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御知らせ

 

私が選別して来た砥石に付いて、判子を押す方向でと考えていたのですが済みません、暫くは見合わせようと考えています。

既に内々で御知らせした方からは、残念がって下さるコメントも頂いたのですが、もう少し採掘・加工・整形などの基礎から学び直してみる必要性が出て来ましたので、どうか御理解意を頂きます様、御願い致します。

幸いと言いますか、私の判子に重きを置いて下さる方々は少数であると思われますので、大多数の方には影響が無いと予想されますが・・・当方の都合で幾らか肩透かしだと思われた皆さんには申し訳ありません。

 

 

 

あ、天砥の石に関しては、権利を持っている方との打ち合わせ次第との事ですので、暫く先に成ってから明らかに成りそうです。

 

 

 

 

 

自分用の判子を受け取って来ました

 

以前に、チラッと記載していました判子が出来ましたので、受け取って来ました。此れで私が選別した砥石には、判別可能な印が付けられます。

只、産地や銘柄に関しては、最低限にしています。奥殿の巣板と中山の赤ピンは、自分が僅かながらも採掘を体験させて貰った事が有る関係上、幾らかは拘りと云うか親近感が有りますので作って見ました。まあ赤ピンは一目瞭然ですので、中山だけにしましたが(笑)。あと、舞鶴まで出掛けて選別した際には、必要であれば尚さんが押してくれるでしょうし。

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此方は、店の方の先生に当たるのでしたか、書道家の方が作られたフォントだそうです。今回は、平仮名だけの判子も作って貰ったのですが、私の自筆の文字に近い印象の物をフォントから選んで貰いました。

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下画像が、その平仮名を基にした判子(サイズ小さめ用)と以前からの判子を作り直した物。選別会の判子は、そう言った御見立会を提案してくれた方の意見を受けての物です。実現出来れば楽しそうですね。

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(因みにですが・・・私がサンプルとしてプレゼントした切り落としを試し彫り?に使った処、滅多に無い程の切れと永切れを発揮し、クッキリとした写り方だったそうです。お仲間にも確認して貰うと、輪廓に差が有るとの事だったと。やはり角が立つのは、刺身だけでは無かった事が証明されましたね(笑)。)

 

 

 

試しに、手持ちの仕事用(小振りな物)に押してみました。

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上の様な砥石の場合は、判を押せる部分が限られますので困りますね。一応、黒の上に黒色でも見えない事は無い様ですが・・・(側面右側)

 

 

 

今後は、御依頼を頂いて選別して来た砥石に付いては、この様に判子を押す事にしたいと思って居ます。これ等の物は態々、私に砥石を御依頼下さる方々への感謝を込めての物でしたが、質に関しての表記(αβΘ12345)が研ぎ工程や砥石の選択に役立ちましたら幸甚です。更に、もしも満足感や楽しさまで感じて頂けるとすれば望外の幸せです。

 

 

 

 

追記ですが、2~3週間後には二度ほど、高雄に出掛ける予定です。先ず一つには、御依頼を頂いている砥石の選別が有ります。もう一つは、奥殿の山へ上がらせて欲しい旨を伝えて有りました。入山料を払ってでも、久し振りに奥殿の山頂へ行って見たかったからです。やはり、私が高雄に関わる切っ掛けの石が奥殿の天井巣板で、採掘作業でも印象深かったのが大きいです。

ですので、半分は逍遥(とは急峻過ぎて言えませんが)と落穂拾い?みたいな気持ちですが・・・可能であれば幾つかは、其れなりの石を持って降りられればと考えて居ます。やはり自ら採って来た石を選別し、其れが高性能であったならば、仕事で使うかどうかは別としても嬉しい物ですね。あとは予てより、常連の方々の数名からは砥石山に行って見たいとの要望を聞いて居ましたので、其の下見を兼ねている側面も。勿論、様々な条件がクリアされてからに成るとは思いますが、案外?実現の可能性は高そうです。

 

 

 

 

 

一昨日、高雄で選別して来た砥石達

 

北海道のS様から御自身用と、北の洋包丁様の御二人分の砥石選別の御依頼を頂いて居ましたので、一昨日は高雄へ出掛けて来ました。S様からは、確りした硬さの白巣板と私の御薦め。洋包丁様からは、ザクザク下ろす巣板と私の手持ちの奥殿産巣板に近い物。(茶色系統?)

