の作です。地金は同じく和鉄っぽい物ですが、作風が立体的かつ複雑な面や線で構成されて居るのは、包丁や篆刻刀などと共通だなと感じます。

 

研ぎ前の状態です。T様が御自身で、かなり研ぎ込んで来られただけあり、切り刃の状態は凹凸が少ないですね。しかし、切っ先周辺(峰から刃線への繋がり)や裏の押されている部分は、独特な造形と言いますか。押された部分が、刃先の真裏の刃元側まで未だ届いて居ないのは切れに影響しますし、切っ先の真裏は反って居ます。

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人造の320番から。

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続いて1000番。

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同じく1000番。

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更に1000番。

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駄目押しで1000番と3000番。1000番を多用しているのは、硬さ(平面維持)・研磨力・傷の深さ・研ぎ肌の違い(仕上がりの確認)を利用して、合目的的に研ぎ進める為です。

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天然は、伊予砥から。

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丸尾山の巣板の各種。

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奥殿の天井巣板各種。やっと裏押し部分が刃元迄、届きました。

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中山の巣板の各種。

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巣板中硬と天井巣板カラス硬口。

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水浅葱で鏡面に。

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地金部分を再度、天井巣板カラスで。此処で、一応の完了と考えていたのですが・・・T様から、も作の切っ先まで残さず追い込んで研いで欲しいとの御希望が。

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興光の刃先も、一部に極僅かな角度違いが残存していましたので、合わせて追い込みます。成の800・1000⇒研承の白い1000⇒伊予砥⇒丸尾山の巣板⇒中山の巣板。

も作、切っ先まで一律に平面に成りました。

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興光・・・此方は、より容易に切り刃は万全な状態に。

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しかし、裏の不均等な当たり方も、今一歩の追い込みをと中山の天井巣板中硬で。肝心の、裏の画像は撮り忘れです(笑)。

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最後は其々、水浅葱と天井巣板カラスで仕上げました。研ぎ上がりです。先ず、切っ先の裏が反って居る部分以外は整った興光。

反って居る部分に向かって、切っ先側へ行く程に裏を多く減らすと柄に対して可笑しな角度変化が付きますし、押されている部分全体を均等に(切っ先裏が当たる迄)削れば、刃金は減るし段差が出来ます。順当に研ぎ減らして行けば、何れは解消されるので其れを待つのが得策でしょう。

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刃先拡大画像、平面に成って居る様子。

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さて、も作の方です。御希望通り切っ先まで研ぎが届き、より平面度も向上した様です。

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興光の印象ですが、刃金は前回の(硬さと粘りが均等に近いバランスだった)も作に比べて、やや硬さが勝つ感じです。組織の細かさも奏効してか、若干ですが切れも上回っていた気がします。とは言え、どちらも性能は上級なのは間違い無いでしょう。

T様には御依頼の際、特に興光の方だったでしょうか、研ぎを仕損じて鎬が真っ直ぐで無く成ったので修正をと御希望でしたが、造形的に厚みや角度が一定でない場合は、止むを得ない事だと思います。今回の研ぎを直に確認頂ければ、伝わるかなと考えているのですが、三本揃って御返送できる時まで、もう少しの御待ちを御願い致します。

 

 

 

 

 

昨日の砥石館

 

一月最後の土曜日は、砥石館で鏡作りのイベントでした。砂型鋳造による亜鉛合金を磨いて行く体験が出来ます。此の先、当面の間は予定が無いそうですので、参加された方には貴重な一日に成ったと思います。

 

型に離型剤を塗布してから、砂を詰めて行きます。

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二つ合わせの表裏、二種類を組み合わせます。

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600度弱の炉で熔かした亜鉛合金を注ぎます。

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少しの時間で冷めるので、型から外します。

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余分なパーツ(湯の経路)を金鋸で切断後、各所のバリなどを取ります。その後は、表に成る面をベルトサンダーで均して研磨工程へ。

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ダイヤモンド砥石で、ベルトサンダーの研削痕が無くなるまで。

