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採掘の準備

 

本日は午後から、中山の赤ピンが採れる間府の掃除をして来ました。随分前に一部が埋もれた所に進んで行き、途中の石や土を掻き出しては排除の繰り返しです。

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暫く続けるとかんな感じに。

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一度、捨てに行った後、更に続けると下画像の大きな石(長さ約60cm厚さ約15cm)が転がり落ちました。

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その御陰で、突き当りの部分が広がり

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上部の様子が見えました。

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此処は赤ピンが多く採れる場所ですので、簡単に加工無しで仕上がる原石も出て来ます。その中の一つをサンプルにしてみました。

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柔らか目で、泥も比例して多く出ます。邪魔になる事は無いのですが、結構砥粒の目が立っているので圧力や速度を一定に研がないと微妙な引け傷が入り易い性格ではあります。

とは言っても、刃金に対して悪さをする訳でもなく、極端に地金の仕上がりに拘らなければ問題ないレベルです。寧ろ、その柔らかさと泥の多さによる当たりの優しさ・滑走感の良さで、研ぎ易さが際立つ印象に成るでしょう。

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石の性格を把握して、其れを生かす方向で研げれば全く問題ない場合が多いのでは。一定数、赤ピンに拘る向きがいらっしゃるのもむべなるかな、と言った所です。

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この赤ピンの仕上がりは、刃金がやや明る目の薄曇りでした。戸前との境界付近の赤ピンや、そうで無くとも硬口の物も採れるとの事で、先々には様々な仕上がりの砥石達が期待出来そうです。

 

 

 

 

砥石の勉強の為に

 

この前、天井巣板に触れる事が出来た所へ再び出掛けて来ました。尚さんと一緒なのは変わりませんが、今回は採掘している山へ連れて行って貰い、現場を見ながら手伝いをしつつ、実地に教えて頂く機会に恵まれました。

 

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本巣板の天井辺り?

 

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大きな原石です。

 

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此方は自分で割った所だったかと。

 

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前回頂いて帰った、ピンク掛かった紫の入った物と同系統に見えますね。

 

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主としては中腹と、山頂手前の辺りが手付かずと言うか新たに見つかった様な場所ですが、下画像の山頂手前の剥がれかけた層が露頭している部分などは見ていて分かり易いです。

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この付近で並んで採掘していた折りに、私が採った妙に硬い小さ目の砥石が変わっているとの事で、村上株だな。などと話しながら作業する一コマも。

因みに、鉱脈の露頭している部分が株で、其れを掘り進めて行くと間府になるのだとか?

 

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かなりの量の原石の採掘・鍛えを終えた所。天井巣板から八枚辺り?

 

 

御当地に産する砥石の特徴や、其れに付随する加工上の注意点、更には加工法その物も説明して貰えました。というのも、指導に当たって下さる方が古来より伝わる山本流の採掘・加工法を継承する方で、私の事は内弟子(通いですが)扱いしても良いと言って頂けたからです。

自分としては、砥石に関して採掘場所の周辺から原石の状態、更には加工の良し悪しによって如何なる違いが出るのかまで、興味のあった内容を網羅する勉強が出来る、願っても無い機会です。喜んで御願いして来ました。

喜んでいた為か、慣れない傾斜地での行動で疲れていたのか、当日に採れた肝心の石は置いて来てしまったのですが、今後もちょくちょく寄せて頂けるので、近々連れて帰れるでしょう。此の度の二日に渡る勉強に感謝すると共に、今後も御指導宜しくお願い致します。

 

 

 

 

速報です

 

未だ、文字通りに新鮮(過ぎる)な話ですので、取り敢えず端緒に付いてを少し御知らせです。

昨日、或る方の所まで天然砥石尚さんに案内を頂きました。其処では、之まで疑問に思っていた事柄についての答えや勉強になる様々な知識、更には有難い御提案まで御聞きする事が出来ました。

長時間、当方の現状に付いて説明したり双方が将来、目指すべき理想などを確認しての帰り際には新鮮な(?)砥石を持たせてくれました。

新鮮とは採掘されて直ぐであるばかりで無く、過去に採られていなかった場所から今回、初めて見つかったと云う意味をも含みます。大枠での産地名としては奥殿になるのですが、新たな株からの発見です。

勿論、株と言ってもピンポイントで狭小な一部分を指す其処だけで無く、周辺に広がりを持っている相当な範囲で確認されました。

 

