少し前の記事にも記載しましたが、砂型鋳造の鏡作りの予行演習でイマイチだった個体を一つ、持ち帰って研究をしていました。
各種研磨剤に繋ぐ前段階、如何なる砥石で仕上げて置くべきかを探る為でした。勿論、鏡自体の性能としては、人造の中砥・中仕上げでの平面度合いが物を言いますが、研磨剤での作業直前で、どれ程の傷の浅さを実現出来ているかが重要だと感じました。
其の観点から、平面維持に優れつつ肌理の細かい砥石が適すると考え様々、試してみたのですが・・・殆どの砥石が「地を引く」状態に。まあ、亜鉛合金?の鏡に地金もクソも無いのですが、兎も角も引け傷が入り易い。砥面を構成する砥粒が不均一な物は言うに及ばず、細か過ぎる物でも同様で。細か過ぎると、どうしても下りが遅く成りがちですので、砥面の変形・部分的な負荷の増加による金属粒子の堆積ムラが避けられません。結果的に、微粒子同士が噛み合って研ぎ肌に擦過傷を付ける様です。
筋や微細なヒビは当然、容易く地を引きますし、そうで無くとも研磨力が強過ぎる?だけで研磨痕が均一に成り難い。後者は、後に連なる研磨剤攻勢で何とか成る物では在りますが、可能ならば均一で浅い研磨痕が望ましい。結構な範囲で、手持ちの砥石を取っ替え引っ替えしてみると研ぎ肌への攻撃性が低め・研磨痕が浅目・肌理が細かめ、の種類を見付けましたので、其れで仕上げました。
丸尾山の本戸前が其れですが、研承の白の1000・3000で平面を出し切った後、仕上げに使うと研磨剤での磨き終わりに最高レベルの出来と成りました。まあ、硬く細かい青砥からの仕上げでも近い結果だったのですが、難易度と絶対的な完成度で前者が好適かなと。やはり、あらゆる砥石には活躍の場が用意されているとの感を強くしました。完成した鏡の実物は、是非とも砥石館で御覧頂ければと思います(笑)。
あと、砥石の方も準備を進めていました。販売用(日野浦さんからの注文分その他)と自分で使用する分、一部は講習でも使う可能性の有る分です。更に一部は、個人的な興味からのテスト用も有ります(笑)。
中山の巣板、薄っすらカラス混じりが多いですが、此れもですね・・・レーザー型の大。
同じくレーザー型の大の横幅ですが、更に長さに余裕が有る物。
最近の巣板は、並砥っぽい物に加えて合いさっぽい物も。側面から見ると、緑灰色よりも紫がかった茶褐色が増えています。
序でに、興味が有った馬路。下方の判子は、先代が扱って居た原石を加工した印だそうです。
この後、30型・40型・60型サイズが加工待ちだそうでしたので、念の為に取り置きへ入れて貰って来ました。
最後は、オマケのミニサイズですが興味深い物。同じ水浅葱の原石から切り分けられたと思しい二つを手に取りました。裏表で、白浅葱と呼ぶに相応しい色調と、浅葱~水浅葱と称するべき模様・色に分かれていました。
其処で、敢えて砥面を付けるのを其々、表裏逆向きにして砥ぎ感や仕上がりを試してみる事に。表層が減って来て、落ち着くまでは本来の性能判断は難しいですが、何れは双方から歩み寄るかの様に同様な仕上がりに成るのかなと・・・しかし厚さが3~4cm程度の硬口~超硬口の砥石ですから、普通に使用しつつ減りが中央部に達するのは何時に成るのかと(笑)。
経験上、白浅葱気味ではカシカシした研ぎ感・パサッとした肌触りが特徴だと捉えています。其の為、滑走を自ら調節出来ないと研ぎ肌を均一に仕上げる事が難しいとも。
強いて言うなら硬質な巣板っぽさも有りますが、砥粒の目か層の連なりが立っている様で、研磨力と引き換えに無難な仕上がりに持ち込むのは難易度が高い印象。実際、今回の二つの内では僅かに硬さ控え目ながら、安定した研ぎ肌に仕上げるに当たって圧力・速度・方向の三要素を安定させる必要性が、より高かったのは此方でした。
此方は白よりは研ぎ易い水浅葱とは言え、表層の不安定な部分が未だ無く成って居ない為に、扱いには慎重さを要します。具体的には、砥面の滑走や摩擦が一定では無く研磨痕も不均一。
下画像で右の砥石の端っこが、斜向していましたので鏨で割って貰ったのが中央の石です。この中では最も、裏と表で違いが無い状態。砥面は斜めに成ってはいますが、研ぎ上がりも無難です。
以前からの、御依頼品への備え。往年の、小さな名品の御依頼ですが・・・出来得る限り、当時の作風の再現をとの御希望で。
ビクトリノックスの小さな方のブレードでのテスト風景です。初期状態から、ペーパーによる1500番と2000番での仕上げ二種、更に青棒とリューターでの研磨に移行し仕上がりを確認。
現物に、少しでも適した方法を模索しながら進めていますので、奈良のY様にはもう暫くの御待ちを御願い致します。