販売用に在庫していた包丁ですが、立て続けに品切れになった種類が出ましたので御注意を御願い致します。ホームページをリアルタイムで弄れませんので、此方のブログ側で失礼して御知らせとさせて頂きます。
香港に御送りした司作の三徳に続いて、東北のS様(最近S様が重なっておりますが)に御送りする事になった中屋平治作イカ割きも売り切れになりました。
平治作は今の所、追加の仕入れの予定は有りませんが、司作は時間を頂ければ又、注文して追加が可能です。
最後のイカ割きは、研ぎ見本として巣板である程度形状を整え、カミソリ砥で刃金を仕上げてあった物です。今回、注文を頂き改めて巣板で均し、千枚で地金を、浅葱で刃金を研ぎました。最後の裏押しは鏡面青砥です。
先ずは巣板で全体を
浅葱で刃金を。共名倉は一本松の戸前浅葱
裏押しで鏡面青砥。共名倉は八枚
研ぎ上がり
東北のS様、週明けにも発送できると思いますので、少々お待ち頂きますよう御願い致します。
お世話になっております。
先日は平治作イカ割き包丁の件、メールにていろいろとアドバイスをいただき、ありがとうございます。到着後の手にした第一感は先日お伝えしましたが、昨日じっくりとさらに観察してみました。趣味で追っている対象魚のシーズンインがまもなくですので、実際の使用した感触は後日お伝えします。
昨日、具体的には、普段、研ぎの練習用としている5寸の万能包丁(刃金は白2です)とこのイカ割きを顕微鏡をつかって細部まで見比べてみました。もちろん、顕微鏡など使う以前に結果は予想できるのですが・・・。
気づいたこと、考えたことを書いてみます。
① 予想通り、刃先まで含めた刃金の仕上がり具合は段違いでした。特に刃先においては、最終仕上げの前段階でついたであろうと思われる研ぎ跡はほとんどありませんでした。
② 地金についても刃先と同様で、拡大してもその滑らかさの差が明らかでした。ちなみに、約250倍のLED照明付きの拡大鏡を使用していますが、光量を固定して比較しても、その反射量の違いが明らかで、より鏡面に近いことも確認できました。
③ 刃先のわずかなハマグリ状のかたちもはっきり分かりました。
いまの自分の研ぎではこんな刃は作れません。まだ新聞紙しか切っていませんが、切れ進む滑らかさにも、このような刃先の形状がかなり貢献しているのではと感じています。
刃先をいかに鋭くするかという研ぎではなく、地金も含めた切り刃
全体をいかに滑らかにするかが、今後自分が目指すべき研ぎなのではと考えさせられました。
今後とも、ご指導よろしくお願いいます。
東北のS様
メールでの御返事に続き、この度は詳細なレポートとも云える御感想を頂きまして、感謝致します。
前回はイカ割きの設えに由来する重量配分(サイズ的に良く在る、極端な手元重心では無い)と、焼き栗の柄の質感・滑り難い感触をお気に召して頂いたとの事でした。また切れに関しても問題無い様子にて安心致しました。
刃金の研ぎですが、仰る通りで刃先へ行くほど「緩い⇒きつい」ハマグリにしてあり、切っ先へ行くほど鋭角です。之が刃先の耐久力(頑丈さと長切れ)と切れの軽さに繋がると考えております。そして、私が研ぎの中段で「形状の均し研ぎ」をして切り刃、即ち面の連なりを整えるのは、切れの内容(切り抜けの軽さ・必要過重の軽減)を改善させるのみならず、過剰に食材へ負荷(圧力・摩擦)を掛けない為です。それは食材の劣化、ひいては食味や栄養素の損失に直結すると思うからです。
仕上げ段階で更に「化粧研ぎ」的に仕上げるのは、単なる見栄えの為では無く錆びや変色から少しでも(特に炭素鋼を)遠ざける為です。天然・人造の研磨剤を問わず粒度・番手が細かい程に水を弾き、汚れも付着し難く同時に落とし易いとの経験から、前述の様な仕様に落ち着いて居ます。ですので、切り刃全体を滑らかにする意識を持って研いで頂くのは大変有意義だと思います。
研ぎ目は、今回研ぎそのものの御依頼では無くどちらかと言えば購入者への初回サービス研ぎの意味合いが強かったのですが、先ず研ぎ見本的に前段で研ぎ済みであった点。そして、改めてお送りする前に研ぎ直した点。且つ又、ブログ掲載(確認画像付き作業完了メール)後に、何処か少し気になって千枚から研ぎ直した事に起因すると思われます。それらが複合して今回の過分な評価を頂戴するに至ったのでしょう。
