市内からの御依頼、サイズ違いの洋包丁

 

大阪市内のO様から、三本の研ぎ依頼を頂きました。かなり包丁屋研ぎに拘りを御持ちなのかも知れません。同一銘柄で揃っている他、刃先周辺と刃先その物の研ぎに明確な方針を御見受けしました。

それだけに、届いた状態を踏襲するべきか悩むところも有りましたが・・・わざわざ御送り下さった事でも有りますし、今後の研ぎの参考にして頂くのも悪く無いかなと中庸を選びました。つまり、相当に薄く研がれている刃先周辺までは手を付けず、小刃の範囲だけで刃先へ行く程にキツクなる微細なハマグリ+切っ先へ向けて鋭角化を施しました。(厚みの出て来ているペティは除く)

 

 

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一部に少々の錆が有ったりしますが、(刃先周辺の角度と併せ)刃先の糸引きの幅と角度は鋭利さ重視でありつつも、(此の鋼材に見合った)耐久性も考慮されており見事です。

 

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一番、良い状態を維持していた中の牛刀の刃先。上記を証明しています。

 

 

以下に、研ぎ完了後にO様に宛てたメールの文章を一部、転載してみます。

簡単に到着時の状態などを御説明しますと、牛刀の大は刃先まで平滑で鋭利な研がれ方・糸引きの幅や角度も切れを重視。其の為に紙の束には効果的に切り込めましたが、捩った束には纏わり付かれて抜けが重かったです。

中は逆に、刃先の角度と刃先までの角度に少し差が有りました。其の為に、紙の束には手応えを感じつつも切り込め、捩った束には纏わり付かれる割合が少なかったです。

ペティに関しましては、厚みが増してきていたからでしょうか、刃先までの部分の処理に不足が有った様子。結果的に、紙の束や捩った束には苦戦する状態。
以上の内容から、其々の不足分を補う方向で研いで行きましたので、(もしも之までに研ぎ分けて居られたのならば)切れ心地に特徴が無くなったと感じられるかも知れません。しかし、私が必要と感じる性能は確保できたかと思われます。しかし、到着時の刃先角度は鋭利でありながら或る程度の永切れも満たしていて、良く考えられている刃先だったと感じました。
到着後に御使用の結果、問題など有りましたら御連絡下さい。

 

 

 

研いで行きますが、ペティ以外は厚みも無く欠けも微細なレベルでしたので、今回は人造の3000番から。

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ペティのみ、刃先までの数ミリ部分は厚みを取りつつ刃先へ向けて鋭角に。次に、最後の1mm程は刃先へ向かって鈍角に。

 

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次に、中硬の巣板で研磨痕を浅くしつつ、更に形状を整えます。

 

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最後は中山の戸前、緑板で仕上げました。

 

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大の牛刀は、刃先のみの研ぎです。しかし小刃の範囲内(2㎜未満)でペティに準拠した内容を盛り込みます。特に、切っ先寄りの数センチは抜けの重さへの対応の為、角度変化を兼ねて厚みの調整。

 

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牛刀の中は、大よりも若干ですが小刃を鋭角化。但しバランスを取る為に刃先の鈍角化は明確に。

しかし緑板では返りの出方が(大と比べて)強かったので、中山戸前の黄緑で。結果は返りも小さく緻密な刃先に。

 

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しかし、(大と比べて)切れが僅かに重かったので中山の合いさっぽい物で最終仕上げ。此れで大と中の差を埋められたかと。

 

 

 

研ぎ上がりです

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牛刀の大、刃先拡大画像

 

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牛刀の中、刃先拡大画像

 

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ペティの刃先拡大画像

 

 

 

O様には此の度、三本の包丁を御送り頂き有難う御座いました。御好みの切れ加減に成っていましたら幸いですが、御使用に於いて問題などが有りましたら調整し直したいと思いますので、御遠慮なく御知らせ下さい。今後も、私で御役に立てる場合は宜しくお願い致します。

