常連さんからの依頼で、特注の鉈を日野浦さんに相談した折り、此方から手配できる砥石の種類が増えた事を話しました。何でも、過去に興味を持って当たった時期が在ったものの、巡り合えなかった石があるとの事。今回、それに叶うかどうか分かりませんが、送ってくれる様に頼んで来ますと返事をしたので、昨日の日曜に選別に出掛けました。
幸い、元々協力関係であった事もあり、趣旨に賛同を得られて十本の立派な砥石(中山戸前・浅葱・巣板、菖蒲巣板)を発送して貰う手筈が整いました。後で考えると、かなり自分好みの色が強く出ているので、お気に召して頂けると良いのですが。
それとは別に、仕事用の石も見て来ました。この前、北海道へ御送りした三毛みたいな中山の巣板ですが、同系統が手持ちに二つでは最低限な感じですので後一つは追加したいなと。
これが案外、多くは無かったみたいで二、三の中から一つを選びました。少し前までは結構な数が揃っている印象だったのですが・・・大事に使わねばならないのかも知れません。
之までの三毛とは違い、縞模様というか八枚柄が見えますね。砥ぎ感と仕上がりは大体同じですが、ややガッチリしている様な。
地金はやや明るめ、刃金は薄曇り。研磨力強し。
白巣板よりはナマズ入りの敷内曇りでしょう。当たりは中庸な硬さですが、砥ぎ始めると泥も出てかなり変形も出易い傾向。しかし刃金は、曇り系の易変形性の巣板としては明るく仕上がります。
地金の砥ぎ目は少し荒いですが、それと対照的に刃金は細かく仕上がっています。これはこれで、本焼きに向いているとも言えそうです。巣が殆ど無いのも扱い易く手間要らず。
たまに砥石の御依頼を頂くと、千枚・八枚系統の御要望が割合多い印象です。それを受けて、選別に出向きますが必ずしも「一定期間・一定量に幾つ」と決まって並んでいる訳では有りません。
ですので、直近では千枚の質に近い(千枚と隣り合った層の境目)と思われる砥石で御納得頂いたりしました。しかし今回は運良く、それと思われる石を探し出せました。
砥面・側面の色柄・模様は正に千枚で、砥ぎ感や仕上がりも頷けるもの。
若干気になるのは、刃金・地金ともに仕上がりが、少しばかり浅葱に寄り過ぎやしないかと感じる点です。
そう言えば、裏の模様が東物に似ていなくも無い様な・・・やはり此れは東の浅葱ですね。まあ私は、使って性能に問題なければ良いタイプの人間ですので、良しとしましょう。次に千枚(系統)をと御依頼の際に、手頃なのが無ければ此れを御送りしても御不満は出ないのではと思われます。
下画像は、完全に水浅葱です。先の石よりも更に細かな砥粒を感じさせます。
小さ目ですが均一で、刃金・地金ともに明るく仕上げてくれます。やや硬口ですが、地も引き難い上、軽く砥げます。
文句なしの仕上がり。刃金は鏡面に近く、地金もそれに迫ります。
此方はおまけで。
手の平サイズですが、切り出しなどには充分ですね。中庸(やや軟)な硬さで砥ぎ易く、仕上がりも良いです。
仕上がりは、上の水浅葱に近いレベルです。小さくても侮れない性能を見せてくれて嬉しい限り。
今回の選別で、東物の範疇を含め、当面自分用の石は足りたかなと考えています。個人で保管可能な量もこの辺りかと・・・。勿論、御依頼に応じたり、自身の勉強の為にも砥石詣では続きます。
『砥石詣で』ワクワクする言葉です。
三毛巣板は、凄く研ぎ易く、自分の持っている鋼の包丁どれもよく下ろして、綺麗に仕上がり、よく切れる刃が付くので、凄いの一言です。
研いでてとても楽しい砥石です!
送って頂いた砥石を面付けして早速使いました。
あっと言う間に地金曇り、傷が消えました。
出刃包丁も柳もとっても綺麗になって感激です!
S様
上首尾であったとの事、何よりです。質的には、柔らかさが少ない代わりに、研磨力があり泥も出易いので、曲面よりは平面向きかと思っていた物です。
あの系統(三毛)の中山産巣板は、使い易いですよね。仕上がりも安定しており、しかも速い。しかし、今回のは縞模様のせいか白い部分が少ないせいか、少しだけ研ぎ感が異なります。
そんな個性が天然の面白さで、刃物との相性も微妙に変わるので興味が尽きません。無限の組み合わせを前に、興味津々➡一喜一憂➡戦々恐々のループだったりします。