カテゴリー別アーカイブ: 砥石の選別

四月二十九日の砥石選別

 

今年は桜のシーズンに遅れ、藤のシーズンになりました。指示のタイミング不安定なナビに惑わされ、想定外の経路(茨木回り)でしたが景色は良かったです。しかし余裕が無く写真も撮れず。

北海道用と松阪用、それに香港用の砥石を探してきました。結果的には、一勝一敗一分けでしょうか。

 

先ずは、北海道へと考えて選んだ東物の巣板

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旗星の判子の痕跡が見えます。やや硬口で巣無しの蓮華・墨流し入り

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ほぼ本焼き用として選んだので、地金には余り優しくは無いかも。

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しかし、主目的に対しては良い仕上がり。

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以前購入した自分用の此れ(下画像)と比べると、硬さが僅かに増した分、扱い易さは若干低下。その代わり、使いこなせれば砥面の変形減少・仕上がりの光り方向上に繋がるでしょう。何より形状の確かさと、底面周辺の焼け気味の難が無い為に、砥石としてのランクが違って来ますね。

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どちらを選ばれても、又どちらも選ばれなくても問題は有りませんので御心配なく。この品質と性能であれば手元に置いておくのに何の痛痒も・・・と言うより傍に居てくれると有り難いレベルです。

 

 

 

此方は、仕事用の予備として追加した物です。

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以前の此れ(下画像)が強い研磨力の割に期待以上の細かい仕上がりを見せてくれたのでもう一つ有ればと。この手は、巣が巣として邪魔になり難いタイプの様です。見かけと研ぎ感は荒々しいのに不思議な事です。

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松阪に送った三つの内、一つは同じタイプです。それ以外は黄色の軟口のカラス入り、水浅葱(これも私の持ち物と同タイプですが、ややまったり気味)。扱い易い千枚も頼まれていましたが、其処は希少種ゆえ簡単には出会えませんでした。まあ、其れを承知でなければ銘柄・品質を指定しての選別など叶いませんが、軟口カラス入りが代替出来る筈と踏んで選んでおきました。

 

 

 

最後は、現在香港から司作の包丁について問い合わせを頂いている方が、千枚・八枚の砥石についても興味があるとの事。ついては、其方にも相応しい砥石をと見てきましたが、前述の通り。

止む無く、もしも御急ぎで千枚に準じる石でも良ければと、以前購入の此の砥石を参考に上げさせて貰いました。

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戸前と敷き戸前の中間という可能性も有りますが、色調・使用感から天上戸前と千枚ではと思われます。

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実際に研いで見れば、仕上がりは充分。標準的な千枚と比較して、地金の細かさ・明るさ共に順当、刃金はやや明る目かなと。少なくとも性能面から見て、千枚系統に伍するのは間違いありません。

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包丁は兎も角、ペイパルやEMSなど、改めて聞いたり調べたりで手間取っており、恐縮ですので御要望に及ばない迄も、せめて近しい石をと紹介してみました。

 

 

 

因みに上記の砥石達は、個々に研ぎ上げた状態そのままでも充分な性能を発揮しますが(或いは夫々が何れかの分野で最適な可能性も)、そこから鏡面仕上げに持っていく繋ぎとしても有用です。

下画像は、小物を対象としている手持ち最小の大谷山と、鏡面仕上げ用共名倉の大上。

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掛かる手間隙は直前に使用する繋ぎの性能にも因りますが、概ね今回画像に上げた砥石達ならば何れも数分以内で、此の仕上がりに達します。

刃金だけなら大抵1分前後ですが、特に癖の有る地金を速く仕上げるならば間にもう一段階、挟んだ方が良いかも知れません。

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やはり鋼材や刃物に応じて相性を探り、設定した最終段階まで持っていけるルートを構成する砥石群は、大抵の要望を満たしてくれるので心強いです。そして可能な限り一段階を小さく、多くの石で繋いであるなら、より滑らかに上がって行ける訳です。

更にそのルートの用意が複数ならば、組み合わせ次第で或る程度は不測の事態にも対応できる為、仕上げ砥石枠を幾つか御持ちであれば、コンビネーションを探っておかれるのが良いと思います。共名倉の使い分けに限っても、効率や仕上がりに差が出ますので。

 

 

 

更に身内へ向けまして

 

前回紹介した砥石の仲間達です。今回は、中山産ばかりだと思います。因みに前回の後半二種もそうなのでしょう、〇カの判子が有りましたので。浅葱は一つを除く全てに・・・レーザー型とコッパにも判子付きは有ります。