あとは一年くらい前から、自分用の蓮華入り白巣板(大平産でしたか)を取り置きしていましたので、其れを引き取る目的も有ったのですが・・・加工途中の砥石を薦めて貰ったり、偶然にも展示施設に置かれていた砥石群を集めた棚を探れた事で、自分用としても、より必要性の高い種類の砥石を入手できました。

特に、強く要望を出した奥殿産の天井巣板は、屋外で寒冷対策をされていた原石の中から大きなのを一つ、選んで切り分けて貰いました。以前にS様に御依頼頂いた結果、切って貰った物は硬口で質は良かったものの、些か構造に難が有る砥石でした。其れを踏まえた上で御買い上げ下さったのですが・・・いずれは問題点を払拭した、同種の砥石を御送りしたいと思い続けて来ました。私自身が天井巣板を中心として、未だ未だ奥殿の巣板を充実させたいとの意向が有ったのも否定出来ませんが(笑)。

 

 

 

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先ずは、北の洋包丁様への一つ目。奥殿から菖蒲に掛けての、天井巣板との事です。柔らか目なので、平面を崩さずに(部分的に集中して研がずに)使えば、研磨力を発揮します。泥も良く出るので、滑らかな砥ぎ感と刃物への当たりが特徴で、和包丁の切り刃ごと当てるのに適しています。

只、質としては黒蓮華(羽二重っぽい?)であるので炭素鋼は勿論、ステンレスや特殊鋼にも不足の無い研磨を見せてくれますが・・・炭素鋼に対しては幾分、錆や変色に留意する必要が有るかも知れません。しかしステンレス・特殊鋼では其の懸念も少ないでしょう。

 

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裏を見ると、カラス模様も確認出来ます。カラスが有ると、何らかの特性を見せるのかは未だハッキリしませんが、少なくとも此の手のカラスが悪影響を及ぼす事は無かった筈です。

 

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何時もの切り出しで試し研ぎです。刃金は、やや仕上がりの緻密さは控え目ながら速く下ろし、地金の仕上がりは曇り~薄曇り。

 

 

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同じく二本目。此方は、奥殿のスタンダードな巣板とも言える、白と茶色の混じった物。しかし硬さは、上から数えた方が早い程度には硬口です。或る意味、上の柔らか目の巣板と同様に、此の硬さの巣板も扱いには若干の技術を要するかも知れませんね。

そして、後述しますが双方の砥石とも、硬さに於いては大幅な違いを見せながら、砥粒の種類としては結構な尖り方をしています。御蔭で、鋼に対してもシャリシャリと(少しオーバーに言っています)下ろす方向性です。

 

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裏は、皮の元々の様子が分かる状態です。

 

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研ぎ上がりは、刃金が鏡面~半鏡面。地金も半鏡面~薄曇り(明かる目)。硬くて緻密な砥面が、遺憾なく効果を発揮してくれています。

 

 

 

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北海道のS様への一つ目、奥殿天井巣板です。超硬口~硬口とまでは行かないのですが、可成り質が良く、難が少ない物。しかし先々・・・数ミリ減らすと、もう少し硬くなってくる可能性が有りそうです。勿論、硬さに加えて緻密さも向上するでしょう。此れは私が選んだ方の天井が、減らして行くに従って墨流し模様・紫色が増しつつ、硬さと緻密さが向上した経緯が有るからです。(私は少し難が有る方を選択したのですが、未だ其の荒れた部分は消えていません)

 

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裏は、天井巣板に良く見られる景色です。

 

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研ぎ上がりは、刃金が半鏡面で地金は薄曇り(反射は強め)です。今の段階では、刃物への当たりはソフトで適度な抵抗と共に強く下ろします。天井に特有の弾力を持ち、硬さに比して砥面の変形(研ぎ減り)は控え目です。

 

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上の天井を切り分けて貰った際、切り落とされた端っこです。共名倉として丁度、使えますね。

 

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只、表層の皮と接しているカネの筋、その下にも走る純然たるカネの筋が邪魔です。しかし、下手に剥がそうとすれば割れてしまうので、広く叩き落とした上でダイヤにて丸く削り、擦り合わせても当たり難く整形しました。薄茶色の筋は、問題無いです。

 

 

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そして、予てより御本人の希望であった白巣板の硬口。手頃なのを探して居る内に見つけたのが、小振り乍ら蓮華入りの物。勿論、結構な硬口です。

 

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裏は若干、平坦で無い部分も有りますが・・・。

 

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研ぎ上がりは、刃金が半鏡面で地金も薄曇りから半鏡面(反射強め)。

 

 

 

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私用にも、天井巣板です。S様に選んだ物よりも少し、柔らかいかなと云うのと、筋の辺りに二か所の難点(ひび割れ・荒れ)が有った為、此方に決定。

