前回は、小なりとは言え炭素鋼の和包丁でのテストでしたので、今回はステンレスペティでの人造1000番と8000番による更に微妙な「使い心地」程度の記述です。
シャプトンの1000で仕上げたVG10のペティで食材を切り、然る後にシャプトン2000からキングの8000で仕上げて同様の作業をこなし、使い勝手の感想だけ書いてみます。
1000番仕上げ
刃先
刃先拡大画像
使用食材
ベーコン切り落とし
ベーコン切れ端
生節
研ぎ分けて食材画像の残り半分を切りました。
8000番仕上げ
刃先
刃先拡大画像
スライスして、生節と合わせてマリネみたいに。
脂の付着で切れが落ちる。特に仕上げ砥まで掛けた場合は中砥までよりも切れ止み易い等と聞く事が有ります。自分の経験では、変な例ですが左久作の大小刀(大きいのか小さいのか?兎も角切り出しですね)で性能を見る為に、てっちゃん(シマチョウでしたか)その他のホルモンの下処理として余分な脂身を切り落とし乍ら切り分けたりしましたが、特に邪魔になりませんでした。因みに大谷山のカミソリ砥仕上げでした。流石に、数ミリ四方の脂肪塊が複数付着したら拭き取りながらですが、それはどんな刃物でも避けられないでしょう。
今回は、少ないですがベーコンをVG10のペティで切り比べましたがやはり、影響が出る程では無かった様です。しかし、1000のザラザラ感は明確な違いとして分かりました。その割りに切られた食材の外見は、加工食品と言う事も有ってか肉眼的に大きな差異は無さそうです。只、切り進んで脂身から赤身に移行した感触や、食材を切り終えて刃先が俎板に接触した感覚が掴み易いのは8000でした。
生節は、前回も少し気になった8000のキュキュッとへばりつく影響からか、薄切りでは身が割れる傾向が見られました。此には時間経過で温度が上昇したり、頭寄りと尻尾寄りの身質も関係している可能性も有りますが。まあ、実験の為の実験では無く調理のついでの試し切りレベルですので、飽くまで参考例ですね。
前回の重ね煮を水で伸ばして炒めたベーコンを投入。スープにしました。
冷凍保存していた餃子のタネを解凍、ジャガイモと上のスープも加えてカレーに。
近所の豆腐の旨い店から田舎豆腐を購入して一旦茹でてありました。それを切り分けてグリルで焼いて醤油の実で食べます。醤油の実は小鮎様からの頂き物ですが、これはかなり合うと思っています。
切り分けた切り落としベーコンは、軽く茹でて翌日のあっさり目のベーコンエッグにします。
過去・今回の総評としては、対象や条件次第では不確定要素が多く、仕上げ砥を使った方が全てに於いて勝るとは断定出来ない物の、場合に依っては中砥仕上げが有利かも知れない相当限定的な当該作業の可能性に配慮して、其方を選択すると言うのは、合理的な疑問が残るのでは無いでしょうか。
更に、味や香りについても同様に多くの場合で仕上げ砥石の使用による優位が認められます。 少なくとも、食材を綺麗に・小さく・薄く切る必要が有る場合、例えば今回の玉葱のスライスなどは仕上げ砥を使わない条件では、使用者に余分な負担が掛かったり時間を要したりしそうです。実際自分ではそうでした。
あと、二回のテストを通じて一つ考えたのは、天然に比べて人造は角度に依って滑りがちな理由として研ぎ目がハッキリ付きすぎではないかと言う事です。それに対して天然は砥粒が深い傷を付け難い上に、泥が間に入って複雑な動きをし、傷を薄める働きも有るので研ぎ目が一方向の明確な状態と違って多方向に浅く付いているのでは無いか。それで切り進める際も押し・引き含め、多様な方向に対応してくれると考えればある程度納得が行きます。
従って、料理で使う刃物としては基本的には仕上げ砥、出来れば天然の相性の良い物を使い、限られた特殊な場合は仕様を変更する。若しくは其れ用に別の刃物を用意するのが望ましい気がします。つまり生節を崩したくなければ、刃が薄くて幅も狭い包丁の方が圧倒的に有利な訳ですし。そこまで包丁を増やせないけれど対応したいならば研ぎで刃物の性格を変える事になるのでしょう。