カテゴリー別アーカイブ: 依頼の刃物

通信講座の御試し?

 

小坊主様から御提案の有った、研ぎの通信講座みたいな物に関してですが・・・研ぎ依頼を兼ねて御送り頂いた三徳を例題にして考えてみました。

 

研ぎ前の状態

KIMG4966

知人の方の三徳を、小坊主様が研いで見ても期待通りに仕上がらないとかで。只、切れと永切れを試しましたが、ボランティア研ぎとして一般の方に研いで返す上ではそれ程、問題視される事も無いのでは?と感じました。私の所で研ぎ講習を受けてしまった弊害(?)かも知れませんね。確かに、髪の毛は切れませんでしたが・・・。

 

KIMG4967

小刃の付け方は、少々ですが角度の違う二種類で仕上げて有ります。何故か、左側は殆ど一定の小刃でしたが。刃先最終角度は、中々に上手い所で纏めて有ります。

 

 

Still_2019-07-17_200348_60.0X_N0005

刃線の中央~刃元の拡大画像です。つまり直線部分ですが、その範囲はマズマズ。刃先に荒れが見受けられますが多少の不安定さは現状、止むを得ませんし性能への影響も小さいです。

 

Still_2019-07-17_200359_60.0X_N0006

切っ先へ続くカーブの辺りの拡大です。やはり、角度の安定性が低下していますね。使用砥石にも因りますが、「直線部に比べて圧力の掛かり方が変わっても来ますので、刃先が荒れる」・「砥石への当たる方向も変わりますので返りの出る方向も変わる」・「従って返りの取り方も一様では無い」結果に繋がります。

 

 

 

KIMG4968

人造の1000番で研ぎ直して行きます。画像は研ぎ始めで、刃先側が未だ1000の研ぎ目に成っていません。つまり元の研ぎ方は(刃先の角度としては良いとしても)起こし過ぎ。取り敢えず、小刃の角度を一定に近付けつつ、刃先は目的の数値に合わせて行きます。最終刃先角度は刃元から切っ先に掛けて、片側40度⇒30度⇒20度にします。(切れと耐久性に由って加減します)

あと、切り刃の状態も(極端に厚みが邪魔では無いのですが)凹凸が抜けの抵抗に成っているので、問題個所を修正します。只、今回は研ぎ講座でも有りますので、小割りの砥石で処置すると共に、敢えて荒目の粒度で部位の明確化・処置の不完全化(続けて仕上げてみて下さい)。

 

KIMG4969

左側は、元から其の方向性に近い感じでしたので、上書きです。

 

KIMG4970

3000番で砥ぎ目を細かく。

右側の切り刃の凸部は、先側の半分の範囲で大きく三か所。

 

KIMG4971

同じく左側も。

切り刃の凸部は、もっと狭い範囲ですが此方も三か所。

 

KIMG4972

3000番で、仮の仕上げです。細かい砥石に繋いで行けば、返りが小さく薄く、出る量も低減されます。

 

KIMG4973

 

 

 

Still_2019-07-17_203408_60.0X_N0007

直線部分の拡大画像

 

Still_2019-07-17_205005_60.0X_N0009

カーブ部分の拡大画像

 

 

 

KIMG4974

天然砥石で仕上げて行きます。長四郎引きで大まかに、赤ピンで最終仕上げです。

 

KIMG4975

私の標準仕様で、左右均等に仕立てました。

 

KIMG4976

研ぎ上がり画像

 

KIMG4977

刃部のアップ

 

Still_2019-07-17_203508_60.0X_N0008

直線部分の拡大画像(返りが残っています)

 

Still_2019-07-17_205037_60.0X_N0010

カーブ部分の拡大画像

 

KIMG4978

 

 

 

研ぎ直した結果、角度の適正化と安定化・返りの処理と刃先の性状の違いに因り、毛髪にも切り込める様に成りました。切り刃の修正により紙の束に対する走りや抜けも改善されましたが、此方は八割方の完成度ですので上書きで仕上げて頂きたいと思います。詳細は、別途メールした文面を御参照ください。

