カテゴリー別アーカイブ: 依頼の刃物

香港からの御依頼

 

香港のS様から包丁購入の御依頼が有りました。その際、お任せでの研ぎを併せて申し込まれておりました。

新品への最初の研ぎでもあり、半分サービスの意味合いもある研ぎでしたが、鋭利過ぎる刃先は通常でもお好みで糸引きを入れて来ました。ですので、もう少し完成形に近付く様に仕上げて行きました。

 

新品状態。人造砥石ながら、かなり追い込んだ研ぎが施されています。

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刃部のアップ

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天然砥石にて研ぎを開始。先ずは巣板から。白巣板・敷き内曇り系統。

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巣板での研ぎあがり。曇り仕上げ。

 

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千枚での研ぎ

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刃金は半鏡面レベルと言うべきか、かなり明るく仕上がっています。地金も小割りした巣板から千枚で。

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浅葱での研ぎ

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更に明るく仕上がり、刃金は準鏡面に。地金も再度、千枚(小割り)で仕上げ研ぎ。

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刃部のアップ

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研ぎ上がり

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新品から余り研ぎ減らすのも気が引けるので、人造の研ぎ目は大まかに消す事に留め、刃金部分を刃先へ行くほど鈍角の極緩いハマグリで、強い刃先と軽い切れ味に仕上げました。

これで、切れを保ったまま頑丈さと長切れを両立し、錆びや変色にも人造砥石仕上げに比して耐性が付きました。食材を切っても食味が損なわれにくいでしょう。

 

 

S様には、前回画像を上げた砥石にも興味を持って頂いた様子にて、包丁と砥石の値段は勿論、この司作三徳包丁の仕上がりを見て御判断を頂きたいと思います。

この度は包丁・研ぎ・砥石の御依頼、有難う御座いました。

 

 

府内からの御依頼

 

 

和泉市のF様より、研ぎの御依頼を頂きました。刃物の種類は小さな剣鉈と言うか、副(え)鉈でしょうか。

 

研ぎ前

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全体画像。柄のチェッカリングが細かい細工ですね。

 

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刃部アップ。地金部分はブラスト処理でしょう。

 

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刃先拡大画像

 

 

 

研ぎ手順

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GCの240番とシャプトンの320番から。その後キングハイパーの1000番、硬軟二種。この段階で、平の傷も(特に裏でした)大まかに落としておきます。錆びる素材であれば作業中の防錆も兼ねています。

 

 

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巣板で研ぎ目を細かくしつつ、軽く均し研ぎ。柄の養生はラップの上から各種テープで役割り分担です。

 

 

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更に形状を整えつつ、刃先を研ぎ出します。地金部分は、通常品+小割りした巣板・粒状の巣板で仕上げます。

 

 

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中山の並砥と思われる物。かなり相性良く、仕上がり・下り共に不満の無いレベル。

 

 

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より長切れ狙いの為、撫でる程度ですが中山の浅葱で最終仕上げ。

 

 

 

研ぎ後

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全体画像

 

 

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刃部アップ

 

 

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先拡大画像

 

 

初めの予定では、切り刃から研ぎ下ろして自分の標準的な形状をと考えていましたが、鎬筋から刃金までの間が予想以上にホローグラインド的に仕上げられていた為に変更しました。

フラット近辺まで持っていくには、かなり研ぎ減らさねばならず、そうなれば刃幅の減退は避けられないからです。その代わり、刃金部分の厚みと角度・地金部分の厚み双方を、先に向けて漸減。そしてカーブから切っ先までの切り刃幅減少傾向を改善しました。

以上の作業内容により、刃先の切れ・刃体断面形状に因る切り抜けが充分だと判断し、今回は新品からの研ぎという事もあり無理に減らさない研ぎとしました。勿論、厚み抜きと角度調整を施した刃先も、初期状態から殆ど減らさずに仕上がっています。

 

 

