説明文 2               (研ぎ屋むらかみHPより)

   刃金の状態とその要因(主として炭素鋼について)

 刃物の性能の要となるのは鋼鉄から出来ている刃金の性能である。つまりこの炭素鋼がどういう状態に熱処理されているかで大きく特性が異なる。例えば硬度であるが、基本的に炭素量が多ければ多いほど硬くなるが、3%前後になってくると鋳鉄の範疇になり、粉末冶金でも無い限り、脆さが顕著になる。やはり1%を大きく超えない辺りが常識的な範囲となる。

 更に焼き入れの適正温度にも妥当な範囲があり、低すぎる温度では硬さは出ないものの、高すぎる温度からの焼き入れでは脆さや、却って柔らかくなってしまう事もある。又、刃物の厚さや形状によって、適正範囲内でも何処を選択するのが最適かの判断は経験が必要になるという。

 その鋼材なりの硬度が出る焼き入れが成功したとしても、そのままでは実用上、圧力や衝撃に対して耐久性に問題が出易いものである。そこで粘りを加える為の焼き戻しが必要になってくる。焼き鈍しは加工性を上げる為に硬度を下げたり、組織の炭化物が大きく育つのを改善するもので、これとは異なる。飽くまでも実用範囲における硬度を保持しつつ、欠けや折れを防止するもので、設定の硬度を下回っては意味が無くなる。

 この方法は、古来からの焼き入れ直後にそのまま炉で低温域内で再加熱後水冷する方法や、現在主流の温めた油に漬けておく方法がよく知られている。炉で温めるには基準の見極めが必要であり、油に漬けるには設定温度と保持時間の選択に掛かってくる。最適な解を見つけるのはどちらも簡単では無い。

 硬度と粘りだけでは刃物を語れないのは、やはりその鋭利さ故に求められる刃先性能が極めて

レベルの高いものになるからだろう。これがある程度の厚さを伴う先端であれば、剛性が助けてくれるし、薄くても硬度が必要ないなら、粘弾性の方に逃げられる所である。

 狭い面積に比較的大きな圧力や摩擦が掛かる刃物には、金属組織の状態が切るという目的に適しているかどうかも関わってくる。炭素鋼とは鉄と炭素が結びついた状態ではあるが、何処を取っても全てが均一な大きさや並び方をしているとは限らない。寧ろ、炭素が結びついた炭化物が大きく成りすぎたり、不均一に繋がり・分散していることもある。その例が、拡大した時に樹状や網状に見える組織である。これが即、質が悪いわけでは無いものの、傾向としてはやはり微細な球状の組織が均一に分布している方が鋭利な刃先の形成と耐久性には有利に働くだろう。

 これには焼き入れ段階で熱処理が適正であるだけで無く、以下の点でも注意が必要となる。

鍛接時の温度を可能な限り低く抑える。又、鍛造時、回数ごとに加熱温度を下げていく事。炉での保持時間を長くし過ぎない。冷間での鍛造を必要なだけ行う事など。金属試験では温度管理と打撃による外力の双方で球状化が認められている様だが、それを鍛冶仕事の中で両立出来れば出来上がった刃物の物性が適正、或いは安定しているのはある意味当然と言える。

  (鍛接温度が高すぎたり、炉での保持が長すぎると炭化物が大きく育つ。又、刃付けや刃研ぎ で温度が上がりすぎると焼き戻りで硬度低下や欠けが出るリスクが高まる。)

 注:此処では、「ロックウェル『かたさ』計」などで計測される金属の所謂『かたさ』を硬度と表記しています

説明文 1               (研ぎ屋むらかみHPより)

 

