追加でステンレスペティの調理雑感

 

前回は、小なりとは言え炭素鋼の和包丁でのテストでしたので、今回はステンレスペティでの人造1000番と8000番による更に微妙な「使い心地」程度の記述です。

シャプトンの1000で仕上げたVG10のペティで食材を切り、然る後にシャプトン2000からキングの8000で仕上げて同様の作業をこなし、使い勝手の感想だけ書いてみます。

 

 

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1000番仕上げ

 

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刃先

 

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刃先拡大画像

 

 

使用食材

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ベーコン切り落とし

 

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ベーコン切れ端

 

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生節

 

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研ぎ分けて食材画像の残り半分を切りました。

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8000番仕上げ

 

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刃先

 

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刃先拡大画像

 

 

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スライスして、生節と合わせてマリネみたいに。

 

 

脂の付着で切れが落ちる。特に仕上げ砥まで掛けた場合は中砥までよりも切れ止み易い等と聞く事が有ります。自分の経験では、変な例ですが左久作の大小刀(大きいのか小さいのか?兎も角切り出しですね)で性能を見る為に、てっちゃん(シマチョウでしたか)その他のホルモンの下処理として余分な脂身を切り落とし乍ら切り分けたりしましたが、特に邪魔になりませんでした。因みに大谷山のカミソリ砥仕上げでした。流石に、数ミリ四方の脂肪塊が複数付着したら拭き取りながらですが、それはどんな刃物でも避けられないでしょう。

今回は、少ないですがベーコンをVG10のペティで切り比べましたがやはり、影響が出る程では無かった様です。しかし、1000のザラザラ感は明確な違いとして分かりました。その割りに切られた食材の外見は、加工食品と言う事も有ってか肉眼的に大きな差異は無さそうです。只、切り進んで脂身から赤身に移行した感触や、食材を切り終えて刃先が俎板に接触した感覚が掴み易いのは8000でした。

生節は、前回も少し気になった8000のキュキュッとへばりつく影響からか、薄切りでは身が割れる傾向が見られました。此には時間経過で温度が上昇したり、頭寄りと尻尾寄りの身質も関係している可能性も有りますが。まあ、実験の為の実験では無く調理のついでの試し切りレベルですので、飽くまで参考例ですね。

 

 

 

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前回の重ね煮を水で伸ばして炒めたベーコンを投入。スープにしました。

 

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冷凍保存していた餃子のタネを解凍、ジャガイモと上のスープも加えてカレーに。

 

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近所の豆腐の旨い店から田舎豆腐を購入して一旦茹でてありました。それを切り分けてグリルで焼いて醤油の実で食べます。醤油の実は小鮎様からの頂き物ですが、これはかなり合うと思っています。

切り分けた切り落としベーコンは、軽く茹でて翌日のあっさり目のベーコンエッグにします。

 

 

過去・今回の総評としては、対象や条件次第では不確定要素が多く、仕上げ砥を使った方が全てに於いて勝るとは断定出来ない物の、場合に依っては中砥仕上げが有利かも知れない相当限定的な当該作業の可能性に配慮して、其方を選択すると言うのは、合理的な疑問が残るのでは無いでしょうか。

更に、味や香りについても同様に多くの場合で仕上げ砥石の使用による優位が認められます。 少なくとも、食材を綺麗に・小さく・薄く切る必要が有る場合、例えば今回の玉葱のスライスなどは仕上げ砥を使わない条件では、使用者に余分な負担が掛かったり時間を要したりしそうです。実際自分ではそうでした。

あと、二回のテストを通じて一つ考えたのは、天然に比べて人造は角度に依って滑りがちな理由として研ぎ目がハッキリ付きすぎではないかと言う事です。それに対して天然は砥粒が深い傷を付け難い上に、泥が間に入って複雑な動きをし、傷を薄める働きも有るので研ぎ目が一方向の明確な状態と違って多方向に浅く付いているのでは無いか。それで切り進める際も押し・引き含め、多様な方向に対応してくれると考えればある程度納得が行きます。

