本焼き用の砥石の選別

 

今回は、かずかずけん様より本焼きの刃紋が出易い砥石を、との依頼もあり、亀岡に行ってきました。

刃紋の程は、現物の包丁を当ててみない事には確実には分かりませんが、自分の経験でその傾向が強いと思われるコッパを選んでみました。

 

 

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上の白巣板二種ですが、どちらも「巣無し」の質との事で、特に下は以前のコッパ(下画像)と同系統で、更に研ぎ易い硬さ・泥の出方をするものです。勿論、最新の白の例に漏れず、鋼を良く下ろしてくれます。

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此方は「敷き内曇り」ですが、かなり卵色巣板寄りの蓮華混じりです。卵の蓮華はやや硬めが多いと思いますが、中庸な硬さで砥粒の質的にも研磨力があるタイプと見ました。

 

 

 

次の二種は、土橋さん的には白巣板の巣無しの質との事ですが、自分の見立てではほぼ、敷き内曇り。しかも、一年程前に合いさや戸前に隣接して採掘された敷き内に近いと思います。当時は、やや硬めであり、かなり鋼を下ろす代わりに粗い砥粒混じりなのか、傷が入り易く感じました。それに比べて今回は研ぎ易さ・仕上がり共に向上しています。

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この二つは、これも以前の下画像のコッパに特徴が似て居ます。ですので、やはり鋼を良く下ろすのは一緒ですが、仕上がりは完全に曇り傾向です。

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以下は、手持ちの本焼きを試した結果です。この包丁では、最初の二種(画像二番目の砥石)よりも相性が良かった最後の二種の内、やや柔らかい方(画像四番目の砥石)で仕上げました。

 

先ずは最初の状態(手持ちの白巣板蓮華仕上げ)

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次に今回の仕上がり

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元々の状態がまずまず刃紋が出ている所からのスタートで、且つ近い仕上がりだった事により、違いがはっきりしていないと思われるかも知れません。しかし、厳密に比べれば後者の方が僅かにくっきりしています。

今回は、刃紋云々よりも全鋼包丁たる本焼きを、より研ぎ易い砥石の方に軸足を置いた選別になっています。と言うのも先に触れた様に結局は現物と現物の相性や研ぎ方次第になるからです。とすれば、刃紋を研ぎ出す手前までの研磨力と傷が消える仕上がり(勿論切れも)を両立した性能が有ってこそ、になるでしょう。それを疎かにしては刃紋どころでは無い筈です。

そう言う訳で、全体としては細かさは申し分無い割りに、硬さと研磨力が目立つ取り合わせです。お陰で合わせの包丁などでは(平面の刃物と比べて)地金に傷が入り易かったり、刃金でも注意しないと刃先に返りが出過ぎたりします。本焼きの切り刃でさえ包丁・砥石共に平面同士でないと研ぎ斑が出る程です(もしそれを完全に消すなら、柔らかい砥石やそれを小割りした物で均す必要も)。この上、更に刃紋を引き立てるには、根気良く様々な砥石や研磨剤で試し、又天然砥石の粉末の配合も調整し、適合するまで長い挑戦・・・・となるでしょう。

 

後はこれらを、かずかずけん様に試し研ぎの上、御判断頂ければと思います。

 

 

 

「本焼き用の砥石の選別」への7件のフィードバック

    1. かずかずけん様

      明日の発送を予定しています。ただ、今回のは敷内蓮華以外は巣無し判定が出て、やや割高になっているのが気掛かりです。どれも、全鋼を研ぐのに持って来いではあるのですが。内容・価格など、よく吟味の上、御判断下さい。遠慮は御無用です。

  1. 村上さん今日は^ ^
    全鋼の包丁自体見かけませんね(四国では)、触ってみたいですが、何処の鍛治屋さんの鋼材は何が良いでしょうか?
    教えて下さいm(__)m

    1. 小鮎様

      本焼きは、自分も限られた物しか経験が無いですが、色々な所の評判から判断しますに、一般的には一竿子・酔心(青木刃物と鍛冶屋が同一ならどちらでも?)など。有名所で玄海さんとかでしょうか?自分の手持ちは柳(尺)と鎌形薄刃(五寸五分)で水野鍛錬所の多分白三(白紙三号)。水焼きかどうかは聞いていませんでしたが、刃先・刃体共に余り硬く無い様なのでどうでしょうか。