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浅葱色?ですが、天井巣板らしいです。此方は表。

 

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そして裏です。側面中央から裏に掛けて、明る目の紫になっています。

 

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それを強調された感の有る二本目。層は同一ながら、少し質が違います。一本目より、やや硬さが控え目でムッチリとした弾力が有ります。

 

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二本目の裏ですがグレーで、砥面に比べて柔らか目。グレーの感触は一本目も同様で、サラサラよりはトロッとした泥が出ます。

 

 

 

試し研ぎですが、結果は一目瞭然。先ずは一本目からです。

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二本目です。

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刃金・地金共に良く下りますね。

 

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拡大しても、刃先の仕上がりは上々です。

 

 

 

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古くて組織も荒い炭素鋼のペティも砥ぎ易くて良い仕上がり。

 

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刃先拡大画像でも傷や荒れは見られません。荒い組織を適度に躾け直してくれる、少し田村山を感じさせる性格。外観的には硬口~超硬口の砥石仕上げに近いかも。

 

 

 

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少々、曲者のVG10ペティですが、硬口~超硬口で偶に見られる様な上滑りや弾かれる感触も無く、弾力の有る砥面でしっとり砥げます。

 

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刃先拡大画像でも、安定して整った仕上がりが分かります。

 

 

 

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砥ぎ感を改善する目的でのダイヤによる泥出しは、必要性が皆無と言っても良いでしょう。仕上がりを曇り気味にしたいとか、特に前段の傷を消し切りたい等、明確な目的が有れば別ですが。

 

 

 

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特に気に入った二本目の砥石ですが、余りに使い勝手や仕上がりが良いので、楽しくなって色々と試してしまいました。

切れと永切れテストでも余裕で好成績(ペティ二種)。超硬口の砥石特有の効果である微細で鋭利な切れ味と永切れを齎してくれ、其れに反する砥ぎ易さと平面維持力は魅力です。

先々、このシリーズは予備を含めて数本、揃えて置きたいですね。出来れば面積は贅沢を言わないので、少し厚目の物を。しかし適度な硬さと弾力で、かなり減り難いのですが。飽くまでも安心感と、包丁を研ぐ場合の取り回し上の要求です。

 

 

しかし、従来は高性能な奥殿というだけでも貴重で、新たな(現行の採掘された)奥殿産砥石の大幅な追加は望み薄と思われていた処、少しオーバーに言えば世紀の発見によって天然砥石好きには晴天の霹靂レベルの朗報となりますね。

平成も押し詰まって来たと思われる今日、願っても無い御出ましに立ち会えるのは幸運としか言えません。正に平成(後半ギリギリ)の大発見でしょうか。今後も注目して行きたいと思います。

 

 

 

 

あと、こんな砥石も連れて帰って来たのですが

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赤っぽい方

 

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浅葱色の方

 

 

試し研ぎ

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少し柔らか目ですが肌理の細かい、鋭利な仕上がり。

 

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刃金は文句無しですね。

 

 

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浅葱色は対照的にゴリゴリと感じる砥ぎ感ながら、豈図らんや綺麗な刃金に仕上げてくれます。

 

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抜群な刃金を見て、不思議というか呆気に取られる程。天然は面白いですね。

最後の二つは天然砥石館に置かれる予定ですので、御来館の方には砥いで頂けるかも知れません。なるべく多種多様な砥石に触れて、天然砥石の奥深さと魅力を感じて頂ければ幸いです。

 

 

 

 

此の度は、御案内と御紹介を頂いた尚さんと、教えを頂いた方に感謝致します。先々、自分に可能な事柄を通じて恩返しを出来れば幸甚に存じます。今後も勉強させて頂きながら精進したいと思います。有難う御座いました。そして今後も宜しく御願い致します。

 

 

 

 

昨日の料理の研究

 

料理人や関係者とのイベントを控えていたり、業界への貢献を目指す立場から、上野館長と私で少し前から料理店を回ってみる計画を実行中です。

其れに当たるのは砥石館の閉館後だったり、休館日になりますので先ずは、昨日も台風にも拘らず御出で下さった来館者への対応をしておりました。

「簡易研ぎ講習付きの天然砥石体験」コースを御希望の方の中に、私の地元からお越しの方がいらっしゃいました。以前も、自宅から歩いて数分の鉄工所の方と砥取家で出会った事は有りますが、近さでは其れに次ぐ程で御互いの周辺事情も言い当てられるくらい。