この先、シーズンに入って実際に魚を相手にした時の印象なども、追って御知らせ頂けましたら幸いです。今後の研ぎの向上にも活かせればと存じます。同時に、各記事への御感想や質問なども、お気軽にお寄せ下さい。同じ様な疑問を御持ちの読者の方があれば、参考にして頂けるかも知れません故。御待ちしております。
すいません。
先ほどのコメント投稿で、名前がまちがってました。
「東北のS○○○」は間違いです。
正しくは「東北のS」です。
東北のS様
念の為に○○○と変換してみました。そして、前コメントの当該部分は修正しました。
東北のS様
先日はメールでの御報告、有難う御座いました。
使用目的や作業内容が良く理解できました。あの使い方ならば、「徐々に鈍角にしてある刃先ハマグリ」が役立ったと思われます。特に想定以上の、切っ先側でのハードユースにはアレでなければ厳しい所でしょう。
今後もシロギスとの付き合いの中で、永きに亘って中屋平治作のイカ割きが優秀な相棒であってくれる事を願います。
研ぎ屋むらかみ様
お世話になっております。
先日の実践報告の件、メールにて返信いただきありがとうございました。
包丁に興味を持ち始めてから、購入時の状態が決して一番良いわけではないと気づき始めていた時期だけに、初期の研ぎによりこんなにも使いやすい道具になるということを、このイカ割き包丁は教えてくれた気がします。
同時に、天然砥石を駆使したこだわった研ぎで、この状態まで仕上げることができるということを、見せつけられた気もします。
私は他人の使う包丁を研ぐ機会はほとんどありません。自分が使用する包丁を自分が困らない程度に研げればそれでいいという考え方もあるのでしょうが、現状の自分の研ぎに満足していません。
現在は研ぐことそのものが非常に楽しいという感覚もあるため、自分にできることをひとつずつ実践して試してみます。
先日からのメールのやりとりのなかで、小割りした砥石の使用など、仕上げ過程のヒントもいただきましたので、現在手持ちのものを利用して試してみます。
また、ご指導よろしくお願いします。
東北のS様
購入した時点が最良(≒切れなくなったら、新品を買い換える)みたいな認識は、一般的に広く見受けられる様です。余程例外的な物を除いて無難に纏めてあったりコストが掛けられていなかったりするのですが。
実際に使用して不備を感じ、其処に疑問を抱いたり超えようとする努力が出来る人は次の段階へ進める人なのでしょう。欲が無いのか刃物に対して高を括っているのか・・・本人が満足しているなら何も言う事は無いのかも知れませんが。
私はやはり、大事な道具(=相棒)ならば、なるべく良い状態で使ってやりたいし、良い性能を発揮して欲しいし、させてもやりたいと思います。其の一環としての小割りした砥石も有りますが・・・要らぬ心配とは思いますが、出来れば台の平面に刃の裏をペタリと付けて隙間をなくしてから御願い致します。隙間が有れば手を切り易く、手持ちのままでは尚更危険ですので。
もし、お手持ちの物で難しければ私のをサンプルで2~3、お送りしますよ。特に千枚系統の小割りに向いた質は稀少でしょうから。巣板・千枚ともに、普段使い用レベルで良ければ又遠からぬ内に。
更に二回戦目の御報告、有難う御座います。
両刃と片刃、砥ぎの違いに起因する使い勝手の差は、仰る通りかと思われます。ですので、和食の料理人は可成りの割合で両刃の洋包丁も、片刃寄りの砥ぎ方をしているのでしょう。
平たく言えば、左右均等の両刃砥ぎは二つ割り以外の「剥き」や小口切りに近い使い方ではメリットが少なく思います。魚の背骨に沿って身を剝すのも同様でしょう。
只、以前から感じていましたが、この「片刃風」にも二つあるのでは?先ず右側からだけ、ほぼ完全に砥ぎ上げて裏(左側)から糸引きを入れると云うもの。もう一つは、私は此方の方が万能と考えますが、左側からとても鋭角に(寝かせて)幅広に砥ぎ、右からは幅狭に鈍角に砥ぐ方法です。(以上、右利きの場合)
自分的には後者が好きですが、仕立てるのは多少面倒ですね。砥ぎ方で迷っている方にも参考になるかと、ブログの方に所感を述べさせて頂きました。
お世話になっております。
「片刃風」の二種類の研ぎ方、すごく参考になりました。
先ほど報告したナイフは、購入時の状態が、拡大して確認してもほぼ左右均等な研ぎでした。自分が小刃だけ付けたと書きましたが小刃というより糸刃に近いものを両側からです。
いずれにしても、現状の状態がほぼ左右均等なので、この片刃風の研ぎ方は機会をつくって実践してみます。
