此方も元同僚の知人からの頂き物(貰ってばっかりですね)で、何処かのメーカーが生産する際のプロトタイプのサンプルとの事でした。
この刃金は利器材とは言いながら、三層では無く、勿論普通の一枚物とも違います。V金10号と確かV金2号を積層にし、製材されている物です。当然刃先には10号と2号がランダムに現れる事となり、鋼材メーカーとしては、均一な素材とは違う効果を求めての事だそうです。耐摩耗性や剛性の違いから刃先に凹凸が出来、長切れに繋がるとか、より古代のダマスカス鋼に似た外観の追求とか。
しかし、このうっすら模様の出た外観を更にコントラストを付けるとしたら、やや自分の好みから外れるし(マイカルタハンドルとニッケルボルスターに対して)、切れ味や長切れも普通のV金10号無垢材と変わらないのも別段、問題無いと思えます。却って研ぎ易さに繋がっているとしたら、其方の方が好感が持てました(普通の無垢材よりもしっとりと研げる様な印象でした)。何よりこのシンプルなデザインと高性能な刃先性能により、手持ちの洋包丁の中では、総合で尤もお気に入りとなっています。刃金の切れと長切れ・ハンドルの衛生面やメンテナンスフリーに於いては、高村作が同等若しくはそれ以上かも知れません。只、使い慣れたデザインとそこから来る使用感というものは、調理中だけで無く、研ぎに於いても微妙に影響します(高村作は平としのぎに当たる面構成で、単純な楔形の断面構造では無い)。更にやや持ち重りする重量とそのバランスが、洋包丁を超えてアウトドアナイフを彷彿とさせ、作ったメーカーの個性をいやが上にも感じさせ、嘗てそれに惚れて入社した事もある自分の感性に訴えるのかも知れません。こうなると完全な個人の好みですね。
こういうタイプにはまだ遭遇したことはありません。珍しいですね。
少々珍しいとは言え、二・三年程前には関や武生の数社でまとまってシリーズになっていたような気もします。しかし、当初の目論見からは外れたんでしょうか。自分は背景や製作サイドのコンセプトはどうあれ、現物自体の性能に特に不満は無く、良い製品だと思うのですが。