 

 

 

 

 

北海道の常連様からの御依頼、三本目

 

T様からの包丁、三本目は司作の出刃、流水飛紋です。

御自身で軽く研いで見たものの、狙い通りの仕上がりに成らなかったとかでしたか・・・刃先の状態は殆ど問題無かったのですが(裏押しとの整合性は少し不足気味?)、切り刃の角度の最適化・厚みのテーパー状の変化は要改善でした。

 

 

研ぎ前の状態

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結構、良く纏っている様にも見えます。実際、刃先その物の切れ・刃先から数ミリの範囲での切れ込みは、マズマズ。

しかし切り刃は、切っ先から5cm・10cmの辺りに凸部が。又、初期刃付けからの傾向か、切り刃の角度自体が少し鈍角気味。加えて切っ先へ向けての角度・厚みのテーパーが不足。

其の辺りを改善しつつも、外観が大幅に変更に成らない様に仕上げて行きました。刃金部分近辺は、何時もの刃先へ向かって二次曲線的に鈍角になって行くハマグリ(切っ先へ向かって可変鋭角)です。

 

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裏押しは、もう少し追い込むと揃って来そう。

 

 

 

人造の400・1000の二種・3000番で均して行きます。

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人造の小割りで、微調整。此の作業は、後に何度も必要に成る工程でした。

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天然に移行し、中硬の巣板で。

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最終仕上げで、中山のコッパ二種を試します。結果、緑よりも黄色の方が相性的に優れて居り、万全の仕上がりに。

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研ぎ上がりです。

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研ぎ乍ら、何度も切れ加減をテストした甲斐があり?、切り刃の外観は初期と比べても著変無しに。複雑な計算を盛り込み、刃先の変更と合わせ、切れ込み・抜け共に性能的には大幅改善なのですが・・・(笑)。

 

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刃金部分では、何時も通りに刃先へ向かうに従って角度が急に(砥ぎ目の幅が狭く)成っていますね。

 

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拡大しても同様。刃元~切っ先まで、柳の50度➡40度➡30度に対して70度➡50度➡30度と成っていますので、角度変化が顕著に。

 

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裏も、切っ先周辺の数ミリ以外の部分は裏押しが整いました。

 

 

 

T様には、今回も大事な包丁達を御任せ下さり、有難う御座いました。仕上がりに関しては、メールでもOKを頂きましたので明日にも御返送の予定です。

いつも研ぎの御依頼、有難う御座います。今回は、奥殿天井巣板の小割り三種の内、二種を多用しましたが御自身での御手入れ用に、幾つかの小割りを同梱しておきますので、お役立て頂けましたら幸いです。

 

 

 

 

 

北海道の常連様からの御依頼、二本目

 

此れも、同一メーカー・同一鋼材の希少な牛刀という事に成ります。切れに関する御要望以外には、大きな傷まで目立たなくする事と、鍔・ハンドル周りも磨いて欲しいとの事で。

 

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先ずは、人造の400番辺りから刃先を中心に研いで行きます。次いで1000番・3000番へ。形状は整っている方ですが、若干は刃元・切っ先カーブよりも刃線中央に厚みは残存。

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角砥石に続いて、小割りの人造各種も用い刃先周辺の厚み・角度変化の調整。

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細かい人造の小割り・荒目の耐水ペーパー・布ペーパーで傷消しに重点を移して。

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番手を上げて、更に細かく。一旦、此の状態で様子を見るも物足りず。T様からは、鏡面ほどでは無くてヘアライン程度でも可、との事でしたが・・・。

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やはり予想よりも均一さが今一かなと。

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再度、(既に数回は、やり直して居たのですが)刃先寄りの傷消しと側面の傷の軽減を狙います。

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T様からはヘアラインと聞いていたのですが、此処からだとサテンフィニッシュに成るなと考えつつ御確認頂いた所、此の儘で良いと。最後の仕上げとして、一日前に高雄から持ち帰った奥殿の巣板で砥ぎ上げました。