従って、料理で使う刃物としては基本的には仕上げ砥、出来れば天然の相性の良い物を使い、限られた特殊な場合は仕様を変更する。若しくは其れ用に別の刃物を用意するのが望ましい気がします。つまり生節を崩したくなければ、刃が薄くて幅も狭い包丁の方が圧倒的に有利な訳ですし。そこまで包丁を増やせないけれど対応したいならば研ぎで刃物の性格を変える事になるのでしょう。

 

 

砥石の違いによる調理への影響

 

時折、話題に上るネタの一つに、どんな砥石で仕上げた包丁が調理に向くのか。というのが有ります。自分としては、過去から半ば意識せずに仕上げ砥を用いてきたので、そんな事で何故意見が分かれるのか不思議に思っていた程です。しかし、厳然として中砥派が存在する様です。曰く、切れが長く持つし食材に対して滑らないので作業が速いとか。

そこで、改めて代表的な中砥であるキングデラックス1000と、天然仕上げ砥で研ぎ分けた包丁を俎上に上げ、比較してみる事にしました。まあ、半分は以前から気になっていた、無くした柳の鞘の黒檀ピンを買いに行ったついでに購入した皮むきの、本刃付け方々試してみよう。程度の思いつきです。

先ずは新品の状態から

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GC240番で切り刃を均します。

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お待ちかねのキングデラックス1000番です。刃先は普通の糸引(大きめ)。

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一応の仕上がり

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刃先の拡大画像。

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使用食材その1

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ストウブのオーバルで、重ね煮みたいな。この後、研ぎを変えて刻み、半分追加。

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使用食材その2

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ダッチオーブンで餃子を。

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使用後の状態

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刃先拡大画像

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研ぎ上がりから存在していたギザギザ(大きな研ぎ目)が残存していると言うよりは、拡大再生産されている様にも見えます。

 

 

巣板で刃先を整え、中山の黄色いので仕上げます。刃先は普通の糸引(大きめ)。

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刃先拡大画像

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同一の食材を、ほぼ同量刻んだ使用後の状態です。掛かりが鋭く、切り抜けは軽い。しかし、一定量使用後は徐々に刃先の摩耗を感じ出す。

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刃先拡大画像

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刃先最先端が少し摩耗して見えます。

 

此だけでは、天然と人造の違いも加味されるのでキングの8000番で研いだ刃先も少し比較します。(他にも、切り刃が整って来ている為に抵抗が減少している可能性も有るので。)下画像は、上画像の状態から糸引きのみ研ぎました。刃先は普通の糸引(大きめ)。

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刃先拡大画像

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使用後の刃先拡大画像

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天然仕上げに比べ、使用量は数分の1にも関わらず、捲れが目立ちます。

 

画像は有りませんが、同じく切り刃が最も整っているこの状態で、再度キングの1000番でも試しました。結果はやはり、整って来た切り刃の効果で走りの抵抗は減っている物の、掛かりの荒さと食材の切断時の摩擦は気になりました。しかし、この状態では切られた食材の表面の荒れは比較的穏やかで、切り刃自体の貢献度は予想以上とも言える物でした。

 

 

 

此方は、以前天王寺の一心寺向かいの刃物店で購入した同様の物。かなり切り刃の形状を含めて研ぎ進めて有ります。本来は野菜の皮を剥いたりが担当ですが、切れ良く小回りが利き、少量の食材なら此だけで調理を済ませる事もしばしば。

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下は、今回のサンプルになった包丁の最新の姿ですが、今後数回の研ぎを経て、上に近づいて行くでしょう。

 

 

 

ミニマムな包丁によるミニマムな実験でしたが、幾つか再確認出来た項目がありました。
① 仕上げ砥(天然・人造共に)は中砥に対して、初めに切れ込む際(掛かり)の鋭利さで優位。引き切り(走り)の間の抵抗が少なく、手応えが軽い。よって寧ろ作業は速くなる。

② 人造仕上げ砥は天然仕上げ砥に対して(少なくとも刃を当てる角度に依っては)滑る傾向があり、刃先の摩滅よりも捲れが出易い。

(後になって考えるに、基本的に人造砥石ではツルツルまで仕上げると滑り易い所を、研ぎ目が残っている場合は、其れが対象に掛かる角度で有る限りにおいては滑り難いだけかも知れません)