(良く考えれば以前、柳の研ぎに付いて「上級者向け研ぎ講習」を受けに来て頂いた方も、仕事場はバイクで数分と言った所だったかと。此方は来月、薄刃の研ぎを習いたいと再度の研ぎ講習を御考えで有難さと共に身の引き締まる思いです。)

他にも常連さん親子、千葉からの方など悪天候にもめげずに数組の来館が有りました。

 

 

 

閉館間際から勢いを増した風雨に若干の不安を感じましたが、館長を載せて京都市目指して走り出しました。ラジオからは冠水や増水、避難指示などが引っ切り無しに伝えられます。

往路では時折り放送が聞き取り難い程度で寧ろ、交通量が少ないなど特に問題も無く到着。早速出された料理に付いて双方、あれやこれやと知識や感想の応酬。何時もながら、中々楽しい時間を過ごしました。

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(ですが、無謀な長距離行は矢張り要注意です。亀岡から大阪までの途中は路面に堆積物が散乱し、冠水間近な部分も多数。極め付けは、もう少しで山間部を抜ける所で通行止め。此の先で倒木が有り、回り道しろと。かなり時間を掛けて帰宅しました。)

 

 

 

 

其れに触発された訳では無いのですが、以前から聞き及んでいた蓮根に付いて試してみました。曰く、研ぎの仕上げが余りに細かいと、蓮根などは切れ難いと。

先日の関の刃物祭りでも、私の菜切りを見せた時に尾上さんから同様の意見を頂いたので気になっていました。細かい仕上げだと本当に困るのか。仮に本当だとしても世の中では年がら年中、蓮根を切っていて広く遍く、凡そ調理に関わるほどの者には恐れられているのか。

何故、二言目には蓮根が出て其れが研ぎの基準・切る対象の代表となるのか。対象に応じて砥ぎ分ける手も有るのでは?とも感じますが、蓮根が切れれば他は取るに足りないのでしょうか。まあ、世界のラスボスが蓮根と言うなら仕方無いのでしょうか。

 

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で、蓮根です。何やら、長男・次男・三男で硬さや食感・向く調理法も違うそうですが、これは硬い方でした。

 

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序でに、来館下さった小西さんから差し入れの賀茂茄子と思われる物も調理します。何れも簡単な事しか出来ませんが。

 

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数年来御世話になっている料理?ブログで記憶に残っていたのを大まかに再現です。

 

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蓮根を飾り切りして軽く加熱後、酢漬けに。余っていた茗荷を載せました。

 

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色んな切り方をした残りの蓮根と飾り切りで落とした部分を金平みたいな物に。山椒(ハウスの挽ける奴)と七味(常連さんから頂戴)を天に。

 

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ハンバーグでは無く、フンドーキンの麦味噌と美杉村の長期熟成の米味噌を酒で伸ばして煮詰め、無農薬レモン(冷蔵庫にあった唯一の柑橘)の果汁を絞り入れ。魚焼きグリルでホイル焼きにした茄子に塗った後、再度焼きました。レモンの皮も少し刻んで。

 

 

 

包丁の厚みで両断(二つ割り)は硬く感じましたが、端から(小口に)薄く切る分には特に不便は感じませんでした。割るのに関してはペティの方が楽でしたが。

其れよりも、灰汁による変色がやや強く出る感じですね。まともな錆にまでは成らないのですが。小まめに拭きながら切れば、もう少しマシになるでしょう。

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クリームクレンザーで擦れば、変色も半減するのですが砥石館で説明用に試し切りもして来たので、研ぎ直す傍ら小割りで磨き直して置きます。

これで何時でも試し切りや調理に使えます。人前での説明にも使うからには、外観・性能ともに最低限の仕上がりは維持したい所です。

 

 

 

 

 

最近の事柄

 

最近は研ぎと砥石関連の、少し枠外に広がる活動が増えています。天然砥石館で料理関連のイベントが企画された事に対してアイデアを出したり、鍛造体験に関して御協力したり。

二つ先のイベントまでに、もう何軒か(特に伝統的な所に成りそうですが)料理店にも顔を出さねばと話し合ってもいます。

 

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この前、鍛造して焼き入れ・焼き戻しまで行っていた小刀に、簡易な刃を付けてみました。