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刃先の拡大では、柳よりも若干ですが(牛刀としては)鋭さを追求してみたのが観察できるかも知れません。まあ、此方は両刃なので片刃より元から有利では有りますが、熱処理の関係でしょうか確りしている感触でしたので。

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T様には、御依頼初期の仕様とは変更になってしまったり、研磨痕を正確にヘアラインにも仕切れず、ミラーフィニッシュにも仕切れない、どっちつかずにも関わらずOKを頂きまして有難う御座います。

念の為、軽い負荷から試して頂きたいですが、恐らくは通常使用に於いて不安は少ないと考えて居ります。次の出刃は、かなり順調に作業を進められると思いますので、今回最後の御待ちを御願い致します。

 

 

 

 

 

北海道の常連様からの御依頼、一本目

 

北海道には御二方が御贔屓にして下さっていますが、その一方のT様は可成り昔からの銘品、名人の作などに造詣が深いです。今回も、今は存在しない有名なメーカーから出された凝った物、過去から既に希少と成っていた二本を含む三本を送って頂きました。

しかしマニアックな刃物が届くと毎回思うのですが、不器用な上に砥石と最低限レベルの道具・工具しか使わない流儀の私に扱わせて大丈夫なのか・・・もっと多彩な機材を使いこなして如才なく仕上げる人間も居るのでは・・・。そんな気持ちを押し殺し?(以前にメールで尋ねると、様々勘案した結果、御前で良いとの返答だった様なので)今回も戦々恐々、進めて行きました。

 

到着時

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刃線を接地させると、裏押し部分が揃って当たりますが峰側の先寄りが浮きます。軽く修正しましたが、余り刃幅の無い包丁で追い込むと刃先に乱れが移動し易いので、程々に。

 

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研いで行きますが、見た目よりも切り刃は均一で無い部分が見られます。従って人造の400番から。但し、薄目の刃体ですので加減しつつです。

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軽く400を当てた効果を見る為、1000番を。刃元寄りの半分で、凹凸が目立ちます。

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傷の浅い1000番で、切っ先寄りの半分を進めてみます。割合、揃って来ましたが少し、中央からカーブまでの厚みが余分な印象。

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傷は浅いが研磨力の有る1000番で、先寄りは厚み取り。元寄りは形状の均し研ぎ。

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それでも、銘の下二文字の辺りの初期の研削痕が残存。刃先中心に全体的な均整が取れて来ましたので、此れ以上は他の部分を余計に減らさねば成りません。其れは避けて、研ぎ目を整える方向に。

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平の他に、マチの磨きも御希望で。運よく?研いでいる最中に柄の固定が緩い事が発覚したので取り去りました。

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マチの磨きはダイヤ鑢とペーパー、布ペーパーで。平も其れに準じますが、傷が入り易く取れ難い性格の様です。

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当てる素材や方向、力加減を工夫して仕上がりの違いを確認。此れが今回、一番苦労した部分でした。

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中硬の巣板、数種で切り刃と裏押しを。

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中山の中硬。

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切り刃の均し研ぎ(奥殿の天井巣板の小割り)と、平の磨きを継続。

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平の磨きで感じた繊細さを、刃先の仕上げでも感じます。特に、切っ先カーブ手前の範囲で返りが大きいと言うより、小さな欠けが出易く刃先に乱れが。

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少し、当たりの柔らかい巣板でも改善は僅か。

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硬目・細か目で有りながら、当たりがソフトな若狭の各種で。

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何とか仕上がりました。

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研ぎ後、全体。

 

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刃部アップ。

 

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刃先拡大画像、先寄り。角度30度強。

 

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刃先拡大画像、元寄り。角度45度強。

 

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欠けが出易かった部分。範囲・程度は大幅に改善。今回の組織は敏感なので、何時もより一定の角度で確り当てた事により小刃っぽくなっています。

 