これまで、幾つか御質問やお問い合わせを頂いたのですが、それらの内、ブログだけ、又はホームページの一部のみ見て、場合によっては殆どの説明を読まないままと受け取れる事が在りましたので、ホームページの説明の欄に書いていた事を此方にも載せてみます。(どちらに書いてあっても読まずに質問・問い合わせの人には効果無いかも知れませんが)以下は自分が関の刃物会社に居た時に経験・勉強した事やそれ以前から本・雑誌・資料から得た知識、子供の頃から刃物を研いできた体験をベースに、近年は様々なホームページやブログなどでの記述を照らし合わせて違和感の無い考えを参考に、現状考えられる大きな間違いが無いと思われる内容で書いた物です。(数個在ります)

極大まかな料金の説明や依頼を受けてからの説明はホームページの方で御確認下さい。

 

鍛造作業の手順(切り出し小刀の一例)

1. 地金(軟鉄)と鋼の材料を任意のサイズに切り分け、用意する。

2. 接合時、双方の隙間が出来るのを防ぐ為、鋼の材料の面取りをする。(断面が台形にな

 るように地金に乗せる)

3. 地金を加熱し、硼砂を乗せた上に鋼を置き、圧迫する。その後、鍛接温度まで加熱する。

 4. 手槌で手前から軽く叩き、安定したら強く叩き接合させる。

 5. 平(平面)やコバ(側面)を叩きながら整形していき、刃元から切っ先を造形する。(手作業・

    ベルトハンマーで伸ばしながら薄くしておく)

 6. 焼き入れ温度くらいまで加熱し、徐冷する。(ゆっくり冷やす事による焼き鈍し)

 7. 回転砥石で表面を均す。外周を削り、形を決める。面取りをして歪みを取る。

 8. 焼きムラ防止の脱脂。(有機溶媒やサンドブラストなど)

 9. 砥の粉(砥石の粉など)を水で溶き、塗布して乾燥させる。

 10.柄を暖めた後、焼き入れ温度まで加熱し、水冷。(急激に冷やす事による焼き入れ)

 11.状態により、この段階や後行程で歪み取りを行う。

 12.軽く加熱して再び水冷。(焼き入れ温度より大幅に低い温度からの急冷による焼き戻し)

 13.水研機で裏を梳き、刃を荒削りする。更に細かい目で刃付け。

 14.手研ぎによる砥石での仕上げ研ぎ。

  後半では合間に冷間で裏を叩き出したり、鍛造・鎚目付けが加わる事もある。

  注:硼砂・・・鍛接剤。硼酸や酸化皮膜などを調合して鍛冶が独自に作る場合が多い

たまに使う刃物

 

包丁だけが料理に必要な刃物と言う訳では無く、これも基本的な道具の一つでした。出汁を引く為に使いますが、下の道南産真昆布はそのまま使うので関係ありません。(熟成風にするため葉書サイズにして純米酒を塗ってから金網を敷いたダッチオーブンでキツネ色手前まで炙っておきますが。そして冷蔵庫へ。)

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使うのはこの枕崎産本枯れ節をかく時です。

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母が持っていた鰹節削り器で、小学生の頃はまず日曜毎に削らされていました。台が割れたので三木の常三郎で相談して台と鉋刃を見繕いました。幅のサイズは55㎜の台そのままで合いましたが、元よりもかなり厚かったので削って送るとの事でした。しかし到着すると、同時にまな板削り用に買った55㎜鉋と同寸の台のままでした(長さはぴったりに切り詰めてありました)。結果的には、引き出しが引っかかるのと蓋が浮くだけで使えてはいます。

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裏の鍛接線上にバリが出た物を安くして貰いましたが、青紙一号と錬鉄の合わせで、切れ味・研ぎ味共に文句ない性能です。但し本枯れ節の硬度か角度の問題か、欠けが出易かったので鈍角且つ糸引きを入れて対処する内に欠けが改善されてきています。初期のパラ付きだったかも知れません。

