カテゴリー別アーカイブ: 研究

館長と三河白巡りなど

 

少し前になりますが、天然砥石館の館長である上野さんと三河白の産地を見て来ました。採掘跡までは難しいので、嘗て採掘・販売していた店舗(現在は住宅)で記録や試料を見せて頂いたり、現在でも販売中の店で商品を選んだりしました。

前記の御宅とは上野さんの個人的な繋がり(御身内同士が同級生とか)があり、快諾を得られたので実現した訪問となりました。大奥さんが、先代や更に前の採掘者が遺した三河白の極上品を大切に保管されており、本や専門誌に掲載された文章や多数の写真と共に解説もして頂きました。

 

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上画像は、当地を離れて販売などのイベント?に出向く折にと、御家族の一人が制作されたとか。

此方に伺うまでは、現状なかなか真に細かいコマを触った事が無く、実は目白が一番微細なのでは?と考えていました。しかし往時の最高クラスと云う物を触れた今ではコマの名声にも納得が行きました。貴重な原石なども御提供下さり、有難く展示させて頂きます。

 

 

 

 

次に訪ねたのは、峠道に面した販売所が併設された御宅。此方は未だ、商品が並べられています。ん十年前に、上野さんが買い物した時とは少し様子が違っていた様ですが。

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開店前の到着にも拘わらず対応下さいました。所謂、泥だし用の名倉サイズが多いですが現在では希少となった、砥石本体で研磨可能なサイズも残っています。近頃、上物二つの内の一つが売れたとか。此方では、折角なので小さい物ですが一つ購入して来ました。

 

 

 

 

近くの自然公園の川沿いにも、砥石層に近いのではと思われる石が散見されたり。

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最後に見学した下画像の施設で、豊かな動植物の分布と共に周辺で確認される多種多様な岩石に感銘を受けました。

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因みに、一軒目で拝見した三河白の全層並べた木枠入りサンプルが、此方でも展示されていました。彼方が提供元だった訳です。

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下画像の右は一軒目での頂き物の鎌砥。当地では層の違いや質のバラつきで使い分けたのでしょうが、ほぼ砥石と言えば三河白のみが出回っていたとの事でした。左は二件目で購入した物。当代の方からは、層などの分類は困難であると。

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現地で御世話になった方々は勿論ですが上野さんには、今回の三河巡りに誘って頂いて感謝しております。現地に行かねば分からない事や、当時の採掘関係者からで無ければ聞けない話など、貴重な経験をさせて頂く事が出来ました。

そして大奥さんが御主人を始め、一族の男達が採掘した砥石を大事にしている様に、自分も頂いた鎌砥を大事にしたいと思います。

 

 

 

 

お終いは極最近、手に入れた砥石達です。

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かなり、平面の刃物に特化した様な砥ぎ感と質。剃刀や鉋、切り出しの平面研ぎと包丁の裏押しにと言った所ですが、そうそう出番が有るのかどうか。でも念の為にと、ついつい買ってしまう千枚。

 

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直近の本焼きの研ぎにも使用した蓮華巣板です。これで丸尾山の蓮華巣板は大小合わせて四つ目で、ようやく切迫感が無くなりました。2~3個では今一、相性の幅から不安が残ります。

 

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天然砥石館で、DIYの砥石づくりコースとして用意されている種類から、会津砥を選んで面付けしてみました。

数年前、義理堅い北海道の刃物店から情報提供の返礼として、詳細不明だがと砥石を送られました。きよんどさんに鑑別を願い出て会津らしいと判明した其れとは、やや質が違ってより仕上げ砥に近いですが此れは此れで使えそうです。

 

 

 

 

新潟での鍛冶体験(二回目)

 

この土日に、新潟県は三条の日野浦さんの工房で鍛冶仕事の説明・指導を受けて来ました。前回は松阪の月山さんと二人でしたが都合が付かないとの事で、少し緊張気味に一人で向かいました。