しかしそれらは持ち帰って側面を濡らしたり、明るい場所で見てから改めて気付く事も。入手ルートは緘口令が敷かれたままにて伏せますが、大元の出所は確実なので安心です。

私は元々、少ないラインナップから渋々ピックアップするのは性に合わないのと、有名処へのブランド信仰も別段強くないので過去には余り注目して来なかった砥石達です。しかし多くに触れる機会があり、その中の50~60個を撫でて確認し、選んだ30個程を試しに研ぎ、最終的に十数個を手に入れました。

所謂、東物で中山主体。尚且つ〇カも相当量散見される中で、納得いくまで探せた為に本当の実質重視で選べました。〇カが付いている傾向が強い質や形状。しかし例外的な物や首を傾げたくなる個体。逆に何故これに判子が無いのか理解出来ない程の性能を見せる個体(只単に付ける前だったと考えれば納得いきますが)。色々興味深く勉強させて貰いました。

大判や尺長、完全均一な黄板や色物も含めて試し、実際一度は少し見栄えのする立派な黄色(或いは黄土色)を持ち帰ったものの、後に浅葱と交換しました。他に選んであった浅葱の幾つかも、欠けの無い綺麗な30型・40型を返品し、形状は不完全・サイズも小さく成りはしましたが、操作性・仕上がりの良さを優先した同系統で選び直しました。

以下の砥石達がそれで、自分にとっては納得の銘有りと、平均的な銘有りをも凌ぐ驚異の銘無しと言う訳です。

 

 

之まで幾度か画像を上げた浅葱。最初に選んだ石の一つで基準・或いは目標となった物。硬口で泥は余り出ず、滑走感強い。

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その予備

上の石を基準とすれば、やや硬めで刃金は更に鏡面気味。しかし滑走感はかなり低下。

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同じく硬めで鏡面傾向強い。滑走感は更に低下。

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やや柔らか目で研ぎ易く仕上がりと滑走感は基準に近い。砥粒の目は僅かにまったり?

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最も基準と近い質。厳密に言えば、直上画像の石の成分を僅かに基準に混ぜた感じです。

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以上の浅葱はどれも自分の研ぎに合い、特に刃金の処理は秀逸で最上の刃先を提供してくれます。中山の特徴的な模様なのか、妙な表現ですが「瘡蓋と其処から伸びる枝」みたいなのが在るようです。これは鉋や剃刀を極限まで研ぎ込む場合に、注意が必要かも知れません。まあ問題ならその部分を避けて使えば良い事ではありますが。

ネットの画像や知り合いの持ち物、しかも黄色や緑の石についても見た覚えが有るので結構普遍的に現れる共通項なのかも知れません。あと、裏に直径2ミリ前後の小さく綺麗な球状陥没が見られる物も。

兎も角、最初期から高い基準となる浅葱と出会い、それに比肩しうる予備達を追加出来た事は、真に僥倖でした。

 

 

 

次はレーザー型です。同じ色物でも、レーザー型には浅葱に近い刃金の仕上がりを見せてくれる物があり、之はやはりレーザー型と云うだけあって剃刀と合う質の石が選ばれているのかも知れませんね。

だとすれば、単に小さく採れたからそのサイズなりに仕上げるのとは違い、見識ある対応と見極める能力、そして贅沢な選択も賞賛されるべきだと思います。大きく採れた原石を敢えて小さく仕上げるのは、採算性から考えれば忌避される行為の筈ですので。

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と言いつつ、先ずは浅葱系です。 しかし浅葱系の中では最も柔らかいです。何故か色物とは逆に、この外観・サイズに限っては浅葱であり乍、硬口では無い物を幾つか確認しました。それでも刃金が光って来るのは流石。画像の石には、前述の球状陥没の痕跡が砥面にも見えますね。

 

 

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やはり浅葱寄りかも知れません。反応も近い感じ。しかし此方は柔らかくは無いです。最初に選んだ石の一つですが、その後は中々近似の物に出会わず

 

 

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色物らしく、ややまったりした研ぎ感。地金は浅葱系統より曇り勝ち。此方も最初に選んだ一つでしたが、幸い同系統が見付かりました。

 

 

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上の砥石と、ほぼ近似の反応。

 

 

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以下同文ですが、少し刃金はしゃきっと。しかし側面を見る限り、レーザー型の中では一番巣板っぽいような。