 

③ 刃先の仕上げが人造・天然の違いと同等以上に、特に走りに対しては切り刃の面構成(面の滑らかな繋がりと角度或いは厚みの効果的な変化)が重要。

(④ 人造中砥の長切れする感触は、大きなギザの先端が毀れても元々の(食材・俎板に)引っかかるザラ付きに変化を感じ難い、或いはギザが剥離する際に新たなギザを発生させるので以下同文と考えられるのではないか。)

 

こんな感想を得た実験でした。俎板にも依るのでしょうか、キンデラで良く切れる・刃持ちが良いとの意見を持つ方は、どんな研ぎ方・切り方をされているのか・・・分からないので如何ともし難いですが、余程上手く砥石や包丁を使い熟しているとか?逆に仕上げ砥が活かせていないとか?

ですが間違いなく、今後の人生で人造中砥仕上げを選んで調理に使う事は無さそうです。私の技術では天然仕上げ砥石でないと、自らが望む性能が出せない様です。

 

 

 

最後は余談になりますが、今回の包丁を買う際に刃物店で出た話題の一つに、ある共通の知人が研いだ包丁を、信用出来る親しい寿司店に試して貰いに行ったと言うのが有りました。それなら今度行く時には自分の包丁もと思い、たまに通っているその寿司店に、本日持参した柳を僅かですがテストして貰って来ました。

 

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結果は、使える。此だけ切れれば御の字だと言う事でした。自分のより切れるかも、とも。私が魚やそれ以外も含めて、テストをしつつ気付いた問題点には対策を施した現在の仕様は、余程ピーキーな要求でも無い限り問題が出ないのは分かっていました。

しかし敢えて頼んだのは此の柳が、手持ちの中では最も刃先までの厚さが残るきつめのハマグリだったからです。とても欠けやすいので、そんな仕立てになっては居ますが使用に於いて問題無しと判断した結論を、追認して貰うのが目的でした。

 

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つまり、此で問題無ければ他の包丁には心配が無くなります。そしてテストをしてくれる料理人は、現在は其れだけでは無いものの、元来は本焼きのベタ研ぎを好む、切れに拘る店主です。その人に、切れに不満は無いとの言葉を頂けた事は大きいです。しっかりと正確に角度が出ていれば、刃先まで極端に薄く厚みを抜く必要性は低い。

勿論、仕事の内容や好みに依っては一概に言えませんが角度の変化と切り刃の面構成により、上記の店主にも認められる切れは出せた訳です。事実、出刃なら此の刃付けで丁度なんだが。とも付け加えられましたので、刃持ちと切れの両立と言う意味から、「頑丈さと長切れを伴いながらも良い切れ味」との私の理想を図らずも体現してくれた、少々駄々っ子の柳には感謝でした。あと、今日も旨いネタで寿司を握って頂き、有難う御座いました。

 

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お隣の市から御依頼

 

隣接の市にお住まいのO様より、研ぎの御依頼を頂きました。たまたまですが、此方もダマスカス模様ですね。

余り研がれた形跡が無い状態ですが、かなり多数の刃毀れが見られます。

 

大小、二本の先ずは大きい方

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小さい方です

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研ぎ方は、最終仕上げの砥石以外は共通です。GC240番で欠けを取り、シャプトン1000番・2000番で大まかに刃の形を作ります。

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黒蓮華系の白巣板で更に形状を整えます。

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若狭の戸前で傷を消し、刃先を細かく均一に。

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中山の並砥で最終仕上げ。

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中山産の並砥・水浅葱でも試したのですが、小さい方は相性的により良かった若狭の戸前で仕上げました。

 

 

 

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それぞれ、研ぎ後の拡大画像では最も大きな欠けの痕跡の部分を写していますが、使用時に障る物では無いので此に留めました。

 

 

和包丁(平もですがどちらかと言えば切り刃)・洋包丁を問わず、製造時の刃付けの段階で刃元や切っ先周辺よりも中央部の厚みが目立つ仕上がりの物が散見されます。仮に刃付け前の金属板の状態で、テーパーになって居るならまだしも、そうで無ければ二重に問題になるでしょう。切り抜け(引き切り・所謂走り)で抵抗が余分に増えるからです。