本格的な炭素鋼では無く、確りと焼きが入る鋼材では無かったものの、鍛造効果ゆえか意外と切れが出ていて驚きました。

 

 

 

 

また先日は注目していた山で、地元の方に伴われ嘗ての採掘跡を見学する機会を得ましたが、此方は館長の先々の展望を踏まえての確認も兼ねていました。所有者の方や地元集落の方の御理解・御協力次第では、共に発展の道を模索出来るかも知れません。

 

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それ以外には、過去に研ぎ依頼を頂いた方からの要望にお応えして、敷内曇りを選別もしました。

 

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恐らくは、予算・大きさ・性能の点で御満足頂けるのではと思います。

 

 

 

 

最後は、届いたばかりの顕微鏡で館長が砥石中からコノドントを見付けていたので画像を。

 

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戸前系統には見られるも、巣板からは発見出来なかったとの事。砥石の層の成りたちに関係しているのかも知れませんね。

 

 

 

 

 

自主研究(取材向け・イベント向け兼用)

 

此の所、天然砥石館の上野館長の顕微鏡熱が鰻登りです。少し前から程度の良い物を探しており、発注していましたが先方の不手際に痺れを切らして(地球環境子供村?から)モバイル顕微鏡を借り出したり、もう一つ別に生物顕微鏡を購入したり。

最新のコースとして、若年の琥珀を天然砥石で磨く体験を新たに導入する予定も有り、以前からの刃先の拡大・切られた素材の性状の比較と共に、研究を充実させて行く方針によるものです。

加えて、TVの取材でもその辺りが取り上げられるとあっては弥が上にも熱が入ろうと言うもの。実際、スタッフの操作へのアドバイスや習熟過程でも協力していました。

 

 

 

以下は其の際の画像の一部です。

 

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館長が生物顕微鏡で鉋の削り屑(檜)を覗いていたので、スマホを接眼に直接当てて無理やり。1000倍くらいだと思いましたが、細胞の中で動きが見られたような?削ろう会でも此処まで拡大して比べる事に成ったら面倒だろうなと思いました。

 

 

 

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撮影前日に、スタッフと旅館で三人、事前準備で顕微鏡の試験運用をしました。私は主として切る係。

 

 

 

撮影当日です。物撮りからみたいです。

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砥取家の加工場と丸尾山の採掘場所は何時も通りとして、今回は天然砥石館でもロケが行われました。これで、砥石館を御存じない方々にも知って貰えればと思います。

放送は結構、先に成りそうですが今回は朝方の放送との事。多分、私も少し出ている筈です。丁寧に作られた包丁の価値は勿論ですが今回は局側の方針に沿って、(簡略な包丁を題材に)天然砥石と研ぎに付いて実演(切り)と簡単な説明をして来ました。

他にも、切られた食材の味の違いに付いて比較して貰えました。予想と違う結果に驚かれたので良かったです。その合間を縫って、和包丁の画像も使われる事を狙い、さり気なく置いておきましたので上手く行けば一瞬出ているかも知れません。

 

 

 

 

先々には、上記の味の違いに焦点を当てた料理に関するイベントが企画されてもいます。その際に御協力を仰ぐ方々には、御話しをさせて頂きつつあります。以前から御世話になっている布谷さんを筆頭に、その他の方面からも御助力願える可能性が出て来ました。

そうなると気になるのが受け入れ側の経験と知識です。もう少し補強をするべく、無理をしてでも経験値稼ぎを期待して料理の勉強です。

 

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館長も新たな体験が含まれていたとの事で、此の度の訪問には手応えを感じた様子。私は生まれも育ちも関西でしたので、比べてみれば馴染みの印象が多目だったでしょうか。それでも、得た物は大きかったと思います。

 

 

 

 

 

館長と三河白巡りなど

 

少し前になりますが、天然砥石館の館長である上野さんと三河白の産地を見て来ました。採掘跡までは難しいので、嘗て採掘・販売していた店舗(現在は住宅)で記録や試料を見せて頂いたり、現在でも販売中の店で商品を選んだりしました。

前記の御宅とは上野さんの個人的な繋がり(御身内同士が同級生とか)があり、快諾を得られたので実現した訪問となりました。大奥さんが、先代や更に前の採掘者が遺した三河白の極上品を大切に保管されており、本や専門誌に掲載された文章や多数の写真と共に解説もして頂きました。