行ってみると、地域の工房や工場で受け入れが行われている、若い人材(遠方出身)の一人が通いの内弟子状態でいらっしゃいました。今回は彼が相方として共に指導を受けつつ作業を進める流れに。

一年を超える期間、日野浦刃物工房で幾つかの工程を任されている訳ですから頼りにもなり、実際手本を示して貰ったり加工をして貰う場面も。

以下は備忘録も兼ねてですが、良い仕上がりを求めると鍛冶仕事はこれだけ手間暇かかるという事が伝わればとの思いから、長めの記載となります。(それでも全部は載せ切れていません)

 

 

作業内容は、地金(極軟鋼・極軟鉄・軟鉄)に刃金(高炭素鋼・鋼・鋼鉄)を割り込ませる手法です。これが割り込み。

一般に、割り込みと表示されている殆どは地金(一部は軟鉄、大半は積み重ねたニッケルやステンレスや銅)に刃金を挟んだ状態で製造された、鋼材メーカーが御膳立てした物です。希にコの字断面の地金も有りますが。

これは利器材(クラッド材・クラッド鋼)と呼びます。例え刃物製品に本割り込みと表示が有っても。基本的に、厚く広い面積の鋼材同士を高温で接合し、圧延で伸ばすので一度に多く造れます。

他に、二枚の地金と一枚の刃金を手作業で鍛接した本来の三枚(三枚打ち)が有りますが、「三枚」の名称も「割り込み」と同じく伝統的な作り方を守っている鍛冶が居る限り、大量生産の「三層利器材」とは名称を分けるべきでしょうね。

私は三層(多層)利器材も認めていますが、少なくとも利器材が総ての鍛接品(付け鋼)を切れ・永切れ・研ぎ易さで凌駕していない内から、本流や伝統製法の継承者を連想させる表現をするのには疑問を禁じ得ません。因みに、日野浦さんの工房でも味方屋作包丁は利器材使用ですが、きちんと鍛造の上で水焼き入れされています。

 

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先ずは、割り込みに使う地金(分厚いごろっとした形状の軟鉄)を赤めます。

 

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半分程を、スプリングハンマーで叩き伸ばします。

通常この後は鏨を使って、そのまま割るのだと思いますが、特別に二人一組の向こう鎚で割ります。

 

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ハンマーのヘッド?を包丁用に(厚物用⇒薄物用に)交換。

 

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伸ばした方を持ち手に、反対側のゴツイままの方に鏨を当てて叩きます。この工程は、油圧などの動力で押し込んでも割れて行かないそうで、実際、小ぶりな金槌でも十分割れます。

(圧延と鎚打ちの違いは、此処にも現れる様です。炭化物を微細化するだけならとても薄く迄、圧延しても良いが組織内での分布に一定の流れが出来易いそうです。やはり衝撃による効果と同一と迄は行かないですね。)

 

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問題は、鏨の当て方で均等になってくれないと修正可能な範囲からの逸脱も有り得ます。しかし、如何にも鍛冶仕事らしくて楽しい工程でもあります。当然、鑿の頭を的確に叩けなくても進む方向がずれる原因になります。

 

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幸い私も相方も、交代しつつ互いの品物をやってみましたが修正で事無きを得ました。間に挟む鋼材(刃金になる)の寸法が収まる位に割れると、次に進みます。

 

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白紙二号の薄めの鋼材を、地金の寸法に合わせて切断。

 

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赤めた地金の間に鍛接材を振り、間に白紙、更に上から鍛接材。

鍛接剤は、刃物の素材・加工方法等が違えば最適な成分が変わります。鍛冶其々が見つけるしか無いとの事。

 

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それを軽く叩いて形状を馴染ませます。

 

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再度赤めて手打ちで、空気を押し出す要領で接合です。顎の付近が不十分になり易い様で、叩き進める向きが悪いと他の部分でも鍛接不良に。

 

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スプリングハンマーで本格的に伸ばして行きます。これまた、叩き始める場所と順番、方向性と裏表の頃合い、温度管理(合計数セット叩く内に、手順に則って温度を上下させる)が確立されています。

