以前から、自分の砥石選別に関して二・三、依頼や問い合わせがあり、それらに応える形で本日、砥取家にて幾つか砥石を選んできました。
ホームページや砥取家経由などで問い合わせてきた一般の方には情報提供で対応していますが、今回は知り合い三人からの要望に即した選別を行いました。「噛み付くような巣板」や「キングの1000番に繋ぐ包丁に向いた巣板」、後は「手放した極上の本戸前と同等品」です。
画像は、「白巣板巣なし」(厚物30型)です。所謂「巣なし」の構造は鱗片状に積層されているらしいのに対し、これは普通の白巣板の砥粒構造に近いようです。その為、刃金は勿論、地金にも斑が出難く研ぎやすい上、泥の質や出方が邪魔になりません。さらりとした適度な泥で、上滑りしたり断続的に突っ張ったりせず、均一な滑りで黒い研ぎ汁を出してくれます。黒蓮華系統ほどには滑走感が強くも無いので、圧力やスピードを一定にして研ぐ際に適しています。之まで、同様の砥石は敷き内曇りの混じった物しか手元に置かずに来た理由が、刃物(特に地金)を選ぶ気難しさを嫌っての事でしたが、この砥石には無縁の様です。更に、性能だけでなく形状や色・柄共に文句無く、間違いなく自分の経験上、最高の「白巣板巣なし」でした(「巣なし」の癖を求める人には物足りないかも知れませんが)。
画像は「卵色巣板」に蓮華が混じっています。サイズ的にはレーザー型に近いでしょう。質としては、卵寄りの敷き内曇りに近いかと思われます。その為、恐らく純然たる卵色巣板よりも研ぎやすく、刃金を良く下ろしてくれる特性の様に感じました。(和・洋包丁問わず適す)
もう一つ、少し小さいですが特に質の高い「白巣板」が在りました。
上の卵は表面上、ぱさっとした当たりで、さらりとした泥が出ると思いますが、こちらはすべすべした当たりで泥はややとろっとしており、より地金を斑無く綺麗に研ぎやすいと思います。(炭素鋼和包丁向き)
あと一つは、「本戸前」です。前回薦めた物とほぼ同様の、朱と濃紺と緑灰色の「色物」で、自分が特に好む本戸前の三種の一つです(他は「浅黄」と黄褐色の「八枚風」)。只、細かさや仕上がりは同等ですが、僅かに硬いので、扱い易さは前回の方がやや上でしょう。しかし泥が少なく、上級の方には却って研ぎ易く感じるかも知れません。二・三、筋が通っていますが、それほど邪魔にはならないかと思います。特に和包丁では影響が少ないでしょう。兎に角、本戸前の上物は合砥としては、刃金は勿論、地金も均一に研ぎやすい稀有な砥石です。
最後に、おまけで付けて貰った切れっ端(加工場で探して来ました)ですが、少し墨流しに蓮華が入っています。蓮華と黒蓮華が半々の白巣板(研磨力と錆び難さが同居する)はかなり、自分好みですが、それに近い感触です。細かさはやや物足りない気もしますが、鉄を吸って硬さと細かさが増せば十分でしょう。
今回の全ての砥石は、「自分が買うとすれば」の基準で選んでおり、想定した相手に選ばれずとも、自前の物としても良い程の性能です。砥取家ホームページにアップされずに残っていたのは、今後の採掘予定を鑑みての事だそうで、誠に僥倖でした(土橋さんにはやや迷惑か)。勿論、想定した相手に気に入られたなら嬉しいですが、どれも資料として確保する(本音は偶に使ったり眺めたりしてにやにやする)に足る品質で、やや複雑でもあります。
掲載されている本戸前ですが、おっしゃるように少し硬めですが、粒子が細かく仕上がりが抜群ですね。
少し泥を多く、水を少なくして研ぐのが私は好みでした。
非常に性能は八枚に近く、千枚の鏡面にほんの少し及ばないものの、産出量からするとこちらの砥石の方が手に入りやすいのかもしれませんね。
巣板と研ぎ比べましたが、顕微鏡的には双方ほとんど無傷に仕上がるため変わりませんが、表面粗さが違うことが肉眼で確認できます。
平面を出す切り出しなどの研ぎには迷わず使う砥石になりそうです。
本戸前がこれだけいいので、敷き戸前や天井戸前も非常に気になりますね!!