 

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上画像は、当地を離れて販売などのイベント?に出向く折にと、御家族の一人が制作されたとか。

此方に伺うまでは、現状なかなか真に細かいコマを触った事が無く、実は目白が一番微細なのでは?と考えていました。しかし往時の最高クラスと云う物を触れた今ではコマの名声にも納得が行きました。貴重な原石なども御提供下さり、有難く展示させて頂きます。

 

 

 

 

次に訪ねたのは、峠道に面した販売所が併設された御宅。此方は未だ、商品が並べられています。ん十年前に、上野さんが買い物した時とは少し様子が違っていた様ですが。

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開店前の到着にも拘わらず対応下さいました。所謂、泥だし用の名倉サイズが多いですが現在では希少となった、砥石本体で研磨可能なサイズも残っています。近頃、上物二つの内の一つが売れたとか。此方では、折角なので小さい物ですが一つ購入して来ました。

 

 

 

 

近くの自然公園の川沿いにも、砥石層に近いのではと思われる石が散見されたり。

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最後に見学した下画像の施設で、豊かな動植物の分布と共に周辺で確認される多種多様な岩石に感銘を受けました。

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因みに、一軒目で拝見した三河白の全層並べた木枠入りサンプルが、此方でも展示されていました。彼方が提供元だった訳です。

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下画像の右は一軒目での頂き物の鎌砥。当地では層の違いや質のバラつきで使い分けたのでしょうが、ほぼ砥石と言えば三河白のみが出回っていたとの事でした。左は二件目で購入した物。当代の方からは、層などの分類は困難であると。

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現地で御世話になった方々は勿論ですが上野さんには、今回の三河巡りに誘って頂いて感謝しております。現地に行かねば分からない事や、当時の採掘関係者からで無ければ聞けない話など、貴重な経験をさせて頂く事が出来ました。

そして大奥さんが御主人を始め、一族の男達が採掘した砥石を大事にしている様に、自分も頂いた鎌砥を大事にしたいと思います。

 

 

 

 

お終いは極最近、手に入れた砥石達です。

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かなり、平面の刃物に特化した様な砥ぎ感と質。剃刀や鉋、切り出しの平面研ぎと包丁の裏押しにと言った所ですが、そうそう出番が有るのかどうか。でも念の為にと、ついつい買ってしまう千枚。

 

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直近の本焼きの研ぎにも使用した蓮華巣板です。これで丸尾山の蓮華巣板は大小合わせて四つ目で、ようやく切迫感が無くなりました。2~3個では今一、相性の幅から不安が残ります。

 

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天然砥石館で、DIYの砥石づくりコースとして用意されている種類から、会津砥を選んで面付けしてみました。

数年前、義理堅い北海道の刃物店から情報提供の返礼として、詳細不明だがと砥石を送られました。きよんどさんに鑑別を願い出て会津らしいと判明した其れとは、やや質が違ってより仕上げ砥に近いですが此れは此れで使えそうです。

 

 

 

 

新潟での鍛冶体験(二回目)

 

この土日に、新潟県は三条の日野浦さんの工房で鍛冶仕事の説明・指導を受けて来ました。前回は松阪の月山さんと二人でしたが都合が付かないとの事で、少し緊張気味に一人で向かいました。

行ってみると、地域の工房や工場で受け入れが行われている、若い人材(遠方出身)の一人が通いの内弟子状態でいらっしゃいました。今回は彼が相方として共に指導を受けつつ作業を進める流れに。

一年を超える期間、日野浦刃物工房で幾つかの工程を任されている訳ですから頼りにもなり、実際手本を示して貰ったり加工をして貰う場面も。

以下は備忘録も兼ねてですが、良い仕上がりを求めると鍛冶仕事はこれだけ手間暇かかるという事が伝わればとの思いから、長めの記載となります。(それでも全部は載せ切れていません)

 

 

作業内容は、地金(極軟鋼・極軟鉄・軟鉄)に刃金(高炭素鋼・鋼・鋼鉄)を割り込ませる手法です。これが割り込み。

一般に、割り込みと表示されている殆どは地金(一部は軟鉄、大半は積み重ねたニッケルやステンレスや銅)に刃金を挟んだ状態で製造された、鋼材メーカーが御膳立てした物です。希にコの字断面の地金も有りますが。