試しに使ったり面を整えたりして減る程に、硬さ・緻密さは増して墨流し模様と紫色も強く出て来ました。此のままでも広範囲に使用出来て便利ですが、もう少し硬くなると、更に上の切れへの期待も。

 

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裏は、普通の天井の色と柄です。

 

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研ぎ上がりは、S様の天井に準ずるもの。

 

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此方にも、切り落とした部分は有り・・・

 

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こんな感じで、厚さも面積も有るので、小型のナイフ等には充分、研ぎに使えそうですね。

 

 

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北の洋包丁様に選んだ黒蓮華(羽二重っぽい)を3~4段階、硬くしたような質です。同じく、幾分は砥粒の目も立っており研磨力は充分。その代り、傷や斑を出さずに砥ぎ上げるのは技術を要する傾向に有ります。

 

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裏は奥殿の巣板(白色)に、よく見られる景色です。

 

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研ぎ上がりは刃金が薄曇り~半鏡面で、地金も薄曇り~半鏡面近くに。

 

 

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上画像は、一枚の原石を開いて二枚にした物。

 

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開いた二枚の状態です。

 

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メインの方、奥殿の巣板、茶色です。混じりっ気の無い物は案外、少数派の様ですね。中硬~硬口ですが、砥粒の目が立ち気味ですので食い付きが良く、中庸の硬さと相俟って研磨力は相当な物です。

 

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裏は、奥殿の巣板の茶色に良く見られるものです。

 

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研ぎ上がりは、刃金・地金ともに薄曇り(明るめ)。やはり、硬さと質に則った仕上がりです。柔らか目や、研磨力重視(砥粒の目が立っている)の砥石には良くある傾向。稀に、硬さからは想像以上に鏡面方向の仕上がりを見せる砥石も有りますが。

 

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開いた薄い方も試しましたが、何故か更に明るめの様な?。反射率も高そうです。流石に天然には、嬉しい誤算?も付き物で(笑)。

 

 

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中山の赤ピン系統の物。本焼き用として予定していた、大平産の蓮華巣板の代わりに選んだ砥石です。かなり柔らか目で、広い面を一遍に当てたり傷を消したりする場面で、重宝しそうです。

 

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裏は、平面部分が多くて安定しそうですね。

 

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研ぎ上がりは、此方も硬さと質に応じた物。砥粒の目が余り立っていないので、曇りがち乍らも傷が浅い仕上がり。

 

 

 

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此方は現在、判子を作って貰う事に成って居る店へのプレゼントに、高雄で貰って来た切り落としです。既に、長四郎と赤ピンの切り落とし(薄くて小さい)を渡して来たのですが、再度訪問の際に追加でと。

女将さんと若女将?の御二人とも、篆刻刀や彫刻刀で仕事をされるのは当然の事ながら、其れを研ぐ仕上げ砥は天然砥石。20~30年前に業者が販売に来た時に購入したそうで、拝見した所では硬口の東物。今と成っては中々、同等の物は入手が困難とか。

若女将の方は、何やら大会にも出場するガチ勢らしいので・・・研ぎの気分転換や、御気に入りの前の下研ぎにして頂ければと。他にも、彫る対象の材質に依っては、予想以上に有効かも知れませんので。

 

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厚みが有りましたので、中央に鏨を入れて真っ二つに。綺麗に割れて呉れました。

 

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双方、裏に成る面を整えてから向かい合っていた面を砥面にしました。何れも中硬~硬口の奥殿の巣板、茶色の様です。

 

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筋などを避ける必要が有るので、篆刻刀・彫刻刀には問題が無かろうと予想しましたが・・・切り出しも行けましたね(笑)。

 

 

 

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最後は何時も通り、若狭(田村山)の切り落としで仕上げて置きます。

 

 

 

後述すると記載した、砥石の質に関する内容です。特に御依頼を頂いた物と云う事に成りそうですが、私の選別した砥石に押す判子に付いてです。

基本的に、「村上好み」の性質の中で高性能な物を提示する方向ですので、飽くまでも最高級かどうかは保証しません(笑)。と云うか、如何なる刃物を如何様に研ぐか・如何なる研ぎ手が研ぐのかを想定できないので、不確定要素が多過ぎて無理でしょう。

同じ理由で、私の判子を押された砥石群の中での優劣も、普通は付く事が有りません。此れは、「砥粒が微細で均質・砥粒の凝集性が緻密である・砥粒の目の立ち方が適切」と云う基本性能での事です。筋や層の境界などの難が有る要素では、ピンキリでしょうけど当該箇所を避けて使える人には、致命的な欠陥と迄は行かないと思います。当たらなければ、どうと云う事は無いですから。