 

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言われた通り、見た通りにやってみますが不備の指摘は免れません。しかし、相方の叩き方は流石に安定性・正確性で上回っていました。

 

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次は込みの部分を赤めて。

 

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柄に入る部分を叩き伸ばします。

 

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過去に幾つか見た映像の記憶から、操作の違いについて等、尋ねる事に即答して頂けるのは最高の条件での指導ですね。教導役としてはペースが上がらない事、夥しかったでしょうが。

 

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ほぼ、中子の部分が出来ました。本焼き包丁の特徴の一つは、刃先が対象に触れている感触を良く柄まで伝える事だと思いますが、司作三徳はそれに近い印象です。

鋼の仕上がりから来る物と思っていましたが、作業を実際に見てみると、込み(中子)の造形の影響も有りそうだと感じました。

 

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歪み取りをして、一段落です。

 

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この時点での二人の品物とゲージ。顎の寸法が不十分ですね。双方が指摘された部分でした。

因みに、下が私の方だった筈。当然、最終的に日野浦さんの手直しが入っての状態。

 

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ゲージに合わせて罫引き、はみ出た部分を落とします。火造り(鍛造)が正確である程、落とす所は少なくて済む理屈です。

 

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其の上でのグラインダー。罫書き線まで削ります。

 

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込みやマチの整形。

 

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ゲージより長い部分の中子の切断。

 

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中子の整形。

 

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顎からマチまで、そして峰の角を丸めます。

 

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ここでも歪み取りです。ほんとはもう少し色んな各段階で、歪み取りは行われています。

 

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鍛造時に掛かったストレス(残留応力)を抜く為、焼きなましを行いました。通常、長時間掛けて徐冷する灰なましが有名ですが、同様の効果を上げる方法は有るからとの事で安心。

 

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焼き入れ時には焼き刃土と言うか、平たく言えば各種配合済の「泥」を塗るのですが。酸化被膜や手指の油分などが付いていると塗布に斑が出来たり、部分的に冷却速度に差が付いたりします。

そこで、ショットブラストで下処理です。隣のビーズで無く、鉄粉だったかと思います。

 

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いよいよ焼き入れの準備です。今回はコークスの方の炉を使わせて頂いていますが、種類別(熱源)に其々の長短が有るそうです。細かい説明も御聞きしましたが、その利点を生かすための操作も有る訳です。

コークスでの焼き入れの際は、鍛造段階とは異なる量・形状・ブロワーの加減が有り、かなりその項目を満たした状態でやらせて貰えました。よく、面倒がらずに・・・と思いますが、悪い出来に成るのが見ていられない様です。時々入る手直しも、無意識に本気の手順になってしまう模様。

焼き入れの御膳立てから、色味の確認までして頂き。

 

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焼き入れ(水冷)は自分の手でさせて頂きました。目立つ歪みも無く成功っぽいです。直後に、焼き戻し(炙りの方法)でやや硬めに仕立てて貰えました。

日野浦さんも思わず「やっぱりこうやって、一丁づつやってくのは面白いな」と。普段の計算し尽くされた、合理的な作業の充実感とは違った感覚が、懐かしかったのかも知れません。眼前の初心者の試行錯誤を通して見えた、嘗て感じていたであろうドキドキやワクワク、或いは迷い・工程の揺らぎでさえ。

修正や準備で、余計な手間を掛けさせたり心配させたりも、あながち悪い事ばかりでは無かったのかも。僭越ながら、楽しんで貰えた部分も在ったとしたら望外の幸せで、申し訳無さも幾分和らぎます。

 

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焼き入れで残った泥を、ブラシで落とします。

 

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最終確認での歪み取り。私の分は、スプリングハンマーでの叩き斑があり、真っ直ぐ完璧を目指すには限界が有った様です。手間を掛けさせてしまいました。

 

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時間が押していたので、砥ぎ下ろしは担当して頂きました。

相方は、隣の縦回りの大きな水研ぎ機で格闘中。二本とも、かなり元厚を残した仕上がりで型を使っての刃付けが出来ず、フリーハンドで進める事に。

 