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裏の状態。此方も、相性と作業性を求めて各種砥石を当てましたが、幅の狭い砥石の時に峰側の切っ先手前の裏梳き部に接触。裏の磨きは依頼に含まれなかったので、消すに消せなく申し訳無かったのですが。御送りした画像を確認したT様からのメールで、必要な作業で付いた自然な傷は美しいと・・・精進在るのみですね。

 

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マチの磨きが、最も上手く行っている気がしないでも無いのが複雑ですが・・・此れもT様からの御依頼で鍛えられた様な物ですね(笑)。柄が外せたのも大きかったのですが。

 

 

T様には後、二本の仕上がりまで御待ちを頂きますが、宜しく御願い致します。次の牛刀は同じシリーズらしき牛刀とか。再び強敵の予感ですが、コツコツ進めて行きたいと思います。最後の、司作の出刃はスムーズに終えられる予定では居ります・・・。

 

 

 

 

 

京都の常連様からの御依頼、二本目

 

京都の常連様からの二本目です。此方も本焼きですね。刃渡り迄、尺一前後と御揃いで。

 

研ぎ前の状態。幾つかの小さな欠けと、其れより若干ですが大きな欠けが一つ。あと、切っ先の損傷が目に付きます。切り刃全体の厚みのテーパーも弱いと言うか、不均一な部分が混在。

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やはり最初は、人造の400番から。その後、1000番⇒3000番で。

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天然に移行し、中硬の巣板⇒若狭のカラス。

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一本目と比べて此方の包丁は、硬さや組織の細かさが幾分ですが上回る印象です。其の為、奥殿の蓮華入りの白との相性は同様ながら、研ぎ肌の仕上がりと刃先の永切れも十分と成りましたので最終としました。

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研ぎ上がりです。

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裏は、やはり裏押し時の平面度の不足でしょう、其の傾向が強かった切っ先寄りの三分の一は、僅かに角度を起こして合わせて有ります。此方も、研ぎ進む内に表裏から揃って来るのを期待する所です。

 

 

 

H様には、此の度も研ぎの御依頼を頂き、感謝致します。先日に見せて頂いたネタの切り付け・味わわせて頂いた、熟成した魚の数々は大変勉強に成りました。今回の包丁達も、素晴らしい御仕事に貢献できる研ぎに成っている事を願って居ります。

御返送は、御希望に合わせて発送致しますので、宜しく御願い致します。既に画像で御確認頂いておりますが、もう少々手元に置く事に成るので、表面的にですが軽く手直しをしてしまうかも知れません(笑)。見ていると、もう少し此処が気に成るかな?と言う部分が出て来たり。少しでも良くしたいとの思いが消し切れませず・・・終わりが決められないのも、困り物ですね。

 

 

 

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殆ど自己満足のレベルですが、発送前に少々の研ぎ直し。複雑な面の連続性が、より滑らかに成ったと思って居ます。明日の到着時、喜んで頂けると良いのですが。

 

 

 

 

 

研ぎの合間に

 

京都からの二本目を研ぐ前に又、亀岡へ行っていました。身体の調整の方でも依頼を受けて居り、体調や日程(複数人なので)を見て連絡が来ます。

前回に伺った時はIHに惨敗を喫したので、今回は現場では最低限で済むように仕込みを終えて翌日に向かいます。メインと成るのは、牛筋(スネ肉含む)のシチューとテールのスープです。遠いですが品揃えの良いスーパーと、近所の焼き肉店に併設の精肉店に買い物へ。

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昔は、国産・黒毛和牛であっても筋なら安かったんですが、驚くほどに高くなっていますね。其のままでは食べられない位なのに、高級な部位に近いとは。

 

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焼き肉店がリニューアルしてからは通っていなかったんですが(素焼きの醤油ダレと冷麺の味が変わった気がして)、買ってみると出て来た肉類は程度も良く価格も適正だと感じました。

 

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筋の方は、炒めてから水で下茹で後、煮込んで行きます。

 

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スネは、炒めながら野菜も投入。時間差で煮込みへ。

 