下は丸尾山敷内曇り仕上げの状態です。

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下画像の左は同時購入のHAP40と極軟鋼合わせです。最初は刃金と地金の耐摩耗性の違いから、地金の方が先に下りて鋭角になり勝ちでしたが、角度維持よりも刃金と合う砥石で刃先を研磨する意識により改善されました。因みに相性が良かったのは丸尾山の千枚でした。

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下がその千枚仕上げHAP40のベタ研ぎ刃先です。

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これで鰹節を削りますが、一度にほぼ使い切ります。だから切れ味が落ちてからは無意識に力に頼り、欠ける要因だったかも知れません。

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使用目的にもよりますが、極上品な出汁を取るなら上の状態の物を昆布で取った出汁に加えれば良いわけです。しかし煮物その他でやや濃い味付けの出汁の素として、下の鯵・鯖・鮪の類いで作られた製品とブレンドしてパックを作っておき、冷凍保存します。

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あとは海塩と薄口醤油(長崎のチョーコー・超特選 生が好み)、純米酒くらいでの味付けを基本にしています。下は菜の花(恐らく菜花の間引き菜)を下ゆで後に上記の出汁に放り込んだだけです。

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味見をすると、すぐに刃が気になってくるので、さっさと研いでしまいます。出汁の素を作っておく理由は、度々では面倒と言うだけでは無く、半分は使った刃物は例外を除いて直後に研いでおかないと落ち着かない性分のせいだと思います。

 

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刀鍛冶の三徳包丁

 

月山さんの所で、加藤さんに包丁を打って貰うが一緒にどうか、とのお誘いで頼んでいた物です。

 

新品時全体画像

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新品時刃部画像

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下は240番GCから1000・1200番キングの人造砥石で研いだ後、対馬名倉入り・巣板入り人造から丸尾山白巣板・敷内曇りで仕上げた画像です。

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最後は刃先の200倍拡大画像です。まだ初期のパラ付く傾向が見られますが、組織は細かく粘りも不足ではないので、更に研ぎ込めば揃って来るでしょう。

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白紙一号と軟鉄の組み合わせとの事ですが、外観からは割り込みで無く三枚打ちに見えます。焼き入れのみならず、鍛造・鍛接段階でもコークスでなく松炭使用との事です。当然刃金は脱炭の気配も無く、どちらかと言えばやや堅焼きの印象です。他の白紙一号やスウエーデン鋼の感触同様、細かく目の立った切れ味です。研ぎに於いては刃金・地金共、ある程度硬さを感じさせるものの、下りが悪い事は無く自然な研磨。寧ろ双方均等に近い研げ加減のバランスが印象的で、ある意味基準としても良い程の安定した仕上がりでした。

 

亀岡周辺はいいところ

 

勝手に桜の名所認定

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上の画像は、大阪から亀岡に向かう道沿いにある、自分が一~二年前から勝手に「ぷち千本桜」と思っている場所です。道中には、公園・川沿い・小学校や神社付近に大きな古木の単独や小ぶりな若木の集団・一列縦隊という、絵になる桜が多数存在しますが、地形を活かしたこの場所はスケールと合わせて個性的です。勿論、有名どころは妙見山ですが。

 

下の画像は同日、砥取家さんと合流して、嘗て採掘していた休眠中の山へ下見に訪れた際の物です。此方は採掘権云々でなく、砥取家の持ち山だと言う事です。後日、研ぎ文化振興協会から行政への説明として、担当の方々とも再訪した場所です。

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大小数カ所、採掘跡が在りました。

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そして、下の一つ目は様子見のサンプルとして、付近で切れっ端を採取して面を付けた物です。他の二つは比較用の君谷(休眠中)と大谷山です。

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サンプルで持ち帰った物は薄層に剥がれ易い状態の、はつって落とされた部分の様でした。その為か野晒しによる風化、或いは冬場の凍てによってかやや脆さを感じ、上図の大谷山や君谷よりも硬さ・細かさで及ばないものの、通常使用には問題無い範囲と思われます。それは、下の普及品の切り出しによる試し研ぎ画像でも明らかでしょう。今後の再採掘にも期待が持てるといった所でしょうか。