F様、作業の進行に伴って仕上がりを此の様に纏めました。使用する上では問題無いと考えますが到着後、御好みに適わない所があれば御返送頂ければと思います。先ずは此の度の御依頼、有難う御座いました。

 

 

 

北海道からの本焼き第二段

 

北海道のS様から、先丸蛸引きが送られて来ました。今度、注文する同型の練習も兼ねて御家族から譲り受けた物との事。

到着後、一見して分かる問題点は無いような。まあ、切ってみないと何とも・・・。と紙を切るも問題なし。ああ、厚みのある対象には抜けが・・・?と紙束を切るとやや手応えが重いかもレベル。つまり、欠けがちらほら有るのと刃体の捻じれがある以外は、通常は切れに関して問題視されないと思われました。

捻じれは水本焼きという事もあり、余り強引に戻すのは困難でしたので半減させる程度で。それ以上は鏨を打って伸びを惹起し、然る後に何割か鏨目を研ぎ去るしか無いでしょう。そこまでのリスクを取らずとも実用には差し支えない範疇かと。あと、研ぎに於いても裏押し時に砥石上で面を合わせられないのが改善されましたので。

恐らく、欠けが多発する傾向は水焼きの本焼きであるだけでなく、上記も原因となって居た可能性があります。研ぎながら調子を見て、適宜そこそこ戻しを掛けていく内に裏押しで砥石に食い込むのが収束して行きました。

 

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黒檀の柄と鞘で、水本焼きに相応しい装い。ピンの材質も御揃いです。

 

 

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全体的には大きな問題は見受けられず。

 

 

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切り刃もかなり均等に厚みが抜かれており、切っ先に向かってテーパー状。敢えて言えば、刃先へ続くハマグリの開始位置が急角度だった点、それとは逆に最先端の角度が僅かに鋭角(この鋼材の仕上がりとしては)だった様に思います。

 

 

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裏は捻じれの関係かやや不安定。あとは変色など。

 

 

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一番目立つのは切っ先周辺。本来は刀の帽子状のデザインですが、厚みを抜くのと切れるように研いだ様子。通常、磨く程度で砥石は当てない部分でしょう。

 

 

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拡大しても、欠け以外の部分は良く研がれて居ます。しかし最終角度はやはり、ベタ気味の鋭角。刃先の欠けや捲れに繋がり易いですね。

 

 

 

今回も、荒砥を使うまでも無くキングハイパー1000の硬軟二種からスタートです。それで更に厚みの最適化を図り、切っ先の成型・刃先の欠け取りを行ないます。

 

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後は天然砥石です。切っ先を但馬砥で研ぎ進め。

 

 

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切り刃を柳用砥石で均して行きます。此れは蓮華・ナマズ入りの敷き内曇り。柔らかく研ぎ易い上に仕上がりも良いので、初期の全体的な均しや最後の纏めに向きます。

 

 

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他にも標準的な敷き内やナマズ・卵寄り(此れはやや硬い割りに今回、良い相性)で、部分毎や個別の課題毎に対応。

 

 

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続いて従来からの本焼き用白巣板蓮華巣で仕上げようと考えていたのですが、相性がいま一つ。急遽、最近のも取り混ぜて調子を見つつ進めます。

 

 

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裏押しにも2~3、試しましたがもう一声ですか。此れはその内の一つでS様に御送りした裏押しに適す硬口にかなり似た質の物。この段階では未だ裏が不安定だった様子。

 

 

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上(中山)で傷消し・中(奥殿)で仕上げ、下(中山)で裏押しはまずまず。

 

 

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この時点で終了としても良かったのですが、切っ先の状態と欠けの痕跡が気になり、研ぎ直し。特に切っ先の仕上がりが切り刃に対して合っていない気がしました。

 

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関で使っていたGC砥石(800・1000・1200・1500)

 

 

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頂き物の白のボタン

 

 