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仕上がりです。後は切り刃を研いで、柄を付ければ完成です。鍛接不良も硬度不足も見受けられないので、使える刃物に成ってくれました。

 

 

 

本来は、新潟の「鍛冶道場」などにて経験を積むべきです。そこでは、初心者レベルで数回体験した後に中級者に進むコースが確立されています。私も、「完璧に鍛冶仕事を会得したい」とか「とにかく独力で最後まで刃物を作ってみたい」との思いであれば、その手順を無視する事は無かったでしょう。

二度目にして合わせの鋼付けから、行き成り割り込みの鋼付けに背伸びしたのも、希少な機会に少しでも見識を広めようとしたまでで、決して「合わせは会得した」とか「簡単だったから次に」との認識からでは有りません。

良い刃物の条件・それを作る作業工程・必要な知識や経験(鍛造・冶金・熱処理)を確認し、勉強したかっただけです。司作の刃金に満足しているからと言い換えても良いですが、自らそれに並ぼうとか超えようとは思い難かったからです。もしも満足していなければ、我こそはと自惚れられたかも知れません。

再び一泊二日で御面倒をお掛けしましたが、私が理解を深めてその結果、仕事や活動を通じて現代でも尚、高品質な鋼付けは有用であり、その性能と価値が広く知られる様に成ればと賛同を得られたが故です。偶然、相前後して海外から問い合わせが有りましたが、包丁の内容と研ぎの如何によって雲泥の差が出る事が理解され、伝わってくれれば嬉しく思います。

御付き合い頂いた御二方には只々、感謝です。御家族様にも御協力下さいました事、重ねて御礼申し上げます。有難う御座いました。

 

 

 

 

検査二回目に向けて

 

検査二回目は前回記載した、11月頃に導入される最新型の機材とは別件で、事前にサンプルを送って元素分析と酸化物について調べて貰う形の物です。

以前から興味を持っていた天然砥石の錆に対する利点を確認し、その理由を探る為に表面の酸化物の厚みや、砥石と鋼材との間で成分の結合などで組成が変化していないかを検査出来ます。対比の為に、人造砥石で研いだ物と天然砥石で研いだ物が必要になる訳ですが、天然の方は前回準備したサンプルで問題無い様なので、人造のサンプルとして1200、6000、8000番で仕上げました。今回はこの内、8000番を使い、天然の合砥仕上げと比較します。

 

 

1200番(数年前の物)と1000番 (二十年ほど前の物)

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8000番と6000番(双方、数年前の物)

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右から1200番、6000番、8000番仕上げの表(刃金側)

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同じく1200番、6000番、8000番仕上げの裏(地金側)

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参考までに、十年ほど前の6000番と二十年ほど前の8000番ですが、色味は現行の物と逆に見えますね。こちらの8000番の方がやや細かく研げる様なので、以前日大の先生から依頼された研究用サンプルは現行品は使いませんでした。しかし今回は月山さんの案により現行品を選択しました。

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6000番・8000番共に久々の使用となりましたが、どうも思っていたよりピカピカに成りにくかった感じがしました(特に地金側)。前段の傷が消えきっていないのかとも考えましたが、研ぐ方向を数回、直交させて一面に揃う程度には確認したので、最低限はクリアできたとして良いでしょう。これらを月末までに送れば十月上旬には調べて貰える事と思います。之までの、形状的な研ぎのチェックと並んで、同じくらい重視してきた天然砥石を使う意義を証明出来る事を願っています。

 

 

検査本番初回

 

昨日、三重の月山さんと共に京都府中小企業技術センターにて、本番の検査の初回を行ってきました。

目的は、それぞれが研いだ刃物の形状が、狙い通り正確に仕上がっているかの確認。もう一つは研ぎ前の刃物の状態(購入したまま、吊しの状態)から研磨を施した状態との違い(形状・研磨面の粗度)を、画像・センサーにより数値的に比較する事です。

