今日の講習 柳などを御持参

 

昨日の昼過ぎに、偶々ですが私の出られるタイミングで電話が。講習の問い合わせで、明日か明後日に希望との事。何とか双方の時間や予定をを繰り合わせて本日の午後、受講して頂きました。

九州に在住ですが、大阪に里帰りでしたかM様は、柳二本と出刃を御持参で。切れの説明と実演をしていると、研ぐ前と後で刺身を切って見たいなと。此れ又、偶々ですが天然のハマチの柵が有ったので切って貰う所から始めました。

 

KIMG5042

研ぎ前の状態。左は、玄海さんの河豚引きだそうで。右の柳も、恐らく作者は同一ではと。此方は結構研ぎ減って居り、練習用にしているそうです。

右上に見切れているのは、私の18cm正夫で状態の悪いのを直し直し使っている物です。

 

Still_2019-08-24_143550_60.0X_N0001

刃先拡大画像。ほぼベタに糸引きですが、角度にブレが見られます。加えて、切り刃の厚みにも不均等が。河豚引きには切っ先カーブ手前にS字状と云うべきか、凸部が二か所と間に凹。柳はカーブ辺りに緩やかな盛り上がりと言った所。

 

KIMG5043

その所為も有って、私の正夫(短い上に鈍角)に比べて刃渡り・鋭利さで有利な筈の河豚引き・柳ともに切れが鈍く感じたと。加えて、切っ先周辺の切れに格段の違いが有り衝撃とも。

 

KIMG5049

上画像が、私の正夫。30年以上前に、初めて和包丁を買って見た物で、可成り安価でした。刃体の精度も甘く、焼きも甘いので常に修正研ぎが必要+鈍角仕上げで無いと刃先が捲れる始末。

但し現在は、適した研ぎ・砥石により、目の前で荒っぽく氷を削ってから紙を切って御覧に入れた通りの性能を発揮しています。

KIMG5050

 

M様にとっては客観的な情報や、既成概念から予見される結果と異なる体験に、悔しくも有り興味深くも有りとの事。一概に、薄く鋭利にしさえすれば切れる訳では無いとの事前説明に、納得の様子。

 

 

 

KIMG5044

私が研ぎの説明と凹凸の均し方を例示をした後、御自身でも切り刃を整える研ぎを実践。敢えて残存させた痕跡を仕上げて貰いました。

切り刃の後は、糸引きでの角度維持や砥石の使いこなしも。思っていたよりも安定していないと御理解して頂く為に、拡大画像も併用しながら練習。

徐々に刃先も揃って来ましたが、意図せぬ多段階の当たり方を払拭するのは今後の精進を期待ですね。以下の画像は、私の修正研ぎも含んだ刃先です。

Still_2019-08-24_155016_60.0X_N0002

 

Still_2019-08-24_155058_60.0X_N0003

 

Still_2019-08-24_155132_60.0X_N0004

 

 

Still_2019-08-24_162739_60.0X_N0005

河豚引きの方が、若干ですが鋼の状態が良い様子。紙を切るテストでも良好だった様に見受けました。

 

 

 

KIMG5045

研ぎ後です。切り刃の厚み調整と、刃先の糸引きの状態も先ず先ずに。

 

KIMG5046

折角なので、少し比較実験を。切れで河豚引きに劣る筈の、研ぎ減りして刃幅狭く切り刃鈍角の柳ですが、刃先の調整だけで河豚引きに迫る切れが出せるのか?刃元から切っ先へ向けて角度変化を加えます。元は、45度の一律でしたが可変に。更に、刃先から少し後方もなだらかに切り刃に繋ぎます。結果は、遜色ない切れ・・・と言うより刃の入り・抜けが良く手応えが軽いと。双方、講習前より格段に改善されているのは同様ですが。

しかし総合的な評価では、複雑な研ぎを駆使し最も多機能を盛り込んだ私の正夫が際立った居り、その値段分を鑑みるに(私のは数千円でしたから数十倍になりますね)大差が付く筈の性能差を、逆転させる事が砥石と研ぎで可能だと御理解頂けました。

 

KIMG5047

 

KIMG5048

 

M様には、自宅まで御越し下さり有難う御座いました。少し想像以上の内容で複雑な心境に成られたかも知れませんが、本来の仕立てや成り立ちでは御持ちの包丁の方が圧倒的なアドバンテージが有りますので、じっくりと安定した研ぎを心掛けて頂ければ納得の性能を見せてくれる筈です。