これは利器材(クラッド材・クラッド鋼)と呼びます。例え刃物製品に本割り込みと表示が有っても。基本的に、厚く広い面積の鋼材同士を高温で接合し、圧延で伸ばすので一度に多く造れます。

他に、二枚の地金と一枚の刃金を手作業で鍛接した本来の三枚(三枚打ち)が有りますが、「三枚」の名称も「割り込み」と同じく伝統的な作り方を守っている鍛冶が居る限り、大量生産の「三層利器材」とは名称を分けるべきでしょうね。

私は三層(多層)利器材も認めていますが、少なくとも利器材が総ての鍛接品(付け鋼)を切れ・永切れ・研ぎ易さで凌駕していない内から、本流や伝統製法の継承者を連想させる表現をするのには疑問を禁じ得ません。因みに、日野浦さんの工房でも味方屋作包丁は利器材使用ですが、きちんと鍛造の上で水焼き入れされています。

 

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先ずは、割り込みに使う地金(分厚いごろっとした形状の軟鉄)を赤めます。

 

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半分程を、スプリングハンマーで叩き伸ばします。

通常この後は鏨を使って、そのまま割るのだと思いますが、特別に二人一組の向こう鎚で割ります。

 

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ハンマーのヘッド?を包丁用に(厚物用⇒薄物用に)交換。

 

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伸ばした方を持ち手に、反対側のゴツイままの方に鏨を当てて叩きます。この工程は、油圧などの動力で押し込んでも割れて行かないそうで、実際、小ぶりな金槌でも十分割れます。

(圧延と鎚打ちの違いは、此処にも現れる様です。炭化物を微細化するだけならとても薄く迄、圧延しても良いが組織内での分布に一定の流れが出来易いそうです。やはり衝撃による効果と同一と迄は行かないですね。)

 

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問題は、鏨の当て方で均等になってくれないと修正可能な範囲からの逸脱も有り得ます。しかし、如何にも鍛冶仕事らしくて楽しい工程でもあります。当然、鑿の頭を的確に叩けなくても進む方向がずれる原因になります。

 

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幸い私も相方も、交代しつつ互いの品物をやってみましたが修正で事無きを得ました。間に挟む鋼材(刃金になる)の寸法が収まる位に割れると、次に進みます。

 

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白紙二号の薄めの鋼材を、地金の寸法に合わせて切断。

 

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赤めた地金の間に鍛接材を振り、間に白紙、更に上から鍛接材。

鍛接剤は、刃物の素材・加工方法等が違えば最適な成分が変わります。鍛冶其々が見つけるしか無いとの事。

 

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それを軽く叩いて形状を馴染ませます。

 

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再度赤めて手打ちで、空気を押し出す要領で接合です。顎の付近が不十分になり易い様で、叩き進める向きが悪いと他の部分でも鍛接不良に。

 

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スプリングハンマーで本格的に伸ばして行きます。これまた、叩き始める場所と順番、方向性と裏表の頃合い、温度管理(合計数セット叩く内に、手順に則って温度を上下させる)が確立されています。

 

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言われた通り、見た通りにやってみますが不備の指摘は免れません。しかし、相方の叩き方は流石に安定性・正確性で上回っていました。

 

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次は込みの部分を赤めて。

 

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柄に入る部分を叩き伸ばします。

 

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過去に幾つか見た映像の記憶から、操作の違いについて等、尋ねる事に即答して頂けるのは最高の条件での指導ですね。教導役としてはペースが上がらない事、夥しかったでしょうが。

 

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ほぼ、中子の部分が出来ました。本焼き包丁の特徴の一つは、刃先が対象に触れている感触を良く柄まで伝える事だと思いますが、司作三徳はそれに近い印象です。

鋼の仕上がりから来る物と思っていましたが、作業を実際に見てみると、込み(中子)の造形の影響も有りそうだと感じました。

 

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歪み取りをして、一段落です。

 

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この時点での二人の品物とゲージ。顎の寸法が不十分ですね。双方が指摘された部分でした。

因みに、下が私の方だった筈。当然、最終的に日野浦さんの手直しが入っての状態。

 

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ゲージに合わせて罫引き、はみ出た部分を落とします。火造り(鍛造)が正確である程、落とす所は少なくて済む理屈です。

 

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其の上でのグラインダー。罫書き線まで削ります。

 

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込みやマチの整形。

 