自分が使いやすい道具に近づけるという意味でも、まだまだ
できることがありそうなので、やっぱり研ぎは楽しいです。
東北のS様
先程、受け取りました。僅かばかりの私の御節介に、大変結構なギフトを有難う御座います。
却って、お気遣いさせてしまったのではと恐縮です。御送りした物が、少しでも見合う内容であってくれれば良いのですが。
砥石・砥ぎについて、何れの記事・内容によらず感想・御質問があれば御遠慮なく。私の可能な範囲で、説明・お答えしたく存じます。この場がお役に立ち、それが他の方に迄も有用であるならば、幸甚です。
お世話になっております。
先日、送ったものが無事に届いたようで安心しました。
ただ、どんなものがお好みなのか確認もせず、一方的に送ってしまい、申し訳ありません。
さて、丸尾山(砥取家)の砥石のことを少し教えてください。
先日お伝えしたとおり、昨年秋から黄色巣板にはじまり、これまで
複数個を持つまでになりました。
どちらかというと、興味本位で別の種類(層)のものをひとつずつ
増やしていったという具合なので、本当の意味で、砥石の持つ性能を引き出せてもいませんし、研ぎの面も含めてまだまだ自分が気づいていないことも多いと感じています。
現在は、研ぎの練習用の白2で、さまざまな仕上げ砥石を使ってその感触の違いを感じ取ったり、切り出しを研ぎながら、刃金や地金の反応を確かめたりといったことを並行して試しています。
天然砥石による仕上げ段階になった時、最初は白巣板もしくは
黄色巣板でスタートすることが多いです。
泥はさほど出ませんが、人造砥石で残した痕跡を小さくするのに
効率がいいのが白巣板で、多目の泥の中で時間をかけてじわじわ傷を消していくのが黄色巣板というとらえ方をしています。
そのあと、戸前色物か敷内曇りにつなぎ、最後は一本松の戸前いきむらさきで終えるというコースが多いです。
現在持っているものの中で、比較的硬めに感じ、平面が狂いにくいのではという理由で、敷内曇りと新大上と一本松のものは裏に使うことが多いです。
千枚や八枚は興味はあるのですが、まだ縁がないようで持っておりません。仕上げていただいたイカ割き包丁の切り刃の状態をみておりますと、チャンスがあればコッパでもいいので持ってみたいです。
砥取家さんの砥石についてはまだ使い方として試行錯誤していますが、ざっと書くとこんな感じです。
これまで何度も現地に足を運ばれ、数多くの砥石に触れてきた村上さんの見解をお聞きしたいです。
よろしくお願いいたします。
東北のS様
御送り頂いた方は楽しみにしつつ、少し前に親の御裾分けで持ち帰った奴をやっつけて居ります。その後でゆっくり頂きたいと思います。
石の方ですが、先ずは私が触って確認出来た傾向などから。(同じ丸尾山でも採掘の時期や場所が違えば硬さ・粒度も同一で無いので)
白巣板層にも「巣無し・蓮華・紅葉・墨流し・黒蓮華(巣無しは黒巣板)」、「敷内曇りも蓮華・紅葉・黒蓮華交じり」、あとは「内曇り」位は在りますし、一概には言えませんが、通常の所謂「白巣板」は先に挙げた中では最も大人しい性能です。そして、所謂「敷内曇り」はそれよりやや研磨力に優れます。其の上に各種銘柄が付与されると、よりその傾向が強まります。
しかし、研磨力が強い(仕上がりが速い)のと仕上がりが良い(微細で鋭利)とは必ずしも一致しません。ですから著しく欲張りが許されるならば、両立可能な石を探し求めるか、双方両極の性能に振り切った(いや振り切らずとも良いですが)石を使い分けるかになります。之は同一の層内で、或いは層を跨いででも踏まえておくべき共通項です。
卵色巣板と黄色巣板は、極論すれば白巣板と敷内曇りの関係です。卵が細かく黄色は研磨力。戸前(特に本戸前)と合いさも同じ。大上系統は何方にも振れ幅大きい(最近は荒いのは少なし)。千枚・八枚系統は、それら全ての特に細かい物と同等以上な場合が多いです。
以上の事から、理屈の上では前段➡後段に挙げた砥石に繋いで行くのが順当ですが、此処で砥ぎ手の技術・癖・好みや刃物との相性、砥石の個性(バラつき)により前後入れ替わりが起こる訳です。研磨力を期待した層なのに、硬くて変形し難く泥も出なくて砥粒も細かいとか…。
厄介なのは、単に研磨力と言っても大きく二種・・・柔らかくて次々に出て来る泥で「摩り下ろす」タイプと、硬い砥面に目の立った砥粒が少し疎らに凝集していて「削り落とす」タイプに分かれます。当然、後者は砥ぎ目が粗かったり傷が入り易いですね。