      因みに、私が本焼きと思っているのは、炭素鋼のみで製造(熱間・冷間鍛造)され、土置きと出来れば水焼き入れでテンパーラインが出ている(硬度変化を利用した構造)、基本的には和包丁。となります。

      手持ちの本焼き包丁達の使い勝手は、欠けや折れに気を使わずに普段使いし易いとも思います。しかし柄から伝わる刃先が対象に接した感触は、合わせとの違いを感じさせます。切れや長切れは、特に本焼きだから大違いとは感じませんが、砥石と研ぎで大きく変化をさせる事が可能になった現在では、別に拘りも無く付き合っています。

      鋼材は、白一の水焼きの寒打ち(厳冬期に打つ)に止めを刺すとか言われるようですが、白二や白三の水焼きで十分なのでは?或いは扱いが荒い場合や欠け・折れが心配な向きには、敢えて油焼きを選ぶ手もあると思います(現在は水焼きが少ないそうですし)。額面上では白一が最も炭素量が多く、硬く焼きが入り二・三と下がる事になっていますが、製作者によっては生かし切れない場合も考えられ、様々勘案すれば、自分の好きな鋼材・使用目的に合った鋼材をどのくらいの焼きを入れて貰うか好みを伝えて打って貰うのが最良でしょうか。

      とりとめもない内容ですが、そもそも黄金律の様な基準が作れない物だからです。剃刀なら、実用上最高の硬さと切れ味であっても、研ぐのは兎も角、剃る時に欠けさせる使い手は皆無に近いでしょうが、包丁はそうも行きません。結局、維持管理適正使用が可能な範囲で好みと目的に応じて上限一杯まで背伸びしてみる。と言う所になりそうです。

      そうそう、月山さんのラインナップも当たってみた方が良いと思います。形状その他で仕様が(産地別・店側の選択)色々でしょうが、内容が気に入ったなら堺製よりも相対的に割安な設定になっている包丁も多いみたいですので。

  2. むらかみさん、お久しぶりです。
    本焼が続きますね!益々、本焼に興味を持ってしまいます。
    気になったのですが、柳刃の切刃を曇らせてますが、 何か効果が有るのですか?私の柳刃は、毎日研いでギラギラしてますが、刺身が包丁にくっつきやすいのが難点です。また、なぜギラギラするんでしょうか?均一に研げてないのでしょうか?

    1. もみじまんじゅう様

      本焼きがお好みなんですね。私の標準的な研ぎ仕上げでは、切り刃を曇らせている。と言うよりは、包丁を研ぐのに実用的な砥石でそのまま仕上げているからです。本来、中砥の後に巣板(研磨力大・傷消し)、合砥(研磨力小・更に傷消し)と進みます。場合によっては鏡面加工可能な砥石まで使うこともありますが、刃先の状態(ほぼイコールで切り刃全体)が一定以上に細かく滑らかに研ぎ上げられていれば十分と判断しています。そこで中砥の後、研磨力だけでなく傷消しの能力と研がれた刃先性能が巣板以上の巣板であれば仕上がりとしています。

      勿論、刃物・砥石の相性によっては満足いく切れを得る為にそれ以上の合砥・所謂カミソリ砥を使うこともあります。因みに、地金までは難しくとも、刃金なら鏡面近くなる巣板・合砥は結構ある様です(刃物次第ですが)。自分で使っている巣板では曇り・薄曇・半鏡面の三段階くらいの分類です。今回の本焼きは元々鏡面にする狙いは特に無かった事。そして偶々、薄曇に仕上がる砥石と相性が良かった為、そのまま仕上がりとしたまでです。

      ギラギラが、鏡面(ミラーフィニッシュ)を意味しているとすれば、ややザラザラ・或いはスベスベした表面よりは、少なくとも十分な水分が無い状態では張り付くでしょうね。磨いた床とバスケットシューズ的な事でしょうか。多分、水浸しにすれば逆に滑ると思います。そして人造仕上げでの鏡面は天然仕上げの鏡面よりも、少し張り付く傾向が強く感じる経験もあります。しかし更に云えば、青砥仕上げでも巣板仕上げでも、合砥仕上げでも、張り付く時は張り付くでしょうね。其れだけが原因では無さそうです。刃体の形状・切り刃形状・砥石の仕上がり・切り方・濡れ布巾で拭くかもあるでしょうし。あと、均一にギラギラしているなら、均一に研げているのではないでしょうか。

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