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白の目白

 

 

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ボタンは良く下ろしますね。目白は硬く細かく、合砥の様。

 

 

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刀の帽子で云う所のナルメでしたか、そんな感じの研ぎ。

 

 

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本焼き用(地金には優しくなく、刃金を良く下ろす)コッパで研ぎ目を細かく。

 

 

 

 

 

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最後は奥殿の蓮華巣板で切り刃を仕上げ、裏押しはカラス入りで仕上げました。工場出荷時の形状とは違うかも知れませんが、持ち主が今後研いで行く上で、自然に形状を維持し易いと思われる物にしました。

一番大きな欠けの名残や、刃先が2~3の僅かな乱れ程度に収まった時点で研ぎを留めました。普通に御使用頂き刃先の研ぎを数回、行なって頂ければ解消されるでしょう。

今回の切り刃と切っ先の研ぎ上がりに付きましては、御依頼主の判断を仰ぎたいと思いますが先ずは、この度も御依頼頂きまして有り難う御座いました。

 

 

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S様

メールでも記載しました刺身包丁の種類に因る使い勝手に付きまして、他にも気になる方が有るやも知れませんので、此方にも一部転載させて頂きたく思います。

柳に比べて切り方での違いが出易い様な気がします。柳は対象に当てながら引いていけば、ある程度自然な切れ込みをしますが、蛸引きは「弓切り」を明確に意識する必要が有ると。先ず柵を俎板の手前ぎりぎりに置いて、更に柵の手前ぎりぎりに包丁を構えます が、包丁の刃元を柵の角付近、切っ先は柵の上空の60~70度の角度で立てます。そこから、包丁を引きながら倒して行くのですが「柵と包丁の 接触点」の視点からは、回転鋸の刃が進んで来る様に感じるようで無ければいけません。この場合の蛸引きでの難しさは、直線的な刃線を動きにより曲線的に作用・接触させていく運行を強いられる部分でしょう。

蛸引きよりも(殆どの刺身包丁よりもですか)反りのキツイ先丸では、前後へのスライド(押し切り・引き切り)を伴わない「押し付け」だけでも対象に切れ込む効果が期待されますが、逆に刃線が先へ行くに従って後退している訳ですので、刃先の接触点を常に維持して(引き切りで)切り進めるのには極端に言えば、他の包丁より押し付け 続ける努力を要する事になります。蛸引きは蛸引きで、先丸は先丸で、各々に扱い方は違えど独自の難しさが有る事になります。

代わりに、柳や菖蒲よりも刃幅が狭く薄めである事の多い蛸引きや先丸蛸引きは、対象へ切り進んでいる最中 の方向転換や角度の急変を受け付けてくれると思います。特に先丸だと、接触するのが面>線>点の関係性で言う所の後ろ寄りになるでしょうか ら、自由度が高いです。その特性を活かした使い分けを試して頂ければと思います。但し、柳の複合的な刃線カーブと先細りの切っ先は、取っ付き易さと万能性で誘惑が強いと思いますが。

以上は、之までの経験・知識から自分が理解している程度ですので拙いとは思いますが御参考になれば幸いです。因みに以前、私の先生は刀で切る際の刃の運行・軌跡につい て、刺身包丁の刃の働かせ方との関連を指摘された事があったように記憶しています。

 

 

三度、御依頼を頂きまして

 

 

以前、小刀と和剃刀の研ぎ依頼を頂きましたI様より、更に御問い合わせが。一転してアメリカンナイフの古典的なモデル、BUCK社の110です。

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ナイフ好きの方には説明の必要も無いフォールディングナイフで、勿論?自分でも持っています。父親の持ち物でしたが、アルマーのフォールディング(SERE)が大き過ぎたので交換しました。その後、チタンモデルや112?も追加した経験があります。

今回、アウトドアでは使う予定は無くいので、代わりに紙がすうっと滑らかに切れるのが御希望と。

 

