四月二十九日の砥石選別

 

今年は桜のシーズンに遅れ、藤のシーズンになりました。指示のタイミング不安定なナビに惑わされ、想定外の経路(茨木回り)でしたが景色は良かったです。しかし余裕が無く写真も撮れず。

北海道用と松阪用、それに香港用の砥石を探してきました。結果的には、一勝一敗一分けでしょうか。

 

先ずは、北海道へと考えて選んだ東物の巣板

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旗星の判子の痕跡が見えます。やや硬口で巣無しの蓮華・墨流し入り

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ほぼ本焼き用として選んだので、地金には余り優しくは無いかも。

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しかし、主目的に対しては良い仕上がり。

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以前購入した自分用の此れ(下画像)と比べると、硬さが僅かに増した分、扱い易さは若干低下。その代わり、使いこなせれば砥面の変形減少・仕上がりの光り方向上に繋がるでしょう。何より形状の確かさと、底面周辺の焼け気味の難が無い為に、砥石としてのランクが違って来ますね。

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どちらを選ばれても、又どちらも選ばれなくても問題は有りませんので御心配なく。この品質と性能であれば手元に置いておくのに何の痛痒も・・・と言うより傍に居てくれると有り難いレベルです。

 

 

 

此方は、仕事用の予備として追加した物です。

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以前の此れ(下画像)が強い研磨力の割に期待以上の細かい仕上がりを見せてくれたのでもう一つ有ればと。この手は、巣が巣として邪魔になり難いタイプの様です。見かけと研ぎ感は荒々しいのに不思議な事です。

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松阪に送った三つの内、一つは同じタイプです。それ以外は黄色の軟口のカラス入り、水浅葱(これも私の持ち物と同タイプですが、ややまったり気味)。扱い易い千枚も頼まれていましたが、其処は希少種ゆえ簡単には出会えませんでした。まあ、其れを承知でなければ銘柄・品質を指定しての選別など叶いませんが、軟口カラス入りが代替出来る筈と踏んで選んでおきました。

 

 

 

最後は、現在香港から司作の包丁について問い合わせを頂いている方が、千枚・八枚の砥石についても興味があるとの事。ついては、其方にも相応しい砥石をと見てきましたが、前述の通り。

止む無く、もしも御急ぎで千枚に準じる石でも良ければと、以前購入の此の砥石を参考に上げさせて貰いました。

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戸前と敷き戸前の中間という可能性も有りますが、色調・使用感から天上戸前と千枚ではと思われます。

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実際に研いで見れば、仕上がりは充分。標準的な千枚と比較して、地金の細かさ・明るさ共に順当、刃金はやや明る目かなと。少なくとも性能面から見て、千枚系統に伍するのは間違いありません。

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包丁は兎も角、ペイパルやEMSなど、改めて聞いたり調べたりで手間取っており、恐縮ですので御要望に及ばない迄も、せめて近しい石をと紹介してみました。

 

 

 

因みに上記の砥石達は、個々に研ぎ上げた状態そのままでも充分な性能を発揮しますが(或いは夫々が何れかの分野で最適な可能性も)、そこから鏡面仕上げに持っていく繋ぎとしても有用です。

下画像は、小物を対象としている手持ち最小の大谷山と、鏡面仕上げ用共名倉の大上。

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掛かる手間隙は直前に使用する繋ぎの性能にも因りますが、概ね今回画像に上げた砥石達ならば何れも数分以内で、此の仕上がりに達します。

刃金だけなら大抵1分前後ですが、特に癖の有る地金を速く仕上げるならば間にもう一段階、挟んだ方が良いかも知れません。

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やはり鋼材や刃物に応じて相性を探り、設定した最終段階まで持っていけるルートを構成する砥石群は、大抵の要望を満たしてくれるので心強いです。そして可能な限り一段階を小さく、多くの石で繋いであるなら、より滑らかに上がって行ける訳です。

更にそのルートの用意が複数ならば、組み合わせ次第で或る程度は不測の事態にも対応できる為、仕上げ砥石枠を幾つか御持ちであれば、コンビネーションを探っておかれるのが良いと思います。共名倉の使い分けに限っても、効率や仕上がりに差が出ますので。

 

 

 

「四月二十九日の砥石選別」への10件のフィードバック

    1. S様

      御待たせして居りました。砥石ですが、この度入手した物(木の台付き菖蒲の巣板)は以前自分の仕事用に購入した物(裏に焼けが入っている)よりもやや硬く、砥面が四角で当座の面積も広いので形状的に高価になっています(まあ、焼けと不完全な形で高ければ困りますね)。サイズは19.5×7×1.8cmです。

      あと、当記事に上がっている中山の巣板(白茶の三毛みたいな)も、もう一つ購入(3つ目で、形は焼け菖蒲に近い)してきましたので、もし其方が宜しければ其れを選んで頂いても結構です。菖蒲・中山どちらも良く下ろしますが、菖蒲はグイグイで中山はザクザクといった感じです。