従って、松竹梅とか一級・特級の区分けや上・最上等のランクは付けません。代わりと言っては何ですが、使い手が参考に成る区分を付けようかと。私が砥石を区別しているのは上記の砥粒の三要素を踏まえて、大まかなジャンルは三つです。手触りで言えば、サラサラ・スベスベ・キシキシと成ります。とは言う物の、硬口に成る程に普通は、ツルツルとしか感じられなくなって行きますけど(笑)。

予定としては、硬さに加えた其のジャンル分けが表記出来ればと考えています。ジャンルをABC,硬さを12345段階で分けると、A3とかに成って和牛のサシの入り方みたいですので、α、β、Θ辺りが良いかも知れませんね。因みに、今回の選別で入手して来た砥石に表示するなら、以下の様になります。

 

北の洋包丁様の一本目(天上巣板):Θ 2

同じく二本目(奥殿巣板白茶色):Θ 5

S様の一本目(奥殿天上巣板):α 3

同じく二本目(奥殿巣板白色):α 5

自分用(奥殿黒蓮華):Θ 5

同じく(中山赤ピン):β 2

同じく(奥殿巣板茶色):Θ 3

 

と成ります。因みに、一般人が使いこなせないレベルの硬さは含まないので、6~は想定していません。あと、妙に弾力が有ったり、ダイヤに掛かり難い質の物も硬いと感じられますが、要素が複雑に成り過ぎるので、切り出しを当てた感触でと割り切っています。

 

 

 

 

 

最近、考えた事

 

先日、鹿肉を御送り頂いた北海道のS様とは、研ぎ依頼・刃物自体の御依頼に関しても、遣り取りをする事が有ります。寧ろ、其方をメインとして数年来、主としてFacebookのMessengerを通じて行なって来ました。

数日に渡った今回も、内容に含まれていたのは(定番の話題でも有ります)、砥石に印を付けろと云う物。つまり好い加減、私が選別して来た砥石が判別可能な様に、判子か何かを押したらどうかと。此れは、其れこそ数年前から複数名に言われ続けて来た事です。しかし、簡単に首肯する気持ちには成れずに来ました。

理由は幾つかあるのですが・・・例えば刃物で言えば製造者(砥石の場合は採掘・加工と成りますね)こそが銘を入れる権利が有るとの意識が強かったからです。刀剣での例示は汎用性に欠けるかも知れませんが、それらには通常、鍛冶屋が中子に銘切をするだけでしょう。刀身(刃体)に他の誰か・何者かの影がチラつく事は稀です。ですので、基本的に(日野浦さんにも以前、言ってしまいましたが)刃物の表面には錆・汚れ・強度低下に繋がり得る、如何なる印章の刻印や銘切も無いのが理想だとの思いも有ります。

勿論、大昔の地域密着の無名の作では無いのだから、近現代の製品に其れを求めるのは無理な事も理解はしていますが(中子だけに銘を入れたら確認できない物も多いですから)・・・其れも有って、自分のブランドの包丁をプロデュースしたらどうか?との提案にも乗り気に成れませんでした。幾ら、己のアイデアや知見からの新機軸と成り得る要素が盛り込まれていたとしても。(日野浦さんには、昨今の災害への対応を主眼とした鉈への言及はしてみたりしましたが。)

砥石に話を戻すと、誰が選別したかを明らかにした印としては、浅野さんでしたか、白名倉に検と押された方がいらっしゃった様ですね。斯界の御大であるのでしょうか、信用や安心を求めて其処に拘って入手されているやに御見受けしています。翻って、私は只の砥石好き(ヘビーユーザーとは言えるでしょうが)が高じて、砥石遍歴の一環としての産地詣でや採掘・加工の体験も重ねて来たに過ぎません。その程度である自分が、印を入れる根拠や正当性に確証が持てない部分は少なからず有りました。

実際、私用に判子を作ってやろうと言って頂いた事も有ったのですが、上記の理由で一歩、踏み出せなかったのですが・・・之まで砥石の選別依頼を頂いて来たS様、更にS様を通じて沢山の砥石を御送りした結果、得られた評価を鑑みて(その他にも御満足頂いて来た方々を含め)考えを変える正当性を得られたとの手応えを感じました。加えて従来、知己を得た天然砥石の採掘をしている方々からは、仕上げ砥の選別に付いての目利きで否やは無かった事も挙げられます。

 

