刀鍛冶の三徳包丁

 

月山さんの所で、加藤さんに包丁を打って貰うが一緒にどうか、とのお誘いで頼んでいた物です。

 

新品時全体画像

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新品時刃部画像

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下は240番GCから1000・1200番キングの人造砥石で研いだ後、対馬名倉入り・巣板入り人造から丸尾山白巣板・敷内曇りで仕上げた画像です。

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最後は刃先の200倍拡大画像です。まだ初期のパラ付く傾向が見られますが、組織は細かく粘りも不足ではないので、更に研ぎ込めば揃って来るでしょう。

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白紙一号と軟鉄の組み合わせとの事ですが、外観からは割り込みで無く三枚打ちに見えます。焼き入れのみならず、鍛造・鍛接段階でもコークスでなく松炭使用との事です。当然刃金は脱炭の気配も無く、どちらかと言えばやや堅焼きの印象です。他の白紙一号やスウエーデン鋼の感触同様、細かく目の立った切れ味です。研ぎに於いては刃金・地金共、ある程度硬さを感じさせるものの、下りが悪い事は無く自然な研磨。寧ろ双方均等に近い研げ加減のバランスが印象的で、ある意味基準としても良い程の安定した仕上がりでした。

 

亀岡周辺はいいところ

 

勝手に桜の名所認定

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上の画像は、大阪から亀岡に向かう道沿いにある、自分が一~二年前から勝手に「ぷち千本桜」と思っている場所です。道中には、公園・川沿い・小学校や神社付近に大きな古木の単独や小ぶりな若木の集団・一列縦隊という、絵になる桜が多数存在しますが、地形を活かしたこの場所はスケールと合わせて個性的です。勿論、有名どころは妙見山ですが。

 

下の画像は同日、砥取家さんと合流して、嘗て採掘していた休眠中の山へ下見に訪れた際の物です。此方は採掘権云々でなく、砥取家の持ち山だと言う事です。後日、研ぎ文化振興協会から行政への説明として、担当の方々とも再訪した場所です。

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大小数カ所、採掘跡が在りました。

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そして、下の一つ目は様子見のサンプルとして、付近で切れっ端を採取して面を付けた物です。他の二つは比較用の君谷(休眠中)と大谷山です。

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サンプルで持ち帰った物は薄層に剥がれ易い状態の、はつって落とされた部分の様でした。その為か野晒しによる風化、或いは冬場の凍てによってかやや脆さを感じ、上図の大谷山や君谷よりも硬さ・細かさで及ばないものの、通常使用には問題無い範囲と思われます。それは、下の普及品の切り出しによる試し研ぎ画像でも明らかでしょう。今後の再採掘にも期待が持てるといった所でしょうか。

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新入りの経過

 

少し前に購入して知人に贈った切り出し(普及品)の片割れです。多少使うくらいでは余り傷まないので、普通に考えれば必要以上に研いでいます。それでも未だ、切り刃が整いつつあるレベルですが、その確認を兼ねてカミソリ砥で研いでみました。今後は面の乱れや刃先角の不一致を揃える意識であれば、自然と平面が出てくるでしょう。

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此方は初期刃付けの面が中央に半分程残っていますが、小割した砥石で研ぎ目を揃えつつ当たる面を広げています。刃金の先側、半分は研ぎ肌がやや安定してきており、刃先も同様です。硬さよりも、粘りが勝っている傾向の様で、やや荒れてもタッチアップで戻り易い様に思います。

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最後は平面度合いが少し上がってきましたが、鏡面にすると未だ未だ均一な研ぎ肌になっていません。刃先の性能的には完全に安定してきており、硬さ・粘りのバランスは均等、組織の細かさも充分です。

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切り出しなどは特に平面で無くても言い、とはよく言われます。しかも使用者や鍛冶屋でも聞かれる事です。しかし段刃・糸引き・ハマグリなど、それぞれの切れ味や、切られた対象の切断面には違いが有ります。その使用感や目的に応じて選択するべき物で、条件の違う者に対して正解めいた事は言えません。自分では、目的の使用に耐える強度を確保した上で可能な限り良く切れる様にしています。ベタ研ぎで持たないならば小さな糸引き、更に駄目ならはっきりと二段に。或いは刃の通りを考えて刃先付近にハマグリを、と言った具合です。

切り刃までの鏡面は半分、自己満足ですが、残りの半分は使い勝手と味を考えての事です。食材の成分や水分が付き難く、錆や変色が少ない。更に切られた食材の鮮度や風味に対する悪影響も少なく感じます。但し満足いくまで仕上げようとすると、新品から考えれば数時間では済みません。十数時間、ヘタをすれば二~三倍でしょうか。勿論、荒い砥石から各段階、均一な研ぎ傷になるまで確実に仕上げながら進めば早いです。しかし出来るだけ研ぎ減りを少なくしようと、一段細かい砥石では傷が取れず後戻りをしたり、頻繁に確認する程、手間が掛かります。まあ、各種研磨剤や余り硬くなく、光沢を出す性能に優れた人造砥石であれば、この様な無駄とも言われそうな手間は必要無いでしょう。硬めの天然砥石なればこその面倒さですが、仕上がりの表情はやはり天然ならではの研ぎ肌で、他では代え難いです。更に同じ錆びにくさを得ようとすれば、人工的な研磨剤では1.5~2倍程度の粒度(番手・♯)を要する印象です。これはどの天然砥石でも概ねそうですが。その違いを解り、それに価値を見出す人には意味のある事だと考えています。