研ぎ前 刃先

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皮砥で仕上げた結果、切れが今一に・・・との事で、角度を鈍角にしてしまったのが原因として考えやすいですが、初期の小刃(エッジ)角度がやや鈍角であったのかも知れません。アメリカのファクトリーナイフでは割合、多いパターンだと思います。

 

研ぎ前 刃先拡大

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角度を変えて、拡大画像の二枚。かなり、狭い範囲で其の割にきついカーブで砥石あるいは皮砥が当たっている様に見受けます。

 

 

今回の使用砥石、人造から。シャプトンの1000と2000。

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刃先の角度の再調整と僅かな刃毀れ取り

 

 

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そこから、研ぎ目の微細化とミクロのハマグリ気味に

 

 

天然は右から丸尾山の、薄っすら黒蓮華(墨流し模様入り)・戸前・田村山の戸前

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黒蓮華に硬めの伊予砥名倉

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丸尾山の戸前に卵色巣板(紅葉)名倉

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田村山の戸前に卵色巣板(紅葉)名倉

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研ぎ後 刃先

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研ぎ後 刃先拡大

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今回の鋼材(元は425モディファイトで現在は420でしたか)と、使用した天然は予想以上に相性が良く、研ぎ易さと仕上がりの良さに感心しました(合わせた名倉の後押しも有るでしょうが)。

このセットは狙ってはいたのですが、ウィーンのイベントで向こうの包丁(大半が硬さ控え目)に効果的だった組み合わせです。そこで、近い硬度であろうと試した結果、覿面だったと言う訳です。

 

 

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一応、御希望に副って紙が滑らかに切れるとは思いますが、更に髪も切れる程度には正確な刃先になって居ます。極端に其れに特化した鋭角研ぎでは無い為、材質にも因るかも知れませんが・・・。しかし、代わりに通常ナイフが相手にすると想定される対象には問題なく使えるでしょう。アウトドアも含めて。

料金的には、刃渡りが8.5cmで状態が1cm当たり100円レベルでしたので、8.5cm×100円+税で、918円でした。

 

 

I様、この度も有り難う御座いました。この仕様がお好みから外れていた場合は勿論、研ぎ直し致しますので御遠慮なく御願い致します。

 

 

 

北海道からの本焼き柳

 

北海道から本焼き柳の御依頼で、鮪の筋への切れと身離れを改善したいとの事でした。お手持ちの合わせの方では問題無いそうですが、其れとの差異が不明確でも有り、私の本焼きの研ぎ基本路線でお任せとされました。

切り刃は極緩いハマグリで、刃先近辺(3mm前後)から徐々に刃先に掛けてきついハマグリへ。切り刃と刃先の二段階のハマグリは双方、刃元から切っ先に向けて厚みと角度を減らして行きます。最終刃先角度は元側50度、中央40度、先側30度前後です。

 

到着時、刃先の厚みはかなり抜かれており、軽く糸引きが入っている様子でしたが、裏と表に恐らく製造段階のラッピング的な名残りが原因してか、紙の束には余り切り込めない状態でした。刃先・・・特に切っ先などは鋭利でしたが、やや滑り加減である事に加えて切り刃の抜けが不足している抵抗感がありました。

研ぎ前 全体

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刃部 アップ

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刃先 拡大

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切り刃の厚みの不均等は少な目でしたので、最初はキングデラックス1000と1200で

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ほぼ柳専用と化している細長シリーズ(白巣板ナマズ)と小鳥砥の名倉

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細長シリーズ(敷き内曇り)

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細長シリーズ(敷き内曇りの卵寄りでやや硬し)

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本焼き専用のやや硬口巣板(白+敷き内)

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千枚で傷消し・・・の筈がもう一つ・・・。

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研磨力+仕上がりの白巣板ですが追い込み切れず。

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白巣板蓮華の一つが覿面でした。良く食い付き、研磨も速いのに仕上がりが綺麗。