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圧力鍋なのに、普通の鍋として使うと言う暴挙に出たのは、どうせ終盤は煮詰める作業が有るので。

 

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しかし最後は圧力を掛けて殺菌し、冷ましてから冷蔵庫へ。其の儘、安全に運ぶ事が出来るので便利では有ります。

 

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テールの方は、脂身を削ってから粉をはたき、塩胡椒して炒めてフランベ。下茹でする段階まで終え、冷蔵して翌日に備えます。

当日、現地では玉葱のみじん切りと共に煮込んで仕上げに絹サヤ(普段はグリンピースあたり)を加えました。あと、追加で今回はきちんとジャコとしし唐の炊いたんを作れました。どうしても自宅で作る通りには行きませんが、前回よりはマシだったかと思います。

次回はてっさと、鍋でもしてみますか・・・どんどん無難な方向に逃げている気もしますが。其の上、食材費で出て行く分も増加傾向にあるのが若干、気掛かりで。まあ、其処んちの子が喜んでいれば良いとしましょう。

 

 

 

他には、司作の地金が変更になったので其の対応を考えたり。以前に使われていた地金には、相性の合う千枚が余る程に在ったのですが・・・。

現行の地金に合う小割りは当座、困らないのですが予備として作って置いた分量でしか無い為、早晩不足が出るのは目に見えています。

下画像が其れで、千枚・八枚系統の一つ。白いのは、鹿革に貼り付けた物です。

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同質で残っている塊は此れのみ。他のは原石状態では無く、整形されています。

 

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研いで見れば、八枚と言うより千枚でしょうね。少し先に、小割りにして補充して置く予定です。

 

 

此方は、見るからに八枚。量も多目で余裕が有ります。

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八枚の原石状態は此れだけですが、大き目で結構使い易いです。用が有るのは上の石なので今回は、小割りにするのは見送ろうかと。

 

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この小さい二つ位は、小割りの足しにしておきます。

 

 

 

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試し研ぎ兼雑用に使用中ですが・・・やはり切り出しも、硬くて細かい砥石で仕上げた方が永切れするので、奥殿の浅葱(超硬)で研ぎ直しておきます。

 

 

 

 

 

京都の常連様からの御依頼、一本目

 

以前、二度ほど研ぎの御依頼を頂いた折りに、店舗の方へ伺いたいと希望していた鮨店に行く事が出来ました。今回は、司作の柳の納品に伴っての機会と成りました。

 

下画像の二本の御届け。飛紋と雲竜の地金ですが、現状ではノーマルの鍛え地自体、利器材を使わず製作出来るのは数人に限られる様です。

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出て来た料理の一部です。断らずに載せてしまい良く無いかも知れませんが・・・普段、接する機会が無いレベルでしたので、ついつい。勿論、味に不満の有ろう筈も無く・・・感服しました。

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入れ替わりに、此方を受け取りました。本焼きの二本・・・次の研ぎの御依頼と言う訳ですが、分不相応な贅沢をしてしまった直後ですので、有難い限り(笑)。

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先ずは此方から。切っ先が少々、傷んでいる他は鎬筋周辺の揺れと、切っ先カーブ辺りの厚みの残存・小さな欠け程度です。

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人造砥石から研いで行きますが、400番で欠けを取りつつ全体を均します。

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次いで、1000番で形状を大まかに。

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3000番で細部まで揃えます。

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天然で傷消し。中硬の巣板と若狭の巣板(軟口)です。

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中山の三毛みたいな奴で更に傷消し。防錆と食味に貢献します。

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奥殿の巣板(硬口)で最終仕上げ。特に、刃先と裏押しに。

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やや柔らか目の仕立ての包丁ですので、永切れを狙って更に中山の浅葱も当てて置きます。

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研ぎ上がりです。

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全体画像

 

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刃部アップ

 

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刃先拡大画像

 

