数か月前に御依頼頂いた、北海道のT様より再び和包丁二本が届きました。柳の方は一部の欠けを取り、刃と地の対比が際立つ仕上がりを御希望でした。
柳刃
研ぎ前、全体画像
欠けも大した事が無いので、研承1000番(白緑2種)からです。
3000番の白
3000番の緑
巣板で傷を減らして、更に小割りで(主に地金を)均し研ぎ。巣板から八枚、千枚と進みます。後者に成る程に錆・変色を抑え、汚れ落ちも速く食味の向上にも貢献してくれます。
千枚で仕上げ研ぎです。
最終は、此れで。
研ぎ上がり全体画像
刃部のアップ
刃先拡大画像
刃と地のコントラストを強調するなら、地金は巣板や八枚仕上げの方が良かったかも知れません。しかし地金の質が千枚向きでしたので、つい普段通りの仕上げにしてしまいました。御好みの仕様と、かけ離れていなければ良いのですが。
出刃の方は御任せだそうなので、調子を見ながら相性次第で。
出刃
研ぎ前、全体画像
研承の400番で形状の土台を。
1000番の緑で確認と正確な刃先を。刃元側の鎬下に、少し砥石に当たらない部分が現れます。(切り刃の地金の光沢部分)
1000番の白で更に精度を上げて
3000番の白まで掛けましたが、当たらない部分が未だ大きく
久々にキングハイパーを使いました。研承以外で使っているのは、殆ど此れ(標準と軟)くらいですね。
研承に戻って3000番の緑
巣板で傷を減らして
小割りで均し研ぎ。八枚の小割りは、砥粒の目が立っているのと滑らか二種ですが、前者との相性が良かったので其れで仕上げました。千枚よりも八枚が合う地金も、結構在るものです。
最終は此れで
研ぎ上がり全体画像
刃部のアップ
刃先拡大画像
今回は、両方とも青紙だったのですが硬さと粘りのバランスには違いが見られました。柳の方は少し硬さが控え目で、出刃は硬さと粘りが均等な印象です。
一般的には、柳は強引な使い方が少ないので硬い刃で永切れを。出刃は、其れに比しては荒く使う場面が有るので大きく欠けない硬さで。と成るでしょう。
しかし何れも、目的の使い方に照らして適切な刃先角度に砥ぎ上げれば問題無いと思いますし、その様に仕上げましたので御確認頂ければと思います。
北海道のT様、今回も研ぎの御依頼を頂きまして有難う御座いました。今後も、私で御役に立てる様でしたら宜しく御願い致します。本日、発送しましたので明後日には到着との事です。
村上様
早速、届いた柳刃で刺身を引いてみました。
鋭く入り込み、ストンとまな板に刃が到達します。
「ここまで切れるのか」と、今回も驚き、そして感動です。
少し柔らかめの刃とのことですが、手持ちの本焼きと用途により使い分けていきたいと思っております。
司作包丁も楽しみにしております。
今後とも宜しくお願いいたします。
北海道T
T様
問題無い様子にて、安心致しました。
柔らか目だと判明した時点で、刃先角度の調整とテストに入るのですが、数回繰り返せば妥当な切れと刃持ちに落ち着きます。今回も其れは同様ですので、恐らく通常使用では御気遣いの必要性は低いかと思われます。
司作の柳(鍛え地と雲竜メイン・柄も特注)は、御希望者数組が決まっておりますので、御辞退が有れば回せるかも知れません。そうで無ければ、第二陣分の一番に御用意したいと思います。
取り敢えず、遠からず到着すれば砥ぎ上げて記事に致しますので御参考までに御覧頂ければと思います。今後も宜しくお願い致します。