 

 

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レーザー型では、と言うより全体の中でも地金・刃金共に鏡面に近いです。

 

 

変な形ですが性能はまずまず。

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これだけは表裏、面付けされていない状態で選んだので何か分からずでした(暗い中で巣板っぽいのを探したのですが)。仕上げてみると並砥なんでしょうか、小鮎様から頂いた中山並砥に近い研ぎ感と仕上がり。しかし頂いた石と同様、硬さ・細かさが控えめに感じたので鉄を吸わせて育てた所、同様に改善されました。

砥面の性状として、濡らした状態では砥粒の凝集性がややクラスター状、例えれば丸尾山の天井戸前うぐいすに度々見られる感じになります。繋ぎに使えば良いかと考えていましたが、普通に使う刃物で不満は余り出ない質になって来ています。これも後になって判子に気付きました。

 

 

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黄色ですが、研ぎ易さと仕上がりのバランスが良かったので、相性探しのバラエティにと選びました。刃先の性能も問題なし。

 

 

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紫系統ですが、同じく研ぎ易い割りに仕上がりも充分。研いだ刃先の性能は、黄色と比べて同等若しくは其れ以上です。

 

 

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おまけで貰った物と購入したカラス入り。右と下は黄色・紫同様ですが、カラスは殊の外硬くて中々減らないでしょうね。使い道も切り出しなどに限られるでしょうから余計に。しかし全く地金を引かず鏡面で切れ味良く仕上げてくれるので、サイズ以外の点では完璧と言えます。

 

 

 

(業務連絡: こんな感じで選んだけれど、好みが近いなら納得の品揃えかと。先々そっちの手が空いたら選びに行く日を連絡されたし。予定を合わせて選別に。助言・手伝いは問題なし。)

 

 

 

S様(と身内)向けに巣板の紹介

 

S様には次の石(菖蒲産?)と同様な物(実用には高価過ぎ?)に御興味を持って頂いたり

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下の石(これも菖蒲?)を参考として御紹介したりしましたが・・・

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確定的ではありませんが、他にも次の二種類の巣板で選別が可能かも知れませんので、その際の御参考になればと載せてみます。

 

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白巣板っぽいですが、巣無しなのか余り側面からは巣板らしさは感じ難いです。研いで見れば当たりは硬すぎず中庸で、そこそこ泥も出ます。

 

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試しに研いで見ます

 

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切り出しでは地金は曇りはするものの、やや明るめと言うか光沢もあります。刃金も結構光り気味。

 

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本焼きの包丁でも試しましたが、以前の奥殿と同等の仕上がりで尚且つ研ぎ易いです。その代わり砥面の変形はやや早く感じます。

 

 

もう一つの方ですが、此方はかなり硬いです。奥殿と同じかそれ以上で砥粒の目も立っている印象です。しかしその分、特に刃金は明るく光り気味になります。

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試しで研ぎ上げた包丁画像だけになりますが、研ぎ目の細かさ・光り加減は巣板としてはかなり上級と言えそうです。

 

 

今回の後半二種は中山の砥石ですがサイズ的な理由などにより、一番目の砥石に比べれば未だ現実的かなと思いますので、どうしてもあちらが好みと言う訳でなければ、候補として今回の系統も当たってみたいと考えています。自分に出来る限りの範囲で努めますが、確約とは行かない点は御理解頂ければと。

 

 

砥石と、選別依頼に付きまして

 

S様に御送りした裏押し用の硬口砥石、それに前回掲載した自分用の白巣板蓮華や浅葱・レーザー型は、之までとは違ったルートで入って来た東物でした(巣板は判別待ち?で他のも未だ伏せます)。後続として、同系統の白巣板蓮華その他もと算段していましたが、価格的に厳しくなる可能性が出てきました。仕入れが同程度の値段でなくなる訳です。

その為、S様の硬口の質と性能の砥石をあの値段で出すのは難しくなりそうです。可能ならば、巣板も回せるようにと考えていたのですが、有ったとしても普段使い用としてお奨め出来る価格になるかどうか。これは私にとっても同様で、取り置き分の確保も不確定です。

砥取家製(丸尾山)も数年前より高目になって来て、以前にも増して見栄えのする砥石は気軽に購入し難い状況になっている昨今、辛い所ではありますが。とは言え、私の仕事用の砥石は、巣板各種・通常の合砥・平面と曲面対応の鏡面近辺を狙える合砥・各種小割りした砥石含め、一生分で必要な量は確保出来たと言えば出来ました。