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最後は、鏡面青砥で裏押し(一本松戸前の名倉)

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研ぎ後 全体

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先側 刃部

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刃部 アップ

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刃先 拡大

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今回は、荒砥の必要性が無かった為に一寸当たり2000円となりました。刃渡り(刃の実測)が32cmだったので、料金は2000円×10.5寸+税で22680円でした。因みに所要時間は8時間ほど。

 

 

北海道のS様、この度は宝物の柳をお任せ下さり、有難う御座いました。合わせの方に負けない働きをしてくれると良いのですが。特性(製造法・刃の付け方)が違うと思われますので、其々の適性に応じた活躍を期待し、又それを楽しんで頂ける事を願っています。

添付しました画像の仕上がりに御喜び頂き恐縮ですが、現物が届いた際に、確認画像に劣らずの外観であれば幸いです。研ぎの御依頼、並びにブログ掲載への御協力に感謝致します。

あと、天然砥石の世界へようこそ。違いが分かると楽しいと思いますよ。御注文の砥石も狙い定めて選別してきます。其れまでは、御手元に届いたばかりの砥石達と親交を深めてお待ち下さい。

 

本職用でしょうか、牛刀の御依頼

 

信州から牛刀の研ぎ依頼を頂きました。

芯材は銀紙3号の様です。其れを両側から挟んでいるのもステンレスですが、それ程軟らかい物でもありません。しっかりした手応えは有難いですが、製造段階の研磨痕が結構な深さなので、もし取り切ろうとすれば手強くもあります。

送られて来た時点で、既に刃先の厚みもかなり減らされており、鋭さも充分以上。但し刃毀れがそれなりと云ったものでした。しかし切れ・長切れ・抜けを両立した仕上げをとの御依頼でしたので、刃先2~3mmの調製幅(充分な切れは出ますが)を超えて研いで行きます。因みに、これにより1cm当たり100円でなく1cmあたり200円のコースとなります。

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刃先より少し中央寄りを触ると厚みの不均等、つまり元から切っ先まで自然に減少していない。刃元3~4cmと切っ先手前4~5cmが薄く、中央15cm余りが余分に厚い状態です。加えて、その中央部分も一様ではないので、平面の出た砥石を当てると山と谷(凹凸)が現れます。和包丁の切り刃で言われる所の笑窪状ですが、これらは刃幅の半分程度から下での事です。それより峰側では又、グラインドが変わっている様子にて、其処までの範囲で調整して行きます。

第一段階はシャプトンの1000番で、刃幅の3~4割刃先側の厚みが余分に残る部分を研ぎ落とすと同時に、刃毀れを小さくします。ここで前述した山や谷が出現するので、元から順に高低差が在るなりに整えます。刃元より、中央部最後部を減らすのは不可能なので、此処の対処は刃先2mmの範囲で厚みの変化の代わりに角度の変化で補います。(和包丁で行なう、切り刃による調整と刃先による調整の合わせ技)

中央部もなるべく切っ先に行くに従い厚みを低減していきますが刃幅中央から峰側は、より厚い状態が山脈状に残っており、其方との面構成が極端に違えば切断時の抵抗や切断面の乱れに繋がります。ですので、飽くまでも双方のバランスを見ながら程々に収めます。

第二段階は同じ手順をシャプトンの2000番で繰り返し、研ぎ目を細かくすると同時に刃先の欠けを取りきり、刃先角度を元40度・中30度・切っ先20度で鈍角から鋭角に、滑らかに変化を付けます。勿論、刃先2mm前後と更に上部が繋がる面はハマグリです。(あと切っ先が欠けていたので電着ダイヤと1000番・2000番で形成し直しています)

第三段階は此処までで触った全ての面(結局全面に渡りましたが)を耐水ペーパー400番・1000番・1500番・2000番・研磨剤(三段階)で研ぎ目を消して行きます。この際、各ペーパーで厚みの最終調整を意識しながら進めて行きます。