以上により、新品が最良の状態。又、研ぎはどのように行っても違いは無い。といった誤解や理解不足から来る一般的な認識を払拭するに足る根拠が得られると考えています。研ぎの必要性とその精度(合目的的な形状)の重要性が再認識、或いは初認識されればと思います。

 

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これは膨大な時間を要する為、現実的には使いにくい様です。

 

 

 

 

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これは形状的に厚みの無い試料では精度が出しにくい様です。

 

 

 

 

そこで、お馴染みの曲面微細形状測定システム

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上画像による

切り出しの研磨の前後比較

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柳(ほぼベタ)と小出刃(ハマグリ)の比較

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上記のデータから、形状の特徴的な部分で抽出して比較

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検査機器の性格上、拡大が過ぎると地球の球状が平面に見えるのと同様、グラフの線では比較しにくい様です。勿論それぞれ特徴的な違いは有るのですが。この手の検査には、近々導入される最新型がより適しているとの事で、更に其方で進める予定です。

 

 

 

次回以降に向けてのサンプルも、ほぼこのまま使えそうとの返答を頂いたので、いよいよ天然砥石による錆びにくさと硬度変化についての理由が解明出来るかも知れません。 研磨痕の深浅による表面積の違い?砥石成分との化学変化か研磨性の差異?の疑問に、電子顕微鏡による画像や元素組成・酸化物の計測で迫れるのか。自由研究としては申し分の無い内容になりそうです。

 

画像は豆鉋(右、千枚・左、大谷山仕上げ)とサンプル(右、白巣板墨流し・中、千枚・左、大谷山仕上げ)

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研究の後で砥取家に寄りましたので、前回に続き、同種のやや小さめ乍ら硬口で細かい砥石を手に入れました。これで千枚系は、砥石山見学で拾ったり、ハネた中から貰ったりした物も含めて大小8個程、大まかに三系統集まったので一安心です。勿論、上画像のサンプルにも使用しており、特に鏡面系の最終仕上げ前には繋がりが良く、重宝しています。

 

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サンプル切断

 

砥取家にて、サンプルと弓鋸(タングステンカーバイトコーティングワイヤー装備)を持ち込み、万力を借りて切断してみました。

最初は、ウオータージェットカッターみたいな物が在れば、等と考えていましたが、当ても無いので自力で切断するしか無く、かといって切断砥石では熱が凄いと思い、弓鋸で挑みました。昔、カウリXのムクと積層を焼き入れ前に切ったのを思い出しましたが、しっかり焼きの入った白紙はかなり滑り、やはりもっと手強かったです(地金は地金で粘りや弾力で、また違った味わいでした)。しかし結局、人力での摩擦熱とは言え、結構熱くなっていたので若干の心配も在ります。

5~6個は切り分けるつもりでしたが、少しの休憩を挟んで1時間では3個止まりでした。次回も3個くらいになりそうです。

 

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あとは平面出しの為、表裏を研削後に各種仕上げ砥で研磨すればサンプルの完成ですが(拡大しての検査・耐蝕性テスト・出来れば表面の酸素や水分含量測定用)、二日後の検査では包丁その物の精度を測る目的ですので、飽くまでも次回の検査への下準備であり、機器の治具への適合如何を見る為の作業という事になります。

 

 

 

今回の丸尾山砥石の収穫。最近は取り回し重視でコッパや鎌砥・切れっ端の購入が多かったので、やや大きめ(普通サイズ・定寸)のは久しぶり。因みに自分が買う砥石の3~4割は、面が付けられる前の段階で選んで居ますので、判子などは無い物も多いです。この二つも帰宅後、面付けをした所、大当たりでした。近頃は思った様な砥石を選ぶ事が安定して出来ているので、研ぎの相性探しが幾分楽になって来たような気がします。(特に左は、はねてあった所から見つけて来たのでオマケみたいな物ですが、使用に際して難点を克服可能なら、石質は良いので使いたいと思い、購入しました。)

 

