先週の木曜日に、砥石館まで出かけて来ました。月末に行われる、イベントに向けての最終的な打ち合わせの為です。
最終的と言っても其処は、通常の開館日かつ結構な来場者数でも有った為に、人出が落ち着いて館長の手が空くのを待つ必要が有りました。おまけに、海外からのツアー客が閉館前に来るとの事で、隙間時間で簡略に必要事項を最低限のみ遣り取りしました。当日の細かいテーブル・モニター等の配置や、参加者に私が持参するサンプル(各種刃物)を見て貰うタイミングに関しては、ぶっつけ本番に近い事に成りそうです(笑)。
2日間に亘る期間の内、子供向けの内容が午前中×2回の予定でしたが、午後からの時間で大人向け(ハマグリ研ぎ講習)が2回、追加と成りましたので丸々2日間のイベント(二種類)と成りました。
多くの来館者へ対応する館長の手が空くのを待つ間、試し研ぎ中の方の数名と言葉を交わしたりも。其の内の御一人は、料理関係の方と御見受けしましたが、以前から私の研ぎ方に興味を持って頂いて居る御様子で。そして今まさに研いで居る最中の、御持参の包丁を題材にして研ぎ方の説明や、ちょっとしたアドバイス等の会話をしていると、館長から急かされて打ち合わせに。ただ、先刻の御当人はイベント(大人向け)に意欲を見せられ、可能なら参加したい旨の御申し出を頂けたのが、少し驚きつつも嬉しい出来事でした。
直近の砥石館の様子。展示物が増強され、販売品の種類も豊富に成って居ました。中には、前館長である上野さんからの寄贈品も有り、地元に持ち帰るには多過ぎるコレクション故、むべ成るかなと(笑)。
最後の画像は、御買い上げの包丁の柄に名前を彫る為の機械だそうです。レーザーで彫刻できるとの事ですが、そんなサービスまで始めている事に感心し、予想以上に簡易な装置で可能な事にも驚きでした。
また館長には、来館者が「刃先のみの研ぎ・刃体全体を整えた上での研ぎ」の対比を体感して貰える様に、私が用意したオピネルのナイフ二本を渡して置きました。紙の一枚程度では大きな差が出難い筈ですが、数枚以上の厚さに成ると違いが顕著ですので、その場で試し切りをした館長にも、違いを感じて貰えました。
此の違いは和式で言う所の、刃先(小刃)のみをハマグリに研いだ事に対して、切り刃全体をハマグリに研いだ結果に相当する対比とも成ります。
おまけで、手伝い先の共用にする目的で、最近に取り寄せた包丁の研ぎです。先行の筋引き(二つ前の記事)が、刃体の薄さと刃幅の狭さで突出していた為、特殊な用途の専用品にしようかと。
研ぎ前の状態。かなり広めの小刃は、やや荒い研削痕ながら磨き段階で光らせて有りましたが、最先端は少々ですが荒れがちで。ただ価格面から考えれば妥当な気もします。自分で購入した中では、最高クラスに御手頃でしたので。
デザイン的には、珍しい程にハンドルの辺りが後ろ反りで特徴的ですので、実用の際にどんな使い勝手か気に成って居ました。実際には、引き切りに特化している印象乍ら、慣れで如何様にも成るだろうと結論付けました。
研ぎ始めですが、小刃の仕様を大きく変更する必要も無く、研削痕を完全に消すまでも無いので、(砥石への給水時間的な面からも)手軽に済ませようと何時ものビトリファイド以外で。
600番と1000番で、刃線上の厚みの残存している箇所は多目に研ぎつつ、若干ですが顎から切っ先方向へ鋭角化。そして小刃が広目(つまり刃先は鋭角目)ですので刃先最先端に向けては逆に、明確な鈍角化としました。とは言え、刃先も顎から切っ先方向へ向けては、鋭角化として居ます。
天然に移行し、対馬です。此の段階で、所期の研削痕の粗さを確認出来ました。同時に、対馬で容易に取れて行かない面から、特別に柔らかい熱処理の塩梅では無い事も。
僅かな差では有りますが、試し切りの結果も含め、前回に追加した筋引きよりも硬い気がします。代わりに?組織の細かさと均一さでは彼方に一歩、譲る気も。何方にしても、気にする人の方が少数派だと予想されますが(笑)。
その筋引きに付いては組織の細かさと均一さ、そして研ぎ易さを勘案しての(他には欠けるより捲れを狙ってか)柔らか目の設定としては、昔に購入したマサヒロのMVSでしたか、オールステンレスモデルを想起させます(緻密な切れ加減)。そして今回の、ややザックリとした掛かりの切れ方は、ヌメッとしていたりガサガサした切れ加減に成りがちなステンレス刃物の中では双方、自分の好みに合う性格の物で良かったと思います。
丸尾山と馬路で仕上げ研ぎ。
中山の巣板(硬口)と、あいさ(やや硬口)で最終仕上げです。研ぎ易く、適応範囲の広いと目される筈の、やや硬口程度且つ砥粒の目が立ち過ぎていない「あいさ」よりも、研ぎ手には特に優しくない硬さの巣板の方が相性的に良かったのは意外でした。
研ぎ上がりです。やや柔らか目では有りますが(返りは丁寧に角度を合わせて散る必要あり)、ステンレスとしては相当に掛かりの良い刃が付くタイプだと感じました。
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