通信講座を想定し、様々なパターンを勘案しましたが状況や要因が雑多過ぎて一纏めの設定には無理が有ると感じました。御題に成る包丁も状態も違いますし(当方から支給すれば定まりますが)、研ぎ手の腕や年季・目指す仕上がりも様々でしょうから。

結果的には今回の様に個別の包丁、其々の状態に応じて研ぎ直しつつ、研ぐべき箇所を示す様に仕上げ切らないで御返送。メールにて現状の評価と今後、研ぎ進める方向性を御伝えする感じに成るかと。

私としては研ぎの途中とも言えますから、詳細解説を付けるのと合わせても、普通の研ぎ料金より少し低額で対応出来るかと思われます。つまり、研ぎ講座でも普通研ぎでも、御好みの方で御依頼下さればと。まあ、そんな酔狂な希望者は中々に居られないかも知れませんが、取り敢えず御要望が有れば上記の内容に準じた対応をさせて頂こうと考えています。

 

 

 

 

 

御近所の繫がりで御依頼

 

半月ほど前でしたか、日頃から通っている和菓子店で聞いていたのですが、買い物に来られた中に研ぎを希望する方が現れたと。店内には私の名刺や関係した本を置いてくれているので、来客時に目に留まり興味を持たれたとの事。

三日前の帰宅時、自転車で追尾して来たのが御当人で、その場で依頼されて包丁を受け取りました。一般の方は、予備の包丁が少ない場合も有りますので、急いで返却した方が良いのかと翌日に間に合わせたので簡単に御紹介です。あ、記事への記載は確認していませんでしたが、和菓子好きの近所のよしみと云う事で。

 

 

研ぎ前、全体画像。研がれた形跡は有りますが、現状では切れなくなっていました。側面の傷は気に成りますね、その効果も余り無さそうですし。

KIMG4890

 

研ぎ前、刃部アップ

KIMG4891

 

研ぎ前、刃先拡大画像

Still_2019-06-19_144520_60.0X_N0002

 

研ぎ前、左側面

KIMG4892

 

 

 

人造の400⇒1000⇒3000番から、中硬の黒蓮華⇒赤ピン⇒中山並砥です。やはり、この系統のステンレス(質と硬さ)には並砥の相性が際立ちます。

KIMG4894

 

研ぎ後、全体画像。特に御要望が有った訳では無いのですが、大きな傷くらいは目立たなくしようかと。

KIMG4896

 

研ぎ後、刃部アップ

KIMG4899

 

研ぎ後、刃先拡大画像

Still_2019-06-19_154704_60.0X_N0004

 

研ぎ後、左側面

KIMG4900

 

 

 

御依頼主は、結構な包丁好きとの事で、キッチリ研いでくれる所が良いとの事でしたが、届けた際には此の位の外観の変化でも綺麗に成ったと。使って見た結果、切れと永切れでも今回の研ぎに満足して頂ければ幸いです。そして、間を取り持って頂いた和菓子店の旦那にも感謝です。有難う御座いました。

 

 

 

 

 

司作出刃、流水飛紋

 

北海道のS様を介しての御依頼は、司作の出刃に私の研ぎを施す事でした。日野浦さんに問い合わせた所、偶然にも御希望のサイズに近い出刃が。

ただ、地金の種類としては最高額となる流水飛紋でしたので、少々気に成ったのですが問題無いという事で取り寄せました。

 

KIMG4875

 

KIMG4876

研ぎ前、全体画像

 

KIMG4878

研ぎ前、刃部アップ

 

Still_2019-06-17_225949_60.0X_N0005

研ぎ前、刃先拡大画像

 

KIMG4879

同じく裏

 

 

 

KIMG4880

人造の400⇒1000⇒3000番

 

KIMG4881

人造の小割りで地金部分の均し研ぎ

 

KIMG4882

成の1000番で全体を

 

KIMG4883

中硬の巣板の後、中硬の中山赤ピン

 

KIMG4885

地金部分を巣板各種で

 

KIMG4886

刃金部分を硬口の奥殿巣板(天上・本)の後、中山の戸前

 

 

 