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ゲージより長い部分の中子の切断。

 

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中子の整形。

 

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顎からマチまで、そして峰の角を丸めます。

 

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ここでも歪み取りです。ほんとはもう少し色んな各段階で、歪み取りは行われています。

 

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鍛造時に掛かったストレス(残留応力)を抜く為、焼きなましを行いました。通常、長時間掛けて徐冷する灰なましが有名ですが、同様の効果を上げる方法は有るからとの事で安心。

 

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焼き入れ時には焼き刃土と言うか、平たく言えば各種配合済の「泥」を塗るのですが。酸化被膜や手指の油分などが付いていると塗布に斑が出来たり、部分的に冷却速度に差が付いたりします。

そこで、ショットブラストで下処理です。隣のビーズで無く、鉄粉だったかと思います。

 

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いよいよ焼き入れの準備です。今回はコークスの方の炉を使わせて頂いていますが、種類別(熱源)に其々の長短が有るそうです。細かい説明も御聞きしましたが、その利点を生かすための操作も有る訳です。

コークスでの焼き入れの際は、鍛造段階とは異なる量・形状・ブロワーの加減が有り、かなりその項目を満たした状態でやらせて貰えました。よく、面倒がらずに・・・と思いますが、悪い出来に成るのが見ていられない様です。時々入る手直しも、無意識に本気の手順になってしまう模様。

焼き入れの御膳立てから、色味の確認までして頂き。

 

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焼き入れ(水冷)は自分の手でさせて頂きました。目立つ歪みも無く成功っぽいです。直後に、焼き戻し(炙りの方法)でやや硬めに仕立てて貰えました。

日野浦さんも思わず「やっぱりこうやって、一丁づつやってくのは面白いな」と。普段の計算し尽くされた、合理的な作業の充実感とは違った感覚が、懐かしかったのかも知れません。眼前の初心者の試行錯誤を通して見えた、嘗て感じていたであろうドキドキやワクワク、或いは迷い・工程の揺らぎでさえ。

修正や準備で、余計な手間を掛けさせたり心配させたりも、あながち悪い事ばかりでは無かったのかも。僭越ながら、楽しんで貰えた部分も在ったとしたら望外の幸せで、申し訳無さも幾分和らぎます。

 

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焼き入れで残った泥を、ブラシで落とします。

 

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最終確認での歪み取り。私の分は、スプリングハンマーでの叩き斑があり、真っ直ぐ完璧を目指すには限界が有った様です。手間を掛けさせてしまいました。

 

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時間が押していたので、砥ぎ下ろしは担当して頂きました。

相方は、隣の縦回りの大きな水研ぎ機で格闘中。二本とも、かなり元厚を残した仕上がりで型を使っての刃付けが出来ず、フリーハンドで進める事に。

 

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仕上がりです。後は切り刃を研いで、柄を付ければ完成です。鍛接不良も硬度不足も見受けられないので、使える刃物に成ってくれました。

 

 

 

本来は、新潟の「鍛冶道場」などにて経験を積むべきです。そこでは、初心者レベルで数回体験した後に中級者に進むコースが確立されています。私も、「完璧に鍛冶仕事を会得したい」とか「とにかく独力で最後まで刃物を作ってみたい」との思いであれば、その手順を無視する事は無かったでしょう。

二度目にして合わせの鋼付けから、行き成り割り込みの鋼付けに背伸びしたのも、希少な機会に少しでも見識を広めようとしたまでで、決して「合わせは会得した」とか「簡単だったから次に」との認識からでは有りません。

良い刃物の条件・それを作る作業工程・必要な知識や経験(鍛造・冶金・熱処理)を確認し、勉強したかっただけです。司作の刃金に満足しているからと言い換えても良いですが、自らそれに並ぼうとか超えようとは思い難かったからです。もしも満足していなければ、我こそはと自惚れられたかも知れません。

再び一泊二日で御面倒をお掛けしましたが、私が理解を深めてその結果、仕事や活動を通じて現代でも尚、高品質な鋼付けは有用であり、その性能と価値が広く知られる様に成ればと賛同を得られたが故です。偶然、相前後して海外から問い合わせが有りましたが、包丁の内容と研ぎの如何によって雲泥の差が出る事が理解され、伝わってくれれば嬉しく思います。