 

例えば、本焼きに使用を想定している巣板(蓮華入り)ですが、現在は以下の砥石達で対応しています。

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鎌砥に近いサイズですが筋を避ければ結構、良い仕上がりに。

 

 

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変形ですが、上の砥石より粒度細かく砥面の狂いも少ない。更に上の仕上がりを提供してくれます。

 

 

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上二つを足して割った様な使い勝手です。

 

 

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そして最近仲間入りした物

 

 

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此れもですね

 

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因みに、仕上がりはこんな感じ

 

 

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此方(奥殿)は資料みたいな気持ちでの購入でしたが

 

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予想以上に使えますね。と言うか、最も優れるかも知れません。

 

 

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他には、元祖本焼き用としていた白巣板巣無し(敷き内気味?)もあります。

 

 

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それら本焼き用の手前で地均しをしてくれる頂き物の若狭産

 

これらの砥石達以外にも、目的別に各種・各サイズ・複数の性質に亘って大抵揃いましたので、以前とは違ってせっつく気持ちに惑わされる事も無くなり、冷静に見ていく構えで居られます。

 

 

 

 

あと。S様用の青砥ですが、手頃なのを持って帰れました。サイズは、幅が5.5cm強~6cm弱。長さ20cmの厚さ5cmといった所です。

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大まかに面付けしましたが、質としては硬さ・細かさ・研磨力共にバランスが取れ、文字通り優等生だと思います。割れに繋がるヒビも目立つ物無く、強いて言えば底面がまっ平らでない事でしょうか。一応、砥面以外は石ちゃんを塗っておきました。

 

 

 

参考までに手持ちの青砥ですが、あと二本(硬さ中庸のややシャリと、柔らか目のトロ)は親の家に置いてあります。トロッとした泥がやや多めに出るのが好みです。シャリは、何処かスリガラスのイメージが。

 

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トロでしたが硬い部分が増えて行き、かなり使い勝手が変わってしまいました。大きくて重いので余計に使わない状況に。幅と厚みは8cm位。

 

 

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青戸とは思えない硬さで先ず脱落した物。

 

 

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砥取家で、おまけに貰った物。性能はややシャリっと以外は、満足且つ好みの物。

 

 

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細いですが、性能・砥ぎ感共に最も優れると感じている物。

 

S様、以上の様な青砥(五つ上の画像)ですが、良ければ送らせて頂きます。値段的には、硬口の八掛け程度になりますので御判断下さい。

 

この度の砥石を得て

 

前回、手に入れた砥石達は予てからの私の希望、或いは願望を満たしてくれる物でした。流石は、古来より名品と名高い中から選んだだけの事は有ります。

具体的には、巣板・合砥(曇り~薄曇りに仕上がり、切れも充分な)を超える切れと微細な仕上がり(半鏡面~鏡面)を実現し、尚且つカミソリ砥クラスの弱点克服と言うか、更なる高望みを叶えてくれる砥石です。

以前にも多少記載しましたが、カミソリ砥の弱点(やや難癖に近いですが)と感じるのは、研がれた刃物が「一様な仕上がり」に成り勝ちな事。平面以外の立体的な形状への追従性が低い事。鋼材・仕上がり等に因っては、結構適応範囲が絞られる事。感覚として線の細い切れと、唐突な切れ止みも・・・。端的には、対応可能な範囲で鋼材の個性を均質化しつつ金属粒子を微細化、平面の切り刃へ特化した砥石と言えるでしょうか。

上記の印象から、之まではステンレス(炭素鋼に比べて個性の幅が狭い)以外では、相性によって巣板・戸前系・千枚系で刃金部分を仕上げて来ました。しかし、もう一段上を実現できない物かとの想いも拭い切れませんでした。切れ・長切れ・仕上がり(美観・防錆の兼備)で、より満足いく砥石は無いものかと・・・。

千枚系統では、大まかには納得できる場合が多く、若狭の系統も取り混ぜれば上位互換や守備範囲拡大を狙えます。この上、全性能(切れ・長切れ・仕上がり)を上乗せし、守備範囲も広くて研ぎ易い砥石を望むなど、欲張りすぎだと自分を納得させていたのですが、巡り合わせの妙で幸運にも期待通りの石に辿り着きました。