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新入りの経過

 

少し前に購入して知人に贈った切り出し(普及品)の片割れです。多少使うくらいでは余り傷まないので、普通に考えれば必要以上に研いでいます。それでも未だ、切り刃が整いつつあるレベルですが、その確認を兼ねてカミソリ砥で研いでみました。今後は面の乱れや刃先角の不一致を揃える意識であれば、自然と平面が出てくるでしょう。

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此方は初期刃付けの面が中央に半分程残っていますが、小割した砥石で研ぎ目を揃えつつ当たる面を広げています。刃金の先側、半分は研ぎ肌がやや安定してきており、刃先も同様です。硬さよりも、粘りが勝っている傾向の様で、やや荒れてもタッチアップで戻り易い様に思います。

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最後は平面度合いが少し上がってきましたが、鏡面にすると未だ未だ均一な研ぎ肌になっていません。刃先の性能的には完全に安定してきており、硬さ・粘りのバランスは均等、組織の細かさも充分です。

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切り出しなどは特に平面で無くても言い、とはよく言われます。しかも使用者や鍛冶屋でも聞かれる事です。しかし段刃・糸引き・ハマグリなど、それぞれの切れ味や、切られた対象の切断面には違いが有ります。その使用感や目的に応じて選択するべき物で、条件の違う者に対して正解めいた事は言えません。自分では、目的の使用に耐える強度を確保した上で可能な限り良く切れる様にしています。ベタ研ぎで持たないならば小さな糸引き、更に駄目ならはっきりと二段に。或いは刃の通りを考えて刃先付近にハマグリを、と言った具合です。

切り刃までの鏡面は半分、自己満足ですが、残りの半分は使い勝手と味を考えての事です。食材の成分や水分が付き難く、錆や変色が少ない。更に切られた食材の鮮度や風味に対する悪影響も少なく感じます。但し満足いくまで仕上げようとすると、新品から考えれば数時間では済みません。十数時間、ヘタをすれば二~三倍でしょうか。勿論、荒い砥石から各段階、均一な研ぎ傷になるまで確実に仕上げながら進めば早いです。しかし出来るだけ研ぎ減りを少なくしようと、一段細かい砥石では傷が取れず後戻りをしたり、頻繁に確認する程、手間が掛かります。まあ、各種研磨剤や余り硬くなく、光沢を出す性能に優れた人造砥石であれば、この様な無駄とも言われそうな手間は必要無いでしょう。硬めの天然砥石なればこその面倒さですが、仕上がりの表情はやはり天然ならではの研ぎ肌で、他では代え難いです。更に同じ錆びにくさを得ようとすれば、人工的な研磨剤では1.5~2倍程度の粒度(番手・♯)を要する印象です。これはどの天然砥石でも概ねそうですが。その違いを解り、それに価値を見出す人には意味のある事だと考えています。

 

 

 

前回の修正

 

表 全体像

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表・刃部 アップ

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裏 前方画像

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表・刃先 拡大画像

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裏・刃先 拡大画像

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前回の利器材使用麺切りの研ぎ後、改善して欲しい旨、連絡がありました。曰く、①切り込みで滑る・②抵抗がある・③包丁の進む方向がばらつく・④特に刃が右に逸れていく、等でした。