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待ちかねたサンプルが到着

 

以前から依頼していたサンプルが鍛冶から届きました。これは刃物として製作した物では無く、細長い刃金と地金を一定の厚みで鍛接・焼き入れして貰ったものです。ほぼ通常の作品を仕上げる工程と同等の作業内容を経て、日野浦さんから提供して頂きました。

 

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刃金側は研磨されています

 

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此方は地金側・打ちっ放し乍ら精度の高い仕上がり

 

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問題は、これを検査機器に掛けられるサイズに切り分けて表裏を研ぎ上げてやっとサンプルの完成となる事です。熱を掛けると金属組織に影響が出てしまう事を考えると、切断方法も限られますので、何とか上手い方法を探そうと思います。

 

 

 

 

此方も以前から話を聞いていた、サンプルの包丁が同梱されて来ました。確か銀紙三号だったと思いますが、鍛造に適したステンレスは、適切に鍛造を加えると性能が向上するのを確認したいので作ったそうです(鍛造効果による切れ味・長切れ・研ぎ易さに加え、細かく研磨した際の錆びにくさ)。

実際、到着したままの状態で手近に在ったトマトを切ってみた所、之まで経験した切れ味の良いどのステンレスにも引けを取らないものでした(対象はカミソリ砥を含む天然仕上げ)。現状は人造仕上げと思われるので、之を天然で仕上げれば更に切れ味が向上する事も考えられ、そうなると益々トップレベルの性能を見せてくれそうです。

 

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直近の予定としては、今回届いたサンプルを仕上げる前に、刃物の形状や研ぎ肌の精度を測定する検査を、九月上旬に研究の第一弾として取りかかりたいと考えています。

今在る包丁などの現状から、不必要に削り過ぎない範囲で如何に目標、つまり理想と考える形状に近付けられているか、そして望む研ぎ肌のレベルに仕上がっているかが確認出来ると思います。

 

 

 

サンプルの予備 続き

 

前々回に引き続き、研究用のサンプルが届くまでの「予備の準備」シリーズです。豆鉋は、刃先が完全には揃っていなかったり、刃金部分がやや平面が甘かったり(僅かにハマグリに研ぐ癖かも)、研ぎ目が残っていますが、仮の仕上がりました。あと、切り出しの他はイカサキ(柳のスケールダウンとも見做す事が出来る)と三徳が三種よりは、出刃(ハマグリ刃の代表例)を加える方が良いと考え、普段最も使っている小出刃(五寸五分)を加える事にしました。

 

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双方共に、未だ仮の仕上がりと言うのが正直な所で、研究に掛かるまでに出来ればもう少し精度高く研いでおきたい所です。

 

 

余談ですが、所属している社団法人で監修した恰好の本が、来週半ばに出版されます。私は自分の書いた文章以外にも、結構な範囲について校正というか校閲みたいな事をしました。しかし、最後の最後でもう一度試し刷りの印刷物で確認出来るとばかり思っていたにも関わらず、そのまま製本の流れになりました。小さい頃から割合、誤字や脱字が気になる方で、印刷物を読んでいると実際、目に付き易いのですが、何故かパソコンなどのディスプレイでは気づき難い様です。ですから、出版後にチェック漏れが出ないかやや心配なのですが、どうせ漏れがあるなら気づかないよりは把握しておきたいので、手元に本が届けば、やはり注意しながら読んでしまいそうです。因みに、姉妹本のように三年前に先行して出版された大工道具 砥石と研ぎの技法 でも気になる箇所が在った覚えが在ります。今回の題名は、包丁と砥石大全 だったかと思いますが、書店で目に付いた折は手にとって御覧頂いても、そうそうがっかりしない内容になっていると思います。

 

 

研究用の試料(予備)

 

研究サンプルの手配が遅れている為、急遽、以前にも東京の先生に試料として購入・研磨(天然・人造、双方研ぎ分け)して送った鍛冶屋に買い出しに行きました。物は同じく豆鉋で、材料も前回同様に青1と和鉄です。

 