今回の小さい方は、切っ先周辺にも肉取りが不十分で厚みが残っていました。ですので、いつもより峰側まで研ぎましたが通常、私は洋包丁の研ぎでは刃先の2.5ミリから3.5ミリの範囲程度を研ぎます。それは、以前にも記載した事がありますが極端な刃付けの変更に及ぶ広範な研ぎ下ろしは製品コンセプトから外れるだけで無く、研ぎ料金の高額化に繋がる為です。

もしも4ミリを超えて、5㎜・6㎜以上の範囲で研ぐなら和包丁の基準になって来ますので、刃物の設計上バランスがおかしかったり修理や研ぎ減りで刃幅が狭くなり、余りにも鈍角過ぎて用をなさない場合以外はお薦めしていません。

ではどのように対処しているのかと言えば、その2.5ミリ~3.5ミリの研ぎ幅の内、刃先側半分と峰側半分で目的別に研ぎ分けています。一般に洋包丁で小刃と呼ばれる刃先の段刃は、顎から切っ先まで一定の角度・幅で研がれるか、或いは切っ先に向かって徐々に鋭角に研がれるかの二択です。

しかし、私は前述の中央付近に厚みを残した製品への対処として小刃の峰側半分で、研ぐ量を変えています。つまり抵抗が増える程に厚い箇所は、その部分に対して元寄りに位置する箇所よりも厚みを抜きます。その上で刃先側半分は、刃先へ向かってより鈍角で且つ切っ先へ向かって徐々に鋭角にしています。二段階に分ける事で、刃先の効果的な角度変化の足を引っ張る、側面の厚み残りに対して緩衝帯の働きをさせる訳です。

以上で対象への切り込みと切り抜けが改善されますが、この対処で間に合わない様になれば、初めて広範な研ぎ下ろしを検討します。

 

 

O様、以上の様な研ぎを施して有りますが、お使いになって問題などありましたら御知らせ下さい。仕様を変更しての研ぎ直しにも対応させて頂きます。土曜の昼頃にはクロネコより御返送致します。この度は研ぎの御依頼、有難う御座いました。

 

 

カウリXの柳

 

北海道のS様から送られて来た、カウリXの柳刃包丁です。

 

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製造は、やはり服部なのでしょうか。私が居た頃のカウリダマスカスの柄(がら)付けに近い印象を受けます。

刃付けとしては、かなり教科書通りで上出来。刃体の捻れ・反りも殆ど見られません。裏の精度も抜群。使用者の刃先の研ぎも、やや角度の付け始めが先寄りかなと感じる程度。

 

 

 

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取り敢えず、裏押しの確認と表の精度を確かめつつ、人造中砥から始めます。返りは出易い物の、取れ易くもあるので甘めの焼き加減と共に研ぎ易い仕立てに成っています。

 

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巣板二種と千枚

 

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やや黒蓮華がかった白巣板

 

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敷内曇り

 

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千枚から水浅葱

 

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刃金の傷が消え難いので、千枚・水浅葱の前にシャプトンの2000番に戻った為、結構光っています。

 

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刃先の最終角度付近と裏押しは、完全に天然砥石仕上げです。刃金全体は水浅葱で撫でた程度。紙の束での試し切りでは、中央から切っ先手前までに小さな捲れが連続して出現。硬度と刃先の厚み次第では、カウリだからと無闇に耐摩耗性に優れる訳では無いと分かりました。

 

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刃先の手前には水浅葱で取り切れ無かった、2000番の研ぎ目が薄く残っています。

 

 

 

と、この状態で留めても良かったのですが、拡大画像の状態と試し切りでの捲れの発生が気になり次ぎの日、もう一度研ぎ直し。

中山の巣板と並砥も追加。後、若狭の戸前。

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中山の巣板から若狭の戸前では、手持ちの(甘焼きでない)カウリダマスカスが割合、傷消しが上手く行ったのですがもう一つ。

 