結果的には、組織の粗い炭素鋼を始め、廉価なステンレス(ふにゃふにゃ)・中級品の癖の有るステンレス(柔い粘い)・焼入れと戻しが変則的なステンレス(ハシカイVG10)・粉末冶金鋼(カウリY但し実用硬度)にも最も優秀な性能を発揮。主眼の炭素鋼は当然として、特にステンレスへの長切れ効果は驚きました。あくまでも最終仕上げなので、手前の各段階で夫々の石は必要ですが。

 

 

其れが前回の砥石達でしたが、中でもこの浅葱。小振りながら、同系統の中でも目的を絞って厳選した物。一緒に試した30型や40型、大判含めた黄板等色物とは異なる反応と仕上がりに大満足です。(何故かレーザー型の色物には刃金の仕上がりが同等な石が有り、確保して来ました)

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刃金はほぼ鏡面、地金も透明感ある仕上がり。平面の刃物であれば、カミソリ砥に繋いで完全鏡面への移行も楽。

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しかし白眉は、曲面(刃・地、共)にも対応してくれ、斑の無い微細な研ぎ肌で鋭利な切れ(画像は説明用に刃金の中央で明確な研ぎ分け)。更には地金も引かず、中々の滑走感を併せ持っています。つまり砥石に当てる面積広く硬軟両部分あり、完全平面がほぼ存在しない刃物である包丁に最適。

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切り刃は千枚で刃金(先側半分)は浅葱です。刃金に比べれば地金の仕上がりは、少し補正が必要な場合も。なので、千枚の本体・小割りした物にて均し研ぎ。

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今後は要件にも因りますが、合わせの包丁については基本的に此の仕様を標準としたいと考えています。地金の千枚仕上げは変色と錆びを軽減し、刃金の○○仕上げ(今は伏せておきます)は考え得る最良の刃先を実現してくれると思います。

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おまけは、此方も探していた蓮華入り巣板で粒度細かく硬さ中庸の物(側面には蓮華だらけ・砥面には黒っぽい模様の中に蓮華が出始め)。いうなれば本焼きの標準仕様に必要な石です。

以前からの手持ちにはコッパで大中小の白巣板蓮華がありますが、やや硬目でしたので有り難いです。此で大まかに仕上げ、部分的な均し研ぎはコッパで行う事になるでしょう。

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下はその予備?(墨流し+蓮華)ですが、上の石とほぼ近似の石も取り置き依頼中

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因みに、私は心配性なので今回掲載の浅葱は勿論、前回掲載画像のレーザー型・色物の予備も揃えるべく三度、選別して来ました。幸い、意外なほど驚異的にほぼ同質の石(数個ずつ)を見つけ出せたので、今後はそれらを仕上げの主力として最大限、自分の理想とする研ぎ上がりを追求したいと思います。

 

あと、S様に御送りした石の質もやはり気に成り、近い物を手持ちに加えてしまいました。続いて御依頼頂いた青砥は、もしかすると余り御待たせせずに見つかるかも知れませんのでお楽しみに。もし、サイズ・予算で御希望があれば御知らせを。上手く行けばかなり自由が利く可能性もありますので。

 

 

選別の結果

 

北海道のS様より、砥石の御注文を頂いていましたが、やっと相応しいと思える砥石が見つかりましたので御報告まで。

 

本焼き包丁に向く巣板と、糸引きや裏押しに向く硬口の砥石との御希望でした。当初は白巣板の「巣無し」や「蓮華」を考えていましたが現時点では余り弾数が無い様子。そこで暫く様子見した結果、巣の少ない敷き内曇りを砥取り家の次男氏から受け取りました(白巣板層は、巣の有無で砥粒の形状・積層も違う様で)。

 

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恐らく、前述の純粋な白系統よりも、やや曇りは強いかも知れませんが、研ぎ易さと砥粒の出方の違いから、研ぎ斑は出難いのではと思います。試した切り出しの裏(鋼部分)も良い状態に仕上がりました。

 

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もう片方は従来と異なる砥石群になりますが、幾つか試した硬口の内で最も裏押し(糸引きは何れも良好)に優れると判断した石です。

勿論、平面同士など条件が合えば、切り刃自体から研ぎ下ろせる性能でもあります。兎も角、鋼部分の目の細かい仕上がりと砥面の狂い難さ、其れに相反する扱い易さで際立っていました。