此処で最初に戻るのですが、S様から判子を急かされた流れで苦し紛れに、或る物を思い出して画像を送って見ました。意外と?高評価で、もう此れで良いのではと感じた位だったのが、仕事として研ぎを始めた頃に作って貰った社判みたいな物と認めみたいな物。後に実印にする為の判子も作って貰った店で仕立てた、領収書などに押して来た奴です。丁度、余り稼働していない事も有って?好都合かも知れません(笑)。

しかし、詳しく無いので判断は店側に確認してみるつもりですが、(砥石への捺印?に際して)此の形状や書体に問題が有る様ならば当該の物に準じた方向で新規に頼まないと行けないかも知れません。結局、作る事に落ち着く可能性も有りますが、今は心理的な負担が過去とは歴然と違います。偏に、S様はじめ過去に砥石選別に関して御評価下さった方々の存在、其の延長で私の選別に特別な意味を見出して頂けた方々からの率直な気持ちを届けて頂けた事で決心が付きました。之までの皆様に感謝致します。

 

 

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あ、此れでは無くて、同時に作って貰った下の奴です。(因みに、ホームページにも記載したかも知れませんが、殆んど電話には出られずに済みません。)

 

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普段は、黒で上の判子・朱肉で此方をセットで押していました。此れで行けるかどうかは不確定ですが、大丈夫で有れば有難いですね。新たに作ると又、出費が・・・(笑)。

此の先、選別の依頼を頂いて入手した砥石に付きましては、上記の様な仕儀から、妥当と思われるに至った判を押す事に出来ればと思いますので、宜しく御願い致します。必要無い方は予め御断りを頂くか、多分消せない事も無いでしょうから除去する方向の御好みで御願い出来ましたら幸いです。

状況にもよりますが・・・差し当って一番に適用されそうなのは近々、出掛けたいと思って居る高雄で探す予定の、S様からの御依頼品です。私の取り置き分も入手したい所ですが、もう少しばかり御待ち下さい。そして春には、T様にお譲りした自分用砥石の代替品を含めて幾つか、舞鶴へ探しに行きたい所でも有ります。

 

 

 

 

 

動画を上げてみました

 

昨日、柳の進捗や最近の玉鋼包丁に付いて日野浦さんと話していたのですが、研ぎに関する内容で半信半疑かなと感じた部分が有りました。長い付き合いで説明もして来たし、複雑な形状で拘った研ぎをしているのは何の為だと・・・(笑)。

私が、ヤワな包丁でも砥石と研ぎの工夫で切れ・永切れを付与する事も可能だと言ったのが其れですが、鍛冶屋(多分、製造側の意味も有るんでしょうか)の前でそんな事を言ったら、納得しないで突っ込みを入れる者がいるだろうねと。実証して見せるので大丈夫だと答えたのですが・・・直近の休みに三条へ行って見て貰おうかとも思った物の、先方の予定が付かず。

それならと数年ぶりに、デジカメで動画を急いで撮ってみました。雑な仕上がりで恐縮ですが、紙の束と氷を荒っぽく切ったり削ったりした後でも切れが続くのか?或る程度は参考にして頂けるかと思います。過去に知り合いが上げていて消えた、私の試し研ぎ動画を少し前に上げ直した物も有りますので、良ければ御笑覧ください。上野館長からアドバイスの有った本焼きの研ぎ動画は、自宅では(角度や明るさで)難しそうですので、今後の課題かなと考えています。

 

 

 

 

 

 

 

 

通信講座の御試し?

 

小坊主様から御提案の有った、研ぎの通信講座みたいな物に関してですが・・・研ぎ依頼を兼ねて御送り頂いた三徳を例題にして考えてみました。

 

研ぎ前の状態

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知人の方の三徳を、小坊主様が研いで見ても期待通りに仕上がらないとかで。只、切れと永切れを試しましたが、ボランティア研ぎとして一般の方に研いで返す上ではそれ程、問題視される事も無いのでは?と感じました。私の所で研ぎ講習を受けてしまった弊害(?)かも知れませんね。確かに、髪の毛は切れませんでしたが・・・。

 

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小刃の付け方は、少々ですが角度の違う二種類で仕上げて有ります。何故か、左側は殆ど一定の小刃でしたが。刃先最終角度は、中々に上手い所で纏めて有ります。

 

 

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刃線の中央~刃元の拡大画像です。つまり直線部分ですが、その範囲はマズマズ。刃先に荒れが見受けられますが多少の不安定さは現状、止むを得ませんし性能への影響も小さいです。

 

