最近、考えた事

 

先日、鹿肉を御送り頂いた北海道のS様とは、研ぎ依頼・刃物自体の御依頼に関しても、遣り取りをする事が有ります。寧ろ、其方をメインとして数年来、主としてFacebookのMessengerを通じて行なって来ました。

数日に渡った今回も、内容に含まれていたのは(定番の話題でも有ります)、砥石に印を付けろと云う物。つまり好い加減、私が選別して来た砥石が判別可能な様に、判子か何かを押したらどうかと。此れは、其れこそ数年前から複数名に言われ続けて来た事です。しかし、簡単に首肯する気持ちには成れずに来ました。

理由は幾つかあるのですが・・・例えば刃物で言えば製造者(砥石の場合は採掘・加工と成りますね)こそが銘を入れる権利が有るとの意識が強かったからです。刀剣での例示は汎用性に欠けるかも知れませんが、それらには通常、鍛冶屋が中子に銘切をするだけでしょう。刀身(刃体)に他の誰か・何者かの影がチラつく事は稀です。ですので、基本的に(日野浦さんにも以前、言ってしまいましたが)刃物の表面には錆・汚れ・強度低下に繋がり得る、如何なる印章の刻印や銘切も無いのが理想だとの思いも有ります。

勿論、大昔の地域密着の無名の作では無いのだから、近現代の製品に其れを求めるのは無理な事も理解はしていますが(中子だけに銘を入れたら確認できない物も多いですから)・・・其れも有って、自分のブランドの包丁をプロデュースしたらどうか?との提案にも乗り気に成れませんでした。幾ら、己のアイデアや知見からの新機軸と成り得る要素が盛り込まれていたとしても。(日野浦さんには、昨今の災害への対応を主眼とした鉈への言及はしてみたりしましたが。)

砥石に話を戻すと、誰が選別したかを明らかにした印としては、浅野さんでしたか、白名倉に検と押された方がいらっしゃった様ですね。斯界の御大であるのでしょうか、信用や安心を求めて其処に拘って入手されているやに御見受けしています。翻って、私は只の砥石好き(ヘビーユーザーとは言えるでしょうが)が高じて、砥石遍歴の一環としての産地詣でや採掘・加工の体験も重ねて来たに過ぎません。その程度である自分が、印を入れる根拠や正当性に確証が持てない部分は少なからず有りました。

実際、私用に判子を作ってやろうと言って頂いた事も有ったのですが、上記の理由で一歩、踏み出せなかったのですが・・・之まで砥石の選別依頼を頂いて来たS様、更にS様を通じて沢山の砥石を御送りした結果、得られた評価を鑑みて(その他にも御満足頂いて来た方々を含め)考えを変える正当性を得られたとの手応えを感じました。加えて従来、知己を得た天然砥石の採掘をしている方々からは、仕上げ砥の選別に付いての目利きで否やは無かった事も挙げられます。

 

此処で最初に戻るのですが、S様から判子を急かされた流れで苦し紛れに、或る物を思い出して画像を送って見ました。意外と?高評価で、もう此れで良いのではと感じた位だったのが、仕事として研ぎを始めた頃に作って貰った社判みたいな物と認めみたいな物。後に実印にする為の判子も作って貰った店で仕立てた、領収書などに押して来た奴です。丁度、余り稼働していない事も有って?好都合かも知れません(笑)。

しかし、詳しく無いので判断は店側に確認してみるつもりですが、(砥石への捺印?に際して)此の形状や書体に問題が有る様ならば当該の物に準じた方向で新規に頼まないと行けないかも知れません。結局、作る事に落ち着く可能性も有りますが、今は心理的な負担が過去とは歴然と違います。偏に、S様はじめ過去に砥石選別に関して御評価下さった方々の存在、其の延長で私の選別に特別な意味を見出して頂けた方々からの率直な気持ちを届けて頂けた事で決心が付きました。之までの皆様に感謝致します。

 

 

KIMG0462

あ、此れでは無くて、同時に作って貰った下の奴です。(因みに、ホームページにも記載したかも知れませんが、殆んど電話には出られずに済みません。)

 