KIMG4887

研ぎ上がり、全体画像

 

KIMG4888

研ぎ上がり、刃部アップ

 

Still_2019-06-19_015451_60.0X_N0006

研ぎ上がり、刃先拡大画像

 

KIMG4889

同じく、裏

 

 

元から可成り整えられた切り刃でしたが、中央とカーブの鎬筋側の厚みが気に成り、角度変化と共に調整しました。あと、刃先最先端まで薄目に成っていたので、刃金部分全体に鈍角に研ぎ直して更に最先端は刃元60度強⇒切っ先30度強。

刃体その物が薄目でしたので、刃先角度も其れに合わせて極端には強度優先にはしませんでした。それでも通常使用では十分な刃持ちだと思われます。上手く扱えば髪の毛に押し付けるだけで切れる程度には鋭利ですが。

本日中には、クロネコから御送りできると思いますので、現物が届きましたら御確認を御願いしたいと思います。お気に召して頂けましたら幸いです。此の度は有難う御座いました。

 

 

 

 

 

刃物店から直接届きました

 

結構、前から届いていた北海道のT様の柳。刃物店から直接、当方へ御届けで・・・此れは、「御世話に成っているベスパのディーラー方式」と同様ですね。

色々と兼ね合いが有りましたが、他の御依頼が一段落したので取り掛かれました。通常の研ぎに加えて、裏の鏡面も御希望との事でした。

 

 

研ぎ前、全体画像

KIMG4850

 

刃部アップ

KIMG4851

 

KIMG4852

 

 

 

400番から砥ぎますが、結構なホロー気味・凹み有りの切り刃ですね。その割には、均一・浅目では有りましたが。ただ、刃金に関しては面の精度が地金よりも高く、初期切れに貢献していると思われます。

KIMG4856

 

1000番

KIMG4854

 

3000番

KIMG4853

 

其の後、キングハイパーで均してから人造小割り220番で。

KIMG4857

 

1000番の小割り

KIMG4861

 

 

布のペーパー3種と紙の方、4種で

KIMG4858

 

 

軟口の巣板

KIMG4860

 

中硬の中山戸前では、普通の切れでしたので硬口の奥殿本巣板黄色で。完璧に近い相性で、場合によってはそっけない反応にも感じる此の砥石が、下りと仕上がりに於いて文句無しでした。

KIMG4862

 

 

研ぎ後、全体画像

KIMG4863

 

刃部アップ(平は布ペーパーの荒目で軽く磨き済み・地金は奥殿天井巣板内曇り仕上げ)

KIMG4864

 

刃先拡大画像

Still_2019-06-11_121040_60.0X_N0002

 

裏の全体

KIMG4865

 

一部アップ

KIMG4866

 

 

今回の白木作の柳ですが刃金の質は、適度な硬さに加えて粘りに留意した傾向に感じました。組織の細かさも可成りな物で、各要素を総合した切れ自体は超一級品。ザクザク感よりは滑らかさに寄せた切れ感で、刃持ちも十分に期待できます。

依頼文からは値段的に手頃で有った様子が伺えますが、研削や刃先性能、裏梳きの精度・反りや捻じれの少なさから見ると、購入時の仕立ての素性の良さは充分でしょう。T様におかれては、更に上級の仕立てを盛り込み完成度の向上を狙われたと思われますが、御期待に沿えていましたら幸いです。今後も宜しくお願い致します。

 

 

 

 

 

本焼きの鰻裂き

 

東北に御住まいのS様から、本焼きの江戸裂き(東京型の鰻裂き)の御依頼を頂きました。私としては触った事が無いタイプでしたし、ましてや使って見た事も無かったので如何なものかと考え、率直に伝えた上で専門家や販売店への御依頼を提案してみました。

しかし、送って頂けるとの事で可能な限り御意向に沿いつつ、確認した現物の状態から逆算して仕上げようと考えました。具体的には、切り刃の面精度を上げつつ厚みの不均衡を正し、正確な段刃(御希望では50度位)に仕上げる。

 

 

研ぎ前の状態

KIMG4826

 