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刃先に水浅葱、裏押しには質の違う水浅葱。これで切れには問題無いのですが。

 

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思いついた並砥。これが良かった様です。思えば、両親の所に置いてあるカウリYのフィレナイフにも相性が良かったので、この系統で特に硬焼きでない物には合うのかも知れません。

 

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完全に天然仕上げなので、刃金は暗くは無いですが曇り仕上げ

 

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地金は、小割りと小さな薄片での千枚仕上げ。積層部分は確か、ニッケルと420J2が交互にだったと思います。ですので強度・柔軟性が均一で無く、その意味では地金の傷消しも簡単ではありませんね。部分的に落としに行くと歪になるので、切る為の形状が整ってしまってからの(刃先以外の)残り傷は、無理には取っていません。

 

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研ぎ目は最も均一に見えます。

 

 

現状、カウリXについては確立した仕上げ方が見つかっていないので、暫定的に此の様に仕上げてみました。ですので、特に見た目的には統一感が無い様な好みの問題の様な感じがしています。

製造段階でも、刃金と地金の耐摩耗性の差による減り方の違いで、境界付近で妙な段差が見受けられ、一面的な研ぎでは当たらない箇所も在ります。その為、傷が残り易かったりしますが地金部分は案外千枚と相性が良く、研ぎ易く仕上がりも良かったです。

ダマスカス模様を際立たせる為に施されていた黒染め(確か硝酸だか塩化第二鉄だったかでの腐食)ですが、私の好みと所有者の「食材を切る刃物に黒はどうなのか」という意見から平は軽く磨いておきました。しかし、一旦腐食してからなので薄く表面に凹凸が出ています。腐食無しの磨きは気づかない程に繊細で上品ですが、此方の方が見落とされる事は無さそうで、製品的には切り刃の天然仕上げと合いますね。

S様、こんな所ですが週明けにも御送りしますので、一度お試し下さい。仕様に於いては問題無いと思いますが、今回の仕上がりでも悪くは無いと感じて頂けましたら幸いです。

 

 

 

 

つい、研ぎ直してしまいました。

黄色と紫です。泥が出易く、斑が出難い筈でしたが、もう一つ。

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奥殿と東物(中山か菖蒲)の巣板で何とか。

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地金も、黒蓮華・敷き内・千枚で再度。

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ほんの少し、面の繋がりと研ぎ目の揃い方が改善された様です。

 

 

 

カウリXへの準備

 

以前からのメールの遣り取りの結果、北海道から送られて来る予定のカウリX製の包丁に備えて、相性の合いそうな砥石で予行演習をと。

之までも手持ちの中から(全部では無いですが)幾つも試して来ましたが、光り気味に仕上がるのは勿論、充分な切れを引き出せる石が中々見つけられませんでした。

そんな中、田村山の砥石は切れも見た目の仕上がりもまずまず。特に、面同士がかなり安定して当たる(ある程度の面積で)場合は巣板よりも明らかに明るい研ぎ上がり。

 

 

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二十二~二十三年前、最初に作ったカウリX製のナイフ。鋸・鑢・電動ドリル(+モルタル用ドリル)だけで何とか仕上げました。グリップは黒檀でピンはステンレス。シースも牛革の自作。

 

 

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積層では無く無垢材です。研ぎは、当時から使用していたGC240番とキングデラックス1000番・6000番・8000番+耐水ペーパーです。

 

 

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今回、試したのは此方の同時期二作目、積層利器材。芯材は当然、カウリXで焼き入れ後の硬度はロックウエルで67.3度です。他にも作りましたが其方は当時、父に贈ったので手元にありません。シースは、服部刃物でハネテてあったのを貰いました。因みに、これとカーショウの1030(フィレナイフみたいなの)で関時代の自炊は殆どを熟していました。

 

 

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先ずは地金には優しくない巣板で。

 

 

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拡大してみると結構均一に見えます。

 

 

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次にこれ。

 

 

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やや細かさと明るさが向上。

 

 

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拡大しても研ぎ目が細かくなっています。

 

 

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更に浅葱で向上を狙います。

 

 

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先程よりも、やや明るくなった様子。

 

 

