説明文 3               (研ぎ屋むらかみHPより)

ブレードの角度と刃の角度(包丁・ナイフについて)

  1.製造段階では、普通はフラットグラインドと呼ばれる刃先まで平坦に研削された物・コンベッ  クスグラインドと呼ばれる外に膨らんだカーブで研削された物・ホローグラインドと呼ばれる内側に抉れたカーブで、しかし先はやや厚みを持たせて研削された物が代表的である。(西洋剃刀はコンケーブというホローよりも薄く、先まで厚みが増えない研削である)

  2.和包丁の場合、表は平から先は大抵がベタ研ぎと呼ばれるフラットグラインドか或いは蛤刃と呼ばれるコンベックスグラインドである。しかも裏は裏梳き等と呼ばれる言わばホローグラインドになっている。これにより、表はある程度の強度を確保しつつ、同時に裏は切る対象が張り付くのを防ぐ構造になっている。(片刃構造)

  3.洋包丁の場合は、ブレードの背から刃先まで両側が均等なフラットグラインドの物が基本となる。しかし製造メーカーにより、左右の研削角や後述する小刃の角度を非対称に設定されている物もある。(両刃構造ながら、利き腕の側の刃付けが鈍角である方が、対象を削ぐように切る場合に抵抗を受けにくい。又、その場合切断するラインが利き腕側にズレにくい)更に、和包丁的に平からしのぎにかけてのデザインが取り入れられている物もある。

  4.ブレード本体の構造上の角度に対して、対象に切り込む刃先の角度は、大抵の場合、僅かに或いは遙かに大きく設計されている。大まかに言えば二段階の刃付けになっている訳だがこれは、切る対象に対して刃先の強度に余裕の有る場合と、そうでない場合でその二段双方の比率が違ってくる。

 4.1.刃先の強度が必要な場合、その組み合わせは本体鈍角×刃先鈍角であり、反対に不必要な場合は本体鋭角×刃先鋭角である。現実にはブレードの厚みも加わって、その間にいくつもの組み合わせが考えられる。例えば、鋭い切れ味は必要だが、外力に対する耐久性と耐摩耗性を必要とする場合、鋭角の本体角と鈍角の刃先角の組み合わせが考えられる。

 4.2.しかし、角度以外にも刃先に与える影響が大きい物として、二段目の研削面の幅の大小がある。これには糸引きと言われる、光を当てての確認が必要な程ごく狭い幅の物から、段刃と言われるかなり大きい物まで目的により使い分けられている。当然幅が狭いほど抵抗なく切り進むが、その分強度や耐摩耗性には劣る事になる。つまり、二段目の刃を付ける場合に限ってみても、広く鋭角の刃を付けるか、狭く鈍角の刃を付けるか、目的によって選択の余地があることになる。(洋包丁やナイフの二段目に付ける刃については、小刃と呼ばれる事が多い)

 4.3.糸刃については困難かも知れないが、段刃にはその段を無くし、蛤刃に仕上げるものも含まれるだろう。単に一段目と二段目のつなぎ目を丸めたものから、刃先まで無段階に緩やかカーブを描くものまで様々である。(欠け防止や長切れ目的で、段刃や蛤刃に更に糸引きを加える事もある)

  5.一段目の刃付けのままフラット又はそれに近い刃付けで使用されるのは、一部の人の和包丁や、大工・木工関係に限られてきている。現実には極限の切れ味や切削対象の精度を求めるので無ければ、製造段階は言うに及ばず使用者に於いても二段階・三段階の刃付けがなされている訳だ。

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