刃付けされた段刃の上から、刃先寄りを中心に研ぎ直されている状態に見えます。

KIMG4830

 

切り刃は、ホローグラインド的な刃付けで、且つ刃元寄りは刃先側が薄い・逆は鎬筋寄りが薄い。厚みは横手筋と言いましたか、其の辺りに掛けて残存傾向。

KIMG4828

 

裏は割合、整っているのですが切っ先から5mm・1cm・4cm辺りに欠けが有ります。

KIMG4829

 

 

 

人造の400番から砥いで行きます。少しでもホローの軽減を狙いつつ、切り刃から。

KIMG4834

 

1000番です。直線部分の段刃の両端が、弧を描いています。それを修正しつつ研ぎ減らしながら、角度も御希望に寄せて行きます。

KIMG4835

 

しかし、50度近辺を狙って砥いで行くと、大きく返りが出易い為か刃先が荒れ気味に。特に、切っ先寄りの三か所の欠けが何度か再現される程で。そこで若干、鋭角目(45度強)で砥いでから、刃先を起こして指定角度の近辺へ。

KIMG4836

 

中硬の巣板の後で、硬口・超硬口の巣板で仕上げました。

KIMG4838

 

 

 

研ぎ後、全体画像。

KIMG4840

 

刃部アップ

KIMG4844

 

刃先拡大画像

Still_2019-05-29_215057_60.0X_N0007

 

裏ですね。軽く磨いて錆予防。

KIMG4845

 

 

 

今回、研いで見て分かりましたが、通常の包丁に大きく段刃を付けるのとは些か異なる認識が必要です。段刃が極めて明瞭な為に切り刃の面と対等な、端的に言えば多面体の立体を仕上げる感覚を要すると。

その主要な要因は、横手筋が有る為です。其れを挟んで隣り合う、切り刃面同士・段刃面同士にズレが生じない状態を維持しつつ研ぎ進めなければ成りません。厚みにしても角度にしても大差が付くと面倒に成りますし、刃先の減り方が違って来ると目も当てられませんね。

ですので、余りバランスを崩さない範囲内で調整するに留めました。切っ先寄りは、欠けが無くなって角度が狙い通りに成る段階で・直線部分は、両端のアール部分が減り、刃先最先端と裏押しが何とか繋がった段階で。

ある方から伝え聞いたのですが、江戸裂きの研ぎは専門家に委ねるのが相場で代金も2.5倍近くなると。成る程、他の包丁とは違うアプローチが必要とあっては無理も無いと感じました。

 

 

 

S様には、貴重な機会を頂きまして有難う御座いました。御返送後には仕上がりに問題無いとのメールを頂きましたが、初期の御要望から余り離れていなければ幸いです。今後も御役に立てる様でしたら、宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

三本の三徳、一応の仕上がり

 

日野浦さんからの依頼品、黒打ち三徳の三本ですが・・・之までのパターンを踏襲した研ぎ方では、地金の方が同一の仕上がりに成り難い事が分かりました。

普段であれば合砥まで行かずとも、巣板からでも八枚⇒千枚の手順で半鏡面に成ってくれていたのですが。今回は、地金の種類に因る物か焼きの加減に因る物か同様とは行かず。

しかし今回、折角三条に出掛ける機会では有りますので一応、仮の仕上げとして日野浦さんの判断を仰ぎたいと思います。

 

KIMG4734

 

KIMG4736

 

KIMG4737

 

KIMG4738

 

 

もしも御依頼頂いた時点の御希望通り、何時もの私の半鏡面仕上げを御所望とあれば、再度使用砥石のバリエーションを変えて、狙い通りの結果を得られるか試してみる予定です

 

 

 

 

 

三本の三徳の下研ぎ

 

少し前に、或る所へ司作の柳・三徳を御送りしました。之までには、そういった事は経験が無かったのですが常連様の繫がりで、実力者の方に包丁・研ぎの両面をテストをして頂けました(加えて、関連の方に研ぎ依頼頂いた薄刃についても)。