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S様、以上の二つの砥石ですが、近く御送りしますので試して頂きたく思います。もし、質的な相性やサイズ的な問題で交換を御希望の際は御遠慮なく御願い致します。但し、今度は何週間か或いは何ヶ月掛かるか分かりませんので、気長に御待ち頂く事になると思いますが。

 

 

 

 

おまけは、序でに選んだ自分用の物と、正におまけで貰った物です。

 

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上画像の物は、之までの手持ち(大谷山・御廟山以外の鏡面系)の上位互換や相性探しの選択の幅を広げてくれる有難い物でした。特に鋼の鏡面(又は近辺)仕上げ・地金の鏡面(又は一歩手前)仕上げに役立ちます。

勿論、これらも裏押しでの使用に際しても、扱い易さと性能に不満は出ないレベルです。確かに超~超超硬口での仕上げとは、極僅かに違いが有るやも知れませんが、それらは性能を発揮せしめる能力を求められる上に、扱い難さを克服する必要があります。失敗の確率も上がり易いでしょうから、現実的には今回選んだ砥石達が重宝すると考えられます。

 

他にも、ほぼ真っ白な(薄っすら柄あり)定型のが気に成りましたが、資金が貯まる迄はと予約して取り置きにしました。まあ、あれは完全に資料(愉しみ用)ですので、急ぐ必要も無いのが幸いです。

 

 

11月22・23日の砥石選別

 

この連休に、亀岡に行ってきました。目的の半分は、以前北海道から本焼きの柳の研ぎ依頼を頂いたS様に相応しい砥石の選別でした。

結果としては、通常使用では中々の物が多く在りましたが、本焼きに適する上に出された条件に見合う物は、もう少しじっくり探したいと思いました。S様には、値段・期間の幅を取って頂きましたので、短期(週単位)での選別ではなく、やや中期(月単位)で対応したく存じます。

 

 

代わりに、私の仕事用(本当かな?)の砥石で追加と変更をしてきました。

先ずは小さい白巣板ですが、之は特殊用途専用です。和包丁の切り刃を仕上げる際、複雑な面構成に成る所への対応は大きく二つ。一つは狭い範囲毎に小割りした砥石で分割、もう一つは其の面に合わせて砥石表面を変形させ、そこで研ぐ方法です。

下画像の砥石は、後者の方法に使用する目的で選びました。選定基準は、石そのものがやや当たりが柔らかく、肌理細かく尖っていない砥粒で傷が消え易い物です。小さ目が在り難いのは、当然大きい物で同様に使うと平面管理が面倒なこと、作業のテンポが遅くなる事、砥石の性格として、その目的に対して最大に振り切った物が少ない事からです(絶対数と、其に伴う確率の問題)。

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一応、切り出しを研いで見ました。目的通りの仕上がりですね。問題は平面以外での働きですが、それも現地で試し研ぎ用の置き包丁(来週生ハムスライス予定にて)を研いでテスト済みです。

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次は、八枚と表示が在りましたが、ほぼ千枚ですね。此方は、少し前に白巣板と共に購入した敷き内曇りが、やや性格的に似すぎていたので交換して貰った物です。

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刃金は、この系統としても可也良い状態です。

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最後は、砥取家で集合していた常連の一人、小鮎様から頂いた中山の並砥です。どうやら、再生品?に近い砥石で大きく厚かった物を加工されたそうです。経験値を上げて貰えるプレゼントを、何時も有り難う御座います。

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刃金は、上の砥石に比べてやや曇り加減ですが元々は結構、柔らか目だったそうなので其れ故でしょうか。対して、地金は此方の方がやや明るく仕上がり、そう云う違いも面白い所ですね。そして、層が変わって硬さも激変したとの由、又鉄を吸っての変化もあるでしょうから、今後はどうなって行くかも楽しみです。とは言え、充分な綺麗さと切れではありますが。

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次の日曜も、同様の予定ですが前回よりも大変そうです。春からの動きや予定が確定したり方向性が示されるかも知れません。それに亀岡周辺での動きも連動して来る筈ですので。

 

しかし其れとは別に、依頼を頂いた砥石の選別は抜かりなく行なうつもりではあります。

 

 

取り敢えず一応の準備

 

オーストリアでのイベントに招聘される事になったのは良いのですが、予想外に遣り取りが遅滞気味です。此方の質問項目を翻訳しての問い合わせとは言え、慌ただしい本国から大使館に返答が来ないとの事。最初のごく大まかな当日の予定をメールで見て以来、具体的な要望や現場の設え、観衆の種類やレベルなども不明の為、やらなければならなくなる可能性のある事柄、全てに準備をしています。