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切っ先へ続くカーブの辺りの拡大です。やはり、角度の安定性が低下していますね。使用砥石にも因りますが、「直線部に比べて圧力の掛かり方が変わっても来ますので、刃先が荒れる」・「砥石への当たる方向も変わりますので返りの出る方向も変わる」・「従って返りの取り方も一様では無い」結果に繋がります。

 

 

 

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人造の1000番で研ぎ直して行きます。画像は研ぎ始めで、刃先側が未だ1000の研ぎ目に成っていません。つまり元の研ぎ方は(刃先の角度としては良いとしても)起こし過ぎ。取り敢えず、小刃の角度を一定に近付けつつ、刃先は目的の数値に合わせて行きます。最終刃先角度は刃元から切っ先に掛けて、片側40度⇒30度⇒20度にします。(切れと耐久性に由って加減します)

あと、切り刃の状態も(極端に厚みが邪魔では無いのですが)凹凸が抜けの抵抗に成っているので、問題個所を修正します。只、今回は研ぎ講座でも有りますので、小割りの砥石で処置すると共に、敢えて荒目の粒度で部位の明確化・処置の不完全化(続けて仕上げてみて下さい)。

 

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左側は、元から其の方向性に近い感じでしたので、上書きです。

 

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3000番で砥ぎ目を細かく。

右側の切り刃の凸部は、先側の半分の範囲で大きく三か所。

 

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同じく左側も。

切り刃の凸部は、もっと狭い範囲ですが此方も三か所。

 

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3000番で、仮の仕上げです。細かい砥石に繋いで行けば、返りが小さく薄く、出る量も低減されます。

 

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直線部分の拡大画像

 

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カーブ部分の拡大画像

 

 

 

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天然砥石で仕上げて行きます。長四郎引きで大まかに、赤ピンで最終仕上げです。

 

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私の標準仕様で、左右均等に仕立てました。

 

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研ぎ上がり画像

 

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刃部のアップ

 

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直線部分の拡大画像(返りが残っています)

 

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カーブ部分の拡大画像

 

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研ぎ直した結果、角度の適正化と安定化・返りの処理と刃先の性状の違いに因り、毛髪にも切り込める様に成りました。切り刃の修正により紙の束に対する走りや抜けも改善されましたが、此方は八割方の完成度ですので上書きで仕上げて頂きたいと思います。詳細は、別途メールした文面を御参照ください。

通信講座を想定し、様々なパターンを勘案しましたが状況や要因が雑多過ぎて一纏めの設定には無理が有ると感じました。御題に成る包丁も状態も違いますし(当方から支給すれば定まりますが)、研ぎ手の腕や年季・目指す仕上がりも様々でしょうから。

結果的には今回の様に個別の包丁、其々の状態に応じて研ぎ直しつつ、研ぐべき箇所を示す様に仕上げ切らないで御返送。メールにて現状の評価と今後、研ぎ進める方向性を御伝えする感じに成るかと。

私としては研ぎの途中とも言えますから、詳細解説を付けるのと合わせても、普通の研ぎ料金より少し低額で対応出来るかと思われます。つまり、研ぎ講座でも普通研ぎでも、御好みの方で御依頼下さればと。まあ、そんな酔狂な希望者は中々に居られないかも知れませんが、取り敢えず御要望が有れば上記の内容に準じた対応をさせて頂こうと考えています。

 

 

 

 

 

次の研ぎを前に

 

数年前に一度、研ぎ依頼を頂いた事がある方から御連絡が有り、二度目の送付を御待ちしている間に・・・。

 

 

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北海道のS様に御依頼を頂いていた、VG10の無垢で出来たペティが届きました。服部に居た頃の先輩に頼んでいた物ですが、序でに自分用にも一本、余分に作って貰いました。(画像下側)

仕様は、1050度焼き入れ(硬度62)・160度焼き戻し120分・数か所の計測で硬度61±0.5です。

 

 

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此方は、数年前に譲って貰った同様のペティ。ブログでも度々、例として取り上げて来ました。仕様も殆ど同じはずですが、ブレードもグリップも仕上げの磨きが違うので、かなり印象が違いますね。ステンレスでは普段から一番、使っていますが切れと永切れに不満は無く、扱い易いです。天然砥石で追い込もうとすると、幾分は砥石に好き嫌いを言いますが其処も面白いと感じます。

 

 

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此方は購入依頼を頂いた際に、運良く日野浦さんの元に在った出刃です。私の研ぎが入っているのが条件との事で、後は研ぐばかりと成っています。