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拡大画像でも同じ印象。見た目での違いは少しでも、切れについては格段の違いが有ります。現状、手持ちの天然仕上げ砥石では、田村山の浅葱が切れと見た目の仕上がりで一番かと思われます。切れのみならば、中山産浅葱も甲乙付け難いのですが、面が合っていないと更に傷が入り易く難しいですね。

若狭産の砥石は、ステンレスや特殊鋼に向くとの評価を見聞きし、又自分でも実感していましたがカウリにもかなりの処まで対応してくれ、有り難いです。今回のナイフはキツいハマグリでしたが、もう少し平面に近い刃物ならば、より綺麗な仕上がりを望めると思います。

 

 

と言う訳で、北海道のS様。カウリXの包丁は、手筈が整いましたら何時でも御送り下さい。どんな仕様になっているのか、又どう仕上がるのか純粋に興味があります。ですので、それについての研ぎ料金の御心配は無用です。興味が半分ですし、残り半分は本日到着しました本場の旬の食材で充分ですので。それでは、このあと料理して頂戴したいと思います。有難う御座いました。

 

 

 

府下からの研ぎの御依頼

 

大阪府下のY様より、研ぎを御依頼頂きました。包丁はミソノの炭素鋼です(刻印にはスウエーデン鋼とあります)。切れ味への拘りが感じられますね。

ある程度、錆が出ていますが新品状態から磨かずの使用であれば、かなり優秀なレベルだと思われます。

 

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刃先も酷い損耗は見られず、全く切れない状態ではありません。しかし、刃体の厚みが綺麗にテーパーになっている割りに、切り抜けがもう一つ。

 

 

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先ずは人造の1000番で、小さな刃毀れ(欠けと捲れ)を取りながら研ぐ範囲を少々広げ、緩いハマグリに。その後、耐水ペーパーの二段階(1000番・2000番)と研磨剤三段階で錆・汚れを落としておきます。

 

 

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白巣板(サラサラ下りる)で研ぎ目を消しながら、刃先の角度を切っ先に向けて徐々に鋭角に研いで行きます。

 

 

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敷内曇り(砥粒の目が立っていて細かい)で更に追い込み・・・

 

 

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千枚に繋ぎます。

 

 

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最終仕上げは浅葱で。左上のは共名倉に使用した中山の黄色いのです。

 

 

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鋼の包丁を御使用との事で、つい応援したくなり通常よりも磨きを入念に行いました。磨きその物の御依頼では無かったので完全ではありませんが(そもそも拙い手作業でもあります)。水を弾き、汚れを取り易くする事で錆や変色を遠ざけられるからです。又、それで切られた材料の味にも好影響を与えます。

今後も、使用後にクリームクレンザーを御使用になる事で、ほぼ同状態の維持が可能でしょう。(怪我防止の為に俎板等の上に包丁を安置して、キッチンペーパー・ティッシュ・布に付けて磨いて下さい)

 

確認画像では了承を頂けましたので、明日にも御返送致しますが、実際の御使用に於いても使い勝手が改善されている事を願っております。Y様、この度は研ぎの御依頼、並びにブログ掲載への御協力を頂き有難う御座いました。

 

 

いつもの常連様から

 

私のベスパやパソコンで御世話になっている常連様から、研ぎ依頼を受けました。まあ、パソコンを持ち込んでメンテナンスを御願いしたので、ついでにと言った感じですね。これら以外にも、アメリカ製のマスプロナイフも研いだりしつつでしたが・・・。

 

 

以前から研いでいた包丁、研ぎ前。

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確か青紙スーパーの三徳

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鋼(恐らく日立白紙に準じる刃物用炭素鋼)のペティ

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ステンレスの牛刀

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大半は同一行程にて、代表して三徳の画像を

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シャプトンの1000番で小さな欠けと厚みを取ります。

 

 

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巣板で傷を消しながら、刃先を鋭く。

 

 

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今回は、目の細かい合いさで更に鋭利に。

 

 

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浅葱で最終仕上げ。

 

 

 

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研ぎ上がり

 

 

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地金は、千枚仕上げです

 

 

