亀岡のH様から御預かりしたレジノイドのダイヤを試そうとしていたのですが、少し前から電話にて譲渡の御話しを頂いていた天然砥石も到着。同時に試してみる事にしました。
天然の方は、日本各地で天然砥石の採掘場所を訪ねて資料や情報を集めていらっしゃる、埼玉の高野さんからの御厚意による物です。Facebookでは現在、北海道から東北あたりの砥石に関する記事をアップされるなど、精力的に情報を発信していらっしゃいます。因みに以前、武州合砥なども頂戴した経緯が有ります。
夏屋砥です。岩手産でしたか、希少な砥石で私も小さいのを一つ持っていますが、砥石館の上野館長が仕入れる事が無ければ触る機会も無かったと思います。
亀岡(八木)の砥石ですが、南丹の方(南丹タクシーの辺りとか)で見つけたとの事です。
此方も亀岡で、八木だそうです。かなり硬い巣板で、先の戸前系と御近所とは見えません。
見た目からも予想される粗目の砥粒ですが、かなり柔らか目ですので傷は比較的浅い印象です。しかし、その柔らかさの御蔭で新たな砥粒が次々と出て来る為、研磨力は粒度以上の物に成っています。
比較対象として、寧ろ多数派かも知れない此方を。一見、天草の虎砥と見紛う外観ですが、私の手持ちは傷の浅さと若干の硬目を選んだので、砥面の緻密さ・滑走・平面維持のバランスが取れています。半面、砥粒続出・或いは極荒い砥粒による絶対的な研削力は持ち合わせていません。
上画像の夏屋砥と比べると其の通りの結果で、荒砥(傷浅目)と中砥(傷普通)な立ち位置と感じます。天然ならではの多様性故に、同じ産地の砥石による、段階的な研ぎが可能と言う訳です。
上画像の戸前層と思しき砥石ですが、此方は正に中硬の合砥と言った風情ですね。研磨力・切れ共に標準的で扱い易い物。夏屋の直後に使うと幾分、研ぎ目の大きさに差が有り過ぎるので、間に細か目の青砥や中硬以下の巣板を挟むべきですが、ダイヤなどで泥を出して置けば充分に傷消しも可能です。
此方は、石原さんの所で分けて貰った大平の硬目の白巣板を上回る位の硬さ。奥殿の硬口と遜色無い程に良く締まった巣板です。当然、上の戸前系と比べても段違いに刃金が光って来ますし、地金も明る目に仕上がります。滑走は適度で突っ張る事も無く、研磨力も硬さから考えれば妥当と思われます。
前段の天然砥石のテストで使用した、同じ切り出しの裏を使ってダイヤの二種を試してみます。元々の目的が、和包丁の裏を仕上げる際に活躍してくれそうだと考えての事だったからです。
上画像は、何時もの状態(若狭の浅葱仕上げ)を示しており、其処からダイヤに当てて行きます。
先ずは600番からです。かなり揃った研磨痕で砥粒も予想以上に細かい印象。しかし、研ぎ目の深さは結構な物ですね。当たりは幾分、弾力が有って使い易く便利そうです。平面の刃物の裏などに限定した使い方であれば、もう一段階の硬さが有っても良いかも知れませんが、此の硬さの万能性は捨て難いですね。
次いで、20000番です。
圧倒的に細かいのは当然ですし、光っても来るので仕上がりの綺麗さは別物。
しかし、そこはダイヤですから傷の深さは相応のレベルと成ります。20000番の方は、当たりが硬い印象ですがダイヤとしても仕上げに当たるので、硬口レベルでも相応しいと言えるでしょう。其れでも、一段階硬目と柔らか目も気に成ってしまうのは悪い癖でしょうか(笑)
正直言って、レジンのダイヤは敬遠して来た嫌いが有りました。砥石層が薄い・電着ダイヤでの面直しが非推奨・高価格、の三拍子を気にしての事です。しかし、今回のレジンは研磨の性能と並んで共擦り(滑走感・砥面の適度な硬さ)による砥面の管理が容易な点に満足し、更に価格的にもH様の御協力によって現実的だと感じる事が出来ました。
共擦りに関しては、砥石層の厚さ・硬さ・砥粒の粒度も任意に選択が可能だと言うのが重要で、そうで無ければ叶わなかったと思います。
貴重な資料と成る天然砥石を御送り下さった高野様には、之まで同様に御世話に成りました。今後も従来の研究を続けて頂き、その一端なりとも勉強させて頂ければと思います。有難う御座いました。
H様には、新たな砥石との出会いと先々の橋渡しを齎して頂き、感謝しております。仕事(余り流行っていませんが)の精度・速さに貢献してくれるのは確実だと思われます。過度に頼る事は自戒したいと考えていますが、奥の手は幾ら有っても良いですから助かりそうです。
あと、御希望の砥石を求めて、若狭の田村山の選別に御一緒させて頂きますが、私としても久し振りですので楽しみです。御自身に最適な浅葱を見付ける御手伝いをと考えていますが、自分用にも小振りなのを一つ二つ、見付けられると良いなと。
おまけの研ぎ直しの様子
中硬の巣板・合砥
千枚・八枚
中山の中硬緑板
奥殿の硬口茶色の巣板
若狭の田村山