研ぎ目に付いて(表面処理)

 

数日前の事ですが、砥石によって砥ぎ分けた状態(砥ぎ肌)は実際の所、どう違うのか?効果の差は?其処の所を見せて欲しい。との御話しを頂きました。

実は数年前に、奈良の中小企業センターで検査をして貰うべく、日野浦さんにサンプル用の刃金(白二だったかと)+地金(極軟鋼)を鍛接・焼き入れ・焼き戻し迄した物(角棒)を作って貰いました。其れを切断し、鋼鉄面・軟鉄面の其々に付いて各種砥石で研磨した後、純粋や食塩水が噴霧された雰囲気中での腐食テストをして貰う予定でした。

結局はサンプル四つ(キングの1000・8000・巣板・カミソリ砥でしたか)を渡して、目の細かさの比較までは終えましたが、錆に付いてのテストは有耶無耶に。惜しい事でした。今回は其の時の残りの試料を思い出したので、御手製の耐食性実験風を試みたいと思います。

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当時、タングステンカーバイトの弓鋸を使って数時間。手作業で十等分にしたのが無駄にならずに良かったです。

 

 

 

ただ、其れとは別に実際の刃物の状態、つまり水はけと云うか撥水性の違いも見たいとの事でしたので、手持ちの包丁で試してみます。丁度、近く砥石館での講習を御希望の方からの持参要望も頂いている司作三徳。これの研ぎ直しも兼ねて、先ずは其方からです。

 

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初期状態は、地金が千枚仕上げ・刃金は赤ピン仕上げです。

 

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水道の蛇口の下で流水を当てましたが、特に振り払わずとも大半が流れ去ります。

切っ先カーブの辺りから切っ先にかけて、蛇行した線上に細く残っているのは鍛接線に沿っています。恐らく刃・地共に抵抗が小さいので、水分が付着し易いのは其所しか無かったのでしょう。

 

 

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次に、軽く巣板(やや粗い~中庸)で仕上げを変えてみました。刃金は直ちに巣板仕上げとまでは戻りませんが、地金の変化は顕著です。

 

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平に付着している水滴に違いは有りませんが、切り刃の部分は殆ど撥水効果が有りません。時間経過と共に、部分的には水分が移動して行きますが、広範囲で水に塗(まみ)れています。

 

 

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で、順当に行けば次はキングデラックス辺りに成る筈ですが、生憎と小割りが無い物で黒幕の1000番で。流石に研削力が有りますね。しかし、研削力と其れに相応しい?深さの傷が入るのに、可成り光り気味に成っても居ます。此れは研磨剤が削る方と光る方、双方に役割が振り分けられているのでしょう。

 

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そして光っていない1000番クラスよりも水はけが良いのかと言えば、余り変わらない様子。厳密に言えば、多少は差が有るかも知れませんが。少なくとも、上の巣板仕上げよりも水分の付着が強い印象です。(巣板よりも全面に均等に溜まり易い)

 

 

 

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工程を逆に戻って仕上げ研ぎ完了。今回は、刃金部分は先まで硬口の八枚仕上げです。

 

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錆の痕跡も益々軽減され、講習での披露に向けて更に整って来た様です。此れを含めた手持ち包丁達の外観や切れ味が、参考に成りましたら幸いです。

 

 

 

講習後は、最初の画像に有りました耐蝕テスト用試料の再研磨と御手製試験を予定しています。

 

 

 

 

 

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