練習に当たっての御質問なども御待ちして居りますし、今後も御役に立てる様でしたら宜しくお願い致します。

 

 

 

 

 

「今日の講習 柳などを御持参」への5件のフィードバック

  1. 村上先生
    ご無沙汰致しております。
    かなり、経験を積まれた方でも、角度維持、安定感に問題があるとのご指摘が、この講習でも度々ありますが、初心者の私などは、経験不足が原因と反省し、精進に向かう訳ですが、なぜ経験のある方がその指摘を受けるのでしょうか。その原因は、ストロークのスピードや、角度が安定していないとの自覚がない?とかですか?
    私は、現在感覚的に角度維持が安定しているかも?と思える瞬間があるのですが、それは、感覚が甘い?!気がします。

    角度維持ができているか否かの自己判断方法がありますか?

    1. 小坊主様

      御変わり無く、様々に精進して居られる事と思います。

      角度維持は、或る程度で良いと思い定めれば(或いは特に考えもしなければ)可成り不十分でも気に成らない物です。厳密に言えば、和包丁で切り刃をベタ研ぎにしようとしても(此れは一概に良いとも限りませんが)困難な場合が多いです。

      出来ているかどうかの検証の例を挙げれば、せめて面積の狭い切り出し位は硬口の砥石で鏡面に出来なければ、更に広い包丁の切り刃の面を仕上げる等は思いもよらないでしょうね(曲面も加わりますし)。ましてや、刃先に別角度の研ぎを施したり洋包丁・ナイフとも成れば言わずもがな。和のベタ研ぎも、洋の刃先研ぎも要素の異なる難しさが有り、「簡単な方」など有りません。研ぐ面積や取るべき厚みのみ違う。

      角度を正確に、とのアドバイスで先ず第一は、角度がブレなくなるまで速度と力加減を抑える事です。安定しない内から速く強くなど無理ですので。極端に言えば、止まっていても揺れている様ではストロークして研ぐ事など叶わない。揺れなくなる迄、止まっている練習が必要な位でしょう。まあ、ブレ無く研げる様になると、ブレている研ぎ方を見て判別が付くのですが難しい所ですね。

      1. 村上先生

        いつもながら、丁寧なご指導を有難うございます。
        ご返答を頂いてから、自問自答をしておりました。

        包丁を研ぐ際の角度維持能力が、研ぎの品質の要である以上、蔑ろにできません。それができているかどうかの自己判断ができない内は、改善の余地ありという事だと感じます。

        さらには、様々な状況に応じて具体的な身体操作が変容してきますので、生涯かけて鍛錬していく覚悟が必要とも思います。また、身体操作のみならず極度の精神統一が必要であるようにも最近感じております。研ぎとは本当に奥深いものですね。

  2. むらかみ様
    先日はありがとうございました。
    趣味の魚釣りから魚をさばくようになり、刃物に興味を持ち、さらに砥石を使った研ぎに進み、天然砥石にまでとうとう手をだしてしまいました。独学で本やネットの動画等を参考にして研ぎをやってきました。研ぎも紙をスーッときれるようになり、一竿子忠綱の本焼きだからとか玄海さんと伯鳳さんの本焼きだから切れるもの、永切れするものだと思い込んでおりましたが、霞のしかも有名どころでもない柳に負けるとは夢にも思いませんでした。研ぎの重要性を痛感いたしました。また、今まで気づいていなかった箇所を指摘してもらい、確認もでき、今後の課題として精進したいと思います。また、講習お願いさせていただければと思います。次回は事前にメールさせていただきます。講習前は白一の水本焼の購入や中山などの有名で高級な天然砥石の購入など考えておりましたが、研ぎの重要性を知り、鍛冶屋さんによる硬さと粘りのバランスの印象、天然砥石の当たり外れや性能・値段の違いなど膨大なことを教えてもらい、頭の整理がまだ追いついていません。でも、日にちが経つにつれ、充実した時間で楽しい時間でした。

    1. M様

      この度は、当方が近場だったのも有るかもですが、研ぎの講習で選んで頂き有り難う御座いました。 

      有名どころの包丁・砥石を得られれば、其れで万全との認識は一流のプロとされる方々にも見受けられるので、致し方無いかと思われます。

      しかし、実用での切れの違いを感じ取り、説明後は切り刃の凹凸迄も把握出来ていたので、自ら研ぎで調整して包丁を仕立てて行ける素養の有る方だと思いました。先々にも又、当てにして頂ける様に努めます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>