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平は耐水ペーパーで、切り刃(地金部分)は小割りした巣板・千枚です。これは薄く製造されているので、切り刃の錆や傷などは人工の研磨剤ではなく、減りの少ない天然で落としていこうかと考えて居ます。あ、刃先は又、少しばかり気になって撮影後、研ぎ直しています。

 

 

 

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この手のステンレスとして、期待出来得る最大限の切れが得られたのは、砥石との相性の良さが際立った為でしょう。可笑しな話ですが、殆どのステンレスで性能を引き出しつつも、中級とそれ以下の物に、特に恩恵があります。具体的には切れ味と長切れです。柔いステンレスが採用されている包丁ほど、よりはっきりと改善された刃先を実感して貰えるのではと思います。

 

今回は二本が和包丁でしかも両刃でした。本来なら、(洋包丁基準より高い)和包丁基準の料金になる上に、片刃の二倍の料金になる両刃です。しかし、三徳は切り刃が狭い仕様で且つ形状が整って来ている為、片刃と同一料金(しかも最低ライン)。ペティは切り刃が広いものの、研ぐ部分が未だ刃先周辺に限定的で切り刃自体は磨きが主体である事から、此方も片刃と同一且つ最低ラインとなりました。

 

色々御世話になっており、研ぎの依頼も頂き有難う御座います。過去に御購入頂いた包丁・鉈の仲間入りするであろう特注の鉈は、いつもの様に数ヶ月~一年程かかるかも知れませんが、気長にお待ち頂ければと思います。この度も、有難う御座いました。

 

 

五月二十九日の砥石選別

 

常連さんからの依頼で、特注の鉈を日野浦さんに相談した折り、此方から手配できる砥石の種類が増えた事を話しました。何でも、過去に興味を持って当たった時期が在ったものの、巡り合えなかった石があるとの事。今回、それに叶うかどうか分かりませんが、送ってくれる様に頼んで来ますと返事をしたので、昨日の日曜に選別に出掛けました。

幸い、元々協力関係であった事もあり、趣旨に賛同を得られて十本の立派な砥石(中山戸前・浅葱・巣板、菖蒲巣板)を発送して貰う手筈が整いました。後で考えると、かなり自分好みの色が強く出ているので、お気に召して頂けると良いのですが。

 

 

それとは別に、仕事用の石も見て来ました。この前、北海道へ御送りした三毛みたいな中山の巣板ですが、同系統が手持ちに二つでは最低限な感じですので後一つは追加したいなと。

これが案外、多くは無かったみたいで二、三の中から一つを選びました。少し前までは結構な数が揃っている印象だったのですが・・・大事に使わねばならないのかも知れません。

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之までの三毛とは違い、縞模様というか八枚柄が見えますね。砥ぎ感と仕上がりは大体同じですが、ややガッチリしている様な。

 

 

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地金はやや明るめ、刃金は薄曇り。研磨力強し。

 

 

 

 

白巣板よりはナマズ入りの敷内曇りでしょう。当たりは中庸な硬さですが、砥ぎ始めると泥も出てかなり変形も出易い傾向。しかし刃金は、曇り系の易変形性の巣板としては明るく仕上がります。

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地金の砥ぎ目は少し荒いですが、それと対照的に刃金は細かく仕上がっています。これはこれで、本焼きに向いているとも言えそうです。巣が殆ど無いのも扱い易く手間要らず。

 

 

 

 

たまに砥石の御依頼を頂くと、千枚・八枚系統の御要望が割合多い印象です。それを受けて、選別に出向きますが必ずしも「一定期間・一定量に幾つ」と決まって並んでいる訳では有りません。

ですので、直近では千枚の質に近い(千枚と隣り合った層の境目)と思われる砥石で御納得頂いたりしました。しかし今回は運良く、それと思われる石を探し出せました。

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砥面・側面の色柄・模様は正に千枚で、砥ぎ感や仕上がりも頷けるもの。

 

 

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若干気になるのは、刃金・地金ともに仕上がりが、少しばかり浅葱に寄り過ぎやしないかと感じる点です。

 

 