結果的には双方共に高評価を頂けて一安心でした。数時間で数百人分の刺身を引いたり、近いレベルで野菜を打ったり。切れと永切れに御満足頂けた様です。包丁の特性としては、刃金の硬さ・粘りから来る切れと永切れは実感して頂けたのですが、其れと並んで手に伝わる刃先からの情報の豊富さを称賛されていました。自分でも、御薦めポイントとして重視している美点ですので御理解頂けて嬉しく思いました。

私個人に付いても過分な御評価を頂戴しましたが、ベテランであり優れた腕と感性を御持ちの方による裁定ですので、率直に有難い思いです。私の研ぎや選別した砥石・司作の包丁で、御要望にお応え出来る様でしたら今後も御役に立ちたいと願っております。手始めに御送りした今回の包丁ですが、更に多くの方にも御試し頂き、楽しんで貰えましたら幸いです。

余談ですが・・・テストして頂いている傍ら、若い衆が私の研ぎの角度も測っていたとの事で。何やら、スマホのアプリ?らしき物を活用したのか、刃先の正確さがチェック出来たと。伊達に、研ぐ際の標準角度を記載している訳では無いのを御理解下さった様ですが、怖い時代に成りましたね。数年前、中小企業センターで形状の測定などをして貰った事を思い出しました。

 

 

 

そして本日は、司作三徳の下研ぎをしていました。これ等は日野浦さんの所で見本として置かれるとの事なので、実用品としての通常研ぎよりも輪を掛けて、傷や面の不均等を消す必要を感じています。

自分の手持ちであれば、数回後までに研ぎつつ整えますし、依頼品でも切れが充分に出た所で留める事が大半なのですが。その上、今回は結構な荒い機械研ぎ段階で持ち帰りましたので、研削痕が深いです。加えて、左側の中央部が少々削り気味なので対処も必要で。

 

到着時の状態

KIMG4601

 

 

人造の中砥仕上げ

KIMG4732

 

KIMG4733

 

この後は天然砥石で仕上げて行きますが、何とか三条に向かう今月の中旬には間に合わせたいと思っています。直前には長野で削ろう会(砥石販売ブースへ参加予定)、直後には佐渡で樽づくりイベントに参加予定ですので、上手く繋がる事を願いながら。

其れが終われば中旬から下旬に掛けて、既に御送り頂いて居た鰻裂きの研ぎ(初の試み)・北海道のT様からの新たな柳の研ぎに取り掛かる予定で居りますので、宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

追加の研ぎ

 

少し前に、北海道のS様が講習に来てくださいましたが、その際に御自分の柳を題材にしました。形状は殆ど整って来つつありましたが、仕上げに少々、研ぎを加えました。

 

KIMG4629

講習修了時

 

KIMG4719

研ぎ後、全体

 

KIMG4721

研ぎ後、刃部アップ

 

 

 

一緒に送付されて来ていた、御知り合いの薄刃も仕上げました。到着時、偶にある「殆ど欠点らしい部分が無い状態」で。強いて上げれば、刃先が鋭角過ぎて強度が不足気味・切り刃中央の切っ先寄りの鎬側に厚みの残存・切り刃中央の刃元寄りの刃先側に厚みの残存、位でした。

刃金部分の角度を少し鈍角に研ぎ直し、刃先先端付近は極小範囲でハマグリに。刃先の最先端は45度から40度で仕上げました。此れは、切れのテスト結果から判断した内容です。

 

KIMG4715

研ぎ前、全体

 

KIMG4716

研ぎ前、刃部アップ

 

KIMG4718

人造中砥の後、巣板と合砥で

 

KIMG4722

研ぎ上がり、全体

 

KIMG4724

研ぎ後、刃部アップ

 

 

 

序でに、手持ち三徳(テスト使用に送る用途)とプレゼント用の副え鉈も砥ぎました。

司作の三徳

KIMG4729

 

KIMG4731

 

 

司作の副え鉈、槌目

KIMG4725

研ぎ前、全体

 

KIMG4726

研ぎ前、刃部アップ

 

 

KIMG4727

研ぎ後、全体

 

KIMG4728

研ぎ後、刃部アップ

 

 

 

 