パスポートを二十数年振りに申請したり着る物(親の家に在った作務衣的な服)を用意したり近所からスーツケースを貰ったり。研ぎに関しては取り敢えず、人造・天然の砥石を用意する事から始め、簡単な展示が必要かもと、手持ちの包丁(柳と三徳メインで)を研ぎ直しました。人造砥石は五本に絞りましたが天然砥石の方は、機内持ち込みの荷物には重量制限も在るらしい事に加え、移動中の損傷・紛失も警戒すると余りサイズ・性能・値段(知れていますが)のレベルが高い物は憚られます。かといって普段使いの実用一点張りシリーズは、やや見栄えに難があります。

と言う訳で先日の日曜に探しに行って来ました。大き過ぎず、性能にも不満が無く、見た目もまずまず整っている巣板を二つ選び出す事が出来ました。

 

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白巣板にややナマズが入っています。その割りに中庸からやや硬めですが、刃金の傷は直ぐに消し、地金の仕上がりも若干粗め乍ら斑無く仕上がります。

 

 

 

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此方は通常の白巣板よりは敷き内曇りに近い物で、やはりナマズが入っています。しかし硬さは上の石を更に上回り、刃物を当てると巣板より合砥っぽく感じる程で、粒度もより細かいです。その為、仕上がりは刃・地共に先の状態よりも僅かに細かいです。

 

 

 

之まで、同じ役割で使って来たのは下の二つ、敷き内曇りの蓮華と紅葉です。両方、特に蓮華の方は平面ではない刃物の地金に斑が出易い傾向以外は存分に働いてくれます(他の蓮華にも同様の傾向は見られました)。

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しかし、今回は多少形状が整っている新入り二つに初陣を飾って貰うとしましょう。働いて、もう少し鉄を吸って帰ってからは、硬さ・細かさが向上するでしょうから、寧ろ今から其れが楽しみでもあります。あとは戸前系(若狭産)、千枚系、カミソリ砥の合砥を加えて出張用のチームを作ろうと思います。

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あと、研ぎ直した包丁ですが、日中に自然光で写さないと余り様になりませんが、以下の様な感じです。

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最初の通知メールによると当日イベントでは、最後の方で偉い方のスピーチの後、パフォーマンスとか書かれていましたが、持ち時間の長短や説明の内容・レベルとその有無、試し切りの可否や展示の有無も不明なままですので、大半の準備が無駄になるかも知れませんが出来る範囲で万全を期し、ウィーンでの仕事自体が無駄だったと思わずに済むようにしたいと思います。

 

連休中に小鮎様と

 

連休中に、小鮎様と砥取家にてミーティング?をして来ました。旧交を温めると言うか、お土産交換会と言うか砥石の品評会でしょうか。稀少な銘柄や豪華なサイズなど、手持ちの殆どが実用一点張りの自分では適わない砥石たちを披露頂きました。

 

その中で、幾つか共名倉にと頂いた石があります。黄色が中山産、グレーが奥殿産(浅葱)、褐色が関東の合砥?クリームが伊予砥との事です。

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共名倉といえど、当然小さい刃物ならば普通に研げる訳で、実際前回の剃刀研ぎでは、その種類の中でほぼ手持ち中、一番小さいサイズの砥石たちを幾つか使いました。

今回頂いた砥石を試す前に、自分の普段使い用の本戸前の切れ端で砥いで見ます。

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次に千枚(これは最初、極めて形状が歪だったので、面を均しながら使える所を使っています)

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奥殿産

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中山産

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因みに、共名倉は絶対性能よりも馴染みを優先して八枚です

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試した結果、本戸前⇒千枚⇒中山・奥殿の順で刃金が鏡面に近づく様です。地金も同じ順で明るく仕上がりますが、中山と奥殿では刃金の違いが少ない割りには、奥殿の方が地金の明るさ(反射)はかなり上となりました。

小鮎様、砥石の知見を広めさせて頂き、又楽しい石たちを有難う御座いました。前回亀岡から連れ帰った、いきむらさきの共名倉もお役に立てば幸いです。

 

 

 

おまけは、今回の亀岡行きで購入できた新たな千枚です。今現在、最も鉄を吸わせていないので成るべく使用頻度を抑えて性状を維持したいと思っています(使用して行く内、水分・鉄分・塩素も?で硬くなり勝ち・弾力が無くなりパサつきが出る傾向が多い印象です)。