次の送付を頂く時期次第では、ボチボチ砥ぎ始めていても良いかも知れませんね。何れにしても、出刃の御届けもゴールが見えて来ましたので、もう少しだけ御待ち頂ければと思います。

 

 

 

 

 

業務連絡 御依頼に付いて

 

先月の中頃、洋包丁の研ぎ依頼で御問い合わせを頂きました。翌日に御返答を返信しましたが以降反応は無く、キャンセルかなと考えていました。

しかし三日前に砥石の問い合わせを頂き、同日に御返信しましたが此方も同様で。こうなると、以前にも記事にした内容が心配になって来ます。

「研ぎ講習を申し込んだが、素人だから無視されたのかと思った」「安い包丁だから、研ぎ依頼を無視されたのかと」・・・以上は、後に連絡が付いた方からのコメントです。どうも、メールが此方に届いて居なかったり先方に届いて居なかったりする場合は有る様です。

間違っても、相手が素人だから・安い包丁だから、と云った理由で扱いが変わる事は有りません。当方は一介の市井の研ぎ屋ですので。プロ用と家庭用・合わせと本焼きの価格設定も同一な位です。只、不器用なので作業が遅く、待ち切れないとの非難は有り得ますが、其処は御判断に御任せします。

当方に着信した御依頼のメールや問い合わせに付いて、通常は一両日中に返信しています。留守にしている期間が有っても、精々一週間程度迄です。従って、10日から二週間経過しても連絡が来ない場合は、問題が有ったと御考え下さい。最悪、ブログのコメント欄にでも結構ですので書き込み頂ければ。私が承認しないと、反映されない仕様ですので自動的にアップされる事も無く問題有りません。

電話には相変わらず中々出られませんので、ホームページやブログの方、何れでも御利用下さい。そうでないと、キャンセルなのか行き違いなのか判然としませんので宜しく御願い致します。御依頼の内容や対象の刃物などに因っては、「技術的に対処不可能・料金的に御薦め出来ない場合」に御考え直し頂く事は有っても、無視などする理由が有りません。少なくとも過去には例が無い事を御伝えしておきたいと思います。

 

 

追伸です:

その後、砥石の御相談を頂戴した方からは返信が有り、御提案した石の購入申し込みを頂けました。有り難う御座いました。

 

 

御知らせ(御挨拶?)

 

パソコン関連が得意でないので、御協力のもと形にして貰ったショッピングカートでも、砥石の販売その他を始めました。その場での呼称と云うか名称ですが、「硎ぎ屋 むらかみ」に成っています。硎の字は、砥石や砥いでいる姿を表しているそうです。石の右側の刑は、刑罰の刑でも有りますが型・形と同じと見做し、「見本・あらわれる」の意味もあるとか。

最近の研ぎ講習を受けて頂いた方から、私のやっている内容は研ぎ道だと指摘を受けました。自分では、まだまだ其処までは達していないと感じましたが、上記の協力者の進言も受けて共に考えてみました。特徴的なのは、砥石と刃物の相性を研ぎ技術と不可分と捉えて、仕上げに使う砥石に重きを置く点。となると、「研ぎ」の道よりも「砥石」の道の方がより近いのでは無いか。少なくとも、対外的にイメージとしても理解を得られ易そうです。

そう言った訳で砥と道で「砥道」と成りますが、読みとしては「しどう」に成ります。士道にも通じる音で恐縮ですが、縁起は良いかも知れません。折角ですから海外向け表記?もと奨められ、4do(shido)との案を頂きました。私としても真の切れに求められる各要素は、刃物(鋼材・鍛冶技術含む)・砥石・研ぎ技術・切る技術の四つが不可欠と言って来ましたので、其れを体現している感じもして不思議ですが。

研ぎ講習に付いても受け付けたり(受講者様から要望も)、砥石山見学も受け付ける(常連の方から賛同が)準備中ですし、小割りの砥石も作ってアップして行ければと思っています。御興味のある方は宜しく御願い致します。

 

 

砥ぎ屋 むらかみ4do 砥道

 

 

天然砥石の使い分けに付いて簡単に

 

研ぎ講習を受けて頂いた小坊主さんから、天然砥石の使い分けに付いて御質問が。序でに近所の知人からも、天然砥石が分からない。記事を読んでも分からない(産地や名称も全く知らないとあっては無理も無いですね)。との意見が。個別の案件に答えるには、一般論や前提らしき物を下敷きにしなければ成りませんので、此処では其れを簡単に記載してからにしたいと思います。

先ずは私が考える砥石の分類や役割分担ですが、飽くまでも経験則が大きく影響しています。文章からの知識や、専門家・経験者からの伝聞も交えての理解と捉えて下さい。

 

