少し前のハマグリに付いての記載ですが、もっと前からの背景と言うか切っ掛けに成った事柄が有ります。研ぎ進める上での砥石の種類・性質に基づく組み合わせや、そのバラエティとしての複数のルートは標準的なものが決まっていました。勿論、刃物の形状や素材に対応してです。
そして、刃体の形状に対応して切り刃・小刃・糸引き、更に其れらは平面かハマグリか複合か。この辺りも最適解は初期状態と目的により変動するものの、大まかには角度・厚み・その変化の付け方の相場みたいな基準も確立に近付いている気がします。
包丁を主体とした一般的なナイフ類については、程度には絞るべきかも知れませんが。飽くまでも初期の形状から大きく外れない範囲で性能を引き出す方向。
上記の手順に則って、形状を整えつつ切り刃・小刃の調整を済ませれば、後は返りを取るだけです。ですが、此処まで仕上がった刃体の御蔭で、返り取りの結果が多少バラついた(ミクロの世界的なレベル)としても、誤差の範囲と言える影響程度です。例えれば、髪の毛が真横から押し付けるだけで上半分が落ちるか、部分的に繋がっているか。
特に、紙一枚~数枚を切るテストよりも、数十枚を切る性能を重視して来た事も有り、十分以上に切れていれば問題無しとしていました。拡大画像でも(200倍ですが)明らかな不備は見えない仕上がりに纏めては来ました。
しかし何時からか、返り取りをしていて、左右(表裏)の感触の僅かな違いを気持ち悪く感じる意識が強くなり、其れを打ち消す試みを繰り返す様に。紆余曲折は省きますが、結果的に返り取りの成否は、返り取りをする前に決していました。つまり、条件が整っていない返りを出した時点で、取り方を相当工夫しても好結果に結び付き難い。
必要な条件とは、出来るだけ目の細かい返りを殆ど有り得ない位に出す(出ないのが理想ですが困難)訳ですが、此の時に左右(表裏)均等に出すのが肝要です。過去を振り返れば、此れら各項目の一つ・或いは二つに気配りしていた記憶は有るのですが、三つ同時に且つ完全を目指していたか、自信が有りません。
後年は恐らく、二つ目までを重視して何度かに一度は返りの左右の不均等を、やや強引に落としに行っていた気がしますし、其れが結果的に誤差レベルでは有れど(理論上)最高の仕上がりとの差を生んでいた気がします。
サイズの大きな返りを取る・目が大きいままの返りを取る。この二つの悪影響が明白であれば、左右差(量・角度)を有する返りも又有害で当たり前でした。刃先が荒れる要件を潰して行くに如くは無く、今後はより返り取りの操作中の感覚に留意すべきと得心しました。
返り取りが「返りの状態チェック」を兼ねる訳で、手間も費用も増えないので同様のお悩みを抱えて来た諸兄にも、お勧めしたく記載してみました。チェックで合格しなかったら、強引に落としに行かず最終仕上げのやり直しへ。やはり、何かが心に引っかかったら検証して対処するのを徹底するべきですね。中々、物事全てにとは参りませんが。
※ 紆余曲折とは、左右の砥ぐ回数を同数に。其の上、仕上げ前には徐々に回数を減らす。圧力を均等に心掛ける。等、従来やって来た方法に加え、返り取りの素材各種や新たな方式を試行錯誤したけれど、変に出た物を取る努力は出さない努力に敵わない事が判明。出さなければ、返り取りの素材や状態への依存度も低くて成功率は高い。硬さと粘りのバランス的に厳しい素材(形状保持に不利)への攻撃性も低い結果と成りました。と云う内容です。