此方も、北海道のT様から送って頂いた同シリーズの洋包丁で、厚口の27cm牛刀です。仕立ても同様ですが、幾分は変化も見られました。
刃体側面は、他の物に比べて右側への切り刃構造が軽減(刃元側の数cmのみ)されており、峰から見えるテーパーのみならず、グリップもテーパーのフルタングと成って居ます。フルテーパードタングと言う奴ですね。その御蔭も有るでしょう、重量バランスはグリップ偏重に成らず、ブレード付け根近辺の良い所に。
研ぎ前の状態
刃体付け根の厚みが少ない・マチの辺りの面が不均一・鍔や峰の深い傷・タングとグリップ材の段差(+タングの端面の不均一)と言った項目は大体、変わらずです。
しかし、傷の深さが此れ迄で一番深い気がしますね。特に鍔のみならず、刃体側面にも均一・全体的に多く入っていました。
峰から刃先・刃元から切っ先へ向かって、刃体の厚みを減らしつつ全体の傷消しです。布ペーパーの150番・180番・240番辺りを多用。
耐水ペーパーの400番前後で。
同じく800番から1000番程度で。
1500番から2000番で。
刃先の調整に入りますが、人造の1000番・3000番で。
此処で、刃先の欠けと言うよりは潰れを発見。少し油断していたので、もう少し研磨力の有る1000番から削り直し。刃先手前の厚みが増した為、ペーパーによる側面の削りも再度、行ないます。
(削りシロが多く取れる)厚口の仕様であった事が幸いし?予定以上に全体の傷が消えました。
天然に移行し、やや軟口赤ピン⇒奥殿の中硬天井巣板。
中山の戸前系、ややジャジャ馬の砥石で。しかし、相性的に落ち着かず。
奥殿の硬口~超硬口の黒蓮華では、マズマズの相性。
もう一声で、奥殿の硬口天井巣板。此れで仕上がりました。やはり此の鋼材は、しっとり整える系統の砥石との相性が良さそうですね。
研ぎ上がりです。
通常、刃体形状が整った時点の近辺で、傷消しも程々に留めるのですが・・・今回は側面の傷が殆ど目立たなくなった為、鍔の部分も通常より削って磨いてを念入りに行ないました。削りシロが取れるのは便利と言えば便利ですね(笑)。他の物だと、右側には多い厚みが左側には少なかったので、左の状態に揃える方向が主体でしたので。
T様には纏めて御依頼を頂いていましたが、漸く今回の全てを御返送出来ました。いつも私のペースで進めさせて頂いて居り、長く御待たせしてしまい申し訳無いのですが、何とか御要望に近い仕上がりに成って居ましたら幸いです。もしも不都合な点が有りましたら、御申し出頂きたいと思います。此の度も、有難う御座いました。
村上様
270ミリが届きました!
今回も完璧に仕上げて頂き大満足しております。
無駄な肉が削がれ、傷消しもしっかりと施して頂き大変美しい姿です。
今回は270㎜厚口の為しっかりした重さと長さもあり、自分にとってベストバランスかもしれません。
食材との抵抗感を感じず、自然に包丁が前後へと流れていき心地よい切れ味も毎回同様です。
刃の形状を整えることで、これ程切れ味、刃持ちが変わるのかと非常に驚き勉強になりました。
この度は大変厄介な作業を5本もお願いしてしまい申し訳ございませんでした。
村上様の偉大なるお力をお借りでき、心より感謝しております。
今後ともどうか宜しくお願い致します。
北海道T
T様
砥石を見せて貰いに出掛けていて、返信が遅くなり済みません。出先にて、頂戴しましたコメントを拝見し、今回の仕上がりも何とか御要望に沿えた様子にて安心出来ました(笑)。
才能や道具類に余裕がない私にとって、包丁全体の仕立て直しのハードルは中々に高く、進捗がユックリに成り恐縮です。しかし、幾らかでも当てにして御依頼を下さる限りは、微力を尽くしたいと考えて居りますので、今後も宜しく御願い致します。