結局TV番組では、和包丁の画像や砥いでいるシーンはおろか、百均で紙の束や巻いて捩った物を切るシーンも使われませんでした。代わりに、料理人の場面では有りましたが。
洋包丁、就中廉価包丁を否定するものでは有りませんが、手作り(自由鍛造)の和包丁の良さを推したい私としては忸怩たる思いも有ります。しかし一足飛びには難しいとも思っています。
(あと、前回のTV放送では「研ぎ職人」になっていたり、今回は「研ぎ師」とかの表示。渡した名刺には、研ぎ屋だと書いてある筈ですが、勝手な肩書を付けられるのは頂けませんね。今回の公式まとめサイトには記述すらされていないので御察しです。)
ですので、次の課題としては数年来の懸案と認識していた刃物用鋼材の縮小や統合について働き掛けて行ければと考えております。その活動の始めとして近日、上野館長と出掛けて来る予定です。当日は砥石館を空ける事になるので申し訳無いのですが。
そんな予定をしている間にも、嬉しい御申し出が有りました。砥石館や、更に以前から社団法人への御助力を頂き御世話になって来た方より、料理イベントで使っても良いがと包丁を貸与して頂きました。
実践派の方にて、実際に使い込まれている包丁ゆえイベントに備え軽く研ぎ直しておきました。所有者の方は最近、二つのメーカーと言うか店舗の包丁に御執心で、今回お借りした包丁二本は其の内の一方の物です。
小さ目の柳 白紙2号 七寸
イカ割きの様なアジ切りの様な。白紙1号 4.5寸
お借りした包丁を余分に減らすのは気が引けますし双方、余り傷んでいない様子にて研承3000番の緑から。
刃先は予想通り。形状は想像以上に整っています。ただ、柳は地金部分の刃元側四割に深めの傷。イカ割き(アジ切り)は刃金部分に入った凹凸が気に成ります。しかし顎側の削り過ぎは少ない方でした。
巣板で傷を浅くしつつ、上記の気に成る点を軽減して行きます。刃金の仕上げは、千枚です。地金部分は小割りした八枚の内、やや硬くて荒い方です。一見、巣板仕上げに似た風合いでありながら、其れよりも細かいので錆び・変色に少々強いので。
研ぎ上がりです。形状的には、元の状態を踏襲しつつ表面の凹凸・傷を均す方向で仕上げました。つまり、ほぼベタ研ぎに糸引きですね。
他には、錆落とし程度で。傷消しも、3000番の研削痕を半減する程度です。イベント後には研ぎ直して御返しするので其の時に、もう少し追い込んでみようかなと。
長年、御高配を賜り、今回も御気遣い頂きまして感謝致します。折角の包丁ですので、御来場の方々に楽しんで頂くアイテムとして、活躍して貰おうと思います。