      価格の比率は、焼けの入っている菖蒲巣板:白茶の中山巣板:台付き菖蒲巣板=3:3.5:4です。菖蒲産同士でも、結構差があるのでどちらでもと思っています。また、実際に現物を見なければ分からないと言う事であれば、三本を送って試された後、選ばれなかった物を送り返して貰う事も可能です。

      又、御希望を御知らせ下さい。

      1. 村上様

        村上さんに選別して頂いた砥石なので、全部欲しいのが本音ですが。。。
        お小遣いが追いつきません。
        ザクザク下りる中山の砥石も気になります。
        宜しければ、3本とも試してみたいです。

        1. S様

          問題無いです。もし予算オーバーの物が気に入ったり、複数欲しくなった場合は、後から資金が用意出来次第振り込みも可です。

          今回の菖蒲は、じっくり研ぎ上げるのに向いている硬さと質で、ガンガン研いで行くなら此の中山でしょうか。と言っても、圧力・速度・給水度合いで仕上がりは調節出来ますが。

          特に中山巣板は、丸尾山巣板と並んで自分の研磨作業の中核を担ってくれる、今後主力巣板になる予定の砥石です。楽しんで頂ければと思います。

  1. 村上さん今日は、3日は大変お世話になりました(^^;
    前日1時間しか寝ていなかったので居眠りしておりました
    あの切り出さは、三条の物でしょうか?

    1. 小鮎様

      当日は有難う御座いました。あの後の日程がキツそうだと思っていましたが、既に大変だったんですね。

      試し研ぎで使っていた切り出しは、京都の今井義延です。以前、日大の先生の研究で、小さな刃物に研ぎを施した資料を必要とした時、豆鉋も世話して貰いました。

      刃金の切れと研ぎ味・研ぎ肌(金属組織)を確かめたくて、切り出しも購入しました。その際、難の有る一本なら安いと言われて選んだのがアレです。青紙1号ですが、切れも良く研ぎ易いですし、アレを光らせる砥石ならば白紙では更に光るので、試し研ぎに最適です(同じくアレを良く下ろせば以下略です)。ですので、無理に急いで形状を整えに行かず研いで確認、切って確認の現状です。

      頂いたポリデントのクレンジング?でしたか、あれは確かに曇る巣板でも結構しっかり光って来ますね。しかし、仄聞時に予想していたのと違い、地金は曇ったままなんですね。面白いと言うか興味深いです。砥石によって、刃金が光るか否かに関わる性状の違いの要因の一つについて、示唆を与えて呉れている気がします。

      1. 村上さんおはようございます、
        ポリデントフレッシュクレンズを使い、中山の緑浅葱で研ぐと、地金(和鉄)はミラー系、鋼と同じ様になる物も有りますね(^^

        1. 小鮎様

          やはり、性状の違いによる結果の差は有るのですね。

          それと緑浅葱で思い出しましたが、あの時、水浅葱は既知でしたが緑以外にも白(浅葱)や黒(浅葱)などは初めて聞きましたので興味深かったです。自分の手持ちにも黒っぽさが強いのが有り、あれがそうなのかなあと。種類・分類的に全部・大半を網羅したい欲求みたいなのは殆ど無いのですが、相性探しの区分けや会話での峻別にはそこそこ大事な場面も有り得ますね。

          おっと、逆から考えれば、クレンズを使って地金がミラーになれば、緑浅葱と鑑別出来る事に・・・?・・まあ、ばらつきが有るので其処までの確定診断は無理でも、大まかな同定には貢献してくれるかも知れません。

  2. 村上様

    砥石受け取りました。
    早速研いでみたのですが、凄い!!!
    3点共抜群に下ろすし、仕上がりが綺麗で、研ぎやすく感激です。

    東物の巣板は仕上がりが光った曇りでとても綺麗ですし刃紋浮き出ました。

    2番目の巣板は抜群に研ぎやすく3点の中でも一番気持ちよく研げます。
    三毛猫巣板はサクサク研げて仕上がりも均一で一番下ろしてくれます。

    どれもとっても魅力的で悩んでます。。。
    可能でしたら、もう少し悩ませて下さい。

    1. S様

      どれも悪く無かった様子にて、安心しました。

      三毛は中山産、他の二点は菖蒲産との事です。産地としては双方、東物と言う事になります。

      研ぎ感の好みは勿論、下りの度合いで効率、刃物形状との兼ね合いで仕上がり、それら全てに関わって来る鋼材と製造過程による相性、幾ら考えても悩む所ですね。

      ですので、前コメントの内容に準ずる事に成りますが、当分の間は悩んで頂いて結構ですし、決定後も資金が溜まるまで研ぎながらお楽しみ下さい。振り込みは其れからでも問題有りません。

      何しろ、刃物にも言えますが天然砥石との出逢いは正に一期一会。同じ物は二つ無く、限り無く近い質に再会するのも困難(数年係りで数十回通って一~二度)ですので。

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