上記の要因として考えられるのは、①もしも、1本目の包丁に比べてであるとすると、伝統的な鍛造品と利器材使用品の違いも有るでしょう。これまでも、良く出来た鍛造品の方が組織の細かさ・締まり方ともに優れている印象があります。そこから鋭利さや長切れも違って来易い様です。②については、研磨中に硬度に対してやや粘りが少ない感じを受けたので、1本目よりも長切れし易い小刃にしたのが影響したかも知れません。③と④に対する考察ですが、まず依頼に於いて、初期刃付けの機械研ぎの研磨痕を消す事が含まれていました。そこで、表は通常通りとし、裏は刃金を含む地金の一部(当たった部分は2.5~3.5㎝幅)を平面度合いを増しながら摺り合わせをしました。この為、それ以外の範囲と僅かとは言え厚みと、平面精度に違いが出た事は考えられます。そこで、蕎麦を切る段になって駒板の枕に包丁を押しつけて切り始めると、摺り合わせた面とそこから上の面で角度が変わり、極端に言えば刃先が「く」の字に麺帯に入る事になったのでしょう。蕎麦を仕上げる例として、1.8㎜×8枚・2㎜×8枚・1.5㎜×112枚・1.7㎜×12枚の範囲があり、それに加えて駒板の枕は28㎜との事ですから、このパターンでは、少なくとも合計約50㎜の範囲は面が一律で無いといけない計算になります。

麺切りの裏の面積は、和包丁としては最大級と思いますが、これを平面精度に気を付けながら全面摺り合わせるとなると、膨大な手間暇と費用が掛かります。ですので、初回の仕様を提案しての結果だったのですが、他に片刃和包丁が右に切り進む現象の理由はあり得ないので、今回は70㎜の範囲で摺り合わせてみました。後、気になったのは平の厚みが違う事です。数字的にはしのぎの部分で計ると、先が1.8~1.9㎜、中央が2.2~2.3㎜、元が2.0㎜ほどでした。平を整形し直すのなら、製造元の方へ依頼すべきですし、無理に切り刃だけ合わせに行くと、しのぎが崩れます。そこで、小割した砥石で切り刃の中だけをある程度揃えておきました。最後に小刃は、折角裏を整えたので、其れを活かす為に表よりも鋭角ながらも幅を狭く仕上げました。加えて、表も前回よりは鋭角にしてあります。

これで考えられる範囲、対応出来る範囲で最大限希望に添う形だと思われますが、もしもまだ不満が出る様であれば、適切な対応を取らせて頂きますとお伝えしました。

砥石についてですが、より切れ込み感が強い方が良いのかと、千枚系の砥石に同じ系統の共名倉で仕上げました。とは言え、カミソリ砥クラスに次ぐ細かく滑らかな刃先なので、使用感も何ら劣る事は無いと思います。

 

ご依頼の麺切りの追加

 

研ぎ前 表側 全体像

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表側 刃部アップ

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表側 刃先前方拡大画像

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表側 刃先後方拡大画像

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研ぎ後 表側全体像

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表側 刃部アップ

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裏側 刃部アップ

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表側 刃先前方拡大画像

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表側 刃先後方拡大画像

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前回の麺切りが悪くなかったと言う事でしょうか、趣味のクラブメンバーの麺切りも到着しました。此方は、鋼材と製法に特徴が有ります。所謂三層クラッドを両側から研削し、更に右側と言うか表側になる方から叩いて片刃状態に作るそうです。研ぎ依頼文と共に説明書の画像が付いていました。

以前から、余所のブログなどで「三層利器材で作った和式の包丁かな?」と言う記述が見受けられていました。その時は、二層が無いけれど急場をしのぐ為に三層で。或いは、三層が余っているので少量使い切るか。又は、試作品だから手近にある物を。かと思っていましたが、製造法が確立しているならばある程度出回っているのかも知れません。しかし構造上、裏は鋼の出ている面積が小さいし、裏梳きも入れにくい状態になります。研ぎ減りしていくと、鋼が地金の奥に消えてしまいますね。まあ、そこまで使われる事は少ないと云う見立てなのでしょうか。実際そうかも知れませんし、コストダウンに繋がって消費者にメリットがあれば、ヘビーユーザーで無い層には有り難い面が大きいですね。ともあれ、初めて目にする物だったので、勉強になりました。