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裏です。従来からの影響で裏押しが、やはり平面に成り切れていなかったので切っ先寄りの三分の一、やや起こして砥石に当てて有ります。

先々には、刃が研ぎ減りするに連れて平面が整って行く筈ですので、表裏から正確に研ぎ進めて行かれる事を期待したいですね。

 

 

 

京都のH様には、今回の研ぎ依頼を含めて御利用を頂き、有難う御座います。其の上更に、司作柳の追加まで発注下さり感謝致します。但し此方は、御存じの様に直ぐさまとは行きませんので、少々の御待ちを頂きます様に御願い致します。

あと、一両日中に今回の二本目が研ぎ上がりましたらメールにて御連絡を致しますので、研ぎ上がり画像で問題が無いか御判断頂きたいと思います。宜しくお願い致します。

 

 

 

 

 

博物館会議に御来場で

 

京都で行なわれた博物館会議に、砥石館もブースを出していたのですが其の際、御来訪を頂いた方の中から先日、研ぎの御依頼を頂きました。

近所と言っても良い距離から御送り下さったI様ですが、左利き・右利き双方の御二人で使用中との事。なるべく、偏りが無い方向で仕上げようと考えて砥ぎました。

 

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研ぎ前の状態。炭素鋼の刃金を、ステンレス地金で挟んだ三層利器材の三徳ですね。炭素鋼の部分(刃先や峰・マチの断面の中央)に錆が見られます。

 

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刃先の欠けや摩耗は、酷いと言う程では有りませんが刃線は白く見えています。

 

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刃先だけの研ぎで済むと思っていたのですが、平や切り刃を軽く磨くと、切っ先付近の切り刃(地金部分)に厚みが残っているのが気に成りました。人造砥石で研ぐ前に、人造の小割りで大まかにですが均し研ぎ。

其の後は、400番⇒1000番⇒3000番と上げて行きます。小割りの終了段階で安心してしまい、画像は撮り忘れです。

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天然に移行し、中硬の巣板⇒中山の合いさっぽい物で仕上げ⇒奥殿の天井巣板超硬で最終仕上げとしました。

 

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人造で研いでいる段階では鋼の質も結構、硬さを感じていたのですが、仕上げに掛かると若干の粘りを感じました。研磨力の強い砥石・圧力を掛ける研ぎ方では、返りの処置が厄介な傾向。ですので、今回は掛かりを犠牲にする事なく、刃先を軽く滑らかに研げる奥殿の天井巣板超硬を選びました。

 

 

 

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研ぎ上がりです。

 

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刃と地の境界は、錆の痕跡が残存しますが無駄に減らしたく無かったので研ぎは、此処までで留めました。

切り刃の地金部分はベタに近い研ぎ。刃金部分は刃先に掛けて、鈍角にして行くハマグリ。地金・刃金共に、切っ先方向に向かって厚みを減らしています。

 

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刃先拡大。

 

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切り刃その物の刃付けが元来、右側の厚みが多くなっていましたので、左右均等に近付ける為に左の切り刃を研ぐ割合を減らしました。

 

 

 

I様には、ブースに御越し頂くのみならず、研ぎの御依頼まで頂きまして有難う御座います。当日は、可成りの方々に説明やデモンストレーションをしていたのですが、其の中の幾人かでも砥石や研ぎに関心を持って頂ければとの思いでした。

実際に、依頼をしてみようと思って下さった方が現れた事は、感謝の念に堪えません。仕上げた包丁が御好みに合って、御使用上でも有用で有りましたら幸いです。

 

 

 

 

 

最近の事柄

 

先週位に、亀岡の砥石館に行って来ました。すると、閉館間際になって遠来の来訪者が。東京の、とある工作機材を取り扱っている方の様でしたが、父君の代に在った天然砥石を御持参で。

 

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合砥(戸前系統)と超大型の巣板。合砥の方も立派なサイズでしたが、兎に角も巣板の大きさに圧倒されました。大きい物で有りつつ、質も均一で性能も一級品だと思われます。仕事上、看板にも成り得るでしょうから大事に保存される事を願いますと伝えました。