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そう言えば、裏の模様が東物に似ていなくも無い様な・・・やはり此れは東の浅葱ですね。まあ私は、使って性能に問題なければ良いタイプの人間ですので、良しとしましょう。次に千枚(系統)をと御依頼の際に、手頃なのが無ければ此れを御送りしても御不満は出ないのではと思われます。

 

 

 

 

下画像は、完全に水浅葱です。先の石よりも更に細かな砥粒を感じさせます。

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小さ目ですが均一で、刃金・地金ともに明るく仕上げてくれます。やや硬口ですが、地も引き難い上、軽く砥げます。

 

 

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文句なしの仕上がり。刃金は鏡面に近く、地金もそれに迫ります。

 

 

 

 

此方はおまけで。

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手の平サイズですが、切り出しなどには充分ですね。中庸(やや軟)な硬さで砥ぎ易く、仕上がりも良いです。

 

 

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仕上がりは、上の水浅葱に近いレベルです。小さくても侮れない性能を見せてくれて嬉しい限り。

 

今回の選別で、東物の範疇を含め、当面自分用の石は足りたかなと考えています。個人で保管可能な量もこの辺りかと・・・。勿論、御依頼に応じたり、自身の勉強の為にも砥石詣では続きます。

 

 

売り切れの御知らせです

 

販売用に在庫していた包丁ですが、立て続けに品切れになった種類が出ましたので御注意を御願い致します。ホームページをリアルタイムで弄れませんので、此方のブログ側で失礼して御知らせとさせて頂きます。

香港に御送りした司作の三徳に続いて、東北のS様(最近S様が重なっておりますが)に御送りする事になった中屋平治作イカ割きも売り切れになりました。

平治作は今の所、追加の仕入れの予定は有りませんが、司作は時間を頂ければ又、注文して追加が可能です。

 

 

最後のイカ割きは、研ぎ見本として巣板である程度形状を整え、カミソリ砥で刃金を仕上げてあった物です。今回、注文を頂き改めて巣板で均し、千枚で地金を、浅葱で刃金を研ぎました。最後の裏押しは鏡面青砥です。

 

先ずは巣板で全体を

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浅葱で刃金を。共名倉は一本松の戸前浅葱

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裏押しで鏡面青砥。共名倉は八枚

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研ぎ上がり

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東北のS様、週明けにも発送できると思いますので、少々お待ち頂きますよう御願い致します。

 

 

 

香港からの御依頼

 

香港のS様から包丁購入の御依頼が有りました。その際、お任せでの研ぎを併せて申し込まれておりました。

新品への最初の研ぎでもあり、半分サービスの意味合いもある研ぎでしたが、鋭利過ぎる刃先は通常でもお好みで糸引きを入れて来ました。ですので、もう少し完成形に近付く様に仕上げて行きました。

 

新品状態。人造砥石ながら、かなり追い込んだ研ぎが施されています。

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刃部のアップ

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天然砥石にて研ぎを開始。先ずは巣板から。白巣板・敷き内曇り系統。

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巣板での研ぎあがり。曇り仕上げ。

 

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千枚での研ぎ

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刃金は半鏡面レベルと言うべきか、かなり明るく仕上がっています。地金も小割りした巣板から千枚で。

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浅葱での研ぎ

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更に明るく仕上がり、刃金は準鏡面に。地金も再度、千枚(小割り)で仕上げ研ぎ。

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刃部のアップ

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研ぎ上がり

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新品から余り研ぎ減らすのも気が引けるので、人造の研ぎ目は大まかに消す事に留め、刃金部分を刃先へ行くほど鈍角の極緩いハマグリで、強い刃先と軽い切れ味に仕上げました。

これで、切れを保ったまま頑丈さと長切れを両立し、錆びや変色にも人造砥石仕上げに比して耐性が付きました。食材を切っても食味が損なわれにくいでしょう。

 

 

S様には、前回画像を上げた砥石にも興味を持って頂いた様子にて、包丁と砥石の値段は勿論、この司作三徳包丁の仕上がりを見て御判断を頂きたいと思います。

この度は包丁・研ぎ・砥石の御依頼、有難う御座いました。

 

 

研いだ包丁のビフォーアフターなどを載せていきます。