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画像は、電着ダイヤ1000の後、キングの1000と1200を交互に数回当て、シャプトン1000と2000で大まかに形を整えた段階です。今後、再びシャプトンで面を出し、天然は合砥まで、人造は8000まで使って研究に使えればと思います。但し、1.3㎝×2.6㎝ほど有り、条件として出されていた、2㎝程の円形では無いので難しいかも知れません。無理なら初回は通常の刃物のみでスタートとなります。

 

 

因みに、前回送った二丁の豆鉋は以下の画像です。右が天然(敷内曇り)、左がキングの8000(近年の物より20年程前の方が仕上がりが良かったので、それにしました)

 

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サンプル決定と予備検査

先日は、研究目的の各種検査機材に適応する試料のサイズ等の最終的な打ち合わせと、当日持ち合わせた通常サイズの刃物でも測定出来る機材を選んで試験的に測定してみました。

 

切り出しは、新品と研磨済みの二種類、イカサキは販売用の軽く均し研ぎ済みとほぼ本刃付け済みの二種類。三徳は現物一種類です。

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使用した機材では表面の粗度と同時に面自体の凹凸やうねりも測定出来、仕上がりの細かさや面の均一性や破綻の無い連続性等が確認出来ます。

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ほぼ新品のイカサキを測定中

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これらによって、刃物自体の状態が判断出来るのみならず、任意の砥石の任意の番手(♯・グリッド)で研いだ際、センサーの振幅を読み取る事によって研ぎ目の細かさも測定出来ます。つまり砥石から転写された研ぎ傷のサイズにより、実際の砥石の性能判断にも役立ちます。以上は主として人造砥石の再確認といった所ですが、一例を挙げれば天然砥石、所謂合砥辺りはおおよそ8000番前後と言い習わされて来ましたが、それが確認出来ました。

 

そして、ほぼベタ研ぎで刃先近くからやや角度を付ける仕様にした物は、本当にそのものズバリの線がグラフ上で再現されていて納得もし、それ以上に面白く感じました。下画像は上の刃物とは関係ない、又切り刃とも確定出来ないサンプルとしての画像ですが、このような振幅と全体のラインで表示する事も可能です。

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小さな試料しか対応不可の機材用に、製品レベルの仕事を施した上で規定のサイズに納めたサンプルを、無理を聞いてくれる鍛冶に依頼しました。これで鋼材メーカーから出たばかりのテストピースに熱処理しただけではない、実際の刃物と同等の条件での測定に道筋が付きました。

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研究用の包丁(少し趣味の世界)

 

最近は御近所様から持ち込みで依頼をされたり、メールでの依頼・問い合わせを頂いたり(何故か以前から東からばかり)しつつも、明日の研究最終打ち合わせ兼手持ちサンプルでの試験運用開始に備えていました。

金属標本的な物で無く、性能的に製品レベルに達した資料製作は、既に親しい鍛冶に相談してあったので、後は機材に適した形状・サイズが確定次第それに従って加工して貰い、自分で研ぎ上げれば測定に掛かれます。それまでに出来る検査として、通常サイズでも可能な測定機によって先ず刃物自体の面精度辺りから取り掛かるべく包丁を研いでいました。勿論、製造段階で削られた部分は戻せないので、本当に理想通りの形状とは行かないまでも、より近付けるよう、そして研ぎ面に凹凸や歪みが無いように更に追加で研いでいた訳です。

所が、巣板を小割した物で表面を均したり化粧研ぎをしたりはして来ましたが、以前手に入れた柔らかめの千枚の木っ端を弓鋸で挽いて小割し、その際の粉末も用いて化粧研ぎをしてみると、巣板とも鏡面砥石とも又違った仕上がりとなりました。研究用の均し研ぎでなく趣味の化粧研ぎに近い感覚で楽しんでしまい、美観を追求する余り面精度が低下していないか一抹の不安もありましたが、一味違う仕上がりの包丁達を見ていると、やはり嬉しさの方が勝ってしまいます。

 

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