結論としまして、御手持ちの各砥石間で硬さ・細かさの序列を試した結果なら、層や銘柄に惑わされる必要は無く自由に並べ替えて頂きたく思います。特に、戸前色物や一本松がやや硬めで細かければ裏押し目的にも充分で、千枚系統の出番は絶対では無いかも知れません。但し、それ以上の性能を求めるならばカミソリ砥クラス(浅葱含む)の出番になるでしょう。
あ、じわじわ傷が消える黄色であれば、それは当たりですね。以前の一時期は、硬くて荒い(つまり削り落とす)のや、白紙等の刃物用純炭素鋼よりも、工具鋼に相性が合う質の物が多かったりしましたので。現在、御使いの砥石で組まれているルートは適切だと思いますよ。砥石に応じた砥ぎ分けが出来ていて、その結果を確認の上、分類・順位付けが行われているのですから。
それと、千枚が中々出なくても少し硬さ控えめな浅葱という手もありますし、先々には其方も視野に入れてみても良いかも知れません。一気に地金まで綺麗に一様に、と行くには難易度が高いでしょうけれど。
お世話になっております。
先日は、丸尾山の砥石について詳しく教えて頂きありがとうございます。各層の砥石の対比などが分かりやすく、すでに所有している砥石もこれまでとは別の視点でとらえるヒントとなりました。
先にお伝えしたように、毎月のネット販売にアップされたものを試し研ぎなしで購入してきたわけですから、採掘時期による違いなども実感することなくここまできました。
そういう意味では、同じ層でも、特性の異なる砥石があるのでしょうし、何度も現地で数々の砥石に触れてこられた村上さんの経験値が、すごくうらやましく感じます。
まだ実現はしていませんが、私も何とかチャンスを見つけて、数多くの砥石に触れてみたいという思いが一層強くなりました。
先日送っていただいた小割の巣板と千枚を、本日はじめて使用してみました。
昨日までは、何かと用事が重なり、天候もイマイチで狙いの釣り場にも行けませんでしたが、本日帰宅後、やっと少し時間が取れ、小割の砥石をまずは練習用の白紙で試しました。
結果、刃金も地金も研ぎムラがだいぶ解消され、(といっても村上さん仕上げのイカ割きには全然かないませんが・・・)とくに刃金については、これまでにない明るさになりました。
以前は、面直しで出た粉末状のものを溜めておき、ゴム片に付けたもので全体を磨くということも試していましたが、ヒラの部分など
捻りの少ない箇所には効果がありましたが、切り刃全体にはなかなか良い結果が出せていませんでした。
今回の指一本に張り付くような砥石が、こんなにも使いやすいことも実感でき、初めての実践のわりには嬉しい結果となりましたので、今後の研ぎにまた楽しみができました。
こうなってくると、やっぱり千枚も欲しいなあなどと考えてしまいますが、簡単には入手できないことは分かっていますので、縁のある日まで待とうと思います。
次回はいよいよイカ割き包丁でも実践してみようと計画しておりますので、また報告します。
東北のS様
そうですね、嘗ては私も同じ産地の同一銘柄が此程、硬さ・細かさ・泥の出方で差が有るとは考えていませんでした。ところが実際は有り得ない位の違いも体験しました。
しかし、そんな体験をする為だけに同じ産地・銘柄を指定して大量に試すのは困難だと思われ、購入するとなると費用も嵩みます。そもそも、完全な趣味や研究なら未だしも「手持ちの刃物が実用上切れる程度の研ぎをする」のが目的ならば行き過ぎになりそうですし。
まして私の様に、ある程度狙いが絞れており、その範囲での小さな差を求めるのと違い、手探り状態では全方位的且つ詳細に比較検討の必要性が出て来ます。とは言え、そのハードルを越えなければ在る一線を越えられないのも事実で、悩ましいですね。
そう言った面もあって、砥石の御依頼も受け付けて来た訳です。一定の条件や、お好みを把握しておけば近い質の砥石を探せる立場を生かせるのではと。初期に自分が苦労したのを忘れられないのと、刃物・研ぎ・砥石好きにシンパシーを覚えるからです。
小割りした物は、刀剣研磨で使われる物の略式です。本来は更に薄く磨って、裏から漆(膠も有り?)で貼り付けるのですが、そこまでするのは大仰かなと。しかし、刀剣の次段では粒状の数個を載せて指先で磨くので、同様の作業を必要とされる(面構成によっては、其れしか無い)局面では重なる部分もあるなと面白く感じます。工程を楽しみつつ、お役立て頂ければ幸いです。