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小鮎様からの質問で(九月六日の砥石選別含む)

 

少し前に、共名倉用の肌理が細かく柔らか目で刃金を光らせる石は?との質問を頂いたので、其れについて自分の手持ちを参考までに。

昨日は本来、天上戸前うぐいすを狙っていましたが探し当たらず、代わりに卵色巣板のこっぱと共名倉用の戸前いきむらさきを選んできました。

 

購入時

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持ち帰って面付け後

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購入時

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表裏面付け後

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卵色巣板は、鉋の刃や切り出しなど特に平面を研ぐ用途専用に、面が崩れる間もなく小振りな砥石をローテーションする為、複数揃えています(白の後で卵複数はお奨めです)。今回の卵もそれに役立つと思いました。

 

平面用卵色シリーズ

1 やや黄色巣板寄りと思われる物

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2 少し紅葉の混じった物

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3 黒付け坊主に近いらしき物

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4 これも少し紅葉混じりですが茶・灰でなく緑褐色

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5 一つだけ有る天上巣板層の卵

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何故此処まで卵を載せたかと言えば、砥取家に贈った切り出しの手入れを兼ねて共名倉の実例を示そうと考えたからです。それらの切り出しは、欠けや錆が出る度に研ぎ直しをして来ており、一度仕上げてから確か三度目の手入れになります(錆びや欠けを狙って研ぐので初期よりも平面度合いが甘くなっており、次回行なうとしたら人造の1000番辺りから再び精度を出して進める事になりそうです)。

左久作 大小刀 アーサーバルファー鋼に和鉄地金(三原鉄だったかと)

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中屋平治  錬鉄切り出し スェ-デン鋼に錬鉄地金

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これの手入れに使うのが卵シリーズと言う訳で、その後に大谷山と共名倉で仕上げる場面では今回購入したもう一つを俎上に上げようと。

 

 

自分が鏡面を狙って使う共名倉は以下の通りです(共名倉に求める性能・性質はHPの記載も御参照頂ければ)。

八枚

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大上

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やや軟らかい大上

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いきむらさき寄りの戸前系

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硬軟二種の戸前(一本松)

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千枚系らしきもの

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特に大上二種は適応範囲・扱い易さ・仕上がりで抜群です(但しこれらは、この目的に沿って選別した石であり、同銘柄でありさえすれば同じ働きが期待できるとは限りません)。

 

 

先ずは裏の錆を落とし、梳き部分を磨いた後、白巣板で裏押しをしました。表は白巣板からですが、砥粒の目が立ち気味とまったりの二種で刃金・地金双方の反応を窺いながら進みます。

 

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まずまずの結果だったので、続いて購入し立ての卵を試しますが、これも充分な性能。砥ぎ感は黒付けと紅葉入りの中間、つまり目が細かく泥も出るが多すぎず、研磨力はやや目の立った砥粒で(トロトロではなく)さらりと研げる(地金・刃金共に均等に仕上がる)印象です。過去の3つ程の経験上、黒付けに近いほど、(特に硬くない限り)泥がやや多めで地金に優しい様です。

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念の為、従来の卵と比較してみても遜色ない様子。

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ここから、本来はやや硬口で目の細かい合砥(千枚・八枚系か、特に細かい大上・戸前系)に繋ぐ所ですが、鋼材・砥石の質・更に相性も良かったのでこのまま大谷山(三つ有る手持ちの中で扱い易さが最も優れた石)へ。

そして合わせる共名倉はいよいよ、新入りのいきむらさきです。

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使い勝手・仕上がり共にまずまず。

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しかしもう一声と、万能タイプの大上(やや軟らかめ)を使用。

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潤滑性・クッション性が適度で、接点の状態が正確に伝わる研ぎ心地で扱い易い上、仕上がりも更に向上しました。此方に比べると、このいきむらさきは共名倉としては中の上くらいでしょう。

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只、そんないきむらさきも通常使用では、鋼を結構明るめに仕上げてくれます。逆に言うと、この段階でこうならない合砥は鏡面狙いの共名倉としては不足と言う事になります。

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裏側の緑褐色ではやや粗い砥粒なので扱い難いですが、これはこれで共名倉のコンビ砥石?みたいで面白くもありますね。

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小鮎様には参考にして頂けましたでしょうか。お役に立てば幸いです。