第四段階は、之までで作って来た刃先の再加工を黒蓮華で行ないます。より細かく、より滑らかに、より刃返りを出さない様に。

第五段階はカミソリ砥により最終仕上げとします。(大谷山戸前浅黄+卵色巣板紅葉の共名倉)

 

 

 

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信州のS様、以上が仕上げる工程の御説明になります。確認画像では申し分ないとOKを頂きましたが、返送後に使用し、性能でも御満足頂けましたら幸いです。この度は有難う御座いました。

 

切り出しと入れ違いに日本剃刀を

 

前回の切り出しを返送後、日本剃刀もとお送り頂きました(之も岩崎ですね)。いつもの常連さんからの二本(御本人+御友人所有の包丁)を挟んで取り掛かりました。内容的には、表の研がれた部分の均一化なども含まれていましたが、本格的な事は見合わせました。

裏と違って砥石に当たる面積が小さくないと切れに直接影響する訳では無いし、元の状態(作成時の梳きの入れ方や刃体の厚みの精度)から来る物を修正するには、適切な道具や工具が必要となる上にリスクもあるからです(加えて作業が長期間になり、料金も比例して上がります)。ですが、研ぎの工程に於いては平面に悪影響が出ない範囲で、出来るだけ砥石に当たる部分を揃える方向で作業する事に。

 

研ぎ前 表 画像

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表 刃部

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表 刃先 拡大

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研ぎ前 裏 画像

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裏 刃部

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裏 刃先 拡大

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今回は、形状がかなり整っており、刃先の研ぎ目も細かめに研がれていたので、シャプトンの2000番からのスタートでした。

次に、白巣板各種(黒蓮華・墨流し・巣無し)で前段階の傷を消しつつ、面を整えて行きます。その後、本戸前と共名倉にも使ういきむらさきで更に研ぎ肌を細かく。

最終は千枚を挟んで大谷山(共名倉は前述のいきむらさき)です。千枚は、少し久々に引っ張り出しましたが、緻密な鋼材をよく鍛造されている刃物相手には独特のぐいぐい来る研ぎ心地で、今回の玉鋼が良い状態である事を伝えてくれました。

本来、剃刀は毛は切れても肌を切らない様に刃先を僅かに鈍角化したりするものですが、実はこの剃刀の用途は刷毛の毛先の調整との事で、返りを取って完了としました。

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研ぎ後 表 画像

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表 刃部

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表 刃先 拡大

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研ぎ後 裏 画像

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裏 刃部

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裏 刃先 拡大

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料金的には、状態に鑑みて一寸当たり1000円基準、刃の寸法が5cmでしたので1.5寸として1500円+税の1620円となりました。

 

I様、引き続いての御依頼、感謝に堪えません。使用に際して、御希望に叶いましたら幸いです。有難う御座いました。

 

 

切り出しの御依頼で

 

特にブログ記事では、砥石の試し研ぎに今井義延作の切り出し等を多用する為か、切り出しの御依頼を頂きました。

片方は二代目の千代鶴さん(乱菊)、もう一つは岩崎の刻印があります。依頼内容は、岩崎の刃毀れを無くし、乱菊を切れる様に。との事で、切り刃はほぼ平面に研ぎ、最終は巣板で仕上げようと纏まりました。

 

乱菊 研ぎ前 表

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乱菊 研ぎ前 裏

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表 アップ

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表 刃先拡大

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裏 アップ

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裏 刃先拡大

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岩崎 研ぎ前 表

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岩崎 研ぎ前 裏

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表 アップ

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表 刃先拡大

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裏 アップ

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裏 刃先拡大

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シャプトン・キングハイパー・キングデラックス(1000・1200)で刃先を整えつつ平面度を向上