これで五月上旬までに砥いで置くべき刃物は、日野浦さんから依頼されたサンプル用の三徳三本です。少し、人心地が付く感じがしますが司作の見本として扱われるだけに、殆ど万全の状態に仕上げなければ成らず身が引き締まりますね。

 

KIMG4601

 

 

 

 

 

司作の柳の研ぎ上がり

 

もう一方の北海道の常連様、T様には二年程の御待ちを頂いて居ましたが、最近ようやく司作の柳を持ち帰る事が出来ました。

近く、海外出張へ出発される事を聞き及び、間に合うように送ろうと仕上げました。最後の最後で、発送受け付けに間に合わず一日の遅れが出ましたが、期限ギリギリの火曜には到着予定です。

 

KIMG4603

 

1554301357665

 

 

 

人造の中砥から研ぎ始めましたが、かなりフラットに凹凸も少なく仕上がっています。ただ、切っ先カーブの始まる付近の刃金部分が若干、研削が多目だった点。その後方、鎬の切っ先側の厚みが少し多い点。裏押しの刃元寄りの一部に当たり難い部分有り。

KIMG4630

人造の3000番まで当てた後、小割りの人造も使って均し研ぎ。その後、天然の小割りも。

 

KIMG4631

やや柔な巣板➡中硬の天井巣板で形状を整えつつ、砥ぎ目を細かく。千枚で更に向上。仕上げに中山です。

 

KIMG4632

僅かに、切れに相性の問題を感じて水浅葱を試すとピッタリでした。

 

KIMG4633

奥殿の天井巣板ほぼ内曇り(何故か確りした硬さと弾力)の小割り➡天井巣板蓮華カラスの小割りで地金部分を整えます。

 

KIMG4635

切り刃の刃と地のコントラストも適度ですね。

 

Still_2019-04-13_060131_60.0X_N0004

刃先拡大画像でも問題無しです。

 

KIMG4636

裏も綺麗な物。

 

 

今回、司作の柳は初めて触りましたが、鉈や小刀よりは幾分、粘りに配慮している印象です。とは言え、司作らしい硬さもキッチリ備えており永切れも期待できます。其の上、今回の刃金は組織の仕上がりに優れるのか、過去の司作と比べても切れが一層際立ちます。黒の鍛え地の迫力に、引けを取らない存在感を放つ高性能な刃金で才色兼備と云った所です。

T様には、料金面のみならず御菓子も送って頂きまして、御気遣いに感謝致します。御満足いく包丁と研ぎに成っていましたら幸いです。

 

KIMG4642

 

KIMG4643

とても面白いので、頂いた御菓子の画像です

 

 

 

 

 

北海道から講習に

 

昨日は北海道の常連様であるS様が、講習に御出で下さいました。直前に海産物を御送り下さっているにも関わらず、御菓子と酪農製品を御土産に頂き恐縮です。私の方は、前日のプライベートな不調法が当日にも波及し、些かバタバタしてしてしまい申し訳無かったです。

本来なら、時間に余裕が有れば近隣の多少は真っ当な店で御馳走しようとか策を練っていたりしたのですが・・・帰り際、咄嗟に最低限、手持ちの中で御返しに成るかもと大宇陀の本葛と葛湯(直近に購入)を手渡せました。森野旧薬園の製造で、大通りに面したアンテナショップ?である葛の館で購入の物。当地では、下画像の様な甘味も食せます。葛饅頭も買えますが少量です。

 

1555053092951

葛餅

 

KIMG4622

本蕨粉のわらび餅

 

KIMG4624

 

 

 

 

本題の研ぎ講習ですが、事前に御自身の包丁を(知人の方の分、共々)送って頂いて居ましたので、其れを題材にして説明と実演と成りました。

御自身でかなり、使いつつ手入れをされているヘビーローテーションの柳だそうですが、鎬も乱れず切り刃の凹凸も目立ちません。厚みも抜けて居り刃先も鋭利。紙の束を切っても、まずまず不満は出ません。ですが強いて改善すべきポイントを挙げれば、刃元側の厚みが少ないまま角度も鋭角過ぎる・刃先最先端が強度的にギリギリの角度である・切っ先カーブと少し手前の厚みが他の部分より残存、と言った所です。