月山様
好みに合う砥石だった様で何よりです。自分が好きな種類の石を褒められると我が事のように嬉しいもんですね。御感想の通り、研ぎ上がりの外観は巣板系統と割合近くても差はあり、素材を切っても特に白身の刺身ではストロークに差が出ます。紙でも少し繊細さが出る感じがします。但しそれを神経質な切れと捉えると好き嫌いが分かれます。
以前、其方のブログにもコメントしましたが、九月に戸前祭りの日(加工途中の戸前系統ばかり三十個前後は揃っていた)があり、三つほど極上品を持ち帰りました。天上と敷きですが、本戸前とはかなり違いがありますので、別物と考えて欲しい所ですが、その個性が好みに合えば又、新たな楽しみが加わる事と思います。
村上さん今回の巣無し白巣板は、今迄の中でも最高ですね(^-^)/
砥泥も邪魔にならず,しっとりとして酸化も早く、粒子も細かい様に感じます、そに上良い刃が早く付いています(^-^)/
内雲も楽しみですね(^-^)/
前に話した砥石は、最初此れは硬い…?砥泥が出ない…?此れは硬いのでは?しかし砥泥が出た途端に食い付く?研ぎ感が豹変して研げる(食い付くと表現しました)。
天上・敷き戸前気に成りますね、紫色天上戸前とも違いますか?
小鮎様
今回の物は、正に御感想の通りの砥石だと思います。只、鉄分を吸ってやや硬さ・細かさが増してからが神髄ではと感じました。主たる用途が剃刀と言う事であれば、その方が相応しく、又、研ぎ感が豹変気味になるか?とも思いました。
食いつくのは某師匠の蓮華入りでしたでしょうか?自分の感覚では、やはり敷内曇りの方が研磨力が強いし、特に刃金を下ろす狙いならそちらかと感じます。まあ得意分野でも有り、その方面で当たってみたいと思います。
「天上戸前いきむらさき」は、やや癖がある、と言うより明らかに紫の部分とそれ以外で質の差異を感じる物も在り、選別に際しては個々に許容範囲を見極める必要があります。直近の戸前系統はほぼ全て緑灰色です。自分は千枚(っぽいグレーの層)と表裏になっている恐らく天上戸前?(場合によっては敷の可能性)と、千枚の代用になり得る恐らく敷戸前のこっぱを手に入れました。あと、以前買った天上のいきむらさきと大上原石をセットにして極上の敷戸前と交換して貰いました。敷戸前は幾つか買ったり試したりしましたが、之まで数年の丸尾山砥石の経験上、ベストな物で、自分の用途に絶対必要では無いにも関わらず、確保してしまいました。硬さ・細かさ単独では上回る物も在ったかも知れませんが、かなりの硬さで且つ細かくても上滑りせず、切れや仕上がりに不満の無い性能です。研ぎ減りや面直しでも減りが少ない弾力のある硬口で、姿形も裏の一部に浅い欠けが在るのみで、他の二つと同様、裏表共、自分で面を付けましたが綺麗な30型です。今度、見て貰いましょうかね。
村上さん今晩は、
確かに、R師匠の蓮華巣板です(^-^)/
今度戸前を見させて下さい(^-^)/
小鮎様
今晩は。了解しました。
小鮎さんに見せる砥石は、性能だけで無く姿・形(直方体・サイズ)も整っていないと気が引ける様な感じで少々プレッシャーも有りますが、それだけに適合する物を探し出せた時は達成感も大きいです。自分用を見に行くのんびり感も良いですが、依頼品を選別しに行くのは又、張り合いみたいな感覚もありますね。因みに次回の亀岡行きは、数日後になります。