少し前の週末、天然砥石館に気になる包丁を御持ちの方が来られました。最初は「いやいや、そんな偶々では?」と思いましたが(形状は把握していましたが実際のサイズも知らないし)、さりげない風を装って課題の包丁みたいですね。と水を向けました。
答えは当たりで、某所での某企画に用意された物。其処から色々と研ぎや包丁に付いての意見を交換したりしました。その流れから、手持ちの包丁を研いでみてくれないかとの事で、後日御送り頂きました。御希望の仕上がりは、切れと永切れの両立です。
下画像の包丁が其れで、コスミックスチール製の少々厄介な砥ぎ感だと御聞きしました。届いた時には既に、刃先の厚み取りは充分以上で鋭い切れ味。
しかし刃先までの砥ぎ下ろされた部分の厚みの取れ方は不均等と言うか「抜け」や「走り」に貢献し難い部分も。特に刃元周辺の、顎に近付くほど薄くなっているのは(目的次第ですが)改善したい所です。
過去の研ぎの都合どうこう、或いは製造段階の精度、要因は様々考えられますが何れにしても、目標が明確であれば其れに適した形状に近付けて行くに如くは無し。
全体画像
刃部のアップ
刃先の拡大画像
人造の3000番で刃先と周辺の大まかな研ぎ⇒小割りした同程度の人造で形状を均し研ぎ⇒耐水ペーパーで軽く磨き。
その後、天然砥石(白巣板・黒蓮華)で仕上げ研ぎ。そして中山の並砥で最終仕上げ。
その刃先拡大画像ですが、目視では問題無くも切れのテストでは若干の不満が。永切れを企図しての選択、且つ金属組織に手頃だとの判断だったのですが・・・。
次に相性が良さそうに感じた若狭の戸前ですが、此れは結構良かった様です。
当然でしょうが拡大画像でも問題無しです。
研ぎ上がりの画像です。
同じく刃部のアップ。磨きに関しては道具も一家言も御持ちの方の包丁ですから、殊更には追い込んでいません。
逆に、薄く仕立てられている状態からのスタートでしたので、最低限の刃先の調整レベルに留めようとしたのに厚み調整にも手を付けてしまいました。薄いだけに、削り代の問題も有って完成形に対して6割前後迄の追い込みですが。
これ等の「厚み調整・刃先に掛けての緩いハマグリ」に加えて、いつもの(小刃の範囲で)刃先に行くほどキツクなって行くハマグリにより、「走り・抜け・通り(押し付けるだけの切れ)・永切れ」の面で違いが出ていると思います。
純粋な初期の食い込みは絶対的な薄さに依存する所が大ですが、上記の項目には対応し切れないと考えますので、御自身での研ぎの際に参考にして頂ければと思います。
二つ隣の区に御住まいのM様、メールにて御知らせと御伺いをしましたが如何でしょうか。先に御意向も聞かぬままの掲載としてしまいましたが、此方にての確認の方が伝わり易いかもと。
現状の仕上がりで問題無しとの了承を頂けましたら、直ちに御返送致します。ブログ掲載に関しての可否に付きましても御意向に沿います。
コメント欄にて御連絡頂きましたので、念の為にメール内容を再度送信の上、クロネコからの着払いに成りますが御返送致します。そして御待ちしている間にふと、試し切り等してしまい更に好みを追求する為に若狭戸前の後に戸前浅葱も使ってみました。
自分的には、より良い状態(つまり私好み)に成ったと喜んでおりますが、M様におかれましても好ましい状態でありましたら幸甚に存じます。
依頼を受けていただきありがとうございます! もちろん掲載の研ぎ内容で受け取らせていただきます。
メールでご連絡いただいていたのを見逃して消去したかも知れません、申し訳ないです!
依頼直後の返信はきっちり届いてますし、チェックをしてたつもりでしたがこちらがミスした可能性大ですm(_ _)m
むらかみ様も忙しいんだろうな〜と思ってボーっと待ってるままでしたスミマセン!
むらかみ様が研ぐ前のチェックで発見して下さった『厚みの不均等さ』について、もしやと思ったことがありまして……
天然砥石館でさりげなく教えて下さった、指の置き方にけっこう大きく起因してそうだな〜と想像しました。
たいへんお手数になりますが、もう一度メールを送っていただいて宜しいでしようか⁇
ガッチリと注視してますので、もしその後1日ほど音沙汰がないようでしたら、お電話などいただけましたら幸いです。
P.S
『磨きに1家言』
そんな大層なことございません、素人の児戯です(^_^;)
M様
何はともあれ、連絡が付いて良かったです。
まあ私もパソコンはからっきしなので、操作ミスなど心配の種は尽きません。ですので此方の不手際の可能性も否定しきれずです。
砥石館での会話内容を御記憶頂いていて恐縮です。殆どが、つらつら普段から頭の片隅に残留している些末な事柄なので、万一御役に立つ部分が有りましたら幸いです。
では、メールにて前回の内容を再度お送りします。其の上で、早速週明けにも御返送致しますので宜しくお願い致します。