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白巣板・敷き内曇り・黒蓮華の系統で中砥ぎの傷を消しながら更に面を揃えていく(実際には下画像の砥石達を使った後、小さめの巣板を倍程度並べて砥面の崩れと相性に留意し仕上げました。今回は完全平面までは追い込まない仕様でしたので、平面用卵シリーズは活躍せず)

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乱菊 研ぎ後 表

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表 アップ

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表 刃先拡大

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乱菊 研ぎ後 裏

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裏 アップ

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裏 刃先拡大

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岩崎 研ぎ後 表

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表 アップ

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表 刃先拡大

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裏 アップ

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裏 刃先拡大

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作業完了後、確認用に上の様な画像を添付の上、メールでお知らせするのですが、その後で自分的に納得し切れずに研ぎ直す時があります。今回の場合(岩崎)もそうで、もう少し刃先を整え、それ以上に面精度を高めたくなって仕上げ直しました。ですので、最終的に現物は上画像とは少し違っていると思います(目視での研ぎ肌・切れは向上)。

料金的には、到着時の所見で乱菊の方がやや面が揃っていない様にに見えました(特に裏)ので、一寸当たり3000円。岩崎は一寸当たり2000円と提示しました。結果、前者が刃渡り7センチでしたが二寸として6000円+税。後者は(刃渡り6センチ程で二寸として)4000円+税でした。

実際は乱菊の面は予想より少しましで、逆に岩崎が(切り刃の面積が狭いからか)やや捻じれ取りに梃子摺りました。前述の仕上げ直しは之の名残に納得がいかず乱菊に近く精度を上げる為でした。

東京のI様、この度は御依頼有難う御座いました。あと、返送と入れ替わりにお送り頂いた方の処置は御相談の上、と言う事になりますのでメールでお示しした所感を参考に御判断頂きたく存じます。

 

今回も、まだ新しい二本

 

 

偶々ですが、前回の物に近く磨耗・損傷が少ない包丁(料理人の銘を冠した二本組)の研ぎ依頼を頂きました。

お問い合わせ段階では添付画像から見て、菜切りタイプの方が和包丁的に研ぎ下ろす必要アリかとも思われましたが、到着した現物は一見して刃先主体で問題なしと判断しました。

よって洋包丁基準、それも1cm当たり100円コースで承りました。料金としては三徳型が17cm、菜切り型が16cmですので、それぞれ税込みで1836円、1728円となりました。

 

 

構造的には、ステンレスの地金で恐らくセミステンレスを挟み込んだ三層利器材(クラッド鋼)かと思われ、それを物語るように刃金部分のみ薄い変色と浅い錆があります。

研ぎ前 全体

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研ぎ前 刃部

 

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研ぎ前 刃先拡大

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研ぎ後 全体

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研ぎ後 刃部

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研ぎ後 刃先拡大

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研ぎ前 全体

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研ぎ前 刃部

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研ぎ前 刃先拡大

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研ぎ後 全体

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研ぎ後 刃部

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研ぎ後 刃先拡大

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先ずはどちらも、小割りした巣板で刃金部分の錆をざっと落とし、ステンレス部分は汚れ落とし・研磨痕の微細化を狙って研磨剤(クリームクレンザーの後、パールクレンザー)をかけました。

次にシャプトンの1000番で欠け・磨耗を研ぎ落とし、新聞の束でテストしながら刃先の厚みや角度の調整(刃元から切っ先へ漸減)をします。

基本的な形が整うと、続いて天然砥石による更に細かい調整と研ぎ目を消す作業です。通常の標準仕様の巣板で仕上げるとやや甘い感触。そこで硬さ・研磨力のある本焼き用の巣板で仕上げました。

もしも地金ごと研ぎ下ろす必要が出た場合、砥石の方から刃物形状に寄り添ってくれるタイプとは異なるこの砥石では、刃金・地金を同時・一律に仕上げる事は困難でしょうが、今回は対象が刃金限定なので良い仕事をしてくれました。