KIMG0464

普段は、黒で上の判子・朱肉で此方をセットで押していました。此れで行けるかどうかは不確定ですが、大丈夫で有れば有難いですね。新たに作ると又、出費が・・・(笑)。

此の先、選別の依頼を頂いて入手した砥石に付きましては、上記の様な仕儀から、妥当と思われるに至った判を押す事に出来ればと思いますので、宜しく御願い致します。必要無い方は予め御断りを頂くか、多分消せない事も無いでしょうから除去する方向の御好みで御願い出来ましたら幸いです。

状況にもよりますが・・・差し当って一番に適用されそうなのは近々、出掛けたいと思って居る高雄で探す予定の、S様からの御依頼品です。私の取り置き分も入手したい所ですが、もう少しばかり御待ち下さい。そして春には、T様にお譲りした自分用砥石の代替品を含めて幾つか、舞鶴へ探しに行きたい所でも有ります。

 

 

 

 

 

「最近、考えた事」への8件のフィードバック

  1. H様

    確かに、記載内容に過誤は有りませんね(笑)。しかし、より風情のある方向で(荒走り)(中汲み)の方が・・・と、此れでは日本酒に成ってしまいますか。

  2. 初コメント失礼します。
    S氏にお借りした村上様の御選別の砥石の性能の高さに感動しました。

    S氏のよく言う信頼と安心村上様選別の証の村上印、名案かと思います。
    私も村上様御選別を手にする機会が巡って来そうで楽しみにしております。

    スライサーも良いお返事ある事祈っております

    1. 北の洋包丁様

      コメントを有り難う御座います。此れまでもS様には色々と御世話に成って居ましたが、更に新たな御縁に繋がったとしましたら、有難い事と存じます。

      本日、選別してきました砥石達が、御希望に沿う性能の物で有りましたら、幸いです。御手元に届く迄は、もう少しの御待ちを御願いしたいと思います。

      スライサー(筋引き)に関しては、一両日中に又、問い合わせてみる予定で居りますので、宜しく御願い致します。

      1. お忙しい中で選別をに足を運んで頂いたと聞きました。感謝しております。
        村上様の選別された砥石達楽しみにしております。

        お持ちの天然砥石達の村上様の見解が記された楽しく拝見しており、沢山の更新待ってます(笑)

        1. 今回は久々に、徹底して探すことが出来たと思います。丁度、加工途中の物を提示して貰いましたが、其れが相当に優れものだったり、最後には「此の種類で大き目、扱い易いのが要るから」と言って原石から切り出して貰ったりしました。その他、偶々ですが展示施設の砥石が纏められていた棚を、総ざらいしたり(笑)。

          遠からずアップする予定のブログ記事では、改めて砥石の質の確認を兼ね、切り出しを当てて見ますので、そちらも御参考にして頂けましたらと思います。

  3. お忙しい中ご選別有難う御座いました。

    ご選別砥石達は、僕の様な素人でも天然砥石での研ぎの楽しさを教えてくれる素晴らしい砥石です。

    素晴らしい研ぎ肌や、切れ過ぎ注意な刃を付けられたり、村上さんがアドバイス下さる、グイグイ食いつくや、硬いがクッション性が有るなどを感じ取りながら研ぎをするのもとっても楽しいです。

    そんな、ご選別砥石達には村上さんの子供の証である印を押してあげたらきっと砥石達喜ぶと思います。

    タイミングみて、僕の宝物の村上さんご選別砥石達纏めて発送させて頂きますので、かっこいい判子押してください!

    1. S様には、研ぎの御依頼に加えて周囲の関係者他、多くの方々への御紹介をも頂き、感謝致します。

      今回の選別では、以前に御依頼いただいた奥殿の天井巣板への気掛かりも払拭出来て一安心です。当初から、使用上の難易度が高いと言うか、扱い難い要素を承知で御買い上げ頂いたのですが、私としては懸案に成っていました。そのリベンジは果たせたと思いますし、御友人である洋包丁様からの御期待にも、報いられたのではとの手応えを感じました。

      判子に付きましては本日、店舗で相談してきましたので、徐々に進んで行くと思います。私程度の者の印章で、幾らかでも楽しんで頂けるとすれば、やらない手は無いですね(笑)。

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