 

 

 

しかし私が亀岡に向かったのは、砥石館で常連さんと待ち合わせをする為でした。時折り依頼される、体の調整の方の仕事の為です。落ち合った後は御自宅に招かれ、作業開始?終了後は食事も出して頂きました。

しかし、私が普段食べている物とは少々、趣を異にする品々でしたので悪戯心が湧いて来たので次回は私が御返しに料理しましょうと提案。一週間後にその機会が訪れました。

 

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少し、具材の大きさが目立ちますね。普段は冷凍の春巻きに近いサイズに切りそろえ、外観も準じるのですが急いで作った事も有り、ワイルドな感じに。

 

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IHでの揚げ物は初でしたので、温度の調節がリニアでは無く難しいです。普段はダッチオーブンの最小の蓋付きスキレットですが、親の家に派遣して居りスーパーで購入のスキレット(ガラス蓋付き)を持参しました。投入直後の温度の低下が抑えられますので。

 

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具材の大きさと、久々の巻きでしたので仕上がりも大雑把です。味に大きな不満は無かったのですが・・・。

 

 

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ブラックタイガーを背開きにして背わた出しと、(油を少量に抑えたいので)薄く切り開く目的を叶えます。

 

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フライパンが春巻きの中身で一杯ですので、スキレットで揚げ焼きに。少し手間でした。

 

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適当に手近な副材料を混入。今一、味付けが薄かった上に此れが宜しく無かった様です。火加減の微妙さと相俟って、薄らぼんやりな仕上がり。IH恐るべし。

 

 

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もしかするとサラダが一番、高評価だった恐れも有ります。まあ確かに、此れが一番、自宅で作った物に近かったんですが。本当は麻婆茄子と、万願寺とジャコの炊いたんも作る予定でしたが時間切れ。

 

 

 

二日後、気分転換?仕切り直しで肉じゃがを(笑)。

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あっさり風味で、煮汁は多過ぎず少な過ぎずに。少な目で、絡ませつつ煮含める方がパンチも有り見栄えもするのですが、此方の気分でした。上に在るのは、鮭の塩焼きを牛乳パックの上に取り出したままの状態で。

 

 

 

司作の鍛え地は、若干ですが気に成る部分を手直ししましたので、いよいよ納品に伺えます。研ぎの御依頼を頂いて居る常連様でもあるのですが、食事の予約も取って頂けました。納品にかこつけて、楽しんで来たいと思います。

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司作柳の二本目、鍛え地雲竜

 

さて二本目の鍛え地です。捻りが加わっているので、雲竜という事になります。シンプルな鍛え地とは、又違った雰囲気で躍動感・奥行きを感じさせますね。まあ、両方とも好きなんですが。

 

研ぎ前

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此の個体は、切り刃の厚みの残存が少なくて仕上げ易いかなと思ったのですが・・・刃線の突出部が刃元・切っ先カーブの開始部分・切っ先手前の三か所に。其処を減らして刃線を整えました。

他には何時も通りに、切り刃全体を刃先へ向かって鋭角のハマグリに。刃金部分は刃先へ向かって鈍角のハマグリ。勿論、切っ先へ向かって角度変化を伴いながら仕上げます。

 

 

 

研いで行くに当たり、平の磨きから始めました。

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磨いた平に、天然砥石の小割りを当てて仕上げます。巣板三種に、千枚と八枚。

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切り刃の方を、巣板で仕上げ研ぎ。

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千枚で最終仕上げ。

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刃金部分の先端と裏押しは、水浅葱で。

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研ぎ上がりです。

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此れで今回、送って貰った二本が仕上がりましたので、先方へ連絡する事が出来ます。二年程前から御要望を聞いていたのですが今でも必要とされているのか?いや覚えていてくれてるのか心配ですが・・・。

 

 

 

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研いだ包丁のビフォーアフターなどを載せていきます。