現物は前回と違い、緻密で鋭利な刃先では無かったものの、切り刃は結構揃っていました。僅かに中央後方が厚い事と、中央前方が表側凸の傾向は似ていました。それと、やや粘りが勝っている仕上がりで、返りが取れ難いのも近かったです。しかし組織の細かさや切れ味は遜色無いくらいの性能でした。糸引き最終仕上げは、前回と違って大谷山戸前浅黄(敷内曇りの共名倉使用)です。

 

 

知人と自分用にペティを注文

 

味方屋作13.5センチ ペティ (白紙二号・ステンレス地金クラッド)

到着時

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軽く研いでみた状態(霞研ぎの初期段階)

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普段、あまり調理の主役としては使わないペティですが、バックアップとしては便利です。野菜の袋を開けたり皮を剥いたり(特にあくの強い物)。勿論、慣れればサイズ的に間に合う食材なら其れだけで済ませられます。ですがどちらかと言えば、朝食にパンやチーズ、トマトや果物を切り分ける時に大きな包丁などは面倒、という場合に有り難いです。

知人が、鋼の包丁は初めてだしメンテナンスが不安だとの事なので、ステンレス地金で白紙二号を挟んだ三層クラッドのペティ(サイズも本人の希望)を勧めてみました。そのついでに、自分も気軽に使える鋼のペティが無かったので合わせて注文しました。やはり、ステンレスと鋼の刃物で切り比べると、食材の味を活かす度合いに差を感じます。どちらも天然砥石仕上げであれば改善される様ですが、やはり差は埋まらない印象です。(食味的には、地金まで軟鉄である方が最良ですが)

 

 

下の画像は、おまけの司作三徳六寸、霞研ぎから鏡面に向けての途中経過です。更に面の精度を上げて切り刃を整えないと、外観としてはムラが目立ちます。

 

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ご依頼頂いた麺切り

 

包丁を見ると、かなり御自身で研ぎ込んでおられた様子でしたので、余り荒い砥石から掛けず、鋼部分の研ぎ傷を大まかに取る為、地金部分を避ける様にキングハイパーを使いました。以後は中仕上げから仕上げ、最終仕上げの天然砥石です。

 

まず最初の状態 全体像

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刃部 アップ

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裏 全体像

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表・前方 刃先拡大画像

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表・後方 刃先拡大画像

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名倉砥石(三河ボタン)にて研ぎ 全体像

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刃部 アップ

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巣板にて研ぎ後 全体像

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刃部 アップ

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小割の巣板にて均し・化粧研ぎ後 全体像

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刃部 アップ

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表・前方 刃先拡大画像

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表・後方 刃先拡大画像

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最初から細かく鋭い刃先になっていたのですが、切り刃の厚みにバラツキが有りました。中央がその前後よりもやや厚く、加えて後方の鋼部分の角度が他と差がありました。後は刃先手前の範囲で少し表側凸でしたので、木槌で軽めに叩いた後は研ぎで揃えていきました。

切れ込みは元々かなり良い状態でしたので、抜けに対してブレーキの掛かる切り刃の厚みの不均一を取り、刃金部分の角度のバラツキ・傷を揃え、刃先の糸引きの角度調整と精度向上で行こうと考えました。途中まではほぼ予定通りでしたが、最後の刃先の仕上げで予想外に返り(バリ)が取れにくく、苦労しました。

通常は、天然仕上げ砥であれば既にその時点で返りは出難く、特に超仕上げに値するカミソリ砥クラスでは、最後に軽く紙で撫でれば取れるものです。にも関わらず、200倍で確認すれどもすれども取れにくい鋼材でした。巣板・合砥・鏡面系の最終仕上げ砥を単体や組み合わせで何種類も試し、敷内曇りからの鏡面青砥(共名倉に柔らかめ一本松・戸前)でやっと返りが消えてくれました。此までの白紙の返りの取れ方や切れ方とは又違った刃物で、色々勉強させて貰いました。

 

研いだ包丁のビフォーアフターなどを載せていきます。