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同市内、やや北のI様、此の度は御依頼、有難う御座いました。深い錆が出難いタイプとは言え、出来れば刃先の水分除去に更に留意頂けると、刃金部分の傷みが大きく変わってくるかと思います。それ以外の切れ・刃持ち・柄の耐久は心配ない包丁の様ですので。

 

新品に近い包丁

 

携帯が傷んだので買い替えを考えてショップに行くと、パソコンの接続(~光り?)も一緒にどうか?と言われました。全く素人なので、パソコンその他で御世話になっており、研ぎ依頼の常連様でもある人に相談し、その方向で行く事にしましたが、他にも一つ提案を受けました。

砥石で楽しんでばかり居ないで(とまでは、言われませんでしたが)「研ぎの料金が具体的に分かる表示なども有る方が親切では?大まかにはホームページに記載されているものの、参考は幾らあっても良い」との事でした。そこで今後は、記事にさせて頂く場合は可能な範囲で掛かった料金を表示していければと思います。今回、御依頼頂いた包丁も表示許可を得ての記載です。

 

兵庫県のI様より研ぎ依頼を頂いた包丁。二年前に購入してから研いだ事は無いそうですが、其れにしては傷や磨耗も特に酷くありません。刃に掛かる負担が少ない使い方だったのでしょうか。

 

全体

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刃部

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刃先拡大

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御依頼時、添付された画像からは和包丁仕立てに見えるので、切り刃から研ぎ下ろしが必要な状態なら和包丁基準で、一寸当たり(状態により)1000から3000円。しかし損耗が少なく、刃先のみの研ぎで済むなら、洋包丁基準の1cm当たり(状態に応じて)100円から200円。と返信しました。

現物が届いてみると、前述の通り刃先の痛みが少ない。しかし、洋包丁基準となった最大の理由は、切り刃が結構な度合いでホローグラインド(刃の断面が内反り)に成っている事でした。グラインダーや水研機による初期刃付けで多少ホロー気味に・・・と言うレベルで無く明らかにそれを意識していると思われます。つまり、これは切り刃をベタ研ぎやハマグリには限りなく出来ないと考えるべきで、特に減りが少ない段階では現実的ではありません。

結果、今回の包丁は16cm弱の刃渡りで損耗の少ない洋包丁基準(1cm当たり100円)となり、15×100円+税の1620円となりました。

 

 

平は割合細かい研磨痕でしたが、より食味に貢献する様に研磨剤とラッピングフィルムで少し磨き、切り刃の少量の汚れもざっと落としました。今回は刃先のみの研ぎとは言え、其処は長切れと刃の通りを意識して、峰側から刃先側にかけて徐々にきついハマグリ。刃元から切っ先へかけて徐々に鋭角に。これで、新聞の束に切り込めなかった初期に対して楽々切り込め、抜けも軽い割には刃持ちも満たす状態になりました。

 

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研ぎ手順としては荒砥を出す必要も無い位で、シャプトンの1000番・2000番の後に巣板という標準的な流れで進みました。しかし違っていたのは、鋼材の硬さは確かに中庸ではあるものの、其処から推測出来る以上の返りの出易さ。ここは最終の大谷山(カミソリ砥)に行く前に若狭の浅黄(田村山戸前?)で何時もより一段、返りを小さくしてから仕上げました。

 

 

 

全体

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刃部

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刃先拡大

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この包丁の印象としては、硬さ・組織の緻密さはまずまずという感触からの予想を超える切れで、少し驚きました。加えて、特別に長切れを狙った仕立てでは無くても、この研ぎ易さならば頻繁に研ぐ必要のある状況も苦にはならないでしょう。

I様、この度は御依頼頂き、又記載に際しても快諾を賜り有り難う御座いました。包丁に無理をさせずに使う、そんな使い手の負担を低減する様な研ぎに成っている事を願います。