 

 

天然仕上げ砥石の層には様々な層が在り、本口成り(ほんくちなおり)や合い石成り(あいいしなおり)に因っても違いますが、大きく巣板(すいた)と合砥(あわせど)に分かれます。昔は、天然仕上げ砥石=合砥で、巣板も含めた総称だったのかも知れませんが、合砥が「戸前・並砥・合いさ」に分かれる様に、巣板にも幾通りかの種類が有ります。白や黄色や卵などの色による違いが、必然とは言えずとも大抵は質の違いを伴っています。(巣板層は合砥層の上・下に堆積した層ですので、巣板同士で性格の違いが最も大きくなりがちなのは天井・敷の違いでしょう)

大まかに言って、巣板層は合砥層より柔らかかったり砥粒が粗かったりする傾向が有り、其の為に研磨力が強かったり砥ぎ肌が霞む・曇る仕上がりに成り易いです。合砥は其の逆で、硬く細かい物が出易く、明るい仕上がりや鏡面・半鏡面を狙えます。特に浅葱(原則的にはあらゆる層に出る色)と言われる黒系統・青灰色・暗緑色の戸前層では顕著です。其れに比して、並砥や合いさは一歩譲る印象です。

仕上げ砥石の役割は、中砥石の後に使って砥ぎ目を微細化し、より鋭利な刃先を得るものです。上記の内容から順当に行けば、巣板の後に合砥を使う事に成ります。但し、同じ産地の巣板同士の中でも質の違いを活かして組み合わせ、軟⇒硬・荒⇒細と研ぎ進める事も稀では有りませんし、其れは合砥でも同様です。

厄介なのは戸前・合いさ等の質・性格が相場の逆に成っているイレギュラーが出たり、産地(採掘される山)によっては巣板(しかも柔らかいとされる天井)でありながら、他所の大抵の巣板は云うに及ばず合砥をも凌駕する硬さ・細かさを示したりする場合です。この場合は、定説ともなっている「東の山は西より硬い」「合砥は巣板より硬く細かい」「戸前は合砥で最高」「~の山は~の山より硬く細かい」等の固定観念に囚われず、其の砥石自体が如何なる性質・性格なのかを的確に見抜いて活用しなければ成りません。

当然、普通とはあべこべの並び順で組み合わせて研ぎ進める状況も起こり得ますが、飽くまでも研ぎの効率や仕上がりの良さを優先して使い分けるべきです。実用を旨とする者に在っては、間違っても産地のブランドや層の銘柄に惑わされる様な事態は避けねばならず、其の為にも試し研ぎや触察で正確に砥石を評価したい所です。

 

 

 

上記を踏まえて、小坊主様に御渡ししたサンプルに付いてです。片方は奥殿産、天井巣板の中硬。もう一方は中山の戸前、緑色の此方も中硬。硬さは幾分、戸前が上回り細かさでも同様かと思われます。

以上は双方、二つの比較。問題は御購入頂いた、他の三つとの兼ね合いですね。三つの内訳は千枚っぽいカラス・千枚際の戸前・中硬の巣板で、硬さ順では1・2・3。細かさでも1・2・3(もしかすると2・1・3の反応に成るかも知れません)。

注意点としては、唯一カラスのみ砥粒の目が立ち気味なので、細かさの割りに傷が消え難い可能性が有ります。鋼材の種類・熱処理・研ぎ方で変化します。その代わり、刃金の研磨が速く鋭利に仕上げ易い傾向も見られます。

さて、いよいよサンプルと三つの関係性を絡めた使い分けです。(繰り返しに成りますが、今回俎上に上がっている砥石同士の比較検討)緑の中山戸前は質的に千枚際戸前に近く、硬さと細かさでは僅かに上回ります。奥殿天井巣板は中硬巣板よりも少し硬いですが、細かさは同程度だと思います。従って、巣板に関しては平面維持には寄与する硬さが、少ない水分量や高い圧力の影響下での研ぎで引け傷に注意が必要です。

逆に言えば砥石の平面度合いが重要で、軟鉄ほど傷に敏感で無い鋼で出来ている和包丁の裏押しに向いています。少なくとも、最終仕上げの前段には持って来いでしょう。例として片刃和包丁を研ぐ場合には中硬巣板で切り刃を研ぎ、その刃金部分を千枚際戸前で仕上げる。不足が有れば中山戸前で糸引き。裏押しは奥殿天井巣板で研ぎ、不足が有ればカラスで仕上げる。となります。