御付き合い頂いた御二方には只々、感謝です。御家族様にも御協力下さいました事、重ねて御礼申し上げます。有難う御座いました。

 

 

 

 

検査二回目に向けて

 

検査二回目は前回記載した、11月頃に導入される最新型の機材とは別件で、事前にサンプルを送って元素分析と酸化物について調べて貰う形の物です。

以前から興味を持っていた天然砥石の錆に対する利点を確認し、その理由を探る為に表面の酸化物の厚みや、砥石と鋼材との間で成分の結合などで組成が変化していないかを検査出来ます。対比の為に、人造砥石で研いだ物と天然砥石で研いだ物が必要になる訳ですが、天然の方は前回準備したサンプルで問題無い様なので、人造のサンプルとして1200、6000、8000番で仕上げました。今回はこの内、8000番を使い、天然の合砥仕上げと比較します。

 

 

1200番(数年前の物)と1000番 (二十年ほど前の物)

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8000番と6000番(双方、数年前の物)

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右から1200番、6000番、8000番仕上げの表(刃金側)

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同じく1200番、6000番、8000番仕上げの裏(地金側)

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参考までに、十年ほど前の6000番と二十年ほど前の8000番ですが、色味は現行の物と逆に見えますね。こちらの8000番の方がやや細かく研げる様なので、以前日大の先生から依頼された研究用サンプルは現行品は使いませんでした。しかし今回は月山さんの案により現行品を選択しました。

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6000番・8000番共に久々の使用となりましたが、どうも思っていたよりピカピカに成りにくかった感じがしました(特に地金側)。前段の傷が消えきっていないのかとも考えましたが、研ぐ方向を数回、直交させて一面に揃う程度には確認したので、最低限はクリアできたとして良いでしょう。これらを月末までに送れば十月上旬には調べて貰える事と思います。之までの、形状的な研ぎのチェックと並んで、同じくらい重視してきた天然砥石を使う意義を証明出来る事を願っています。

 

 

検査本番初回

 

昨日、三重の月山さんと共に京都府中小企業技術センターにて、本番の検査の初回を行ってきました。

目的は、それぞれが研いだ刃物の形状が、狙い通り正確に仕上がっているかの確認。もう一つは研ぎ前の刃物の状態(購入したまま、吊しの状態)から研磨を施した状態との違い(形状・研磨面の粗度)を、画像・センサーにより数値的に比較する事です。

以上により、新品が最良の状態。又、研ぎはどのように行っても違いは無い。といった誤解や理解不足から来る一般的な認識を払拭するに足る根拠が得られると考えています。研ぎの必要性とその精度(合目的的な形状)の重要性が再認識、或いは初認識されればと思います。

 

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これは膨大な時間を要する為、現実的には使いにくい様です。

 

 

 

 

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これは形状的に厚みの無い試料では精度が出しにくい様です。

 

 

 

 

そこで、お馴染みの曲面微細形状測定システム

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上画像による

切り出しの研磨の前後比較

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柳(ほぼベタ)と小出刃(ハマグリ)の比較

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上記のデータから、形状の特徴的な部分で抽出して比較

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検査機器の性格上、拡大が過ぎると地球の球状が平面に見えるのと同様、グラフの線では比較しにくい様です。勿論それぞれ特徴的な違いは有るのですが。この手の検査には、近々導入される最新型がより適しているとの事で、更に其方で進める予定です。

 

 

 

次回以降に向けてのサンプルも、ほぼこのまま使えそうとの返答を頂いたので、いよいよ天然砥石による錆びにくさと硬度変化についての理由が解明出来るかも知れません。 研磨痕の深浅による表面積の違い?砥石成分との化学変化か研磨性の差異?の疑問に、電子顕微鏡による画像や元素組成・酸化物の計測で迫れるのか。自由研究としては申し分の無い内容になりそうです。

 

画像は豆鉋(右、千枚・左、大谷山仕上げ)とサンプル(右、白巣板墨流し・中、千枚・左、大谷山仕上げ)

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研究の後で砥取家に寄りましたので、前回に続き、同種のやや小さめ乍ら硬口で細かい砥石を手に入れました。これで千枚系は、砥石山見学で拾ったり、ハネた中から貰ったりした物も含めて大小8個程、大まかに三系統集まったので一安心です。勿論、上画像のサンプルにも使用しており、特に鏡面系の最終仕上げ前には繋がりが良く、重宝しています。

 

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