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人造の400番・1000番で傷を小さく。

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最後には、細かめの青砥や巣板で。

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台座上に敷いた布に、GC・WAなどの研磨剤を10段階ほど(120番・240番・600番・1000番・2000番・4000番、その他)磨き続け、完成です。

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何故か今回は全体的に、表の面や裏面の凹み以外にも、研ぎ出して行く内に傷が入り易くて消え難い素材と成ってしまいましたが、仕上がり此の度も、御参加下さった方には感謝致します。

 

 

 

 

 

北海道のT様からの御依頼

 

北海道のT様には今回、切り出し二本と大き目の牛刀を御送り頂きました。何れも名の通った品で、見た限りでも確りとした作りである事が伺えます。

 

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も作

 

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興光

 

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重延

 

 

 

切り出しから研いで行きますが、鎬筋は直線・切り刃は平面を目指す方向が御希望です。も作の下研ぎ、先ずは人造砥石の320番から。

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1000番を当てて、研ぎ目の違いから現状の確認。結構、凹凸は少なかったのですが、やはり切り刃の中央から砥石に当たって居ますね。

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裏押しは、どうしても凹凸が出るんでしょうか。真っ当な切れを出す為には、少なくとも刃先側の裏は安定して砥石に当たる様にしなければ成らないでしょう。

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下りの良さを期待して、久々に黒幕の1000番。まだまだ、砥石に当てっている中央部分が狭いですね。

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同じ系統の製造法でしたか、研磨力は強い物の少し、傷の浅い仕上がりを狙って成の1000番。中央部分が広がって来ました。

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当たっている部分の平面度を上げる事も鑑み、1000番と3000番で様子を見て見たり。

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中央部分はマズマズ、刃先の切っ先寄りが手強い状態です。

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後は、1000番と3000番で交互に確認しつつ研ぎ進め。

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天然に入って丁度、近くに出ていた伊予砥の中硬。

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丸尾山の巣板二種と大平の蓮華巣板。

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奥殿の天井巣板、二種。

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赤ピンの中硬。

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奥殿の敷巣板、茶色硬口と白色超硬口。

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中山の巣板、やや硬口。

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中山の巣板、やや軟口。

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中山の巣板、中硬。此方は弾力と研磨力に優れて居り、相性的にも仕上げ研ぎとしても良いレベルでした。

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刃金と地金のコントラストにも言及されていたかと思われるので、中硬の巣板と硬口の天井巣板カラスで地金を仕上げます。

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刃金の方は水浅葱で仕上げると、光り過ぎない範囲で適度な状態かと。此の後、改めて上の巣板二種で地金を狙って完了としました。

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研ぎ上がりです。刃先部分の切っ先寄り三分の一は、他の部分が仕上がった時点で完全に平面でツライチと迄は行かなかった為、仕上げ砥レベルながら刃先荷重の研ぎで均しました。

初期状態から、可能な限り研ぎ減りを少なくしようとしたのですが、用心し過ぎでしたね。下画像の三枚目、切っ先の最先端は極僅かに当たり切らない部分がの頃ましたが、問題は無いとの返答を頂きました。

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刃先拡大画像ですが、ほぼ平面と言って良さそうです。

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裏は、取り敢えず刃先に影響する部分の形状が整えられたので、切れに関しては問題無しです。

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今回の切り出しは、鋼材としては組織が細か目、硬さとしては適度な範囲で少し硬目だったと感じました。その硬さに見合う粘りも併せ持ち(欠け難い・研いでも返りが出過ぎない等)、切れだけでなくバランスが良い強度で仕上がって居たと思いました。

T様には、此の度も御依頼を頂きまして、有難う御座います。いつもながら、普段は関わる事が少ない名品・良品と触れ合える機会ともなり、感謝です。後の二本も順に進めて行きますので、もう暫くの御待ちを御願い致します。

 

 

 

 

 

研いだ包丁のビフォーアフターなどを載せていきます。