人造の400・1000・3000番で解説しながら修正研ぎをして、天然に移行した時点でバトンタッチです。切り刃に付く研ぎ目の違いを利用して、説明通りの当て方・研ぎ方が出来ているかのチェック。

 

KIMG4628

スピードを上げるより、角度の安定にこそ注意を払うべきと助言しました。それ以外は、基本的な研ぎ方の範囲で大きな問題も無さそうでしたので。

ゆっくりでも、正確に任意の角度で狙った個所を当てられれば、どんなに複雑な研ぎ方も可能に成ります。技術向上への捷径は、正確さだと御理解頂けた様です。

後は、少しの研ぎ方や刃先角度・使用する天然仕上げ砥石の僅かな違いでも、切れと永切れ・・・特に切れの軽さに影響する点も実感して貰えたかと思います。

 

 

KIMG4629

最終的に、此の段階まで到達しました。外観・切れ・永切れの各要素で、ほぼ不足の無い状態と言っても差し支えないでしょう。後は、もう少しだけ手直しをして御返送したいと思います。

但し、御送り頂いた中で知人の方の薄刃が残って居りますので、其れを仕上げてからと成りますが宜しくお願い致します。

 

 

 

 

それ以外の身の回りの方の分。既に御返送に及んでいます。

KIMG4608

研ぎ前の全体。切っ先とカーブが損耗していますね

 

KIMG4609

刃先は少し薄過ぎる位ですが、刃線の繫がりが乱れている事も有り、摩耗した最先端とでは切れ難い状況。

 

 

KIMG4618

研ぎ後です。刃線を修正しましたが、その際に少々、厚みが出ました。しかし其れを逆手にとって、(側面もテーパーを上乗せで強調した上で)小刃の幅を広げつつ角度を切っ先へ向けて鋭角化。最先端は鈍角化して行くハマグリで仕上げました。

 

KIMG4619

切れと永切れ、頑強さをも備えた刃先(自分好み)にしましたが、初期状態が薄目だったので此れで問題無いのか心配して居りました。結果的に、図らずもハードなテストにもパスしたとの事で安心しました。その後の打ち物にまで支障なく使えたとあっては、面目躍如と言わねば成りません。因みに手持ちで今回のUX10に向いていたのは、中山の並砥でした。

 

 

 

KIMG4610

研ぎ前ですが此方は、ほぼ新品の状態での摩耗と言うべき状態。所謂、小刃の研ぎ直しで充分と言う奴です。但し、使用者は結構、切れに対する感覚が真っ当な方と見えて鳥の皮が切れないとの事。其れを力技で対処しようとしないのが立派です。S様が村上の研ぎをプレゼントしようと、粋な計らいに及んだのにも納得ですね。包丁全体の扱いも丁寧ですし。

 

KIMG4611

最先端の摩耗と、極少々の刃毀れ程度です。

 

 

KIMG4617

研ぎ後ですが、全体画像では変化に乏しいですね。

 

KIMG4616

只、上画像のUX10に施した処置と同様の内容を盛り込んでいます。若干の簡略化と極小範囲に収める格好では有りますが。効果の程は、使用者の弁として切った手応えが無い(いや無くは無いでしょうけど)との評価であった由にて安堵しております。此方の最終仕上げは、硬口の中山赤ピンです。

 

 

 

S様には、最初期から御贔屓にして頂いている筆頭と言っても過言では無く、今回の様に周囲の方々への広報的な活動までも含めて御世話に成って居ります。

私自身が、押し売りは嫌だの宣伝は苦手だの言っているので、業を煮やした知り合いの方々の方が熱心にしてくれる始末。その中でも、S様の御高配で評価下さる方が増えつつある現状には感謝しか有りません。

御返し出来る物が他には無い物ですから、精一杯の研ぎと砥石の選別で喜んで貰える様に、精進を重ねたいと思います。此の度は、遠い所まで足を御運び頂き有難う御座いました。直接に御目に掛かれて嬉しかったです。今後も宜しく御願い致します。